【組織・チームのあり方を5,000人に調査(業界別編)】製造業で今求められる社員像、実態と大差あり
[22/03/30]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
6割の製造業の社員が、10年間で役割が「変化」したと回答!現在、管理職には「定義し遂行する力」、一般社員には「周囲を巻き込むリーダーシップ」が期待されているが、実態はまだ届かず。
累計13,000社320万人以上に人材育成サービスを提供する株式会社ラーニングエージェンシー(旧トーマツ イノベーション株式会社、本社 東京都千代田区、代表取締役社長 眞崎大輔)は、2021年10月11日〜12月13日の期間、ビジネスパーソン5,099人を対象に「組織・チームのあり方の変化に関する意識調査」を行いました。今回はその中から「製造業の社員に求められることの変化」に関する結果を公表いたします。
[画像1: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-66527e2f242707df34f8-0.png ]
背景
この10年間、製品コモディティ化、サスティナブル・脱炭素への流れ、原材料高の影響、EV化の加速など、製造業では大手のみならず中堅・中小企業まで、さまざまな変化へのスピーディーな対応が求められるようになりました。海外進出のない企業でも労働力確保やコスト削減、BCP対策を目的とした物流拠点確保のため、海外企業と協業したり外国籍の方を採用したりするケースもあり、多様性への対応も重要となっています。このような変革期において、製造業の管理職・一般社員の方に求められる役割やスキル・知識はどのように変化しているのでしょうか。
今回は、製造業に携わる758人の回答から、この10年間での管理職・一般社員(非管理職)に求められる役割の変化と現在の実態を現場の社員の視点から解き明かすことに取り組みました。本アンケート結果が組織づくりや次世代の幹部社員・管理職育成に悩む製造業の経営者、人事担当者、さらには現役の管理職の方や一般社員の方にとって有益な情報となれば幸いです。
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調査結果の概要
1. 6割の製造業社員が、この10年で役割が「変化した」と回答
2. 管理職のあるべき姿は「コンプラ重視」8割、「効率性」「自ら何をすべきか定義・遂行」が他業種を上回る
3. 管理職に求められる能力「マネジメント」「リーダーシップ」、他業種を大きく上回る
4. 一般社員への期待「チームで協力して成果を上げる」が7割、「リーダーシップ」は期待と実態が大きく乖離
5. 6割が一般社員の「タイムマネジメント」スキルを重視、「IT・デジタルリテラシー」は他業種より低い4割
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[画像2: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-04443b22c531706f962e-11.png ]
調査結果の詳細
1. 6割の製造業社員が、この10年で役割が「変化した」と回答
最初に、製造業の管理職や一般社員に求められることが、この10年間で変わったかどうかについて尋ねました。管理職に求められることが変わったと回答した製造業の方は59.7%、一般社員に求められることが変わったと回答した方は62.7%となり、いずれも約6割の方が「変化した」と回答しました(図1、図2)。
[画像3: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-7308ffcef150abedd178-12.png ]
これ以降の設問は、製造業で求められる管理職や一般社員の姿が10年前と比べて「変わった」と回答した方のみに尋ねました。
2. 管理職のあるべき姿は「コンプラ重視」8割、「効率性」「自ら何をすべきか定義・遂行」が他業種を上回る
製造業における10年前に求められていた管理職像について複数回答で尋ねたところ、製造業を除く全業種(以下、『他業種』と記載)と同様に「トップダウンで物事を進める(77.1%)」が最も多く選ばれました。同じく、「部下に自分の模倣を求める(62.5%)」「前例を踏襲する(57.4%)」も2位、3位を占めています。一方、現在求められている管理職像では、「コンプライアンスやモラルを重視する(82.8%)」「時間内で効率的に終わらせる(79.5%)」「自ら何をすべきかを定義し、遂行する(72.9%)」がTOP3となっており、いずれも7〜8割の製造業社員に選ばれました。
