ザイマックス Research Memo(6):外部成長による巡航DPUの向上を通じて、投資主価値の向上を目指す(2)
[21/11/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の成長戦略
3. 商業施設の成長戦略
ザイマックス不動産総合研究所の分析によれば、商業施設のマーケットでは、コロナ禍により、飲食業では出店意欲が大きく減少し、退潮が鮮明になっている。一方、小売業(食品)や娯楽業をはじめ、その他の業種は変化が小さく、商業セクター全般への影響は限定的となっている。また、消費者行動や価値観が変化しており、巣ごもり消費の増加傾向が続く、テレワーク(在宅勤務など)が今後も拡大する、都市部郊外の店舗利用が増えるなどの項目が高い割合を占めている。このように消費者ニーズの変化が見られ、郊外に所在する商業施設は堅調であると見込まれる。
こうした環境下、同投資法人が所有する5物件の商業施設ではコロナ禍の影響は極めて軽微であり、ほぼすべてのテナントとの契約は固定賃料型であることから安定的な賃料収入を獲得している。また、保有するすべての商業施設が、堅調なテナント業況が見込まれる大都市圏の近郊に立地している。1棟貸し店舗やマスターリース事業者に賃貸するシングルテナントタイプの物件が賃料収入ベースで61%を占める。また、賃料収入ベースで39%を占めるマルチテナント型商業施設では、ミューザ川崎に飲食テナントが含まれるが、近隣居住のファミリー向け店舗が多く、一部休業テナントを除き一定水準の売上を維持している。また、ザ・パークハウス戸塚フロントはクリニック、調剤薬局、同投資法人のスポンサーグループが運営する「ZXY」が入居しており、コロナ禍の影響を受けにくいテナント構成となっている。なお、ミューザ内の2区画について、2022年8月期に解約する申入れがあったが、既に1区画については有力な商談がある。残る1区画については、まだ時間的余裕もあることから、できるだけ好条件での契約者を探す考えだ。なお、当該解約の影響については業績予想に織り込み済みである。商業施設では、現状、賃料減額、支払猶予、テナント破綻、賃料滞納などは発生していないものの、同投資法人では、引き続きテナントの業況把握のため、売上動向を注視する方針である。
4. ホテルの成長戦略
同投資法人のホテル事業で所有する物件はホテルビスタ仙台の1物件のみであり、JR仙台駅から徒歩4分の好立地にあるホテルだ。ただ、現状はコロナ禍の影響を大きく受け、最も苦戦を強いられている事業分野である。
すなわち、同投資法人では、2020年9月にはコロナ禍による宿泊需要の“蒸発”を背景にオペレーター(運営委託会社)から賃料減免の要請を受け、2021年1月に賃料条件変更に合意した。2021年3月にはオペレーターが東京地方裁判所に民事再生手続開始の申立てを行ったが、2021年10月に民事再生手続きが終結し、新スポンサーが親会社となった。同ホテルは、好立地で収益が取れている物件であることから、オペレーターからは賃貸借契約を継続したい申し出があり、2021年1月に合意した契約条件が今後も継続する予定である。
賃貸契約条件の内容は、以下のとおりである。すなわち、2021年8月までは、コロナ禍に配慮し、賃貸条件を月次GOP(営業総利益)に連動する完全変動賃料方式を採用した。しかし、2021年9月以降は固定賃料を復活させ、かつ、一定のGOPを超えた場合には変動賃料の受取が可能な方式とする。さらに、2022年9月以降は固定賃料を月額0.5百万円増額し、前期までの完全変動賃料方式期間の減免分を回収する計画だ。ただ、同投資法人では、2022年2月期、2022年8月期も固定賃料のみを収受する想定で、慎重な業績予想を立てている。ホテルビスタ仙台はオペレーターの運営施設のなかでも成績上位であり、今後もオペレーターの経営における最重要拠点の1つと位置付けられており、期日どおりの賃料支払いを継続している。
ホテルビスタ仙台の実績推移を見ると、コロナ禍に伴う政府からの2回目の緊急事態宣言下の2021年2月には、稼働率、ADR(Average Daily Rate:実際に販売された客室1室当たりの平均単価)、RevPAR(Revenue Per Available Room:「販売できるすべての客室」の平均単価)は回復傾向にあった。また、感染者増加に伴い7月下旬には4回目の緊急事態宣言が発令されたが、同ホテルの実績は、1回目、2回目の時ほど大きな落ち込みは見られない。人々の間に、コロナ禍にどのように対応すれば感染を予防できるかの認識が広がったことが背景にあると見られる。足下では感染者数が大きく減少し、緊急事態宣言も解除されているものの、再び感染再拡大の可能性もあり、楽観視できない状況である。ただ、ホテルビスタ仙台は元々高稼働の物件であることから、同投資法人では、テナント民事再生手続きの動向、客室売上の動向やホテル運営コストの適正性を注視する方針である。
