リナグリプチン1日1回投与で2年間にわたる持続的な有効性が示された
[11/10/04]
提供元:PRTIMES
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メトホルミン単独投与では血糖コントロールが不十分な患者において臨床的に意義のある血糖コントロールを実証
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国イーライリリー・アンド・カンパニーが9月16日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したものです。尚、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。
2011年9月16日、ポルトガル、リスボン
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は9月16日、リナグリプチン(日本での製品名:トラゼンタ(R)錠)の102週間の第3相試験の結果を発表しました。この結果は、リナグリプチンが2型糖尿病患者において臨床的に意義のある持続的な血糖値の低下をさせることを示したものです。第47回欧州糖尿病学会(EASD)で9月16日に発表されたこの2年間の試験では、全試験期間を通じてリナグリプチンが投与された患者において、DPP-4阻害薬リナグリプチンが長期にわたって1良好な安全性プロファイルを示し、HbA1c値を0.8%低下させました。
「これらの結果は、リナグリプチンで得られる有効性が臨床において信頼でき、意義があるというだけでなく、長期にわたって持続することを示しています。これはとりわけ2型糖尿病のような慢性疾患において重要なことです」と、英国ウェールズのカーディフ大学医学部・内科学講座のProf.デービット・オーエンズ臨床学教授はコメントしています。
これらの患者データは、単独療法、2剤併用療法(メトホルミンまたはピオグリタゾンとの併用)、3剤併用療法(メトホルミンとスルホニル尿素薬の併用)における102週間にわたるリナグリプチンの有効性と忍容性を実証しています。つまり、24週間の盲検治療の後、0.8%のHbA1c値の低下が、さらに78週間にわたって持続することが認められたのです。全般的に、低血糖症発症の割合は低く、体重の変化はありませんでした2。
追加で実施された12週間の試験でも、メトホルミンへの追加療法としてのリナグリプチンの有効性と忍容性が示されました。同試験では、メトホルミン1日2回投与(1500mg/day以上)でコントロール不良の2型糖尿病患者が、リナグリプチン2.5mg 1日2回投与群(この12週間の試験の間メトホルミン1日2回の投与レジメンとの併用を可能にするため)またはリナグリプチンの承認用量5mg 1日1回投与群のいずれかに無作為に割り付けられました。結果は、HbA1c値のプラセボ調整平均変化量が、それぞれ-0.74%と-0.8%(HbA1cベースライン平均値 8.0%, p < 0.0001)でした2。
「リナグリプチンは主に胆汁に未変化体として排泄される新規治療薬です。そのため、肝臓や腎臓の機能が低下していても、すべての2型糖尿病の患者に対して、1用量でHbA1c を低下させることができます」と、ハート・オブ・イングランドNHSファンデーション・トラストの医学顧問で、英国バーミンガム大学の内科学名誉教授であるProf. アンソニー・バーネットはコメントしました。またバーネット教授は「これは1用量で市販される初のDPP-4阻害薬であり、医師の処方プロセスをより簡便にするのに役立つものです」とコメントしました。
欧州糖尿病学会(EASD)で発表されたデータは、新たに診断された患者から重度腎障害を有する患者に至るまで2型糖尿病のあらゆる患者に対して、良好な安全性および忍容性のプロファイルを伴ったリナグリプチンの臨床的に意義のある長期間にわたる有効性を実証しています3。
参考情報:
欧州糖尿病学会(EASD)で発表されたリナグリプチン臨床試験について
DPP-4 阻害薬リナグリプチンの長期にわたる安全性と有効性:2型糖尿病患者を対象とする大規模な2年間の試験データ 1
本試験の目的は、血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を治療するためのリナグリプチンの単独療法、2剤併用療法(メトホルミンまたはピオグリタゾンとの併用)、3剤併用療法(メトホルミンとスルホニル尿素薬の併用)の長期にわたる有効性と安全性プロファイルを評価することでした(N = 2121)。24週間のニ重盲検プラセボ対照第3相試験を終了した患者を、78週間の非盲検単群長期継続投与試験に組み入れました。
・ 24週間の盲検治療後、リナグリプチン群においてHbA1cの有意な低下(-0.8%)がみられ、追加的な78週間非盲検長期継続投与期間中も持続しました(ベースラインからの2年間の変化は-0.8%でした)。
・ 24週目にリナグリプチン療法に切り替える前に最初にプラセボに無作為割り付けされた被験者においては、長期継続投与後もさらにHbA1c値が0.5%低下しました。リナグリプチンによる治療は、長期継続投与期間中、十分な忍容性を維持しました。
・ 長期継続投与期間中の全体的な低血糖症の発現率は、リナグリプチンを継続した群で14.6%、プラセボから切り替えた群で13.6%でした。
・ 各群の約3分の1の被験者が、 標準的な治療薬であるメトホルミンとスルホニル尿素薬の併用療法を受けていました。低血糖症は、スルホニル尿素薬を含む3剤併用療法を受けたこれらの被験者において最も多く認められました。
