テリロジー Research Memo(7):2022年3月期上期業績は期初会社計画から大きく上振れて着地(1)
[21/12/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2022年3月期上期業績は順調に推移
テリロジー<3356>の2022年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比21.0%増の2,349百万円、営業利益が同5.2%増の178百万円、経常利益が同2.0%減の174百万円となった。また、営業利益率は7.6%と前年同期比1.2ポイント低下、期中受注高が2,710百万円と前年同期比34.5%増、期末受注残高は1,416百万円と前年同期末比277.4%増となった。今年度から「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」を適用したため前年同期との単純比較はできないものの、営業利益が上期だけで期初通期予想(170百万円)を超過するなど、良好な決算内容であったと考える。
営業利益率の低下はIGLOOO及びクレシードの新規連結に伴う売上原価率の上昇が主因であり、オーガニックベースの収益性動向に問題は見られない。一方、受注・販売面については、前年同期比で見た大幅増には新規連結効果に加え、「収益認識に関する会計基準」を適用した影響も含まれわけだが、四半期別(3ヵ月)の前期比推移を見ると、売上高が2022年3月期第1四半期30.5%減→同第2四半期19.3%増、受注額が同16.8%減→同26.0%増、受注残高が同12.1%増→同19.7%増、といずれも尻上がり傾向となっている。年度末を跨ぐ第1四半期の前期比減収等は通常の季節習性の範囲内に収まっており、いずれも順調に推移していると判断される。
2022年3月期上期における事業部門別売上高は、ネットワーク部門の売上高が前年同期比36.7%増、セキュリティ部門が同9.0%増、モニタリング部門が同53.2%減、ソリューションサービス部門が同87.7%増であった。なお、「収益認識に関する会計基準」の適用影響を受けるサブスクリプション及び保守サービスの売上構成比は、ネットワーク部門が59.6%、セキュリティ部門が68.7%、モニタリング部門が91.6%、ソリューションサービス部門が24.1%、全社ベースでは53.7%となった。
ネットワーク部門好調の背景としては、1)米国Infoblox製のDHCP/DNSアプライアンス(IPアドレス管理サーバー「Infoblox」)が買い替え期に入り、国内で500台程度納入済みの現行モデルからセキュリティ機能を備え付加価値が高められた新モデルへのリプレース需要が国内大手製造業中心に継続した、2)2021年3月期から販売を開始した「Radware」製品について前代理店からの顧客巻き取りが堅調に推移した、ことなどが挙げられる。
なお、同社が取り扱う「Radware」の主力プロダクトは、1)「サービス停止攻撃」とも呼ばれるDoS/DDoS攻撃を自律的に防御するDDoS対策機器・サービス、2)日本市場で多くの実績を誇るロードバランサー(サーバーへの負荷を分散し安定的に稼働させる製品)、3)回線負荷分散のデファクトスタンダードとされるマルチホーミング機器、4)業界最高のWebアプリケーションセキュリティを実現するクラウドWAFサービス、5)自動化された脅威(Bot)からWebアプリケーション、モバイルアプリケーション、APIといったすべてのチャネルを保護するBotマネージャー、6)クラウド資産を包括的に保護するCloud Workload Protectionサービスであり、2)と3)がネットワーク関連、残りがセキュリティ関連となる。
同社は2020年3月のディストリビューター契約締結で日本における「Radware」製品の1次代理店となったわけだが、従前そのポジションにあった企業からは円満な形でバトンタッチされたもようであり、順調な顧客巻き取りによって保守契約込みで年間6億円程度の売上を同社が2〜3年中に獲得できる蓋然性は高い。加えて、前代理店ではネットワーク関連の取り扱いが中心であったため、セキュリティ関連において既存プロダクトとの棲み分けが可能である同社においてはクロスセルやアップセルを通じて一回り大きな事業規模への発展が期待される。実際、2021年3月期における「Radware」関連の受注額は217百万円、保守売上は55百万円に達し、2022年3月期上期の受注活動も堅調に推移している。
セキュリティ部門も、東京オリンピック・パラリンピックの開催やコロナ禍における社会生活や経済活動でのインターネット依存度の高まりを受けてサイバー攻撃の脅威が増大するなかで順調に推移した。具体的には、1)OT/IoTの普及で喚起された電力系などの重要インフラや工場及びビル管理といった産業制御システムにおけるセキュリティ対策需要に対応する「Nozomi Networks」製品、2)日々高度化・複雑化するサイバー攻撃や不正アクセスといった脅威に対抗するネットワーク不正侵入防御セキュリティや標的型攻撃対策クラウドサービス、3)サイバー犯罪・テロ等に関する情報を収集・分析する「KELA」サイバースレットインテリジェンスサービスや、サプライチェーンのリスクを可視化するサイバーリスク自動評価サービス「BitSight」、などが好調であった。また、SNSをAIで分析し犯罪グループ間の隠れた関係や裏アカウントなどを特定するサービスが官公庁からの受注を獲得したほか、次の大きなテーマとして取り組んでいるソフトウェアサプライチェーンリスクのサービスも大手通信事業者への導入を実現している。