5. 今後の外部成長戦略の着目点
同投資法人では上述の現状を踏まえて、アセットタイプ別に次のような戦略を立てている。すなわち、テナントニーズの旺盛さを、不動産の収益性を見極める重要な要素と考えて、アセットタイプごとに以下のポイントを総合的に判断することで、収益性の高いポートフォリオの構築を目指している。そして、今後もポートフォリオの80%以上をオフィス・商業施設・ホテルで構成する計画である。
まず、オフィスは、テナント訴求力の強い不動産に着目する。具体的には、引き続き都心8区、名古屋中心部、大阪中心部、福岡中心部に所在し、最寄駅からおおむね徒歩5分圏内の駅近で、1坪当たりの賃料単価1〜2万円台の、借り手にとって魅力のある物件を取得する方針だ。
次に、商業施設は、テナント賃料の安定性または物件価格の安さに着目する。すなわち、施設売上やテナントの賃料負担率が分析可能な物件や、市場対比で割安な物件を取得する計画である。
そして、ホテルは、交通結節点に所在する宿泊特化型ホテルに着目する方針だ。宿泊特化型ホテルは、スポンサーの運営ノウハウに基づき分析可能である。交通結節点へのアクセスが良好なエリアや訪日外国人の増加が見込まれるエリアなど旺盛な宿泊需要が見込まれるエリアに所在する物件を取得する計画だ。ただ、当面は、ホテル宿泊需要の回復を注視する方針である。
同投資法人では、上述のアセットタイプ別着目点を堅持し、ポートフォリオ戦略に則って、今後の物件の取得検討をしている。そして、分配金成長と財務健全性のバランスを意識し、対象物件の根源的な価値を見極める取得活動を継続する方針である。物件取得に際しては、スポンサーグループの「見極め力」や「ソーシング力」を最大限に活用し、対象物件が本来有している収益力を見極めた投資実行を想定する。また、同投資法人は LTV水準が低いことから、投資口価格の動向も踏まえて、借入金による機動的な物件取得も選択可能である。現在、東京23区のオフィス1件、地方政令指定都市のオフィス1件、地方中核都市の商業施設1件、宿泊特化型ホテル1件、東京23区のその他(寮)1件、合計5物件、120億円超規模の取得を検討している。いずれも、資産運用会社が優先交渉権(他の買い手よりも優先して売り手と交渉できる権利)を持っている物件である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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3. 商業施設の成長戦略
ザイマックス不動産総合研究所の分析によれば、商業施設のマーケットでは、コロナ禍により、飲食業では出店意欲が大きく減少し、退潮が鮮明になっている。一方、小売業(食品)や娯楽業をはじめ、その他の業種は変化が小さく、商業セクター全般への影響は限定的となっている。また、消費者行動や価値観が変化しており、巣ごもり消費の増加傾向が続く、テレワーク(在宅勤務など)が今後も拡大する、都市部郊外の店舗利用が増えるなどの項目が高い割合を占めている。このように消費者ニーズの変化が見られ、郊外に所在する商業施設は堅調であると見込まれる。
こうした環境下、同投資法人が所有する5物件の商業施設ではコロナ禍の影響は極めて軽微であり、ほぼすべてのテナントとの契約は固定賃料型であることから安定的な賃料収入を獲得している。また、保有するすべての商業施設が、堅調なテナント業況が見込まれる大都市圏の近郊に立地している。1棟貸し店舗やマスターリース事業者に賃貸するシングルテナントタイプの物件が賃料収入ベースで61%を占める。また、賃料収入ベースで39%を占めるマルチテナント型商業施設では、ミューザ川崎に飲食テナントが含まれるが、近隣居住のファミリー向け店舗が多く、一部休業テナントを除き一定水準の売上を維持している。また、ザ・パークハウス戸塚フロントはクリニック、調剤薬局、同投資法人のスポンサーグループが運営する「ZXY」が入居しており、コロナ禍の影響を受けにくいテナント構成となっている。なお、ミューザ内の2区画について、2022年8月期に解約する申入れがあったが、既に1区画については有力な商談がある。残る1区画については、まだ時間的余裕もあることから、できるだけ好条件での契約者を探す考えだ。なお、当該解約の影響については業績予想に織り込み済みである。商業施設では、現状、賃料減額、支払猶予、テナント破綻、賃料滞納などは発生していないものの、同投資法人では、引き続きテナントの業況把握のため、売上動向を注視する方針である。
4. ホテルの成長戦略
同投資法人のホテル事業で所有する物件はホテルビスタ仙台の1物件のみであり、JR仙台駅から徒歩4分の好立地にあるホテルだ。ただ、現状はコロナ禍の影響を大きく受け、最も苦戦を強いられている事業分野である。
