<エムトレ提携記念インタビュー>日本個人投資家協会理事(事務局長)・ジャイコミ編集委員長 奥寿夫氏に聞く
[17/08/05]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
■若い世代に投資の醍醐味と知見を伝えたい
日本個人投資家協会(JapanAssociationforIndividualInvestors:JAII)は1995年2月、日本で初めて個人投資家が中心になって設立された。
是川銀蔵氏
当初の主要メンバーは、「最後の相場師」と呼ばれた是川銀蔵氏(1897−1992)を囲む勉強会から生まれた「銀友会」の個人投資家たち。そして、理事長には、是川氏亡き後も「銀友会」の中心となっていた国際エコノミストの長谷川慶太郎氏が就任した。
翌年、金融業界ではわが国初のNPO(特定非営利活動団体)として内閣府に認定され、現在も3000人の協会員を中心に、セミナーや企業訪問、海外団体との交流、さらには投資環境整備のための政策提言など、多方面で活動している。
エムトレは今年7月、同協会の法人会員となり、同時にJAIIの情報サイト「ジャイコミ(JAIICOMI)」との相互リンクを実現することで合意した。
今後、多くの若い投資家たちと共に、資産運用の先輩であるJAIIの知見と行動力を存分に吸収するために何をすべきか聞いた。
■若い投資家の会員加入は大歓迎
エムトレ:今回は弊社RFSマネジメントの法人会員加入と弊社の情報サイト「エムトレ」と協会の情報サイト「ジャイコミ」の相互リンクをご了承いただき、ありがとうございました。以前から「会員加入については審査が厳しいところだ」と聞いていたので、実はほっとしています。
奥寿夫(JAII)事務局長:実際、厳しいのですよ(笑)。特に法人会員については、営業目的で入会したいという会社もありますから、審査はより厳しいですね。
エムトレ:協会の理事の方々の中には長年、企業年金などで実際に資金を運用されている運用マネージャーの方もいらっしやるそうですね。
奥:そうです。例えば井上明生理事(株式会社フィナンシヤル・アドバイス代表)は卜−ホーグループの年金基金の運用を16年続けていまして、預かり資産が16年前に比べて3倍になっています。
井上理事は、協会のセミナーでもお話頂くのですが、先日も、「この会社は凄い」という話があり、その会社の株式を買ったら本当に上がったという会員さんの声も聞きました。私も実は、是川銀蔵氏の残した奨学金基金の運用を30年以上続けていて、毎年4%程度の利益を出し続けています。
この協会で勉強しながら、現実に個々の実力を高め合ってきたという自信は会員皆が持っていると思います。
エムトレ:現在はジャイコミでも配信されている木村喜由理事の「マーケット通信」は先日通算1500本を達成されたそうですね?
奥:木村理事の記事は週2回、年間100本ほどのペースで配信しています。よく当たっているので、投資家の方々からは人気があります。木村理事は、「一般の方々は短期、人気、不勉強に走る人が多い。しかし、それでは駄目です」とはっきり言います(笑)。
エムトレ:私も不勉強なので耳が痛いです(笑)。しかしJAIIは歴史が古い上に、会員のレベルも高いとなると、若い投資家の方々の中には「敷居が高い」と感じる人もいるかもしれません。若い個人投資家の会員加入についてはどうお考えですか?
