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アンジェス Research Memo(4):早老症治療剤「ゾキンヴィ」は2024年12月期第2四半期に売上を計上

注目トピックス 日本株
*16:14JST アンジェス Research Memo(4):早老症治療剤「ゾキンヴィ」は2024年12月期第2四半期に売上を計上
■主要開発パイプラインの動向

2. ゾキンヴィ
アンジェス<4563>は、HGPS及びPDPL治療剤「ゾキンヴィ」について、2024年1月に厚生労働省より製造販売承認を取得し、2024年5月27日より販売を開始した。乳児早老症とも言われるHGPSはLMNA遺伝子の突然変異により、ファルネシル化※された変異タンパク質であるプロジェリンが生成されることによって発症し、症状としては深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋萎縮症、脱毛症、骨格形成不全、動脈硬化の促進などがある。平均寿命は14.5歳と報告されている致死性の高い疾患である。また、PDPLはLMNAやZMPSTE24遺伝子の変異によりプロジェリンに類似したファルネシル化タンパク質を生成し老化を促進する。「ゾキンヴィ」は、核膜と強固な結合を形成するファルネシル化した変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害する作用を持ち、HGPS患者の死亡率を72%減少させ、平均生存期間を4年程度延長させるというデータもある。安全性については、多くの患者が10年以上にわたって「ゾキンヴィ」治療を継続しており、副作用も嘔吐や下痢、悪心等その大半が軽度または中等度のものである。なお、HGPS及びPDPLの世界における患者数は600人程度で、日本でも難病指定され、患者数は数名程度と報告されている。

※ タンパク質に行われる修飾の一種。ファルネシル化酵素により、タンパク質の末端には疎水性のプレニル基が結合する。末端が疎水性になったタンパク質は、その疎水性の部分を細胞膜内に挿入するため、タンパク質は細胞膜(細胞の内側)につなぎ留められる。つまり、ファルネシル化されたタンパク質は、細胞の内側の細胞膜上に存在するようになる。

「ゾキンヴィ」の患者1人当たりの年間売上高は薬価ベースで1億円強(卸販売会社経由での販売となるため、同社の売上高はやや割り引かれる)が見込まれる。現在、6人の患者がリストアップされ、順次服薬を開始しているようで、2024年12月期第2四半期の売上高は151百万円、仕入原価として100百万円を計上した。なお、仕入れについては円建てで行っているため、為替変動の影響は受けない。また、「ゾキンヴィ」の導入先であったアイガーが2024年4月に経営破綻したことに伴い、「ゾキンヴィ」の権利が米国のバイオ医薬品会社であるSentynl Therapeutics,Inc.に譲渡されたが、同社がアイガーと締結した契約についてもSentynlが継承することになり、今後も日本で同社が同じ条件で販売することに変わりない。


NF-κBデコイオリゴDNAは慢性椎間板性腰痛症を対象とした第2相臨床試験の結果が2026年前半にも判明する見通し

3. NF-κBデコイオリゴDNA
NF-κBデコイオリゴDNA(開発コード:AMG0103)は、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う転写因子となるタンパク質(NF-κB)に対する特異的な阻害剤である。NF-κBがゲノムの特定の配列領域(炎症を引き起こすゲノム)に結合し、スイッチが入ることで痛みなどの炎症の原因となるタンパク質が生成されるが、NF-κBデコイオリゴDNAを体内に入れることで、炎症を引き起こすゲノムとNF-κBが結合しにくくなり、炎症の原因となるタンパク質の生成を抑制する。

2023年3月に塩野義製薬と国内第2相臨床試験への協力に関する契約を締結(開発費の一部を負担)し、同年10月から第2相臨床試験を開始した。予定症例数を92例※とし、最初の2例で最大投与量となる20mgの安全性試験を実施、安全性及び忍容性が確認されたことを受け、10mg群、20mg群、プラセボ群の3群(各30例、単回投与)に分類した比較試験を実施する。観察期間は12ヶ月間で、有効性については「痛み」の指標となるNRSスコアの変化で評価する。20ヶ所の医療機関で実施し、2025年内にも被験者登録が完了する見込みとなっている。順調に進めば2026年前半に臨床試験の結果が発表される見通しだ。結果が良好だった場合にはライセンスアウトする意向だが、塩野義製薬との協議次第となる。

