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「コロナ時代のSDGs」

SDGs市民社会ネットワークからの提言と市民社会の役割を発信

一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン、共同代表理事 大橋正明・三輪敦子)は、8月12日に新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)対策に対する声明を発表しました。

3月に発表した声明に続き第2回目となる今回の声明では、SDGsジャパンはCOVID-19によって顕在化した社会の課題を、市民社会の視点から幅広く提起しています。さらに、社会・経済・環境にまたがる複合的な危機に対処しえない現在の社会をどのように変革すべきか、そのきっかけとなる事例も紹介しています。

SDGsジャパンでは今後3回に分けて、コロナ時代に求められる社会の変革に対する市民社会の役割について、具体的な事例を入れて発信する予定です。

SDGsジャパンは「誰一人取り残されない」社会の実現を目指し、今こそ「SDGsを軸にした対策」の重要性を提起します。





声明文本文はこちら(https://prtimes.jp/a/?f=d27673-20200811-9457.pdf

「誰一人取り残すことなく、貧困のない持続可能な社会へ世界を変革する」
これは、2015年に国連で採択された世界の指針「持続可能な開発目標」(SDGs)の根底にある理念です。私たち一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)は、多様な当事者を含む市民社会の視点からSDGsの達成を目指しています。社会を一変させたパンデミックや、社会・経済・環境の複合的で緊急の課題を抱える今こそ、「SDGsを軸にした対策」が社会の変革に必要です。2020年7月に開催された国連閣僚級ハイレベル政治フォーラムの閣僚宣言(最終ドラフト)、および同月の日本のSDGs推進円卓会議構成員による提言書でも、ともに「SDGsを基本理念としたコロナ対策」および「SDGsに則った『よりよい復興』の実現」を提唱しています。SDGsジャパンは「誰一人取り残さない」理念に基づき、以下を提言します。

1. 前回の声明(2020年3月27日発表)からみた現状の評価
前回の声明では「SDGsを理念としたコロナ対策」の実施を求め、政策立案におけるガバナンス(公開性・透明性・民主的手続き・パートナーシップ)と経済的・社会的包摂の重要性を提起しました。日本では2度の補正予算で計57兆円を超えるコロナ対策関係経費が盛り込まれましたが、10兆円の予備費使途を含め、質の高いガバナンスの下で衡平・公正な歳出がなされるべきです。また、政策決定に提言を行う専門委員会等の構成員には幅広いセクターからの参画が必要であり、数々の政策は理念の基に一貫性をもつべきです。併せてそれらの政策には、SDG16に照らし合わせた、策定プロセスの公開および検証の実施が重要です。

2. 前回の声明以降に顕在化した社会の課題


生命の選別:医療崩壊・介護崩壊に瀕した現場では、医療資源が不足し、高齢者の呼吸器を外して若者を優先するなど、生命に価値基準や優劣をつけようとする動きがありました。患者の年齢や障害の有無、社会的地位などを理由とした生命の選別は、患者の尊厳の尊重に反します。また、感染時に緊急的措置を必要とする高齢者や疾病患者への医療および介護体制が不十分です。
社会的差別と偏見:特定の業種や地域への偏見が助長されたり、検査陽性が判明した個人の情報が行政や多様なメディアによって暴露されることで、インターネット上や生活の場で差別や暴力を受けた事例が報告されています。
環境問題と災害リスク:環境保全活動および環境モニタリング活動の自粛や、感染対策のための使い捨て用品の需要増が、長期的な環境問題につながる懸念があります。また、災害対策では、感染症を考慮した支援物資の備蓄や避難所の確保が不十分で、災害弱者の救援に困難が予想されます。また復興支援活動も遅延を余儀なくされています。
暴力の増加:経済的・社会的不安や生活習慣の変化、ケアや保護サービスの削減が、女性、子ども、若者、高齢者、障害者など社会において弱い立場に置かれた脆弱な人々に対する暴力・虐待の拡大につながっています。
脆弱層や少数者に関する制度制度:特別定額給付金の支給方法が明らかにしたように、現行の制度ではジェンダーや少数者への配慮が欠けています。例えば、出入国管理制度では失業や生活困窮に直面している外国人技能実習生や留学生への支援が不十分である一方、日本に生活基盤を置く外国籍住民は、出国の後、再入国に厳しい制限があります。また、同性間パートナーシップ制度が確立していない日本では、重症化した患者のパートナーの権利が保障されていません。公平なオンライン教育の未整備による教育格差の拡大も懸念されています。
雇用状況の悪化:6月の労働力調査では「勤め先や事業の都合による離職」による完全失業者数が前年同月比で1.9倍の41万人となり、非正規雇用者数は104万人の減少となりました。非正規雇用者の68%を占める女性、特にシングルマザーへの影響が懸念されます。また、雇用や生活の支援が急務となる一方で、それを担う公的機関や民間団体もコロナの影響を受けており、実施されるべき支援が行き届かない事例や、被害の実態を掴みきれていない懸念があります。
国際協力:透明性や公開性を保証した質の高い多国間協力と、医療保健や貧困に対する二国間援助での緊急的な取り組みが重要です。どの国でもSDGs達成のための資金や資源が減少しており、また、地域に根差した直接支援を担うNGOは人員の派遣や資金面で困難を抱えています。


