DMM Bitcoin 田口社長インタビュー Vol.4:「仮想通貨の価値提供こそ交換業者の役割」
[18/12/26]
提供元:株式会社フィスコ
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ビットコインニュース
(この記事は、「DMM Bitcoin 田口社長インタビュー Vol.3:レバレッジ規制強化でも稼げるビジネスモデルに」からの続きです)
板取引は検討したが…
現在、DMM Bitcoinが提供するサービスは、仮想通貨の販売所とレバレッジ取引の2つだ。同社は板取引についても検討していたが、提供しないことを決定した。
「システムもほとんど完成し、本当に提供する寸前までいっていた。最後どうしようかという時に、お客様の利便性が損なわれるのではないか、ビットコイン以外で板をしても意味がないのではないかということを考慮した結果、提供しないことにした」
「板取引を提供することで、取引を成立させるため、ある程度、マーケットメイクをする必要も出てくるだろう。無理に板を作ろうとすると、売り買いがグローバルなものとズレてしまうこともあり得る。そういう恣意性が働くくらいなら、無理をして板を提供しなくてもいいのではいかと思った」
板取引を提供するよりも、スプレッドを縮めることやアプリの利便性を高めるといった方向性にリソースを注力する方がメリットがあるとの考えだ。
「板取引ができたからといって、お客様の利便性が高まるとは思わない。お客様の方としては、スプレッドを縮める方がメリットがあると思う。コスト競争力をつけて、スプレッドを縮める方向にもっていきたい。またスマホの取引ツールを使いやすくするという方が意義があるだろう」
取引ペアの拡大についても、今後検討する考えだが、顧客にとって意義のある方向で検討するとしている。
「取引ペアを拡大するというのも、やりたいけと思っている。その場合も、単に人気があるからというよりも、その仮想通貨に意義があり、今後拡大していくという確信が持てるものを扱っていきたい。決済などへの利用用途のあるものを、提供していきたい。その意味でステーブルトークンをやっていきたいし、いくべきだと思っている。海外で人気のあるコインをやったとしても、一時的にお客様を獲得できるかもしれないけど、長続きしないと考えている」
来年以降の仮想通貨相場は?
田口氏は、仮想通貨マーケットに新たなマネーが入ってくることが、相場上昇には不可欠になるだろうと話す。その際に1つのきっかけになり得るのは、米国で議論されているビットコイン上場投資信託(ETF)だろうとみる。
「仮想通貨というものは、何か裏付けるのある資産があるというわけではない。そうなれば、相場から出ていくマネーと入っていくマネーとがある中で、入ってくるマネーが多ければ価格が上がる。逆に出ていく方が多ければ下がっていくことになるだろう。現状は仮想通貨から出ていくマネーが多い状況なのだと思う」
「仮想通貨を取引を止めてしまった人もいるだろうし、それ以上にマイニング事業から撤退したり、ICOで調達した資金を現金化していく流れが増えているのだろう」
「仮想通貨マーケットから資金が流出していく一方で、新しいマネーが細っていくとなると、相場は下がらざるを得ない」
米国で議論されているETFが注目されているのは、仮想通貨相場に新しいマネーを呼び込むことになると期待されているからだと指摘する。
「ETFが注目されているのは、証券市場のマネーがニューマネーとして入ってくることが期待されているからだろう。そういうパイプができることで仮想通貨が浮上する可能性があるとみられている。ただ(米SECが)これまでの申請を拒否している状況だ」
「ETFができれば、マネーが流入する可能性はあるだろう。ただETFは話題はあるが、大型株と同じような資金の流れが生まれるかどうかはわからない。それでも機関投資家のマネーが一部でも入れば、価格へのインパクトがあるのは間違いない」
今後重要になるのは「仮想通貨が提供する価値」