製造業で特に変化したのは、コンプライアンスやモラルへの意識と意思決定のあり方です。「コンプライアンスやモラルを重視する」は10年前から73.5pt増で最も大きな変化が見られました。意思決定のあり方については、「トップダウンで物事を進める」が56.9pt減少したのに対し、「ボトムアップで物事を進める」は55.1pt増加しました。
ただし、現在求められている管理職像を他業種との比較で見ると「企業利益を重視する(+6.3pt)」「トップダウンで物事を進める(+5.8pt)」のように、製造業では従来型の管理職像も比較的多く選ばれています(図3)。
現在の管理職の傾向についても、従来型の働き方が他業種よりやや多い傾向が見られました。製造業における現在の管理職の傾向は、「トップダウンで物事を進める」が48.3%を占め、他業種よりも4.6pt多くなっています。同率1位の「コンプライアンスやモラルを重視する(48.3%)」は他業種とさほど大きな差はありませんが、3位の「前例を踏襲する(46.6%)」は他業種より6.4pt多い結果となりました。また、製造業における現在求められている管理職像と現在の管理職の傾向で大きなスコアの差が見られたのは、「自ら何をすべきかを定義し、遂行する(-47.1pt)」「ボトムアップで物事を進める(-45.4pt)」「前例にないことを行う(-43.8pt)」でした(図4)。
[画像4: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-e1b1d6123b29785b2b57-13.png ]
[画像5: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-34e5b70c7d0304a8735b-14.png ]
3. 管理職に求められる能力「マネジメント」「リーダーシップ」、他業種を大きく上回る
なぜ製造業の管理職像は10年前から変化したのでしょうか。その理由を3つまで選んでもらったところ、1位と2位は他業種と同じように「働き方(雇用形態や勤務時間・場所など)が多様化した(65.7%)」「市場環境が変化・複雑化した(53.7%)」でした。しかし、第3位が異なりました。製造業では「求められる成果がより高くなった・難易度が増した(41.6%)」が他業種よりも7.4pt多く選ばれています。また、「ビジネス・業務のやり方が以前と変わった(29.9%)」は他業種より4.4pt少なく、「その他」の選択肢を除くと、製造業の中で最も少ない結果となりました(図5)。
こうした変化に対応して、管理職に求められるスキルや知識も変化しています。製造業の管理職に対して、この10年で特に求められるようになったのは「マネジメント(64.5%)」のスキル。他業種より5.0pt多く、6割以上の回答者が選びました。第2位は「リーダーシップ(41.9%)」で、こちらも他業種より8.3pt多く選ばれています。一方、他業種で46.3%の回答者から選ばれた「IT・デジタルに関するリテラシー」は製造業では39.6%で6.7pt低くなっており、「共感力(相手に合わせた表現で伝える力)」も製造業では5.2pt低い33.7%にとどまりました(図6)。
[画像6: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-84bac710d1a433f1e82e-16.png ]
[画像7: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-eccb3cd6cf9062b243d6-15.png ]
4. 一般社員への期待「チームで協力して成果を上げる」が7割、「リーダーシップ」は期待と実態が大きく乖離
次に、製造業の一般社員についての変化を見ていきましょう。
10年前に一般社員に期待されていたことでは、「定型的な業務を確実に遂行する(77.4%)」が最多で他業種とほぼ同じ割合を占めました。第2位は「上位層の方針や判断をこまめに確認し、行動する(52.8%)」、第3位は「個人として成果を上げる(48.3%)」で、他業種より3〜4pt低いものの同じ順位となっています。一方で、製造業の一般社員に現在期待されている姿のTOP3には「チームで協力して成果を上げる(69.7%)」「自ら現場で判断し、行動する(67.0%)」「非定型的な業務・プロジェクト型の業務で役割を遂行する(63.7%)」が選ばれました。
