クリアル Research Memo(7):2023年3月期は大幅増収、増益。各利益は通期計画を超過
[23/07/24]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*14:47JST クリアル Research Memo(7):2023年3月期は大幅増収、増益。各利益は通期計画を超過
■業績動向
1. 2023年3月期の業績
クリアル<2998>の2023年3月期の連結業績は、売上高16,436百万円(前期比55.3%増)、売上総利益2,206百万円(同42.0%増)、営業利益547百万円(同74.5%増)、経常利益496百万円(同93.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益336百万円(同95.0%増)と大幅な増収増益となった。「CREAL」の物件売却が計画を上回ったため、売上、各利益とも2022年12月に上方修正した業績予想を上回って着地した。コロナによる行動制限の緩和や全国旅行支援などの政策効果を受けて、低下していたホテルや商業施設の稼働率は回復し、レジデンスや物流施設は安定稼働と底堅い投資需要が継続。マンション市場においても、新築・中古ともにm2単価は上昇傾向が続き、レジデンスを中心としたファンドの償還・売却が順調に完了した「CREAL」が前期比で大幅な増収となり、売上と利益の伸びをけん引した。「CREAL」については、上場により認知度が上がったこと、オンライン投資家に着実にリターンを提供することで、投資家会員数は累計で4万人、累積投資金額は275億円を突破した。なお、業務拡大に伴い、先行投資も含めた人員の拡充を進め、人件費は前期比49.7%増となった。
2. サービス別業績動向
「CREAL」は、売上高10,223百万円(前期比119.3%増)、売上総利益965百万円(同118.7%増)となった。前期及び2023年3月期上期中に積み上げた案件の売却・償還が進み、力強い成長となった。レジデンスでは三菱地所<8802>グループのコリビングスタイルの賃貸マンション「Hmlet」、保育園では学校法人正和学園や(株)MIRATZと、各分野で実績のある企業と連携したほか、稼働率の回復してきた商業施設、底堅い需要のある物流施設を新しくラインナップに加え、前期を8件上回る24件のファンドを組成し、平均規模も前期を上回った。これら多くの魅力的な商品をオンラインで提供することで登録会員数及びGMVの拡大を図った結果、売上高は前期比約2.2倍となった。また適切なTake Rateを確保し、売上総利益も同2倍以上となり、売上高とともに飛躍的な成長となった。
「CREAL PARTNERS」は、売上高4,832百万円(前期比4.1%増)、売上総利益544百万円(同3.0%減)となった。区分レジデンスの販売戸数、付随する賃貸管理物件数を着実に伸ばし増収となった。一方、売上総利益率が下がり減益となったが、前期に利益率の高い一時的な手数料収入があったためであり、これを控除すると、実質的には増益となる。
「CREAL PRO」は、売上高1,380百万円(前期比8.2%増)、売上総利益696百万円(同26.3%増)となった。海外機関投資家を対象に、国内レジデンスを複数組み入れたファンドを新規組成することにより、アップフロント・フィー及びアセットマネジメント・フィーの増加につなげることができ、増収、増益となった。
3. 主要KPIの動向
「CREAL」の売上総利益はGMV×Take Rateから成り、Take Rateは案件組成手数料、ファンド運用手数料、償還手数料からなる確定フィーとファンドの外部売却時のキャピタルゲインのプロフィット・シェアによる変動フィーで構成され、これまでの実績を合算すると8〜10%となっている。GMVは調達時点(ファンド募集時点)の数値として集計・公表される一方で、「CREAL」の売上高及び売上総利益への計上は取引決済時点(物件売却時点)で行われることから、GMVの成約から売上総利益の計上までに多くのファンドで約1年間のタイムラグが生じる。このため、GMVは「CREAL」のサービスの規模を示すとともに、売上総利益の先行指標となる重要なKPIとなり、「CREAL PB」については売上高×利益率で売上総利益が算出される。「CREAL PRO」はフィービジネス主体であり、売上の大部分が売上総利益となっている。主力の「CREAL」のGMVの成長が同社の利益成長に大きく貢献する構造であることから、同社はGMV、会員数、リピート投資率、売上総利益等をKPIとして重要視しており、なかでもGMVと会員数を特に重視している。
KPIとして同社が特に重要視しているGMVは、2023年3月期で123.1億円と前期比72.8%増と大きく成長し、通期計画90億円に対し、進捗率136.8%と好調に推移した。また、GMVを構成する重要な要素である累計獲得投資家数は2023年3月期末で40,860人となり、前期末から12,211人増と大きく伸長した。通期累計獲得計画8,000人に対して進捗率152.6%となり、いずれも想定以上の好調な推移となった。
GMVに関する重要指標の1つである「CREAL」における投資家のリピート投資率※は、2023年3月期末で89.8%と高水準で安定的に推移している。100%とならないのは、新規会員による投資も加わるためで、既存の投資家による投資が全体に占める割合は非常に高水準にあると言えるだろう。