世界を一変させた今回のパンデミックは、今までの私たちの社会の仕組みでは、社会・経済・環境にまたがる複合的な課題に対処し得ないことを明らかにし、社会の変革に向けた緊急性を突きつけました。

3. 社会の変革と価値の転換 -市民社会を起点とした事例-
上記のような課題に対して社会の変革に向けた多様な動きが始まっています。ここでは、「誰一人取り残されない」理念の実践について、市民社会も深く参画する顕著な例を紹介します。失業や生活困窮に直面し、また公的支援の制度が行き届かない人々を支援するため、市民社会団体による相談会の開催や食事・住まいの提供が様々な地域で開始されています。支援の選択肢を増やすことで、多様な困窮者へのセーフティネットを強化しています。


地域において、エッセンシャルワーカーを含む全ての人々が安心・安全に暮らせることを目指し、地域独自のSDGs円卓会議が設立されています。マルチ・ステークホルダーによる政策の見直しと改善策の立案・実践の仕組み作りも進んでいます。SDGsを軸にしたコロナ対策の提言を発表する自治体もあり、令和2年7月豪雨で被害を受けた地域では復興に向けた指針ともされています。
環境問題や気候変動の対策に関して、市民社会団体による企業や投資家への働きかけが日本でも進んでいます。企業の気候リスク対策について市民社会団体が株主提案を行った事例もあり、社会・経済・環境を包摂的に変革する動きとなっています。
コロナの予防・診断・治療の研究開発と途上国への供給を一体で進める国際協調の枠組みが設立され、市民社会の参画も進んでいます。市民社会は、日本政府が国際協調を支持する立場にあることを評価しつつ、必要な資金的・技術的支援と拠出の透明性確保を求めています。

また、SDGsジャパンが発表した市民社会からの政策提言集「SDGsボトムアップ・アクションプラン2020」では、SDGsの視点を取り入れた政策案を提案しています。

4. 市民社会の役割:重要なステークホルダーとしての位置付けと意思決定への参画
コロナ危機のように、社会で弱い立場にある人々がより困窮する状態ではとりわけ、「当事者の声」や「誰一人取り残さない」理念が重要になります。SDGs達成を目指す市民社会には、主に3つの役割があると考えています。

最も遠くにいる人やあらゆる当事者の声を社会に届け、政策決定に反映させる役割
困難な状況にある人々に必要な支援を届ける役割
様々なステークホルダーを結びつける、結節点としての役割


SDGsジャパンは「誰一人取り残されない」社会の実現を目指し、今こそ、「SDGsを軸にした対策」の重要性を提案します。今後も、市民社会の活動に根ざした社会の変革について、その取り組みと成果を発信していきます。

[画像: https://prtimes.jp/i/27673/24/resize/d27673-24-129477-0.jpg ]
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