製造業において、特に10年前から大きく減少したのは「定型的な業務を確実に遂行する(-42.6pt)」「上位層の方針や判断をこまめに確認し、行動する(-12.0pt)」「個人として成果を上げる(-8.6pt)」です。逆に大きく増加したのは「非定型的な業務・プロジェクト型の業務で役割を遂行する(+52.4pt)」「周囲を巻き込みリーダーシップをとる(+47.9pt)」など。10年前よりもプロジェクト型など臨機応変な対応が求められる中で、チームワークをより重視しつつ、時には自らリーダーシップを発揮することが求められているといえます(図7)。
しかし、製造業の一般社員に対して求められるこうした姿と実態は必ずしも一致していません。他業種の場合と同様、製造業でも「周囲を巻き込みリーダーシップをとる(-41.9pt)」「非定型的な業務・プロジェクト型の業務で役割を遂行する(-35.3%)」「自ら現場で判断し、行動する(-32.0pt)」で特に大きな乖離が見られました(図8)。
ただし、現在の一般社員が実際に担っている役割のTOP3は「定型的な業務を確実に遂行する(58.7%)」「チームで協力して成果を上げる(49.3%)」「上位層の方針や判断をこまめに確認し、行動する(47.6%)」となっており、求められる姿に一致する部分と変化を求められる部分とが混在しています。このことから、製造業の一般社員は変革期の只中にあるといえそうです。
[画像8: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-da76c011025fe5d8a409-18.png ]
[画像9: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-e96e0855ffafaffeefef-17.png ]
5. 6割が一般社員の「タイムマネジメント」スキルを重視、「IT・デジタルリテラシー」は他業種より低い4割
次いで、製造業の一般社員に求められる姿が変化した理由を3つまで選んでもらいました。最も多く選ばれたのは「状況の変化が早くなった」で60.4%です。他業種でも第1位でしたが製造業では3.9pt多い結果となり、時代の変化を他業種よりも強く感じていると考えられます。2位と3位はそれぞれ「顧客やマーケットのニーズが多様化した(41.6%)」「チームメンバーの特性やレベル感が多様化した(41.4%)」でした。
なお、他業種との差が最も大きかった項目は「リモートワークの浸透により、単独で行動する機会が増えた(11.5%)」で、他業種より12.0pt低い結果となっています(図9)。リモートワークができる職種があまり多くない製造業特有の事情がうかがえます。
製造業の一般社員に対して求められるスキルや知識のうち10年前と比較して特に重視されるようになってきたと感じるものは、「タイムマネジメント(57.6%)」「言語化する力(相手に合わせた表現で伝える力)(45.5%)」「IT・デジタルに関するリテラシー(43.2%)」がTOP3となりました。ただ、「IT・デジタルに関するリテラシー」は、他業種では最多の56.5%を占めたのに対し、製造業では13.3pt低い43.2%となりました。デジタルツールの重要性は他業種ほど差し迫った課題にはなっていないと推察されます(図10)。
[画像10: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-8856c07dbac19bf1d054-19.png ]
[画像11: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-49b8e0890bbe4dd15854-19.png ]
まとめ
本アンケートの結果より、製造業における管理職と一般社員における役割認識が10年前から大きく変化していることが浮き彫りになったといえます。
管理職に期待される役割の中で、変化が大きい項目の1つである「コンプライアンスやモラルを重視する」について言及すると、ハラスメントに対する世の中の厳しさは、ベテランが厳しく指導する現場での教育風景や、協力会社とのコミュニケーションの取り方を一変させていると言えます。また続いて変化の大きい項目である「時間内で効率的に終わらせる」について、日本の製造業のQCDは世界でもトップレベルです。しかし、ベテラン社員の高齢化による戦力ダウンや、原材料高や価格競争によるコスト意識の更なる高まり、顧客・市場ニーズの変化の加速に合わせた短納期化などが、現場社員の効率性に対する危機意識を高めた可能性があります。