田口氏は「仮想通貨の本質的な価値は、ユーザーの目から見ても、法律面から見ても再定義されるというのが、非常に速いスピード感で進むことになるのではないか」とみる。中長期的に仮想通貨が意義を持つには、ユーティリティと結びついた形となることが重要だと指摘する。
「仮想通貨の1つの欠点は社会的基盤となり得ていないことだ。なかなか仮想通貨自体の本質的な使われ方自体が議論されなかったり、適用事例がなかったりするのではないか。そうしている間に、IBMのハイパーレジャーといった独自のブロックチェーンを開発する動きも出てきている。また各ネットガリバーが分散台帳技術に相当な投資を進めている」
「仮想通貨自体に何か特徴のある役割や機能が備わるようなことが求められるだろう。社会的に大きな意義を持つなり、既にあるビジネス分野と競合しない価値を提供することができるのか。そこを見極めることが重要になっていくだろう」
田口氏は、「そういう仮想通貨があるのかどうかは、まだわからない」としつつ、画期的なユーティリティを提供することが価値の源泉になるとも指摘する。
「米ドルが世界で広く使われているのは、石油産業の中で決済手段となっていることも理由の1つ。例えば、ある仮想通貨が(核融合炉のような)新しいエネルギーと紐づくことで価値を提供できるようになれば、米ドルのようになり得るかもしれない」
この話はあくまで将来的な話だが、田口氏は仮想通貨交換業者の役割は、取引所のサービスを提供するだけでなく、ユーザーに仮想通貨の価値やユーティリティを提供していくことだと指摘する。
「交換業者の役割を仮想通貨と法定通貨の『ゲートキーパー』とだけ定義すれば、早晩立ち行かなくだろう。仮想通貨自体の価値が下がっていけば、ゲートキーパーの役割も縮小してしまう。むしろ仮想通貨の利便性を提案していかなければならない。交換業者自身が変わっていく必要がある」
(記事提供:コインテレグラフ日本版)
コインテレグラフ日本版は世界中で読まれている仮想通貨ニュースメディア大手「Cointelegraph」の日本語版です。新聞社やTV局出身者で構成される編集部が海外チームと連携しながら、仮想通貨相場を動かすニュースを発信し続けています。
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板取引は検討したが…
現在、DMM Bitcoinが提供するサービスは、仮想通貨の販売所とレバレッジ取引の2つだ。同社は板取引についても検討していたが、提供しないことを決定した。
「システムもほとんど完成し、本当に提供する寸前までいっていた。最後どうしようかという時に、お客様の利便性が損なわれるのではないか、ビットコイン以外で板をしても意味がないのではないかということを考慮した結果、提供しないことにした」
「板取引を提供することで、取引を成立させるため、ある程度、マーケットメイクをする必要も出てくるだろう。無理に板を作ろうとすると、売り買いがグローバルなものとズレてしまうこともあり得る。そういう恣意性が働くくらいなら、無理をして板を提供しなくてもいいのではいかと思った」
板取引を提供するよりも、スプレッドを縮めることやアプリの利便性を高めるといった方向性にリソースを注力する方がメリットがあるとの考えだ。
「板取引ができたからといって、お客様の利便性が高まるとは思わない。お客様の方としては、スプレッドを縮める方がメリットがあると思う。コスト競争力をつけて、スプレッドを縮める方向にもっていきたい。またスマホの取引ツールを使いやすくするという方が意義があるだろう」
取引ペアの拡大についても、今後検討する考えだが、顧客にとって意義のある方向で検討するとしている。
「取引ペアを拡大するというのも、やりたいけと思っている。その場合も、単に人気があるからというよりも、その仮想通貨に意義があり、今後拡大していくという確信が持てるものを扱っていきたい。決済などへの利用用途のあるものを、提供していきたい。その意味でステーブルトークンをやっていきたいし、いくべきだと思っている。海外で人気のあるコインをやったとしても、一時的にお客様を獲得できるかもしれないけど、長続きしないと考えている」
来年以降の仮想通貨相場は?