※過去1年間で投資実績がある登録会員の投資金額が当該四半期のGMVに占める割合。
「CREAL」は、ファンド運営終了後も償還された金額と同水準、もしくはそれ以上の金額を新ファンドへ再投資するリピート率の高いユーザー層の獲得に成功している。そして、SaaSに近い安定積み上げ型モデルの収益構造となっていることが窺える。今後さらにGMV及び累積投資家数の成長が相まって、再投資のループが大きく拡大することが予想される。弊社では、「CREAL」が安定性をも内包した、さらに高い成長ポテンシャルを有するサービスになると見ている。
4. 財務状況と経営指標
2023年3月期における総資産は、前期末比10,565百万円増の21,492百万円となった。これは主に、現金及び預金の増加4,739百万円、預託金の増加824百万円、販売用不動産の増加3,528百万円によるものである。
負債合計は、前期末比8,500百万円増の18,380百万円となった。これは主に、事業拡大によるクラウドファンディング預り金の増加2,940百万円及び匿名組合出資預り金の増加3,341百万円、短期借入金の増加422百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加474百万円、長期借入金の増加1,540百万円、償還による1年内償還予定の社債の減少583百万円によるものである。
純資産合計は前期末比2,065百万円増の3,111百万円となった。これは主に、同社株式の東証グロース市場への上場に伴う公募増資及びSBIホールディングスに対する第三者割当増資などによる資本金の増加860百万円及び資本剰余金の増加860百万円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上336百万円によるものである。
同社の財務状況の特徴は、負債の部にクラウドファンディング預り金3,506百万円、匿名組合出資預り金10,870百万円が計上され、それと均衡して資産の部に現金及び預金6,198百万円、クラウドファンディングに関連する販売用不動産10,998百万円が計上されており、総資産21,492百万円のうち、80%以上をクラウドファンディング関連の勘定が占めている点にある。匿名組合出資預り金は、匿名組合「出資」であるため、法的に返済義務を負う性質のものではないが、会計上、貸借対照表には形式的に負債として計上される。このことから、実質的な自己資本比率は見かけに比べて高い状態にあるものと、弊社では考えている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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■業績動向
1. 2023年3月期の業績
クリアル<2998>の2023年3月期の連結業績は、売上高16,436百万円(前期比55.3%増)、売上総利益2,206百万円(同42.0%増)、営業利益547百万円(同74.5%増)、経常利益496百万円(同93.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益336百万円(同95.0%増)と大幅な増収増益となった。「CREAL」の物件売却が計画を上回ったため、売上、各利益とも2022年12月に上方修正した業績予想を上回って着地した。コロナによる行動制限の緩和や全国旅行支援などの政策効果を受けて、低下していたホテルや商業施設の稼働率は回復し、レジデンスや物流施設は安定稼働と底堅い投資需要が継続。マンション市場においても、新築・中古ともにm2単価は上昇傾向が続き、レジデンスを中心としたファンドの償還・売却が順調に完了した「CREAL」が前期比で大幅な増収となり、売上と利益の伸びをけん引した。「CREAL」については、上場により認知度が上がったこと、オンライン投資家に着実にリターンを提供することで、投資家会員数は累計で4万人、累積投資金額は275億円を突破した。なお、業務拡大に伴い、先行投資も含めた人員の拡充を進め、人件費は前期比49.7%増となった。
2. サービス別業績動向
「CREAL」は、売上高10,223百万円(前期比119.3%増)、売上総利益965百万円(同118.7%増)となった。前期及び2023年3月期上期中に積み上げた案件の売却・償還が進み、力強い成長となった。レジデンスでは三菱地所<8802>グループのコリビングスタイルの賃貸マンション「Hmlet」、保育園では学校法人正和学園や(株)MIRATZと、各分野で実績のある企業と連携したほか、稼働率の回復してきた商業施設、底堅い需要のある物流施設を新しくラインナップに加え、前期を8件上回る24件のファンドを組成し、平均規模も前期を上回った。これら多くの魅力的な商品をオンラインで提供することで登録会員数及びGMVの拡大を図った結果、売上高は前期比約2.2倍となった。また適切なTake Rateを確保し、売上総利益も同2倍以上となり、売上高とともに飛躍的な成長となった。