一方、現在求められる管理職像と実態の比較では、「ボトムアップで物事を進める」ことを求める回答が6割を超えていますが、実態は2割程度。逆に、「トップダウンで物事を進める」ことを求める回答が2割に対し、実態は5割に上ります。また、他業種と比べて、求められる管理職像として変化が小さい項目に着目すると「トップダウンで物事を進める」「決められたことを確実に遂行する」といったものが挙がり、管理職像が変化した理由として「ビジネス・業務のやり方が以前と変わった」項目を挙げる方が他業種と比較すると少ない結果となりました。経験豊富な上位職の指示のもと、誤りのない手順を重んじ、全員が一体感を持って業務を進める製造業の特徴がまだまだ色濃く残っているといえます。
重視されるようになった管理職のスキルに目を向けると「マネジメント」や「リーダーシップ」が他業種の割合を大きく上回り、第1位、第2位を占めました。反対に、他業種で第2位となった「IT・デジタルに関するリテラシー」を挙げる社員の割合は低くなっています。製造業の現場ではデジタルツールの活用よりも、社員一人ひとりの可能性を信じ、能力を引き出すこと、先を見せて導くことを重視しているといえるでしょう。
なお、一般社員に目を転じると、現在一般社員に求められていることの上位には、他業種と同じように「チームで協力して成果を上げる」「現場で判断し実行する」「非定型業務の遂行」「周囲を巻き込みリーダーシップをとる」が入り、時には自ら判断しリーダーシップを発揮する姿が期待されています。しかし、実態では特に「周囲を巻き込みリーダーシップをとる」の項目で期待される姿との差が大きく、他業種と比べてもより大きく乖離しています。製造業において周囲を巻き込みリーダーシップを発揮するためには、経験・技術が必要とされ、管理職と比較すると経験もスキルも不足している一般社員の実情が表れていると推察されます。
日本の製造業は強い現場力に支えられてきました。その現場力は強みとして未来の日本にも引き継ぐべきものです。一方で、労働時間や労働環境に対する法整備、若年層の働き方や会社への帰属意識は変わりつつあります。こうした外的変化に対応するには、現場の管理職が行動レベルからやり方を見直さなければなりません。それには、前提を疑う力を伸ばし、仕事の進め方を抜本的に見直しつつデジタルツールの活用も検討するなど、思考の枠組みを変える取り組みも求められるでしょう。
本調査レポートが、皆様のチーム・組織運営のあり方を見直し、管理職だけでなく一般社員も含む役割の見直しの一助となれば幸いです。
【調査レポートはこちら】https://www.learningagency.co.jp/download/all/news_20220330.pdf
[表1: https://prtimes.jp/data/corp/5749/table/80_1_92980b15f0db6b952ffe7932d5e77b28.jpg ]
*本調査を引用される際は【ラーニングエージェンシー「製造業の社員に求められることの変化に関する調査」】と明記ください
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます
[表2: https://prtimes.jp/data/corp/5749/table/80_2_65e7a047fc9c99eeadd1e8c5c18964ae.jpg ]
累計13,000社320万人以上に人材育成サービスを提供する株式会社ラーニングエージェンシー(旧トーマツ イノベーション株式会社、本社 東京都千代田区、代表取締役社長 眞崎大輔)は、2021年10月11日〜12月13日の期間、ビジネスパーソン5,099人を対象に「組織・チームのあり方の変化に関する意識調査」を行いました。今回はその中から「製造業の社員に求められることの変化」に関する結果を公表いたします。
[画像1: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-66527e2f242707df34f8-0.png ]
背景
この10年間、製品コモディティ化、サスティナブル・脱炭素への流れ、原材料高の影響、EV化の加速など、製造業では大手のみならず中堅・中小企業まで、さまざまな変化へのスピーディーな対応が求められるようになりました。海外進出のない企業でも労働力確保やコスト削減、BCP対策を目的とした物流拠点確保のため、海外企業と協業したり外国籍の方を採用したりするケースもあり、多様性への対応も重要となっています。このような変革期において、製造業の管理職・一般社員の方に求められる役割やスキル・知識はどのように変化しているのでしょうか。
今回は、製造業に携わる758人の回答から、この10年間での管理職・一般社員(非管理職)に求められる役割の変化と現在の実態を現場の社員の視点から解き明かすことに取り組みました。本アンケート結果が組織づくりや次世代の幹部社員・管理職育成に悩む製造業の経営者、人事担当者、さらには現役の管理職の方や一般社員の方にとって有益な情報となれば幸いです。