田口氏は、仮想通貨マーケットに新たなマネーが入ってくることが、相場上昇には不可欠になるだろうと話す。その際に1つのきっかけになり得るのは、米国で議論されているビットコイン上場投資信託(ETF)だろうとみる。
「仮想通貨というものは、何か裏付けるのある資産があるというわけではない。そうなれば、相場から出ていくマネーと入っていくマネーとがある中で、入ってくるマネーが多ければ価格が上がる。逆に出ていく方が多ければ下がっていくことになるだろう。現状は仮想通貨から出ていくマネーが多い状況なのだと思う」
「仮想通貨を取引を止めてしまった人もいるだろうし、それ以上にマイニング事業から撤退したり、ICOで調達した資金を現金化していく流れが増えているのだろう」
「仮想通貨マーケットから資金が流出していく一方で、新しいマネーが細っていくとなると、相場は下がらざるを得ない」
米国で議論されているETFが注目されているのは、仮想通貨相場に新しいマネーを呼び込むことになると期待されているからだと指摘する。
「ETFが注目されているのは、証券市場のマネーがニューマネーとして入ってくることが期待されているからだろう。そういうパイプができることで仮想通貨が浮上する可能性があるとみられている。ただ(米SECが)これまでの申請を拒否している状況だ」
「ETFができれば、マネーが流入する可能性はあるだろう。ただETFは話題はあるが、大型株と同じような資金の流れが生まれるかどうかはわからない。それでも機関投資家のマネーが一部でも入れば、価格へのインパクトがあるのは間違いない」
今後重要になるのは「仮想通貨が提供する価値」
田口氏は「仮想通貨の本質的な価値は、ユーザーの目から見ても、法律面から見ても再定義されるというのが、非常に速いスピード感で進むことになるのではないか」とみる。中長期的に仮想通貨が意義を持つには、ユーティリティと結びついた形となることが重要だと指摘する。
「仮想通貨の1つの欠点は社会的基盤となり得ていないことだ。なかなか仮想通貨自体の本質的な使われ方自体が議論されなかったり、適用事例がなかったりするのではないか。そうしている間に、IBMのハイパーレジャーといった独自のブロックチェーンを開発する動きも出てきている。また各ネットガリバーが分散台帳技術に相当な投資を進めている」
「仮想通貨自体に何か特徴のある役割や機能が備わるようなことが求められるだろう。社会的に大きな意義を持つなり、既にあるビジネス分野と競合しない価値を提供することができるのか。そこを見極めることが重要になっていくだろう」
田口氏は、「そういう仮想通貨があるのかどうかは、まだわからない」としつつ、画期的なユーティリティを提供することが価値の源泉になるとも指摘する。
「米ドルが世界で広く使われているのは、石油産業の中で決済手段となっていることも理由の1つ。例えば、ある仮想通貨が(核融合炉のような)新しいエネルギーと紐づくことで価値を提供できるようになれば、米ドルのようになり得るかもしれない」
この話はあくまで将来的な話だが、田口氏は仮想通貨交換業者の役割は、取引所のサービスを提供するだけでなく、ユーザーに仮想通貨の価値やユーティリティを提供していくことだと指摘する。
「交換業者の役割を仮想通貨と法定通貨の『ゲートキーパー』とだけ定義すれば、早晩立ち行かなくだろう。仮想通貨自体の価値が下がっていけば、ゲートキーパーの役割も縮小してしまう。むしろ仮想通貨の利便性を提案していかなければならない。交換業者自身が変わっていく必要がある」
(記事提供:コインテレグラフ日本版)
コインテレグラフ日本版は世界中で読まれている仮想通貨ニュースメディア大手「Cointelegraph」の日本語版です。新聞社やTV局出身者で構成される編集部が海外チームと連携しながら、仮想通貨相場を動かすニュースを発信し続けています。
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