日本電技 Research Memo(4):原材料価格の上昇にはデジタル化などで対応
[22/06/23]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 業界環境
新型コロナウイルス感染症の世界的まん延をきっかけに、コンテナ不足など物流混乱や都市規模でのロックダウンが発生するなどリスクが広まった。足元では半導体や部材の不足、原燃料高、ウクライナ情勢、日本においては円安といったリスクが広がりを見せている。日本電技<1723>にとって、今のところ目に見えた形で業績に影響を及ぼしていないが、サブコンの動きから今後鋼材価格など原材料価格の上昇が予測されている。なお、業界全体の人手不足は継続している。このような状況であるが、販売価格を引き上げることは難しく、下請けにとって厳しい環境になりつつあるといえる。この対策として同社は、デジタル推進室を新設した。社内も施工現場も全社的にデジタル化を推進し、作業効率や労働生産性を向上させる計画である。また、新設工事では既設につながる高収益の物件をより多く手掛けることでミックスを改善、既設工事では、IoTを駆使したリモートメンテナンスの導入拡大や脱炭素社会に対応した提案メニューを推進する方針である。
首都圏再開発完工までの端境期となった
2. 2022年3月期の業績動向
2022年3月期の業績は、受注高34,016百万円(前期比1.3%減)、売上高31,669百万円(同7.1%減)、営業利益4,074百万円(同11.1%減)、経常利益4,139百万円(同11.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,029百万円(同8.9%減)となった。現在のところ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う業績への影響は軽微といえる。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を2022年3月期期首から適用しており、売上高は1,009百万円増加、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ222百万円増加している。また、同社は工事の完成引き渡しが第4四半期に集中するため、これに伴って稼働率が向上する一方、第2四半期の売上高と利益がさほど大きくならないという季節的変動がある。
国内経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策やワクチン接種など各種政策の効果もあり、持ち直しの動きがみられたが、半導体や部材の不足、原燃料高、ウクライナ情勢などの影響により、期を通じて環境は不透明な状況にあった。建設業界は、補正予算の効果もあって公共投資が高水準で推移した一方、民間設備投資は情報化投資や脱炭素に向けた環境対応投資などを中心に持ち直しの動きが見られた。このような環境下、同社は、空調計装関連事業の新設工事において「全社最適方針の徹底及び既設工事に繋がる物件の受注」、既設工事においては「エネルギー課題に則した提案型ビジネス及びメンテナンスビジネスを両立させる事業展開」、産業システム関連事業においては「グループ企業と一体となった業容拡大及びそれを可能とする事業体制の構築」を対処すべき課題に、積極的に事業展開を進めた。
業績は減収減益となったが、想定通り、首都圏の大規模再開発案件が増加したことに伴う完成計上の端境期となったことが最大の理由である。特に空調計装関連事業における比較的大型の新設工事完工の反動減が減収の主因だが、首都圏の大規模再開発案件の仕掛りがあるため、ボトルネックを起こさないよう政策的に受注を絞った側面もある。産業システム関連事業は、もともと当期受注当期売上計上という案件が多いが、コロナ禍によって取引先工場を訪問できず、スタートダッシュに躓いた恰好である。但し、日本全体のコロナ対応がスムーズになるにつれて受注環境が好転し、今期に売上計上される受注が急増している模様である。利益面では、売上総利益率が改善したが、残業規制に前倒しで取り組んだため、労働生産性が向上して施工効率が改善したことが要因である。一方、システムの本格稼働による減価償却費増や産業ソリューション事業部新設による事務所移転など費用増はあったが、交通費などコロナ禍で減少する費目もあり、販管費を微減にとどめることができた。しかし、減収による販管費率の上昇が売上総利益率の改善幅を上回ったことで減益幅が広がった。なお、期初計画に対して売上高が未達で、営業利益がわずかに過達となったが、売上未達は人員不足のため政策的に新設工事を絞ったこと、営業利益の過達は労働生産性の向上などが要因である。
産業システム関連事業で次期繰越工事高が大幅に増加
3. セグメントの状況
セグメント別の詳細は、空調計装関連事業が受注高29,368百万円(同0.8%減)、売上高28,323百万円(同1.8%減)、調整前セグメント利益6,802百万円(同5.2%増)、産業システム関連事業が受注高4,647百万円(同4.2%減)、売上高3,346百万円(同36.1%減)、調整前セグメント利益112百万円(同82.3%減)である。
空調計装関連事業について、受注工事高は29,071百万円(前期比0.8%減)で、内訳は新設工事が研究施設や事務所向け物件などの減少により9,322百万円(同13.9%減)、既設工事が工場や公共施設向け物件などの増加により19,748百万円(同6.9%増)となった。完成工事高は28,025百万円(同1.8%減)となったが、内訳は新設工事で事務所や工場向け物件などが減少し9,067百万円(同6.9%減)、既設工事で教育施設や医療施設向け物件などが増加し18,958百万円(同0.8%増)だった。次期繰越工事高は、端境期を過ぎたためと思われるが、新設工事・既設工事ともに増加して15,482百万円(同7.2%増)となった。また、制御機器類販売の受注高及び売上高は297百万円(同0.2%減)だった。産業システム関連事業については、受注工事高は、電気工事が増加したものの、工場設備における機器・システム更新や地域冷暖房関連設備の計装工事などが減少したため4,349百万円(同1.3%減)となった。完成工事高については、地域冷暖房関連設備の計装工事や工場設備における機器・システム更新などが減少し、3,048百万円(同36.4%減)となった。但し、期初のスタートダッシュに躓いたものの、期後半に向けて業況が好転していったため、次期繰越工事高は電気工事を中心に2,724百万円(同91.5%増)と大幅に伸びた。また、制御機器類販売の受注高及び売上高は298百万円(同33.3%減)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 業界環境