すなわち、同投資法人では、2020年9月にはコロナ禍による宿泊需要の“蒸発”を背景にオペレーター(運営委託会社)から賃料減免の要請を受け、2021年1月に賃料条件変更に合意した。2021年3月にはオペレーターが東京地方裁判所に民事再生手続開始の申立てを行ったが、2021年10月に民事再生手続きが終結し、新スポンサーが親会社となった。同ホテルは、好立地で収益が取れている物件であることから、オペレーターからは賃貸借契約を継続したい申し出があり、2021年1月に合意した契約条件が今後も継続する予定である。
賃貸契約条件の内容は、以下のとおりである。すなわち、2021年8月までは、コロナ禍に配慮し、賃貸条件を月次GOP(営業総利益)に連動する完全変動賃料方式を採用した。しかし、2021年9月以降は固定賃料を復活させ、かつ、一定のGOPを超えた場合には変動賃料の受取が可能な方式とする。さらに、2022年9月以降は固定賃料を月額0.5百万円増額し、前期までの完全変動賃料方式期間の減免分を回収する計画だ。ただ、同投資法人では、2022年2月期、2022年8月期も固定賃料のみを収受する想定で、慎重な業績予想を立てている。ホテルビスタ仙台はオペレーターの運営施設のなかでも成績上位であり、今後もオペレーターの経営における最重要拠点の1つと位置付けられており、期日どおりの賃料支払いを継続している。
ホテルビスタ仙台の実績推移を見ると、コロナ禍に伴う政府からの2回目の緊急事態宣言下の2021年2月には、稼働率、ADR(Average Daily Rate:実際に販売された客室1室当たりの平均単価)、RevPAR(Revenue Per Available Room:「販売できるすべての客室」の平均単価)は回復傾向にあった。また、感染者増加に伴い7月下旬には4回目の緊急事態宣言が発令されたが、同ホテルの実績は、1回目、2回目の時ほど大きな落ち込みは見られない。人々の間に、コロナ禍にどのように対応すれば感染を予防できるかの認識が広がったことが背景にあると見られる。足下では感染者数が大きく減少し、緊急事態宣言も解除されているものの、再び感染再拡大の可能性もあり、楽観視できない状況である。ただ、ホテルビスタ仙台は元々高稼働の物件であることから、同投資法人では、テナント民事再生手続きの動向、客室売上の動向やホテル運営コストの適正性を注視する方針である。
5. 今後の外部成長戦略の着目点
同投資法人では上述の現状を踏まえて、アセットタイプ別に次のような戦略を立てている。すなわち、テナントニーズの旺盛さを、不動産の収益性を見極める重要な要素と考えて、アセットタイプごとに以下のポイントを総合的に判断することで、収益性の高いポートフォリオの構築を目指している。そして、今後もポートフォリオの80%以上をオフィス・商業施設・ホテルで構成する計画である。
まず、オフィスは、テナント訴求力の強い不動産に着目する。具体的には、引き続き都心8区、名古屋中心部、大阪中心部、福岡中心部に所在し、最寄駅からおおむね徒歩5分圏内の駅近で、1坪当たりの賃料単価1〜2万円台の、借り手にとって魅力のある物件を取得する方針だ。
次に、商業施設は、テナント賃料の安定性または物件価格の安さに着目する。すなわち、施設売上やテナントの賃料負担率が分析可能な物件や、市場対比で割安な物件を取得する計画である。
そして、ホテルは、交通結節点に所在する宿泊特化型ホテルに着目する方針だ。宿泊特化型ホテルは、スポンサーの運営ノウハウに基づき分析可能である。交通結節点へのアクセスが良好なエリアや訪日外国人の増加が見込まれるエリアなど旺盛な宿泊需要が見込まれるエリアに所在する物件を取得する計画だ。ただ、当面は、ホテル宿泊需要の回復を注視する方針である。
同投資法人では、上述のアセットタイプ別着目点を堅持し、ポートフォリオ戦略に則って、今後の物件の取得検討をしている。そして、分配金成長と財務健全性のバランスを意識し、対象物件の根源的な価値を見極める取得活動を継続する方針である。物件取得に際しては、スポンサーグループの「見極め力」や「ソーシング力」を最大限に活用し、対象物件が本来有している収益力を見極めた投資実行を想定する。また、同投資法人は LTV水準が低いことから、投資口価格の動向も踏まえて、借入金による機動的な物件取得も選択可能である。現在、東京23区のオフィス1件、地方政令指定都市のオフィス1件、地方中核都市の商業施設1件、宿泊特化型ホテル1件、東京23区のその他(寮)1件、合計5物件、120億円超規模の取得を検討している。いずれも、資産運用会社が優先交渉権(他の買い手よりも優先して売り手と交渉できる権利)を持っている物件である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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