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調査結果の概要
1. 6割の製造業社員が、この10年で役割が「変化した」と回答
2. 管理職のあるべき姿は「コンプラ重視」8割、「効率性」「自ら何をすべきか定義・遂行」が他業種を上回る
3. 管理職に求められる能力「マネジメント」「リーダーシップ」、他業種を大きく上回る
4. 一般社員への期待「チームで協力して成果を上げる」が7割、「リーダーシップ」は期待と実態が大きく乖離
5. 6割が一般社員の「タイムマネジメント」スキルを重視、「IT・デジタルリテラシー」は他業種より低い4割
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調査結果の詳細
1. 6割の製造業社員が、この10年で役割が「変化した」と回答
最初に、製造業の管理職や一般社員に求められることが、この10年間で変わったかどうかについて尋ねました。管理職に求められることが変わったと回答した製造業の方は59.7%、一般社員に求められることが変わったと回答した方は62.7%となり、いずれも約6割の方が「変化した」と回答しました(図1、図2)。
[画像3: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-7308ffcef150abedd178-12.png ]
これ以降の設問は、製造業で求められる管理職や一般社員の姿が10年前と比べて「変わった」と回答した方のみに尋ねました。
2. 管理職のあるべき姿は「コンプラ重視」8割、「効率性」「自ら何をすべきか定義・遂行」が他業種を上回る
製造業における10年前に求められていた管理職像について複数回答で尋ねたところ、製造業を除く全業種(以下、『他業種』と記載)と同様に「トップダウンで物事を進める(77.1%)」が最も多く選ばれました。同じく、「部下に自分の模倣を求める(62.5%)」「前例を踏襲する(57.4%)」も2位、3位を占めています。一方、現在求められている管理職像では、「コンプライアンスやモラルを重視する(82.8%)」「時間内で効率的に終わらせる(79.5%)」「自ら何をすべきかを定義し、遂行する(72.9%)」がTOP3となっており、いずれも7〜8割の製造業社員に選ばれました。
製造業で特に変化したのは、コンプライアンスやモラルへの意識と意思決定のあり方です。「コンプライアンスやモラルを重視する」は10年前から73.5pt増で最も大きな変化が見られました。意思決定のあり方については、「トップダウンで物事を進める」が56.9pt減少したのに対し、「ボトムアップで物事を進める」は55.1pt増加しました。
ただし、現在求められている管理職像を他業種との比較で見ると「企業利益を重視する(+6.3pt)」「トップダウンで物事を進める(+5.8pt)」のように、製造業では従来型の管理職像も比較的多く選ばれています(図3)。
現在の管理職の傾向についても、従来型の働き方が他業種よりやや多い傾向が見られました。製造業における現在の管理職の傾向は、「トップダウンで物事を進める」が48.3%を占め、他業種よりも4.6pt多くなっています。同率1位の「コンプライアンスやモラルを重視する(48.3%)」は他業種とさほど大きな差はありませんが、3位の「前例を踏襲する(46.6%)」は他業種より6.4pt多い結果となりました。また、製造業における現在求められている管理職像と現在の管理職の傾向で大きなスコアの差が見られたのは、「自ら何をすべきかを定義し、遂行する(-47.1pt)」「ボトムアップで物事を進める(-45.4pt)」「前例にないことを行う(-43.8pt)」でした(図4)。
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3. 管理職に求められる能力「マネジメント」「リーダーシップ」、他業種を大きく上回る
なぜ製造業の管理職像は10年前から変化したのでしょうか。その理由を3つまで選んでもらったところ、1位と2位は他業種と同じように「働き方(雇用形態や勤務時間・場所など)が多様化した(65.7%)」「市場環境が変化・複雑化した(53.7%)」でした。しかし、第3位が異なりました。製造業では「求められる成果がより高くなった・難易度が増した(41.6%)」が他業種よりも7.4pt多く選ばれています。また、「ビジネス・業務のやり方が以前と変わった(29.9%)」は他業種より4.4pt少なく、「その他」の選択肢を除くと、製造業の中で最も少ない結果となりました(図5)。