新型コロナウイルス感染症の世界的まん延をきっかけに、コンテナ不足など物流混乱や都市規模でのロックダウンが発生するなどリスクが広まった。足元では半導体や部材の不足、原燃料高、ウクライナ情勢、日本においては円安といったリスクが広がりを見せている。日本電技<1723>にとって、今のところ目に見えた形で業績に影響を及ぼしていないが、サブコンの動きから今後鋼材価格など原材料価格の上昇が予測されている。なお、業界全体の人手不足は継続している。このような状況であるが、販売価格を引き上げることは難しく、下請けにとって厳しい環境になりつつあるといえる。この対策として同社は、デジタル推進室を新設した。社内も施工現場も全社的にデジタル化を推進し、作業効率や労働生産性を向上させる計画である。また、新設工事では既設につながる高収益の物件をより多く手掛けることでミックスを改善、既設工事では、IoTを駆使したリモートメンテナンスの導入拡大や脱炭素社会に対応した提案メニューを推進する方針である。
首都圏再開発完工までの端境期となった
2. 2022年3月期の業績動向
2022年3月期の業績は、受注高34,016百万円(前期比1.3%減)、売上高31,669百万円(同7.1%減)、営業利益4,074百万円(同11.1%減)、経常利益4,139百万円(同11.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,029百万円(同8.9%減)となった。現在のところ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う業績への影響は軽微といえる。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を2022年3月期期首から適用しており、売上高は1,009百万円増加、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ222百万円増加している。また、同社は工事の完成引き渡しが第4四半期に集中するため、これに伴って稼働率が向上する一方、第2四半期の売上高と利益がさほど大きくならないという季節的変動がある。
国内経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策やワクチン接種など各種政策の効果もあり、持ち直しの動きがみられたが、半導体や部材の不足、原燃料高、ウクライナ情勢などの影響により、期を通じて環境は不透明な状況にあった。建設業界は、補正予算の効果もあって公共投資が高水準で推移した一方、民間設備投資は情報化投資や脱炭素に向けた環境対応投資などを中心に持ち直しの動きが見られた。このような環境下、同社は、空調計装関連事業の新設工事において「全社最適方針の徹底及び既設工事に繋がる物件の受注」、既設工事においては「エネルギー課題に則した提案型ビジネス及びメンテナンスビジネスを両立させる事業展開」、産業システム関連事業においては「グループ企業と一体となった業容拡大及びそれを可能とする事業体制の構築」を対処すべき課題に、積極的に事業展開を進めた。
業績は減収減益となったが、想定通り、首都圏の大規模再開発案件が増加したことに伴う完成計上の端境期となったことが最大の理由である。特に空調計装関連事業における比較的大型の新設工事完工の反動減が減収の主因だが、首都圏の大規模再開発案件の仕掛りがあるため、ボトルネックを起こさないよう政策的に受注を絞った側面もある。産業システム関連事業は、もともと当期受注当期売上計上という案件が多いが、コロナ禍によって取引先工場を訪問できず、スタートダッシュに躓いた恰好である。但し、日本全体のコロナ対応がスムーズになるにつれて受注環境が好転し、今期に売上計上される受注が急増している模様である。利益面では、売上総利益率が改善したが、残業規制に前倒しで取り組んだため、労働生産性が向上して施工効率が改善したことが要因である。一方、システムの本格稼働による減価償却費増や産業ソリューション事業部新設による事務所移転など費用増はあったが、交通費などコロナ禍で減少する費目もあり、販管費を微減にとどめることができた。しかし、減収による販管費率の上昇が売上総利益率の改善幅を上回ったことで減益幅が広がった。なお、期初計画に対して売上高が未達で、営業利益がわずかに過達となったが、売上未達は人員不足のため政策的に新設工事を絞ったこと、営業利益の過達は労働生産性の向上などが要因である。
産業システム関連事業で次期繰越工事高が大幅に増加
3. セグメントの状況
セグメント別の詳細は、空調計装関連事業が受注高29,368百万円(同0.8%減)、売上高28,323百万円(同1.8%減)、調整前セグメント利益6,802百万円(同5.2%増)、産業システム関連事業が受注高4,647百万円(同4.2%減)、売上高3,346百万円(同36.1%減)、調整前セグメント利益112百万円(同82.3%減)である。
空調計装関連事業について、受注工事高は29,071百万円(前期比0.8%減)で、内訳は新設工事が研究施設や事務所向け物件などの減少により9,322百万円(同13.9%減)、既設工事が工場や公共施設向け物件などの増加により19,748百万円(同6.9%増)となった。完成工事高は28,025百万円(同1.8%減)となったが、内訳は新設工事で事務所や工場向け物件などが減少し9,067百万円(同6.9%減)、既設工事で教育施設や医療施設向け物件などが増加し18,958百万円(同0.8%増)だった。次期繰越工事高は、端境期を過ぎたためと思われるが、新設工事・既設工事ともに増加して15,482百万円(同7.2%増)となった。また、制御機器類販売の受注高及び売上高は297百万円(同0.2%減)だった。産業システム関連事業については、受注工事高は、電気工事が増加したものの、工場設備における機器・システム更新や地域冷暖房関連設備の計装工事などが減少したため4,349百万円(同1.3%減)となった。完成工事高については、地域冷暖房関連設備の計装工事や工場設備における機器・システム更新などが減少し、3,048百万円(同36.4%減)となった。但し、期初のスタートダッシュに躓いたものの、期後半に向けて業況が好転していったため、次期繰越工事高は電気工事を中心に2,724百万円(同91.5%増)と大幅に伸びた。また、制御機器類販売の受注高及び売上高は298百万円(同33.3%減)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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