「CREAL PARTNERS」は、売上高4,832百万円(前期比4.1%増)、売上総利益544百万円(同3.0%減)となった。区分レジデンスの販売戸数、付随する賃貸管理物件数を着実に伸ばし増収となった。一方、売上総利益率が下がり減益となったが、前期に利益率の高い一時的な手数料収入があったためであり、これを控除すると、実質的には増益となる。
「CREAL PRO」は、売上高1,380百万円(前期比8.2%増)、売上総利益696百万円(同26.3%増)となった。海外機関投資家を対象に、国内レジデンスを複数組み入れたファンドを新規組成することにより、アップフロント・フィー及びアセットマネジメント・フィーの増加につなげることができ、増収、増益となった。
3. 主要KPIの動向
「CREAL」の売上総利益はGMV×Take Rateから成り、Take Rateは案件組成手数料、ファンド運用手数料、償還手数料からなる確定フィーとファンドの外部売却時のキャピタルゲインのプロフィット・シェアによる変動フィーで構成され、これまでの実績を合算すると8〜10%となっている。GMVは調達時点(ファンド募集時点)の数値として集計・公表される一方で、「CREAL」の売上高及び売上総利益への計上は取引決済時点(物件売却時点)で行われることから、GMVの成約から売上総利益の計上までに多くのファンドで約1年間のタイムラグが生じる。このため、GMVは「CREAL」のサービスの規模を示すとともに、売上総利益の先行指標となる重要なKPIとなり、「CREAL PB」については売上高×利益率で売上総利益が算出される。「CREAL PRO」はフィービジネス主体であり、売上の大部分が売上総利益となっている。主力の「CREAL」のGMVの成長が同社の利益成長に大きく貢献する構造であることから、同社はGMV、会員数、リピート投資率、売上総利益等をKPIとして重要視しており、なかでもGMVと会員数を特に重視している。
KPIとして同社が特に重要視しているGMVは、2023年3月期で123.1億円と前期比72.8%増と大きく成長し、通期計画90億円に対し、進捗率136.8%と好調に推移した。また、GMVを構成する重要な要素である累計獲得投資家数は2023年3月期末で40,860人となり、前期末から12,211人増と大きく伸長した。通期累計獲得計画8,000人に対して進捗率152.6%となり、いずれも想定以上の好調な推移となった。
GMVに関する重要指標の1つである「CREAL」における投資家のリピート投資率※は、2023年3月期末で89.8%と高水準で安定的に推移している。100%とならないのは、新規会員による投資も加わるためで、既存の投資家による投資が全体に占める割合は非常に高水準にあると言えるだろう。
※過去1年間で投資実績がある登録会員の投資金額が当該四半期のGMVに占める割合。
「CREAL」は、ファンド運営終了後も償還された金額と同水準、もしくはそれ以上の金額を新ファンドへ再投資するリピート率の高いユーザー層の獲得に成功している。そして、SaaSに近い安定積み上げ型モデルの収益構造となっていることが窺える。今後さらにGMV及び累積投資家数の成長が相まって、再投資のループが大きく拡大することが予想される。弊社では、「CREAL」が安定性をも内包した、さらに高い成長ポテンシャルを有するサービスになると見ている。
4. 財務状況と経営指標
2023年3月期における総資産は、前期末比10,565百万円増の21,492百万円となった。これは主に、現金及び預金の増加4,739百万円、預託金の増加824百万円、販売用不動産の増加3,528百万円によるものである。
負債合計は、前期末比8,500百万円増の18,380百万円となった。これは主に、事業拡大によるクラウドファンディング預り金の増加2,940百万円及び匿名組合出資預り金の増加3,341百万円、短期借入金の増加422百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加474百万円、長期借入金の増加1,540百万円、償還による1年内償還予定の社債の減少583百万円によるものである。
純資産合計は前期末比2,065百万円増の3,111百万円となった。これは主に、同社株式の東証グロース市場への上場に伴う公募増資及びSBIホールディングスに対する第三者割当増資などによる資本金の増加860百万円及び資本剰余金の増加860百万円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上336百万円によるものである。
同社の財務状況の特徴は、負債の部にクラウドファンディング預り金3,506百万円、匿名組合出資預り金10,870百万円が計上され、それと均衡して資産の部に現金及び預金6,198百万円、クラウドファンディングに関連する販売用不動産10,998百万円が計上されており、総資産21,492百万円のうち、80%以上をクラウドファンディング関連の勘定が占めている点にある。匿名組合出資預り金は、匿名組合「出資」であるため、法的に返済義務を負う性質のものではないが、会計上、貸借対照表には形式的に負債として計上される。このことから、実質的な自己資本比率は見かけに比べて高い状態にあるものと、弊社では考えている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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