メトホルミンでコントロール不十分な2型糖尿病の成人患者におけるリナグリプチン1日用量5mg (5mg1日1回投与群と2.5mg1日2回投与群)の有効性と安全性 2
この12週間の試験の目的は、メトホルミン1日2回投与に追加した場合のリナグリプチン 5mg1日1回投与群と 2.5mg 1日2回投与群の有効性と安全性を評価することでした(1500mg/日以上)(N = 491)。
・ リナグリプチン2.5mg1日2回投与群と5mg1日1回投与群ではいずれもHbA1c を有意に低下させました。(プラセボ調整変化量はそれぞれ-0.74%と-0.80%。いずれもp < 0.0001)
・ 有効性は2つの群で同等であり、HbA1cの差(0.06%)は予め定義された非劣性マージンの範囲内でした。
・ 有害事象の割合は、リナグリプチン2.5mg1日2回投与群、5mg1日1回投与群、プラセボ群で、それぞれ43.0%、34.8%、38.6%でした。
重度腎障害を有する2型糖尿病患者におけるリナグリプチンの長期にわたる有効性と安全性3
本無作為化ニ重盲検プラセボ対照試験の目的は、重度腎障害を有する2型糖尿病患者におけるリナグリプチンの有効性と安全性を評価することでした。
・ 52週目におけるベースラインからのHbA1c値の調整平均変化量は、-0.72%(95%CI -1.03,-0.41 p < 0.0001)であり、12週目の時点で示されたように、プラセボに対してリナグリプチンが有意にHbA1cを低下させることが確認されています。
・ 全試験期間を通してHbA1cの低下が維持されました。
・ 有害事象および重篤な有害事象の発生率については、リナグリプチン群で94.1%と36.8%、プラセボ群で92.3%と41.5%でした。
・ 両治療群共に試験期間を通じて腎機能は安定しており、このハイリスク集団における心血管死の症例数は同様に低いものでした(リナグリプチン群n = 2 [2.9%]、プラセボ群 n = 3 [4.6%] )。
リナグリプチンは、2型糖尿病の患者において糖尿病の罹病期間とインスリン抵抗性に関係なく、血糖コントロールを改善 4
本無作為化ニ重盲検プラセボ対象第3相試験におけるプール解析の目的は、2型糖尿病患者におけるリナグリプチン単独療法、リナグリプチンとメトホルミンの併用療法、またメトホルミン、スルホニル尿素薬とリナグリプチンの3剤併用療法の安全性と有効性を検証することでした(N = 2258)。
・ リナグリプチン治療群では、2型糖尿病患者の糖尿病罹病期間及びインスリン抵抗性(IR)の程度に関係なく、-0.7 %と臨床的に意義のあるHbA1cの低下をもたらし、全般的な有害事象の発現率はプラセボ群と同等でした。
・ 患者の罹病期間は、1年以下が13%、1年超〜5年が30%、5年以上が57%でした。
・ 単独療法群およびメトホルミンとの併用療法群における低血糖症の発生率は非常に低い数値でした(1.0%以下)。
リナグリプチンについて
リナグリプチンは、インクレチンホルモンGLP-1(グルカゴン様ペプチド‐1)およびGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の不活化に関与する酵素である酵素DPP-4(ジペプチジル・ペプチダーゼ-4)の阻害薬です。リナグリプチンはグルコース依存性にインスリン分泌を増加させ、グルカゴン分泌を低下させることによって、グルコース恒常性を全体的に改善します。
注) リナグリプチンは2011年5月に米国で、2011年8月に欧州で承認されました。日本では、2011年7月1日に食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られない2型糖尿病患者の治療薬(単独療法)として、日本ベーリンガーインゲルハイムが、「トラゼンタ(R)錠 5mg(一般名:リナグリプチン)」の製造販売承認を取得しました。そしてトラゼンタ(R)は2011年9月12日に薬価収載され、9月15日に発売が開始されました。尚、他の糖尿病治療薬との併用療法での製造販売承認は現時点では取得していません。トラゼンタ(R)は日本で、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造、販売を行い、日本イーライリリーと共同販促(コ・プロモーション)をいたします。日本での効能効果と用法用量は、以下の通りです。
【日本での効能効果】
2型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る。)
【日本での用法用量】
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する。
糖尿病について
糖尿病患者は世界で2億8,500万人と推定されています5。なかでも2型糖尿病はもっとも一般的なタイプの糖尿病であり、糖尿病全体の90%を占めます5。糖尿病は、インスリンというホルモンを生体が適切に生成したり、利用しにくくなった場合に発症する慢性疾患です6。