こうした変化に対応して、管理職に求められるスキルや知識も変化しています。製造業の管理職に対して、この10年で特に求められるようになったのは「マネジメント(64.5%)」のスキル。他業種より5.0pt多く、6割以上の回答者が選びました。第2位は「リーダーシップ(41.9%)」で、こちらも他業種より8.3pt多く選ばれています。一方、他業種で46.3%の回答者から選ばれた「IT・デジタルに関するリテラシー」は製造業では39.6%で6.7pt低くなっており、「共感力(相手に合わせた表現で伝える力)」も製造業では5.2pt低い33.7%にとどまりました(図6)。
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[画像7: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-eccb3cd6cf9062b243d6-15.png ]
4. 一般社員への期待「チームで協力して成果を上げる」が7割、「リーダーシップ」は期待と実態が大きく乖離
次に、製造業の一般社員についての変化を見ていきましょう。
10年前に一般社員に期待されていたことでは、「定型的な業務を確実に遂行する(77.4%)」が最多で他業種とほぼ同じ割合を占めました。第2位は「上位層の方針や判断をこまめに確認し、行動する(52.8%)」、第3位は「個人として成果を上げる(48.3%)」で、他業種より3〜4pt低いものの同じ順位となっています。一方で、製造業の一般社員に現在期待されている姿のTOP3には「チームで協力して成果を上げる(69.7%)」「自ら現場で判断し、行動する(67.0%)」「非定型的な業務・プロジェクト型の業務で役割を遂行する(63.7%)」が選ばれました。
製造業において、特に10年前から大きく減少したのは「定型的な業務を確実に遂行する(-42.6pt)」「上位層の方針や判断をこまめに確認し、行動する(-12.0pt)」「個人として成果を上げる(-8.6pt)」です。逆に大きく増加したのは「非定型的な業務・プロジェクト型の業務で役割を遂行する(+52.4pt)」「周囲を巻き込みリーダーシップをとる(+47.9pt)」など。10年前よりもプロジェクト型など臨機応変な対応が求められる中で、チームワークをより重視しつつ、時には自らリーダーシップを発揮することが求められているといえます(図7)。
しかし、製造業の一般社員に対して求められるこうした姿と実態は必ずしも一致していません。他業種の場合と同様、製造業でも「周囲を巻き込みリーダーシップをとる(-41.9pt)」「非定型的な業務・プロジェクト型の業務で役割を遂行する(-35.3%)」「自ら現場で判断し、行動する(-32.0pt)」で特に大きな乖離が見られました(図8)。
ただし、現在の一般社員が実際に担っている役割のTOP3は「定型的な業務を確実に遂行する(58.7%)」「チームで協力して成果を上げる(49.3%)」「上位層の方針や判断をこまめに確認し、行動する(47.6%)」となっており、求められる姿に一致する部分と変化を求められる部分とが混在しています。このことから、製造業の一般社員は変革期の只中にあるといえそうです。
[画像8: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-da76c011025fe5d8a409-18.png ]
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5. 6割が一般社員の「タイムマネジメント」スキルを重視、「IT・デジタルリテラシー」は他業種より低い4割
次いで、製造業の一般社員に求められる姿が変化した理由を3つまで選んでもらいました。最も多く選ばれたのは「状況の変化が早くなった」で60.4%です。他業種でも第1位でしたが製造業では3.9pt多い結果となり、時代の変化を他業種よりも強く感じていると考えられます。2位と3位はそれぞれ「顧客やマーケットのニーズが多様化した(41.6%)」「チームメンバーの特性やレベル感が多様化した(41.4%)」でした。
なお、他業種との差が最も大きかった項目は「リモートワークの浸透により、単独で行動する機会が増えた(11.5%)」で、他業種より12.0pt低い結果となっています(図9)。リモートワークができる職種があまり多くない製造業特有の事情がうかがえます。
製造業の一般社員に対して求められるスキルや知識のうち10年前と比較して特に重視されるようになってきたと感じるものは、「タイムマネジメント(57.6%)」「言語化する力(相手に合わせた表現で伝える力)(45.5%)」「IT・デジタルに関するリテラシー(43.2%)」がTOP3となりました。ただ、「IT・デジタルに関するリテラシー」は、他業種では最多の56.5%を占めたのに対し、製造業では13.3pt低い43.2%となりました。デジタルツールの重要性は他業種ほど差し迫った課題にはなっていないと推察されます(図10)。
