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トレードワークス Research Memo(3):2021年12月期は過去最高売上高、各利益も3期ぶり増益に転じる

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2021年12月期の業績概要
トレードワークス<3997>の2021年12月期業績は、売上高で前期比21.0%増の2,553百万円、営業利益で同168.4%増の287百万円、経常利益で同167.8%増の289百万円、当期純利益で同159.1%増の189百万円といずれも会社計画を上回って着地した。売上高は2期連続増収、過去最高を更新し、各利益は3期ぶりの増益に転じたことになる。

(1) 売上高、営業利益の増減要因
売上高については主力の金融ソリューション事業において、既存顧客からの継続した発注に加えて、新規顧客から受注を獲得したことが増収要因となった。新規顧客については松井証券<8628>から米国株式のインターネット取引システムを受注し、288百万円を売上計上した。松井証券向けに関しては2022年も継続受注を獲得している。また、既存顧客のなかではミンカブ・ジ・インフォノイド<4436>向けが307百万円となり売上高比率で初めて10%を超えたほか、auカブコム証券向けが順調に増加した。売上高上位5社を合計した売上高は1,830百万円、構成比率で71.7%となっている。

営業利益の増減要因について見ると、増収効果で106百万円、原価率改善効果で86百万円となり、販管費の増加11百万円を吸収した格好となっている。原価率は前期の76.0%から72.6%と3.4ポイント改善した。項目別では、労務費率で1.8ポイント、外注費率で1.3ポイントの改善となっている。労務費率の改善要因は、人員配置などプロジェクト管理能力を強化したことでプロジェクトごとの生産性が向上した点が挙げられる。また、外注費は派遣スタッフの費用とデータセンター費用が主なものとなっているが、いずれも改善している。派遣スタッフの費用については、2020年以降は外部の人材サービス会社を活用するといった採用力の強化に取り組み、社内エンジニアの増員が進んだ。また、データセンター費用についても委託先を1社に集約したことで効率化が進んだ。なお、期末のエンジニア数は90名と前期末比で12名増となっている。

(2) 新規事業の取り組みについて
既存事業における売上拡大と収益性向上が順調に進んだことに加えて、同社では新規事業領域への展開についても着々と進めている。具体的には、金融システムの開発ノウハウを生かして新たに開発したクラウドECプラットフォーム「Emerald Blue」(SaaS型)を使ったプロジェクトが2件、2021年末よりベンチャー企業と共同でスタートしている。

1つ目は、2021年11月に発表したコネクテッドコマース(株)との業務提携案件となる。コネクテッドコマースは、リアルとデジタルを融合させた実店舗「AZLM CONNECTED CAFE(以下、AZLM)」の運営のほか、リアルで行われるユーザーの体験・行動・会話データなどをセンシングデータとしてデジタル化し、既にデジタル化されている様々なECサイトや店舗での購買履歴データなどとデータMIXし独自AIアルゴリズムによる新たなリコメンドエンジンの開発を行うベンチャー企業である。「AZLM」とは、あらゆる商品をライブでマーケティングできる未来型のカフェで、店内に設けた展示スペースに出展者の商品を展示し、来店する顧客に試してもらい、気に入ればECサイトを通じで購入する機会を提供している。現在、渋谷地下街の店舗では、地方の特産品を展示している。また、VR/AR技術などを活用した展示なども想定しており、2031年に向けてFC展開により2,000店舗、利用者数3千万を目指している。さらに、メタバースを活用したデジタル経済圏の創造により、日本のコンテンツや商品をメタバース空間から世界に発信していくことも目標に掲げている。

同社は今回の業務提携により、「AZLM」で利用されるECプラットフォームを提供するだけでなく、VR/ARソリューションも提供していく予定となっている。なお、コネクテッドコマースに対して2021年12月には資本出資も行い、第2位の株主となっている。

2つ目は、2021年12月に発表したアイエント(株)との協業案件となる。アイエントはOMOソリューション※によるDX推進に取り組むベンチャー企業で、日本初のオンライン免税ECサービス「Tax Free Online」を運営している。同社は「Emerald Blue」により同ECサイトの開発・保守サービスを提供する。新型コロナウイルス感染症流行の収束後(アフターコロナ)には再び外国人観光客の増加が見込まれており、観光客は「旅マエ、旅ナカ」のいずれの段階でも同ECサイトを通じて免税品を購入することが可能となる。注文はスマートフォンアプリを通じて行い、商品の受け取りは宿泊施設や空港で行う仕組みとなっている。同社はECサイトの開発料や保守サービス料だけでなく、レベニューシェアも一部を受け取る契約となっており、流通額の拡大による収益貢献も期待できることになる。

※OMO(Online Merges with Offline)とは、消費者の視点でECサイト(オンライン)とリアル店舗(オフライン)を融合させた顧客体験の向上を目的とするマーケティング手法を指す。


なお、「Tax Free Online」については、エイチ・アイ・エス<9603>、豊田通商<8015>、(株)小田急百貨店など国内の大手企業だけでなく、中国の大手旅行サービス会社とも業務提携を発表するなど注目度も高まっており、インバウンド需要回復後の成長が期待される状況となっている。

「Emerald Blue」の特徴は、クラウド環境でのECサイトの構築・運営が可能で、低コストかつ迅速にECサイトを立ち上げて運営を開始できることにある。また、ASPサービス、パッケージ販売の両方のニーズに対応できるほか、独立ショップ型、ショッピングモール型のいずれにも対応でき、最新機能の自動追加やカスタマイズ、他社パッケージからのデータ移行なども可能で拡張性やフレキシビリティも高い。基本機能としては受注、決済管理、配送、商品管理、顧客分析機能などを装備しており、フルフィルメントシステムとして提供しているほか、機能のAPI化やマイクロサービスとしての提供も可能となっている。同社は、今回の2件のプロジェクト以外にも同プラットフォームの拡販を進めていく計画となっている。

また、2019年からサービスを開始している「スマート法律相談※」の新バージョンを2021年3月にリリースした。月間30万PVを超えるなど、サービス開始以来アクセス数も順調に増加してきたことから、従来のAIを用いたチャットボット及びトピック判定機能に加えて、同チャット上から弁護士へ直接質問を行える機能を新たに搭載した。質問と回答の結果は自動的にジャンル分けされたデータとして蓄積され、自動対話のさらなる品質向上を図っていく。また、今後はより便利なリーガルサービスを実現するためサブスクリプション型の有償サービスの提供を行っていくほか、同サービスで蓄積したノウハウを生かして、コールセンター業務やアドバイザリー業務等の他業界へも横展開していく考えだ。

※(株)リーガル・テクノロジーズとの共同事業で2019年より開始したサービス。LINEの公式アカウントを使って、法律に関する相談をチャットボット形式で進めていく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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