『食育健康サミット2013』に、750名の医師・栄養士等が参加
[13/12/11]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
2013年12月11日
公益社団法人 日本医師会
公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
肥満、生活習慣病の専門家4名が登壇
日本糖尿病学会のガイドラインを基に、
日本人に適した「ごはんを主食とした食生活」を提案
『食育健康サミット2013』に、750名の医師・栄養士等が参加
テーマ:肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−
◇日 時:12月5日(木)13:30〜17:00
◇会 場:日本医師会館 大講堂 (東京都文京区本駒込2-28-16)
公益社団法人 日本医師会と公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構は、2013年12月5日(木)に、日本医師会館大講堂(東京・駒込)において、ごはんを主食とした日本型食生活の生活習慣病予防・治療における有用性等について考える「食育健康サミット」を開催いたしました。
本サミットは、医師、栄養士等の方々を対象に毎年開催されるもので、本年度は「肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−」をテーマに開催いたしました。帝京大学臨床研究センターセンター長・寺本 民生先生他3名の専門家による最新の研究を基にした講演とパネルディスカッションを実施。会場に集まった参加者は、肥満や生活習慣病の治療にあたる医師や栄養士等750名で、熱心に講演に耳を傾ける姿が多く見られました。
テーマ「肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−」について
国民健康・栄養調査によると、男性の3割、女性の2割は肥満という結果がでています。肥満は各種生活習慣病の発症要因の1つであり、脂質異常症や糖尿病、高血圧症などの生活習慣病は、さらに生活機能の低下をもたらす重症化のリスクを抱えています。
肥満やこれら生活習慣病の増加には、運動不足とともに、日本人の食生活の変化、とりわけ食生活の欧米化が強く関わっていると考えられます。
そこで、今回は、日本糖尿病学会が本年3月に発表した「日本人の糖尿病の食事療法」をもとに、炭水化物(糖質)と脂質の摂取バランスの観点から日本人にふさわしい、肥満・脂質異常症・糖尿病予防のための食事処方と肥満是正のための運動処方を取り上げ、ごはんを主食とした日本型食生活の意義について考えました。
【基調講演】
4名の専門家に、肥満、生活習慣病の予防・改善について、各分野における最新の研究結果をもとに、栄養指導・運動指導に有用な情報をご紹介いただきました。
講演I
テーマ:脂質異常症の治療・予防のための生活習慣の改善
−動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012に基づいて−
講 師:帝京大学臨床研究センター センター長 寺本 民生先生
内 容:脳血管疾患は、介護の状態を招く原因の第一位。そのため動脈硬化の予防・改善は重要である。治療の柱はLDLコレステロール値の低減と肥満の改善で、不飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量抑制がポイントとなる。
日本動脈硬化学会では、食事処方に日本の伝統食(The Japan Diet)を推奨している。エネルギーやコレステロールを低減できるだけでなく、伝統的な和食食材の魚や大豆製品には心筋梗塞発症率を下げる効果もあり、和食の素晴らしさを再確認していただきたい。
今後、生活習慣病の改善には、社会システムによるサポートも重要になるだろう。どんな食事を食べたらどのような効果があるのか、エビデンスのある情報提供を行い、効果的な治療・予防を進めていただきたい。
講演II
テーマ:糖尿病の予防・治療のための食事の在り方とその課題
−2型糖尿病における日本人の食事療法の意義を踏まえて−
講 師:東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授 宇都宮 一典先生
内 容:糖尿病は合併症を引き起こす疾病、すなわち慢性的な多臓器不全に至るもので、これを阻止することが治療の最大の目標である。食事療法の課題は、日本人の食嗜好が多様化し、病態も欧米化していることであり、個別化した対応が今後ますます必要とされる。
食事処方では、適正なエネルギーと栄養素の充足が原則で、それを継続して実行するにはごはんを主食とした伝統食が最も適する。極端な炭水化物制限食は、有効性ならびに安全性ともに多くの懸念があり、日本糖尿病学会の声明では注意を喚起している。今後、患者の嗜好や病態の変化にも柔軟に対応しつつ、食事療法の在り方について考えていきたい。