日本では、1型および2型糖尿病の患者数は約2,210万人7と推定されています。また、2型糖尿病患者の42%が慢性腎臓病(CKD)のステージ2(軽度GFR低下を伴う腎障害)以上を合併しているとの報告があります8。また、腎機能低下のリスクの高い高血圧を合併している2型糖尿病患者さんの割合は40%との報告もあります9。このように、2型糖尿病患者さんの多くが高血圧や微量アルブミン尿症を合併しており、腎機能低下リスクが高い状態にさらされています。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー の提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、糖尿病領域において大型製品に育成されることが期待される4つの治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者のケアにおけるコミットメントを示し、患者のニーズに応えるべく協力しています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムグループは、世界でトップ20の製薬企業のひとつです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で145の関連会社と42,000人以上の社員が、事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。
2010年度は126億ユーロの売上を示しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、医療用医薬品事業の売上の約24%相当額を研究開発に投資しました。
ベーリンガーインゲルハイムについての詳細情報は以下のウェブサイトをご覧ください。
www.boehringer-ingelheim.co.jp
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
1876年創業のイーライリリーは130年の歴史ある研究開発主導型の先進企業であり、世界140カ国以上、約38,000人の社員が自社の研究施設の最新の成果を応用するとともに、社外の研究機関との提携を通じて医薬品のポートフォリオを拡大しています。米インディアナ州インディアナポリスに本社を置くリリーは、医薬品と情報を通じて「こたえ」を提供し、世界で最も急を要する医療ニーズを満たしています。リリーについての詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。
www.lilly.com
リリーの糖尿病事業について
リリーは85年以上にわたり、糖尿病の患者さんの生命ならびに治療を支援する先駆的企業として、常に世界をリードしてきました。リリーは世界初の商業用インスリンを1923年に開発した企業であり、今日も糖尿病を管理するための医薬品ならびに投与システム分野で最先端を走り続けています。また、リリーは、実用的なツール、教育、支援プログラムなど、治療以外のソリューションの提供にも注力しており、こうしたプログラムは長期にわたる糖尿病治療における障壁の克服に寄与しています。糖尿病と共に生き、治療を続ける患者さん一人ひとりの道のりが、リリーの活動の原動力となっています。詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。
www.lillydiabetes.com
References
1. Schlosser A, Owens D, Taskinen M-R, et al. Long-term safety and efficacy of the DPP-4 inhibitor linagliptin: data from a large 2-year study in subjects with type 2 diabetes mellitus. 47th Annual Meeting of the European Association for the Study of Diabetes. 2011;OP 43.
2. Rafeiro E, Ross SA, Meinicke T, et al. Efficacy and safety of 5 mg daily dosing regimens with linagliptin in patients with type 2 diabetes inadequately controlled on metformin. 47th Annual Meeting of the European Association for the Study of Diabetes. 2011;Poster-1218.62.
3. Newman J, McGill JB, Patel S, et al. Long-term efficacy and safety of linagliptin in patients with type 2 diabetes and severe renal impairment. 47th Annual Meeting of the European Association for the Study of Diabetes. 2011;Poster-1218.43.
4. Patel S, Weber S, Emser A, et al. Linagliptin improves glycaemic control independently of diabetes duration and insulin resistance in patients with type 2 diabetes. 47th Annual Meeting of the European Association for the Study of Diabetes. 2011;Poster-821.
