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ADワークスグループ Research Memo(6):収益不動産残高の積み上げに注力し、開発事業も強化方針(1)

注目トピックス 日本株
■ADワークスグループ<2982>の中期経営計画

3. 重点施策の進捗状況
重点施策としては、既存事業を太く強くする施策、“脱”不動産事業を具現化する施策、並びにこれらの共通施策として、以下の取り組みを推進している。

(1) 既存事業を太く強くする施策
a) バリューチェーンの強化
コア事業である収益不動産販売事業では、エー・ディー・ワークスが物件選定/仕入れ/バリューアップ/販売を、エー・ディー・パートナーズがPMをはじめとする顧客対応を、エー・ディー・デザインビルドがバリューアップ工事/修繕工事をそれぞれ提供しており、各事業会社が専門性とコスト効率を追求すると同時に、事業会社間の相互連携を向上させることで、バリューチェーンをさらに強化し、ワンストップソリューションプロバイダーとして競争力を高めている。

2021年12月期においてはこうした取り組みにより、収益不動産残高を積み上げることができたほか、セットアップオフィスやワークボックスなど商品ラインアップの拡充や、オフィスビル向けPM体制の整備に取り組んだ。

2022年以降の取り組みとしては、商品企画部を本部に格上げしてグループ全体の商品力をさらに高めていく体制を構築したほか、REIT事業や開発事業の進捗に合わせたアセットマネジメント業務やPM業務の対応力強化を図り、エー・ディー・パートナーズにおけるフィー収入をさらに拡大していく方針となっている。

b) 収益不動産残高の再拡充
一定量の優良な収益不動産残高を保有することにより、不動産の相場と顧客ニーズとの双方を睨みながら、コントローラブルに販売を展開し必要な収益を確保すると同時に、保有する収益不動産から得る賃料収入によって収益の安定化を生み出す従来の成長戦略を継続し、2023年12月期の目標である500億円達成に向けて残高の積み上げを図っていく。同戦略では、エー・ディー・ワークス、エー・ディー・パートナーズ、エー・ディー・デザインビルドの3事業会社のノウハウ及び連携の強化を進めている。

2021年12月期においては、3〜5億円の賃貸マンション物件に加えて、10〜40億円の中規模オフィス物件の仕入れを積極的に進めた。このなかには、REIT事業や開発事業を見据えた仕入れも含まれている。

2022年以降も引き続き仕入れを加速していくほか、組織力・人材力・マーケティング・ITなど、バックアップ機能の拡充も進めていく予定となっている。

c) REIT事業による事業基盤の増強
REIT事業への参画によって、収益不動産の仕入れから販売に至る事業基盤を増強し、金融機関からの資金調達力を含めた事業規模の拡大を目指す。REIT組成に向けて、2021年9月にJMRアセットマネジメント(株)を設立し、宅地建物取引業のライセンス取得並びに関係当局への説明を開始するとともに、組成に向けて数十億円規模の物件を仕入れている。

組成は、オフィス、レジデンス、商業施設、物流センターなどそれぞれ得意としている同業者と組み、300〜400億円規模を予定している。

d) 開発事業による事業規模の拡充
開発事業では、2021年より福岡県で新築オフィスビル「(仮称)大名2丁目オフィス」プロジェクト(12階建て、敷地面積:約228m2/延床面積:約1,223m2)に着手している。同ビルは、熱負荷の低減や資源の有効活用、人間の健康・ウェルネスへの配慮などを施し、環境認証を取得した物件となる。建設資金はクラウドファンディングを活用して、地球環境保全の主旨に賛同する個人投資家から5億円を調達した。クラウドファンディングを活用したグリーンローン調達としては、国内初のケースとなる。そのほか、京都の中心部である河原町エリアで300m2の用地を購入し、商業ビルの開発を進めていく予定となっているほか、都内でも開発案件を複数検討している。

今後はこれらプロジェクトを進めていくほか、売上規模で20〜40億円規模の案件を年に2〜3棟ペースで仕上げていくことにしている。なお、これら物件に関しては「ARISTOシリーズ」として販売していくほか、REITの組成物件に含めていくことも視野に入れている。

e) 小口化不動産販売事業のコア事業化
不動産特定共同事業法にもとづく小口化不動産販売事業は、不動産投資に対する個人投資家層の裾野の広がりにより、成長が期待できる事業として位置付けている。このため、2021年より組織も「資産運用事業本部」として独立させて強化を図っている。

前述した通り、「ARISTO」シリーズは2021年12月期は3物件を完売し、累計では5物件、運用総額で67億円規模にまで成長している。今後も積極的に商品企画を行い、全国の地域金融機関との提携をさらに拡充しながら事業規模を拡大していく考えだ。

f) 海外事業の「複合バリューチェーン」展開
米国ロサンゼルスで展開している収益不動産販売事業は、国内のバリューチェーンを移植・応用する形で2013年に開始し、累計65棟を超える販売を行ってきた。また、2021年には新たな取り組みとして、現地パートナーとの協業により、現地向け住宅の開発事業にも着手している。また、ハワイでは高騰する住宅事情に対処する格好で制定された通称、Bill7※と呼ばれる現地法令に着目し、賃貸住宅の開発に着手している。30戸/棟程度の賃貸住宅をまずは1棟完成させ、自社保有物件として運用していく方針だ。

※高騰するハワイの住宅事情に対処するため、手頃な価格で賃貸住宅を提供できるよう2019年に制定された法令。建築基準の緩和や、行政に対する支払い手数料の免除等、開発事業に対するインセンティブの付与などが法令化され、民間企業が参入しやすくなった。


海外事業では今後、これら3つの事業をバランスよく強化し、資金とノウハウを循環させる独自の複合バリューチェーン構築に向け取り組んでいく方針となっている。なかでも、国内投資家を対象とする収益不動産販売事業用物件の仕入を強化していくことが事業拡大に向けて重要と考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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