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FJネクHD Research Memo(6):2023年3月期は資産運用型マンションの販売が好調に推移

注目トピックス 日本株
*14:26JST FJネクHD Research Memo(6):2023年3月期は資産運用型マンションの販売が好調に推移
■業績推移

1. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、首都圏における資産運用型マンションに対する賃貸需要、購入需要の拡大に支えられて業績は総じて順調に推移してきたと言える。2009年3月期にリーマン・ショックに伴う景気後退の影響で業績のボトムを迎えたものの、FJネクストホールディングス<8935>は仕入高を追わずに採算性に合った仕入れを継続するという方針の下、堅実な物件開発を進めたことで、大きな痛手を被った不動産業界においては比較的軽微な落ち込みで乗り切り、その後は景気回復とともに順調に業績を拡大してきた。2016年3月期以降は大幅な増収増益を続けており、売上高は2020年3月期まで5年連続で過去最高を更新した。2021年3月期はコロナ禍の影響により一旦後退したものの、翌2022年3月期には大きく回復しており、社歴を重ねながらも、同社がまだまだ成長過程にあることを示している。

財務面では、業績の拡大に伴って有利子負債残高も増えてきたが、内部留保の積み増しなどにより自己資本比率も高い水準を維持しており、財務基盤の安定性に懸念はない。

なお、同社がリーマン・ショックに伴う厳しい業界環境を比較的スムーズに乗り切れたのは、厳選された好立地を含め、収益還元法による採算性を重視した「ガーラ」ブランドの資産価値の高さ、並びに同社の財務基盤の安定性によるものと言える。

2. 2023年3月期の業績概要
2023年3月期の業績は、売上高が前期比3.0%増の84,688百万円、営業利益が同9.3%減の8,250百万円、経常利益が同9.5%減の8,219百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同11.3%減の5,621百万円と増収減益となったものの、計画を上回る利益水準を確保した。

売上高は、「不動産開発事業」「不動産管理事業」「旅館事業」がそれぞれ伸長した。特に、主力の「不動産開発事業」におけるマンション販売戸数は2,561戸(前期比105戸増)となり、中古マンション販売を含めて過去最高水準を更新した。数年にわたるコロナ禍が収束に向かうなかで、資産運用型マンションに対する需要に変化はなく、平均販売価格についても新築・中古ともに前期を上回ることができた。「不動産管理事業」も賃貸管理戸数の積み上げにより順調に拡大したほか、「旅館事業」についても国による観光需要喚起策が追い風となり、客室稼働率及び客室単価ともに前期を上回り4期ぶりに黒字となった。「建設事業」は唯一減収となった。地中障害などによる工期遅れが理由であり、受注そのものは順調に獲得できているようだ。

利益面では、全体で減益となったのは、中古マンション販売の構成比が高まったことで粗利率が低下したことが主因であり、その点は想定内である。むしろ販売が総じて好調であったことや、費用の抑制に努めたことで計画比では上振れる着地となった。

今後の業績の伸びに影響するたな卸資産(パイプライン)の状況については、販売用不動産(完成マンション)の残高※はほぼ前期末と同水準となった一方、仕掛販売用不動産(開発用地及び開発中のマンション)の残高は厳しい仕入れ環境にあるなかでも採算性を重視した仕入れの継続により前期末比で大きく増加しており、しばらくは高い業績水準を維持できるとの見方ができるだろう。

※2023年3月期に竣工した新築マンションはすべて早期完売した一方、中古マンションの積極的な仕入れを継続し、前期末並みの在庫水準を確保している。なお、保有物件からは安定的な賃貸収入(不動産開発事業に含まれる)が見込めるため、固定資産とともに販売用不動産についても、単なる在庫ではなく、ストックビジネスとしての役割も担っている。


財政状態については、前述のとおり、たな卸資産が大きく増加したことから、総資産は前期末比7.6%増の88,938百万円となった。一方、自己資本も内部留保の積み増しにより同7.0%増の63,022百万円となったことから、自己資本比率は70.9%(前期末は71.3%)とほぼ横ばいで推移した。有利子負債は同6.6%増の13,473百万円と、大幅な削減を図った前期末から若干増加したものの、有利子負債依存度※は15.1%(前期末は15.3%)と低水準を維持している。支払能力を示す流動比率も579.8%と高い水準にあることから、財務の安全性に懸念はない。一方、資本効率を示すROEについては、減益や内部留保の増加に伴って9.2%(前期末は11.2%)に低下した。

※有利子負債残高÷(負債合計+純資産)で算出。


3. 2024年3月期の業績予想
2024年3月期の業績予想について同社は、売上高を前期比9.8%増の93,000百万円、営業利益を同9.1%減の7,500百万円、経常利益を同8.8%減の7,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同11.0%減の5,000百万円と、引き続き増収減益を見込んでいる。

売上高は、各事業が総じて堅調に推移する見通しである。主力の「不動産開発事業」における販売戸数は前期と同程度の2,500戸を見込み、ファミリー層向けマンションの販売戸数増が増収に寄与する想定である。また、前期減収となった「建設事業」は好調な受注環境を背景として、完成工事件数の増加を見込んでいる。

一方、2期連続で減益となるのは、各セグメントにおいて原材料価格の上昇を見込んでいること、「不動産開発事業」における中古マンション販売比率の高まりにより、営業利益率は8.1%(前期は9.7%)に低下する見通しである。

弊社でも、原材料価格の上昇など先行き不透明感には注意が必要であるものの、首都圏における賃貸需要について底堅く推移していること、中古マンションを含めて購入需要が根強い外部要因、パイプラインが十分に確保できていること、ファミリー層向けマンションの販売戸数増が見込めること、順調な受注残高に裏打ちされた「建設事業」の伸びも期待できること、利益面でも、前期同様にネガティブ要因を保守的に織り込んだ水準となっていることなどから、同社の業績予想は十分に達成可能であると見ている。引き続き、2024年3月期以降の業績の伸びにつながるパイプラインの状況にも注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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