講演III
テーマ:肥満 特に内臓脂肪蓄積型肥満是正のための食事管理
講 師:公益財団法人結核予防会新山手病院生活習慣病センター センター長 宮崎 滋先生
内 容:肥満症は健康に深刻な影響を与え、BMI値25以上になると死亡率が上昇し、糖尿病、高血圧症を招く。最近の研究ではがんを罹患しやすいこともわかってきた。治療のターゲットは内臓脂肪で、食事と運動による減量を指示する。3%程度の減量でも、さまざまな健康の指標となる数値が改善されるので、ぜひ食事内容の改善や、朝食を食べる、早食いをしないなど食べ方を再考してほしい。
指導で推奨するのは、伝統的な和食。「ごはん+一汁三菜」の組み合わせは、低エネルギ
ーで栄養のバランスがよい。また、魚や野菜、植物性たんぱく質と組み合わせ、バリエーションに富んだ食事がとれる。肥満予防・改善のために、ごはんを主食とした日本の食文化を再評価していただきたい。
講演IV
テーマ:肥満 特に内臓脂肪蓄積型肥満是正のための運動の理論と実際
講 師:慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲先生
内 容: 肥満症の改善には、食事と同様に運動も効果を上げる。「毎日60分×中強度」で運動すると、減量した体重を維持でき、生活習慣病のリスクを低減できる。実際の指導は、最初はウォーキングを推奨する。息がはずみ汗ばむようなペースで歩くよう指示する。ただ、歩行だけでは継続が難しく、楽しみや目標につながる動機づけも重要である。
1960年以降に生まれた世代は食の欧米化が進み、肥満のプロフィールも上の世代と異なっている。ごはんを主食とする日本型食生活は、必要栄養素を充足し、なおかつエネルギー必要量まで余裕を持たせることができ、その余裕分を好きな食事に充てる「自由裁量カロリー」を得ることができる。運動と日本型食生活の組み合わせは、肥満や栄養素不足の予防に有用である。
【パネルディスカッション】
「肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−」をテーマにしたパネルディスカッションは、参加者から寄せられた質問に4名の先生がそれぞれの分野の知見に基づき回答をするスタイルで討議を進行しました。
中でも、昨今、話題になっている低炭水化物の食事処方についての質問が多かったことから、時間を割いて、以下のような説明や意見交換が行われました。
<低炭水化物の食事処方>
■宇都宮先生は、糖尿病治療の立場から、食事療法は、まず、総エネルギーの適正化であることが大切で、これに配慮せず、炭水化物のみを極端に制限することは推奨できないと発言されました。さらに、その結果生じる高たんぱく・高脂質食がもたらす身体への悪影響、継続が難しい点も指摘されました。ただし、適正なエネルギーを図るために、柔軟に対応してよいとの説明がありました。
■続いて、宮崎先生からは、肥満症治療の立場から、食事における「おかず」の比率が増えていることがエネルギーの過剰摂取につながっていると指摘。摂取エネルギーの調整には、主食である「ごはん」の量を抑えるのではなく、おかずの量と質の再考によるバランス調整が必要との提案がなされました。
■勝川先生は、減量体重の長期維持者の食事が低脂肪食であるというエビデンスを示した上で、日本でのデータが乏しいことを指摘され、今後の研究が課題であると説明されました。
<食事指導のポイント>
■宇都宮先生からは、食事処方をする際は、エネルギーや栄養素量だけでなく、患者や家族の食の嗜好を理解し、食を楽しめるように個別の対応をすることが大切であるとの提案がありました。
■宮崎先生からは、継続性を重視した処方を行うこと、また、ソーシャルサポート(医療者からの情報提供など)の必要性が強調されました。
■勝川先生は、減量の見通し(大幅な減量は必要ないこと,むしろ減量体重の維持が大切)を伝える重要性を説明。減量の維持継続には、運動は楽しさそれ自体を目的にすることが大切であり、運動と併せて食事(おいしい/食欲を満たす/調理が簡単/バリエーション豊富な日本型の食生活)による体重管理を行うことを勧められました。
<ごはんを主食にした和食の価値の再確認>
最後に座長の寺本先生から、本サミットのまとめとして、食の欧米化を背景とする、肥満や生活習慣病を予防・改善するために、「日本の伝統の食文化を基軸とした栄養指導」の提案がなされました。
「和食」が12月4日にユネスコの無形文化遺産に指定された折でもあり、ごはんを主食とする和食の価値(低脂肪/バリエーションが豊富で、バランスよく栄養が摂取できる/生活習慣病予防効果のある魚や大豆食品と合わせやすい など)を再認識する機会でもあると語られました。また、和食を基軸としながら、時代の変化とともに多様化する食の嗜好性にも柔軟に対応し、楽しみのある食事処方を患者とともに実現していくことが提案されました。
【開催概要】
日 時:2013年12月5日(木)13:30〜17:00