5. International Diabetes Federation. 2010: Available from: www.idf.org.
6. World Health Organization. Fact sheet N°312. 2011: http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs312/en/.
7. 厚生労働省2007年国民健康・栄養調査
8. Yokoyama H, et al. Diabetes Care 30: 989, 2007
9. Iimura O: Hypertens Res 19: S1-S8, 1996
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国イーライリリー・アンド・カンパニーが9月16日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したものです。尚、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。
2011年9月16日、ポルトガル、リスボン
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は9月16日、リナグリプチン(日本での製品名:トラゼンタ(R)錠)の102週間の第3相試験の結果を発表しました。この結果は、リナグリプチンが2型糖尿病患者において臨床的に意義のある持続的な血糖値の低下をさせることを示したものです。第47回欧州糖尿病学会(EASD)で9月16日に発表されたこの2年間の試験では、全試験期間を通じてリナグリプチンが投与された患者において、DPP-4阻害薬リナグリプチンが長期にわたって1良好な安全性プロファイルを示し、HbA1c値を0.8%低下させました。
「これらの結果は、リナグリプチンで得られる有効性が臨床において信頼でき、意義があるというだけでなく、長期にわたって持続することを示しています。これはとりわけ2型糖尿病のような慢性疾患において重要なことです」と、英国ウェールズのカーディフ大学医学部・内科学講座のProf.デービット・オーエンズ臨床学教授はコメントしています。
これらの患者データは、単独療法、2剤併用療法(メトホルミンまたはピオグリタゾンとの併用)、3剤併用療法(メトホルミンとスルホニル尿素薬の併用)における102週間にわたるリナグリプチンの有効性と忍容性を実証しています。つまり、24週間の盲検治療の後、0.8%のHbA1c値の低下が、さらに78週間にわたって持続することが認められたのです。全般的に、低血糖症発症の割合は低く、体重の変化はありませんでした2。
追加で実施された12週間の試験でも、メトホルミンへの追加療法としてのリナグリプチンの有効性と忍容性が示されました。同試験では、メトホルミン1日2回投与(1500mg/day以上)でコントロール不良の2型糖尿病患者が、リナグリプチン2.5mg 1日2回投与群(この12週間の試験の間メトホルミン1日2回の投与レジメンとの併用を可能にするため)またはリナグリプチンの承認用量5mg 1日1回投与群のいずれかに無作為に割り付けられました。結果は、HbA1c値のプラセボ調整平均変化量が、それぞれ-0.74%と-0.8%(HbA1cベースライン平均値 8.0%, p < 0.0001)でした2。
「リナグリプチンは主に胆汁に未変化体として排泄される新規治療薬です。そのため、肝臓や腎臓の機能が低下していても、すべての2型糖尿病の患者に対して、1用量でHbA1c を低下させることができます」と、ハート・オブ・イングランドNHSファンデーション・トラストの医学顧問で、英国バーミンガム大学の内科学名誉教授であるProf. アンソニー・バーネットはコメントしました。またバーネット教授は「これは1用量で市販される初のDPP-4阻害薬であり、医師の処方プロセスをより簡便にするのに役立つものです」とコメントしました。
欧州糖尿病学会(EASD)で発表されたデータは、新たに診断された患者から重度腎障害を有する患者に至るまで2型糖尿病のあらゆる患者に対して、良好な安全性および忍容性のプロファイルを伴ったリナグリプチンの臨床的に意義のある長期間にわたる有効性を実証しています3。
参考情報:
欧州糖尿病学会(EASD)で発表されたリナグリプチン臨床試験について
DPP-4 阻害薬リナグリプチンの長期にわたる安全性と有効性:2型糖尿病患者を対象とする大規模な2年間の試験データ 1
本試験の目的は、血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を治療するためのリナグリプチンの単独療法、2剤併用療法(メトホルミンまたはピオグリタゾンとの併用)、3剤併用療法(メトホルミンとスルホニル尿素薬の併用)の長期にわたる有効性と安全性プロファイルを評価することでした(N = 2121)。24週間のニ重盲検プラセボ対照第3相試験を終了した患者を、78週間の非盲検単群長期継続投与試験に組み入れました。
・ 24週間の盲検治療後、リナグリプチン群においてHbA1cの有意な低下(-0.8%)がみられ、追加的な78週間非盲検長期継続投与期間中も持続しました(ベースラインからの2年間の変化は-0.8%でした)。
・ 24週目にリナグリプチン療法に切り替える前に最初にプラセボに無作為割り付けされた被験者においては、長期継続投与後もさらにHbA1c値が0.5%低下しました。リナグリプチンによる治療は、長期継続投与期間中、十分な忍容性を維持しました。
・ 長期継続投与期間中の全体的な低血糖症の発現率は、リナグリプチンを継続した群で14.6%、プラセボから切り替えた群で13.6%でした。
・ 各群の約3分の1の被験者が、 標準的な治療薬であるメトホルミンとスルホニル尿素薬の併用療法を受けていました。低血糖症は、スルホニル尿素薬を含む3剤併用療法を受けたこれらの被験者において最も多く認められました。