※ 対象者は18〜75歳で3ヶ月以上持続する腰痛を有し、腰痛のNRSスコア(自己申告による痛みの指標)が臀部痛や下肢痛のNRSスコアよりも大きく、腰痛に対する保存的治療で効果が不十分な患者とする。スクリーニング時点の腰痛のNRSスコアは4〜9の患者(中等度から強い痛み)で、かつ、投与実施日当日及び前日のNRSスコアが4〜9の患者。

国内の臨床試験に先駆けて米国で実施した後期第1相臨床試験(プラセボ対照無作為化二重盲検試験、25症例、観察期間12ヶ月)の結果は、安全性及び忍容性に問題がなかったほか、有効性においても投与量3群(0.3mg、3.0mg、10.0mg)のうち最大投与量群において投与後早期に腰痛が大幅軽減し、腰痛の軽減も12ヶ月後まで継続したことが確認された。治験担当医師からも「AMG0103は素晴らしい安全性プロファイルを有し、12ヶ月にわたり腰痛を有意に軽減しており、慢性椎間板性腰痛症に苦しむ患者に対して画期的治療薬となる可能性があると考えています。さらに、腰痛の軽減に加えて、椎間板の高さを回復させる可能性が示唆されたことは注目に値します」とのコメントが得られた。慢性椎間板性腰痛症に関しては、一般療法としてステロイド注射が行われるケースが多いが、同治療薬との比較においても同等以上の効果が得られたようだ。ステロイド注射が一時的な対処療法であるのに対してAMG0103は炎症を抑制する効果があるほか、椎間板の高さも回復することで腰痛の症状が長期にわたって改善したものと考えられる。

慢性椎間板性腰痛症で苦しむ患者に対しては、現在内服・外用薬治療など対処療法が主に行われている。AMG0103は単回投与で長期間の効果持続が見込まれるため、患者のQOL向上にも貢献する。開発に成功すれば、慢性椎間板性腰痛症に使用される世界初の核酸医薬品となる可能性があり、2026年前半にも発表される臨床試験の結果が注目される。


新型コロナウイルス感染症及びARDS治療薬「AV-001」は前期第2相臨床試験の2024年内の終了及び2025年のライセンスアウトを目指す

4. 新型コロナウイルス感染症及びARDS治療薬(Tie2受容体アゴニスト)
カナダのVasomuneとの共同開発品である「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト)※は、2018年より全世界を対象に急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患の治療薬として共同開発を進めてきたが、中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬としても効果があるとみて、2022年1月より米国で前期第2相臨床試験を実施している。ただ、新型コロナウイルス感染症の変異株では重篤な肺炎を発症する感染者が急減したことから、現在は対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含むARDSに拡大し(FDA承認済み)、目標症例数も当初予定の約120例から約60例に縮小したうえで臨床試験を進めている。60名を投与量で3群に分け、「AV-001」と標準治療薬またはプラセボと標準治療薬のいずれか投与し、安全性及び忍容性と有効性を評価する。

※ 同社は2018年7月にVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした「AV-001」の全世界を対象とした共同開発契約を締結した。開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払う契約となっている。ARDSの患者数は米国だけで26万人いる。

2024年8月時点でコホート2の被験者登録が完了しており、問題が無ければコホート3に進む予定である。目標としては2024年内に臨床試験を完了し、良好な結果が得られればライセンスアウトする意向だ。臨床試験完了時期が2025年前半にずれ込む場合もあるが、ライセンスアウトする候補先企業へのプレゼンテーションも開始しており、臨床試験の結果が良好であれば2025年内にも導出が決まる可能性がある。なお、「AV-001」の開発にあたっては米国及びカナダの政府関係機関からVasomuneが助成金を獲得しており、開発費負担分に応じて同社もVasomuneから助成金の一部を受領している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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