会 場:日本医師会館 大講堂 (東京都文京区本駒込2-28-16)
テーマ:肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−
主 催:公益社団法人 日本医師会 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
後 援:
農林水産省 一般社団法人埼玉県医師会 公益社団法人千葉県医師会
公益社団法人東京都医師会 公益社団法人神奈川県医師会 社団法人山梨県医師会
特定非営利活動法人日本高血圧学会 一般社団法人日本循環器学会
一般社団法人日本腎臓学会 一般社団法人日本糖尿病学会
一般社団法人日本動脈硬化学会 一般社団法人日本内科学会
一般社団法人日本血栓止血学会 日本心臓病学会 一般社団法人日本肥満学会
公益社団法人日本栄養士会 公益社団法人日本栄養・食糧学会
特定非営利活動法人日本栄養改善学会 一般社団法人日本臨床栄養学会
内 容:
・基調講演
講演I 脂質異常症の治療・予防のための生活習慣の改善
−動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012に基づいて−
帝京大学臨床研究センターセンター長 寺本 民生先生
講演II 糖尿病の予防・治療のための食事の在り方とその課題
−2型糖尿病における日本人の食事療法の意義を踏まえて−
東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授 宇都宮 一 典先生
講演III 肥満 特に内臓脂肪蓄積型肥満是正のための食事管理
公益財団法人結核予防会新山手病院生活習慣病センター センター長 宮崎 滋先生
講演IV 肥満 特に内臓脂肪蓄積型肥満是正のための運動の理論と実際
慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲先生
・パネルディスカッション
テーマ:肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−
座 長:帝京大学臨床研究センターセンター長 寺本 民生先生
パネリスト:
東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授 宇都宮 一典先生
慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲先生
公益財団法人結核予防会新山手病院生活習慣病センター センター長 宮崎 滋先生
(50音順)
公益社団法人 日本医師会
公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
肥満、生活習慣病の専門家4名が登壇
日本糖尿病学会のガイドラインを基に、
日本人に適した「ごはんを主食とした食生活」を提案
『食育健康サミット2013』に、750名の医師・栄養士等が参加
テーマ:肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−
◇日 時:12月5日(木)13:30〜17:00
◇会 場:日本医師会館 大講堂 (東京都文京区本駒込2-28-16)
公益社団法人 日本医師会と公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構は、2013年12月5日(木)に、日本医師会館大講堂(東京・駒込)において、ごはんを主食とした日本型食生活の生活習慣病予防・治療における有用性等について考える「食育健康サミット」を開催いたしました。
本サミットは、医師、栄養士等の方々を対象に毎年開催されるもので、本年度は「肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−」をテーマに開催いたしました。帝京大学臨床研究センターセンター長・寺本 民生先生他3名の専門家による最新の研究を基にした講演とパネルディスカッションを実施。会場に集まった参加者は、肥満や生活習慣病の治療にあたる医師や栄養士等750名で、熱心に講演に耳を傾ける姿が多く見られました。
テーマ「肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−」について
国民健康・栄養調査によると、男性の3割、女性の2割は肥満という結果がでています。肥満は各種生活習慣病の発症要因の1つであり、脂質異常症や糖尿病、高血圧症などの生活習慣病は、さらに生活機能の低下をもたらす重症化のリスクを抱えています。
肥満やこれら生活習慣病の増加には、運動不足とともに、日本人の食生活の変化、とりわけ食生活の欧米化が強く関わっていると考えられます。
そこで、今回は、日本糖尿病学会が本年3月に発表した「日本人の糖尿病の食事療法」をもとに、炭水化物(糖質)と脂質の摂取バランスの観点から日本人にふさわしい、肥満・脂質異常症・糖尿病予防のための食事処方と肥満是正のための運動処方を取り上げ、ごはんを主食とした日本型食生活の意義について考えました。