メトホルミンでコントロール不十分な2型糖尿病の成人患者におけるリナグリプチン1日用量5mg (5mg1日1回投与群と2.5mg1日2回投与群)の有効性と安全性 2
この12週間の試験の目的は、メトホルミン1日2回投与に追加した場合のリナグリプチン 5mg1日1回投与群と 2.5mg 1日2回投与群の有効性と安全性を評価することでした(1500mg/日以上)(N = 491)。
・ リナグリプチン2.5mg1日2回投与群と5mg1日1回投与群ではいずれもHbA1c を有意に低下させました。(プラセボ調整変化量はそれぞれ-0.74%と-0.80%。いずれもp < 0.0001)
・ 有効性は2つの群で同等であり、HbA1cの差(0.06%)は予め定義された非劣性マージンの範囲内でした。
・ 有害事象の割合は、リナグリプチン2.5mg1日2回投与群、5mg1日1回投与群、プラセボ群で、それぞれ43.0%、34.8%、38.6%でした。
重度腎障害を有する2型糖尿病患者におけるリナグリプチンの長期にわたる有効性と安全性3
本無作為化ニ重盲検プラセボ対照試験の目的は、重度腎障害を有する2型糖尿病患者におけるリナグリプチンの有効性と安全性を評価することでした。
・ 52週目におけるベースラインからのHbA1c値の調整平均変化量は、-0.72%(95%CI -1.03,-0.41 p < 0.0001)であり、12週目の時点で示されたように、プラセボに対してリナグリプチンが有意にHbA1cを低下させることが確認されています。
・ 全試験期間を通してHbA1cの低下が維持されました。
・ 有害事象および重篤な有害事象の発生率については、リナグリプチン群で94.1%と36.8%、プラセボ群で92.3%と41.5%でした。
・ 両治療群共に試験期間を通じて腎機能は安定しており、このハイリスク集団における心血管死の症例数は同様に低いものでした(リナグリプチン群n = 2 [2.9%]、プラセボ群 n = 3 [4.6%] )。
リナグリプチンは、2型糖尿病の患者において糖尿病の罹病期間とインスリン抵抗性に関係なく、血糖コントロールを改善 4
本無作為化ニ重盲検プラセボ対象第3相試験におけるプール解析の目的は、2型糖尿病患者におけるリナグリプチン単独療法、リナグリプチンとメトホルミンの併用療法、またメトホルミン、スルホニル尿素薬とリナグリプチンの3剤併用療法の安全性と有効性を検証することでした(N = 2258)。
・ リナグリプチン治療群では、2型糖尿病患者の糖尿病罹病期間及びインスリン抵抗性(IR)の程度に関係なく、-0.7 %と臨床的に意義のあるHbA1cの低下をもたらし、全般的な有害事象の発現率はプラセボ群と同等でした。
・ 患者の罹病期間は、1年以下が13%、1年超〜5年が30%、5年以上が57%でした。
・ 単独療法群およびメトホルミンとの併用療法群における低血糖症の発生率は非常に低い数値でした(1.0%以下)。
リナグリプチンについて
リナグリプチンは、インクレチンホルモンGLP-1(グルカゴン様ペプチド‐1)およびGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の不活化に関与する酵素である酵素DPP-4(ジペプチジル・ペプチダーゼ-4)の阻害薬です。リナグリプチンはグルコース依存性にインスリン分泌を増加させ、グルカゴン分泌を低下させることによって、グルコース恒常性を全体的に改善します。
注) リナグリプチンは2011年5月に米国で、2011年8月に欧州で承認されました。日本では、2011年7月1日に食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られない2型糖尿病患者の治療薬(単独療法)として、日本ベーリンガーインゲルハイムが、「トラゼンタ(R)錠 5mg(一般名:リナグリプチン)」の製造販売承認を取得しました。そしてトラゼンタ(R)は2011年9月12日に薬価収載され、9月15日に発売が開始されました。尚、他の糖尿病治療薬との併用療法での製造販売承認は現時点では取得していません。トラゼンタ(R)は日本で、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造、販売を行い、日本イーライリリーと共同販促(コ・プロモーション)をいたします。日本での効能効果と用法用量は、以下の通りです。
【日本での効能効果】
2型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る。)
【日本での用法用量】
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する。
糖尿病について
糖尿病患者は世界で2億8,500万人と推定されています5。なかでも2型糖尿病はもっとも一般的なタイプの糖尿病であり、糖尿病全体の90%を占めます5。糖尿病は、インスリンというホルモンを生体が適切に生成したり、利用しにくくなった場合に発症する慢性疾患です6。
日本では、1型および2型糖尿病の患者数は約2,210万人7と推定されています。また、2型糖尿病患者の42%が慢性腎臓病(CKD)のステージ2(軽度GFR低下を伴う腎障害)以上を合併しているとの報告があります8。また、腎機能低下のリスクの高い高血圧を合併している2型糖尿病患者さんの割合は40%との報告もあります9。このように、2型糖尿病患者さんの多くが高血圧や微量アルブミン尿症を合併しており、腎機能低下リスクが高い状態にさらされています。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー の提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、糖尿病領域において大型製品に育成されることが期待される4つの治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者のケアにおけるコミットメントを示し、患者のニーズに応えるべく協力しています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムグループは、世界でトップ20の製薬企業のひとつです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で145の関連会社と42,000人以上の社員が、事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。