モニタリング部門は大幅減収となった。電力系インターネットサービスプロバイダや国内金融機関向けの受注獲得があったものの、前年度に計上したパケットキャプチャ製品「momentum」の官公庁向け大型案件が剥落したためである。「momentum」と運用監視クラウドサービス「CloudTriage」は、高い採算性が期待できる自社製品/サービスであるだけに、既存主要顧客向けを軸に据えた需要掘り起こし活動の行方に注目しておきたい。
ソリューションサービス部門については新規連結による前年同期比ベースの増収影響が大きい。そこで、2022年第2四半期(3ヵ月)の売上高を同第1四半期(同)と比較すると、20.3%増の大幅伸長となっており、オーガニックな成長も順調であることが確認できる。同部門の主力プロダクトである「みえる通訳」が持つ特色(手話を含む多言語リアルタイム映像通訳サービス)が評価され、在留外国人や聴覚障害者とのコミュニケーション手段としてワクチン接種会場等での需要が拡大した。
また、コロナ禍で「Web会議サービス」が当たり前となりつつあるなかで、従来のライセンス及びウェビナー契約に加えて映像・音響機器等の付帯商材の需要も拡大、「かんたん接続クラウドマネージドVPNサービス」がその簡便性と値頃感によりクラウドPBXや理美容サロンをはじめとする小売流通や中堅企業等からの引合いを集め、貢献した。なお、自社開発のRPAツール「EzAvater」は販売代理店網の拡大とブランドの知名度向上のマーケティング活動に注力する段階にあり、新規連結対象であるクレシードの営業活動はおおむね予定どおりに推移している。
2022年3月期上期の売上原価率は59.2%と前年同期比1.4ポイントの上昇となった。IGLOOO及びクレシードの新規連結が直接的な要因として指摘できる。
一方、2022年3月期上期の販管費率は33.2%と前年同期に比べ0.2ポイント低下している。増収効果が大きいと思われるが、コロナ禍による経費削減効果の一巡や先行投資的な新卒・中途採用の継続を吸収していることは評価できよう。結果、2022年3月期上期の営業利益率は7.6%と前年同期比1.2ポイントの低下となった。ただ、期中の推移を見ると第1四半期(3ヵ月)の3.4%から第2四半期(同)には11.1%へと急上昇し、前年同期(2021年3月期の第2四半期)の9.9%をも上回っている。これまで、利益率が低いハードウェア販売を伴う同社のビジネスモデルを勘案し、現時点における同社の営業利益率の実力値を7%程度と考えてきたが、もう一段の切り上がりを念頭に置きつつ今後の動向を注視したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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1. 2022年3月期上期業績は順調に推移
テリロジー<3356>の2022年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比21.0%増の2,349百万円、営業利益が同5.2%増の178百万円、経常利益が同2.0%減の174百万円となった。また、営業利益率は7.6%と前年同期比1.2ポイント低下、期中受注高が2,710百万円と前年同期比34.5%増、期末受注残高は1,416百万円と前年同期末比277.4%増となった。今年度から「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」を適用したため前年同期との単純比較はできないものの、営業利益が上期だけで期初通期予想(170百万円)を超過するなど、良好な決算内容であったと考える。
営業利益率の低下はIGLOOO及びクレシードの新規連結に伴う売上原価率の上昇が主因であり、オーガニックベースの収益性動向に問題は見られない。一方、受注・販売面については、前年同期比で見た大幅増には新規連結効果に加え、「収益認識に関する会計基準」を適用した影響も含まれわけだが、四半期別(3ヵ月)の前期比推移を見ると、売上高が2022年3月期第1四半期30.5%減→同第2四半期19.3%増、受注額が同16.8%減→同26.0%増、受注残高が同12.1%増→同19.7%増、といずれも尻上がり傾向となっている。年度末を跨ぐ第1四半期の前期比減収等は通常の季節習性の範囲内に収まっており、いずれも順調に推移していると判断される。
2022年3月期上期における事業部門別売上高は、ネットワーク部門の売上高が前年同期比36.7%増、セキュリティ部門が同9.0%増、モニタリング部門が同53.2%減、ソリューションサービス部門が同87.7%増であった。なお、「収益認識に関する会計基準」の適用影響を受けるサブスクリプション及び保守サービスの売上構成比は、ネットワーク部門が59.6%、セキュリティ部門が68.7%、モニタリング部門が91.6%、ソリューションサービス部門が24.1%、全社ベースでは53.7%となった。
ネットワーク部門好調の背景としては、1)米国Infoblox製のDHCP/DNSアプライアンス(IPアドレス管理サーバー「Infoblox」)が買い替え期に入り、国内で500台程度納入済みの現行モデルからセキュリティ機能を備え付加価値が高められた新モデルへのリプレース需要が国内大手製造業中心に継続した、2)2021年3月期から販売を開始した「Radware」製品について前代理店からの顧客巻き取りが堅調に推移した、ことなどが挙げられる。