【基調講演】
4名の専門家に、肥満、生活習慣病の予防・改善について、各分野における最新の研究結果をもとに、栄養指導・運動指導に有用な情報をご紹介いただきました。
講演I
テーマ:脂質異常症の治療・予防のための生活習慣の改善
−動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012に基づいて−
講 師:帝京大学臨床研究センター センター長 寺本 民生先生
内 容:脳血管疾患は、介護の状態を招く原因の第一位。そのため動脈硬化の予防・改善は重要である。治療の柱はLDLコレステロール値の低減と肥満の改善で、不飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量抑制がポイントとなる。
日本動脈硬化学会では、食事処方に日本の伝統食(The Japan Diet)を推奨している。エネルギーやコレステロールを低減できるだけでなく、伝統的な和食食材の魚や大豆製品には心筋梗塞発症率を下げる効果もあり、和食の素晴らしさを再確認していただきたい。
今後、生活習慣病の改善には、社会システムによるサポートも重要になるだろう。どんな食事を食べたらどのような効果があるのか、エビデンスのある情報提供を行い、効果的な治療・予防を進めていただきたい。
講演II
テーマ:糖尿病の予防・治療のための食事の在り方とその課題
−2型糖尿病における日本人の食事療法の意義を踏まえて−
講 師:東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授 宇都宮 一典先生
内 容:糖尿病は合併症を引き起こす疾病、すなわち慢性的な多臓器不全に至るもので、これを阻止することが治療の最大の目標である。食事療法の課題は、日本人の食嗜好が多様化し、病態も欧米化していることであり、個別化した対応が今後ますます必要とされる。
食事処方では、適正なエネルギーと栄養素の充足が原則で、それを継続して実行するにはごはんを主食とした伝統食が最も適する。極端な炭水化物制限食は、有効性ならびに安全性ともに多くの懸念があり、日本糖尿病学会の声明では注意を喚起している。今後、患者の嗜好や病態の変化にも柔軟に対応しつつ、食事療法の在り方について考えていきたい。
講演III
テーマ:肥満 特に内臓脂肪蓄積型肥満是正のための食事管理
講 師:公益財団法人結核予防会新山手病院生活習慣病センター センター長 宮崎 滋先生
内 容:肥満症は健康に深刻な影響を与え、BMI値25以上になると死亡率が上昇し、糖尿病、高血圧症を招く。最近の研究ではがんを罹患しやすいこともわかってきた。治療のターゲットは内臓脂肪で、食事と運動による減量を指示する。3%程度の減量でも、さまざまな健康の指標となる数値が改善されるので、ぜひ食事内容の改善や、朝食を食べる、早食いをしないなど食べ方を再考してほしい。
指導で推奨するのは、伝統的な和食。「ごはん+一汁三菜」の組み合わせは、低エネルギ
ーで栄養のバランスがよい。また、魚や野菜、植物性たんぱく質と組み合わせ、バリエーションに富んだ食事がとれる。肥満予防・改善のために、ごはんを主食とした日本の食文化を再評価していただきたい。
講演IV
テーマ:肥満 特に内臓脂肪蓄積型肥満是正のための運動の理論と実際
講 師:慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲先生
内 容: 肥満症の改善には、食事と同様に運動も効果を上げる。「毎日60分×中強度」で運動すると、減量した体重を維持でき、生活習慣病のリスクを低減できる。実際の指導は、最初はウォーキングを推奨する。息がはずみ汗ばむようなペースで歩くよう指示する。ただ、歩行だけでは継続が難しく、楽しみや目標につながる動機づけも重要である。
1960年以降に生まれた世代は食の欧米化が進み、肥満のプロフィールも上の世代と異なっている。ごはんを主食とする日本型食生活は、必要栄養素を充足し、なおかつエネルギー必要量まで余裕を持たせることができ、その余裕分を好きな食事に充てる「自由裁量カロリー」を得ることができる。運動と日本型食生活の組み合わせは、肥満や栄養素不足の予防に有用である。
【パネルディスカッション】
「肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−」をテーマにしたパネルディスカッションは、参加者から寄せられた質問に4名の先生がそれぞれの分野の知見に基づき回答をするスタイルで討議を進行しました。
中でも、昨今、話題になっている低炭水化物の食事処方についての質問が多かったことから、時間を割いて、以下のような説明や意見交換が行われました。
<低炭水化物の食事処方>