2010年度は126億ユーロの売上を示しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、医療用医薬品事業の売上の約24%相当額を研究開発に投資しました。
ベーリンガーインゲルハイムについての詳細情報は以下のウェブサイトをご覧ください。
www.boehringer-ingelheim.co.jp
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
1876年創業のイーライリリーは130年の歴史ある研究開発主導型の先進企業であり、世界140カ国以上、約38,000人の社員が自社の研究施設の最新の成果を応用するとともに、社外の研究機関との提携を通じて医薬品のポートフォリオを拡大しています。米インディアナ州インディアナポリスに本社を置くリリーは、医薬品と情報を通じて「こたえ」を提供し、世界で最も急を要する医療ニーズを満たしています。リリーについての詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。
www.lilly.com
リリーの糖尿病事業について
リリーは85年以上にわたり、糖尿病の患者さんの生命ならびに治療を支援する先駆的企業として、常に世界をリードしてきました。リリーは世界初の商業用インスリンを1923年に開発した企業であり、今日も糖尿病を管理するための医薬品ならびに投与システム分野で最先端を走り続けています。また、リリーは、実用的なツール、教育、支援プログラムなど、治療以外のソリューションの提供にも注力しており、こうしたプログラムは長期にわたる糖尿病治療における障壁の克服に寄与しています。糖尿病と共に生き、治療を続ける患者さん一人ひとりの道のりが、リリーの活動の原動力となっています。詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。
www.lillydiabetes.com
References
1. Schlosser A, Owens D, Taskinen M-R, et al. Long-term safety and efficacy of the DPP-4 inhibitor linagliptin: data from a large 2-year study in subjects with type 2 diabetes mellitus. 47th Annual Meeting of the European Association for the Study of Diabetes. 2011;OP 43.
2. Rafeiro E, Ross SA, Meinicke T, et al. Efficacy and safety of 5 mg daily dosing regimens with linagliptin in patients with type 2 diabetes inadequately controlled on metformin. 47th Annual Meeting of the European Association for the Study of Diabetes. 2011;Poster-1218.62.
3. Newman J, McGill JB, Patel S, et al. Long-term efficacy and safety of linagliptin in patients with type 2 diabetes and severe renal impairment. 47th Annual Meeting of the European Association for the Study of Diabetes. 2011;Poster-1218.43.
4. Patel S, Weber S, Emser A, et al. Linagliptin improves glycaemic control independently of diabetes duration and insulin resistance in patients with type 2 diabetes. 47th Annual Meeting of the European Association for the Study of Diabetes. 2011;Poster-821.
5. International Diabetes Federation. 2010: Available from: www.idf.org.
6. World Health Organization. Fact sheet N°312. 2011: http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs312/en/.
7. 厚生労働省2007年国民健康・栄養調査
8. Yokoyama H, et al. Diabetes Care 30: 989, 2007
9. Iimura O: Hypertens Res 19: S1-S8, 1996