なお、同社が取り扱う「Radware」の主力プロダクトは、1)「サービス停止攻撃」とも呼ばれるDoS/DDoS攻撃を自律的に防御するDDoS対策機器・サービス、2)日本市場で多くの実績を誇るロードバランサー(サーバーへの負荷を分散し安定的に稼働させる製品)、3)回線負荷分散のデファクトスタンダードとされるマルチホーミング機器、4)業界最高のWebアプリケーションセキュリティを実現するクラウドWAFサービス、5)自動化された脅威(Bot)からWebアプリケーション、モバイルアプリケーション、APIといったすべてのチャネルを保護するBotマネージャー、6)クラウド資産を包括的に保護するCloud Workload Protectionサービスであり、2)と3)がネットワーク関連、残りがセキュリティ関連となる。
同社は2020年3月のディストリビューター契約締結で日本における「Radware」製品の1次代理店となったわけだが、従前そのポジションにあった企業からは円満な形でバトンタッチされたもようであり、順調な顧客巻き取りによって保守契約込みで年間6億円程度の売上を同社が2〜3年中に獲得できる蓋然性は高い。加えて、前代理店ではネットワーク関連の取り扱いが中心であったため、セキュリティ関連において既存プロダクトとの棲み分けが可能である同社においてはクロスセルやアップセルを通じて一回り大きな事業規模への発展が期待される。実際、2021年3月期における「Radware」関連の受注額は217百万円、保守売上は55百万円に達し、2022年3月期上期の受注活動も堅調に推移している。
セキュリティ部門も、東京オリンピック・パラリンピックの開催やコロナ禍における社会生活や経済活動でのインターネット依存度の高まりを受けてサイバー攻撃の脅威が増大するなかで順調に推移した。具体的には、1)OT/IoTの普及で喚起された電力系などの重要インフラや工場及びビル管理といった産業制御システムにおけるセキュリティ対策需要に対応する「Nozomi Networks」製品、2)日々高度化・複雑化するサイバー攻撃や不正アクセスといった脅威に対抗するネットワーク不正侵入防御セキュリティや標的型攻撃対策クラウドサービス、3)サイバー犯罪・テロ等に関する情報を収集・分析する「KELA」サイバースレットインテリジェンスサービスや、サプライチェーンのリスクを可視化するサイバーリスク自動評価サービス「BitSight」、などが好調であった。また、SNSをAIで分析し犯罪グループ間の隠れた関係や裏アカウントなどを特定するサービスが官公庁からの受注を獲得したほか、次の大きなテーマとして取り組んでいるソフトウェアサプライチェーンリスクのサービスも大手通信事業者への導入を実現している。
モニタリング部門は大幅減収となった。電力系インターネットサービスプロバイダや国内金融機関向けの受注獲得があったものの、前年度に計上したパケットキャプチャ製品「momentum」の官公庁向け大型案件が剥落したためである。「momentum」と運用監視クラウドサービス「CloudTriage」は、高い採算性が期待できる自社製品/サービスであるだけに、既存主要顧客向けを軸に据えた需要掘り起こし活動の行方に注目しておきたい。
ソリューションサービス部門については新規連結による前年同期比ベースの増収影響が大きい。そこで、2022年第2四半期(3ヵ月)の売上高を同第1四半期(同)と比較すると、20.3%増の大幅伸長となっており、オーガニックな成長も順調であることが確認できる。同部門の主力プロダクトである「みえる通訳」が持つ特色(手話を含む多言語リアルタイム映像通訳サービス)が評価され、在留外国人や聴覚障害者とのコミュニケーション手段としてワクチン接種会場等での需要が拡大した。
また、コロナ禍で「Web会議サービス」が当たり前となりつつあるなかで、従来のライセンス及びウェビナー契約に加えて映像・音響機器等の付帯商材の需要も拡大、「かんたん接続クラウドマネージドVPNサービス」がその簡便性と値頃感によりクラウドPBXや理美容サロンをはじめとする小売流通や中堅企業等からの引合いを集め、貢献した。なお、自社開発のRPAツール「EzAvater」は販売代理店網の拡大とブランドの知名度向上のマーケティング活動に注力する段階にあり、新規連結対象であるクレシードの営業活動はおおむね予定どおりに推移している。
2022年3月期上期の売上原価率は59.2%と前年同期比1.4ポイントの上昇となった。IGLOOO及びクレシードの新規連結が直接的な要因として指摘できる。
一方、2022年3月期上期の販管費率は33.2%と前年同期に比べ0.2ポイント低下している。増収効果が大きいと思われるが、コロナ禍による経費削減効果の一巡や先行投資的な新卒・中途採用の継続を吸収していることは評価できよう。結果、2022年3月期上期の営業利益率は7.6%と前年同期比1.2ポイントの低下となった。ただ、期中の推移を見ると第1四半期(3ヵ月)の3.4%から第2四半期(同)には11.1%へと急上昇し、前年同期(2021年3月期の第2四半期)の9.9%をも上回っている。これまで、利益率が低いハードウェア販売を伴う同社のビジネスモデルを勘案し、現時点における同社の営業利益率の実力値を7%程度と考えてきたが、もう一段の切り上がりを念頭に置きつつ今後の動向を注視したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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