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[画像11: https://prtimes.jp/i/5749/80/resize/d5749-80-49b8e0890bbe4dd15854-19.png ]
まとめ
本アンケートの結果より、製造業における管理職と一般社員における役割認識が10年前から大きく変化していることが浮き彫りになったといえます。
管理職に期待される役割の中で、変化が大きい項目の1つである「コンプライアンスやモラルを重視する」について言及すると、ハラスメントに対する世の中の厳しさは、ベテランが厳しく指導する現場での教育風景や、協力会社とのコミュニケーションの取り方を一変させていると言えます。また続いて変化の大きい項目である「時間内で効率的に終わらせる」について、日本の製造業のQCDは世界でもトップレベルです。しかし、ベテラン社員の高齢化による戦力ダウンや、原材料高や価格競争によるコスト意識の更なる高まり、顧客・市場ニーズの変化の加速に合わせた短納期化などが、現場社員の効率性に対する危機意識を高めた可能性があります。
一方、現在求められる管理職像と実態の比較では、「ボトムアップで物事を進める」ことを求める回答が6割を超えていますが、実態は2割程度。逆に、「トップダウンで物事を進める」ことを求める回答が2割に対し、実態は5割に上ります。また、他業種と比べて、求められる管理職像として変化が小さい項目に着目すると「トップダウンで物事を進める」「決められたことを確実に遂行する」といったものが挙がり、管理職像が変化した理由として「ビジネス・業務のやり方が以前と変わった」項目を挙げる方が他業種と比較すると少ない結果となりました。経験豊富な上位職の指示のもと、誤りのない手順を重んじ、全員が一体感を持って業務を進める製造業の特徴がまだまだ色濃く残っているといえます。
重視されるようになった管理職のスキルに目を向けると「マネジメント」や「リーダーシップ」が他業種の割合を大きく上回り、第1位、第2位を占めました。反対に、他業種で第2位となった「IT・デジタルに関するリテラシー」を挙げる社員の割合は低くなっています。製造業の現場ではデジタルツールの活用よりも、社員一人ひとりの可能性を信じ、能力を引き出すこと、先を見せて導くことを重視しているといえるでしょう。
なお、一般社員に目を転じると、現在一般社員に求められていることの上位には、他業種と同じように「チームで協力して成果を上げる」「現場で判断し実行する」「非定型業務の遂行」「周囲を巻き込みリーダーシップをとる」が入り、時には自ら判断しリーダーシップを発揮する姿が期待されています。しかし、実態では特に「周囲を巻き込みリーダーシップをとる」の項目で期待される姿との差が大きく、他業種と比べてもより大きく乖離しています。製造業において周囲を巻き込みリーダーシップを発揮するためには、経験・技術が必要とされ、管理職と比較すると経験もスキルも不足している一般社員の実情が表れていると推察されます。
日本の製造業は強い現場力に支えられてきました。その現場力は強みとして未来の日本にも引き継ぐべきものです。一方で、労働時間や労働環境に対する法整備、若年層の働き方や会社への帰属意識は変わりつつあります。こうした外的変化に対応するには、現場の管理職が行動レベルからやり方を見直さなければなりません。それには、前提を疑う力を伸ばし、仕事の進め方を抜本的に見直しつつデジタルツールの活用も検討するなど、思考の枠組みを変える取り組みも求められるでしょう。
本調査レポートが、皆様のチーム・組織運営のあり方を見直し、管理職だけでなく一般社員も含む役割の見直しの一助となれば幸いです。
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*本調査を引用される際は【ラーニングエージェンシー「製造業の社員に求められることの変化に関する調査」】と明記ください
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*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます
[表2: https://prtimes.jp/data/corp/5749/table/80_2_65e7a047fc9c99eeadd1e8c5c18964ae.jpg ]