■宇都宮先生は、糖尿病治療の立場から、食事療法は、まず、総エネルギーの適正化であることが大切で、これに配慮せず、炭水化物のみを極端に制限することは推奨できないと発言されました。さらに、その結果生じる高たんぱく・高脂質食がもたらす身体への悪影響、継続が難しい点も指摘されました。ただし、適正なエネルギーを図るために、柔軟に対応してよいとの説明がありました。
■続いて、宮崎先生からは、肥満症治療の立場から、食事における「おかず」の比率が増えていることがエネルギーの過剰摂取につながっていると指摘。摂取エネルギーの調整には、主食である「ごはん」の量を抑えるのではなく、おかずの量と質の再考によるバランス調整が必要との提案がなされました。
■勝川先生は、減量体重の長期維持者の食事が低脂肪食であるというエビデンスを示した上で、日本でのデータが乏しいことを指摘され、今後の研究が課題であると説明されました。
<食事指導のポイント>
■宇都宮先生からは、食事処方をする際は、エネルギーや栄養素量だけでなく、患者や家族の食の嗜好を理解し、食を楽しめるように個別の対応をすることが大切であるとの提案がありました。
■宮崎先生からは、継続性を重視した処方を行うこと、また、ソーシャルサポート(医療者からの情報提供など)の必要性が強調されました。
■勝川先生は、減量の見通し(大幅な減量は必要ないこと,むしろ減量体重の維持が大切)を伝える重要性を説明。減量の維持継続には、運動は楽しさそれ自体を目的にすることが大切であり、運動と併せて食事(おいしい/食欲を満たす/調理が簡単/バリエーション豊富な日本型の食生活)による体重管理を行うことを勧められました。
<ごはんを主食にした和食の価値の再確認>
最後に座長の寺本先生から、本サミットのまとめとして、食の欧米化を背景とする、肥満や生活習慣病を予防・改善するために、「日本の伝統の食文化を基軸とした栄養指導」の提案がなされました。
「和食」が12月4日にユネスコの無形文化遺産に指定された折でもあり、ごはんを主食とする和食の価値(低脂肪/バリエーションが豊富で、バランスよく栄養が摂取できる/生活習慣病予防効果のある魚や大豆食品と合わせやすい など)を再認識する機会でもあると語られました。また、和食を基軸としながら、時代の変化とともに多様化する食の嗜好性にも柔軟に対応し、楽しみのある食事処方を患者とともに実現していくことが提案されました。
【開催概要】
日 時:2013年12月5日(木)13:30〜17:00
会 場:日本医師会館 大講堂 (東京都文京区本駒込2-28-16)
テーマ:肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−
主 催:公益社団法人 日本医師会 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
後 援:
農林水産省 一般社団法人埼玉県医師会 公益社団法人千葉県医師会
公益社団法人東京都医師会 公益社団法人神奈川県医師会 社団法人山梨県医師会
特定非営利活動法人日本高血圧学会 一般社団法人日本循環器学会
一般社団法人日本腎臓学会 一般社団法人日本糖尿病学会
一般社団法人日本動脈硬化学会 一般社団法人日本内科学会
一般社団法人日本血栓止血学会 日本心臓病学会 一般社団法人日本肥満学会
公益社団法人日本栄養士会 公益社団法人日本栄養・食糧学会
特定非営利活動法人日本栄養改善学会 一般社団法人日本臨床栄養学会
内 容:
・基調講演
講演I 脂質異常症の治療・予防のための生活習慣の改善
−動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012に基づいて−
帝京大学臨床研究センターセンター長 寺本 民生先生
講演II 糖尿病の予防・治療のための食事の在り方とその課題
−2型糖尿病における日本人の食事療法の意義を踏まえて−
東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授 宇都宮 一 典先生
講演III 肥満 特に内臓脂肪蓄積型肥満是正のための食事管理
公益財団法人結核予防会新山手病院生活習慣病センター センター長 宮崎 滋先生
講演IV 肥満 特に内臓脂肪蓄積型肥満是正のための運動の理論と実際
慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲先生
・パネルディスカッション
テーマ:肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方−日本型食生活の意義−
座 長:帝京大学臨床研究センターセンター長 寺本 民生先生
パネリスト:
東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授 宇都宮 一典先生
慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲先生
公益財団法人結核予防会新山手病院生活習慣病センター センター長 宮崎 滋先生
(50音順)