奥:大歓迎です。歴史が古いこともあって、現在はやはり年配の会員さんの比率が高くなっています。先般、経済産業省から個人投資家の意識調査を依頼されて、当協会の会員の皆様にアンケートをお願いしたのですが、回答をいただいた会員さんたちを年代別に分けてみたら、60代〜70代の会員が多くて過半数を占めていました。50代も21.2%います。
これに対して、40代は16.5%、30代は5.3%、20代は3.6%で、20代〜40代合計でも25%程でした。逆に言うと、当協会には30年、40年の投資経験を持つベテラン投資家の運用ノウハウがたくさんあるということです。
協会にはこうした知恵や知識を若い世代に教え、諭し、導く役割もあると思いますから、次世代への継承を怠ってはいけないと感じさせられました。ただ「ジャイコミ」の有料版(注1)を開始したのが2016年3月と遅かったことや、SNSもまだ十分に使いこなしていないことも含めて、今後の課題の一つです。
※注1.ジャイコミ有料記事が読める「ジャイコミメンバー」は月額1000円(NPO法人会員費のため消費税なし。)
ジャイコミに関するお問い合わせは Email:jaii-info@jaii.org
■全国規模での個人投資家記事やイベント開催に期待も
エムトレ:「ジャイコミ」を拝見させていただくと、面白い記事もためになる記事もたくさんありました。例えば、株式以外の投資商品のセミナーヘの潜入取材。仮想通貨のセミナーに関する記事は個人投資家目線で書かれていて、興味深いものでした。
奥:あれは、一人の会員さんだけが書いているのです。本当は、全国でいろいろなセミナーが開かれているので、会員さんたちが皆、実際に行かれたセミナーの実状をレポートしてくれると、もっと幅広く、参考にもなると思うのですが。
エムトレ:それ、良いじやないですか。個人投資家目線のセミナーレポートが全国規模で書かれれば、詐欺まがいのセミナーや教材なども駆逐できるはずです。若い方々にとっても大いに参考になると思います。
JAIIの活動の一つとして、ぜひ考えていただきたいですね。
奥:セミナーの最中にツイッターで呟くとか(笑)。実は、全国規模という点では、かつて参加したことのあるアメリカの個人投資家協会(AAII)の総会を振り返ると考えさせられることが多いのです。
AAIIの総会には、アメリカ全上からヘリコプターや車などで多くの投資家たちが集まっていました。むろん、有料です。それでも来る。アメリカでは子供に「これは良い会社だから」と株を買わせる親も多く、親が子供に「お年玉は銀行に預金しなさい」という日本とは環境が違いますが、この協会も北九州支部とか北海道支部といった具合に全国規模にして、支
部別にセミナーやイベントを開き、いずれ東京で大イベントを開くという形になればいいと思います。
エムトレ:投資環境改革も含めて、実現すればよいでしょうね。期待しています。ところで、現在の協会の会員さんたちの投資対象はやはり証券中心でしょうか?
■投資の中心は株・社債
奥:会員の投資対象はやはり、株と社債が圧倒的に多いですね。皆、そこに興味があるのは確かです。ただ、皆さん不動産や他の投資にも関心はあります。会員さん自身、もともといろいろな投資を40〜50年やってきたベテランが多いので、情報にも敏感です。「ジヤイコミ」では、木村さんの他にも協会副理事長で元住友銀行専務だった岡部陽二先生に、金融・証券・医療・不動産などを中心に経済・国際問題を書いていただいています。
エムトレ:初心者には難しいのでは?
奥:いやいや、最初は難しいかもしれませんが、慣れてくればわかります。そういう教育も、JAIIの役目の一つではあります。
エムトレ:最近は、FXや仮想通貨など投資対象も多様化しています。その点はいかがでしようか?
奥:今はスマホで簡単に情報が手に入るので、投資は簡単だと思われがちですが、実際にはそれほど簡単なものではありません。是川銀蔵は、35歳から株を始めましたが、彼でさえ大きな損をしなくなるのに30年かかったと言っていました。大きな財産を作り上げたのは80歳の時です。公益財団法人を設立するまでに20年かかっているのです。
投資の基本は「分からないものはやるな」ということだと思います。
「ジャイコミ」のホームページトップに、
(1)投資・経済を勉強したい人
(2)配当利回りなど、堅実な資産運用がしたい方
(3)メディアの受け売りでない、本物の情報を知りたい人
(4)勘や運だけで投資をしてきたが、きちんと金融を学びたい人
におすすめ!と書いてあります。
事実、何十年もやっている投資家は政治経済を幅広く抑え、バランスがよく、深く読み取ることができます。そうした感性を磨いてから投資に入っても十分に間に合います。若い人たちにも、そういう姿勢で投資に取り組んでいただきたいと考えています。
■投資環境改善に向けたJAIIの活動
長谷川慶太郎氏
エムトレ:協会設立当初、JAIIは証券投資環境の改善のために政府に対して手数料自由化他、いろいろな提言もされていました。現在は?
奥:1995年当時はまだ、証券会社は免許制で競争もあまり激しくありませんでした。
手数料も自由化されていなかったので、投資家は往復で2〜3%の手数料を取られていました。1億円なら20万〜30万円です。そこで証券取引審議会に個人投資家代表として長谷川理事長などが出席して改善を求めました。
その後、平成10年に証券業者は登録制に変更され、手数料も平成11年には完全自由化されました。
その後も政府や関係団体などに個人投資家ならではの意見を言わせていただいています。今は、証券税制のさらなる緩和要望でしょうか。
エムトレ:株と先物の損益通算の実現要望ですね。
奥:それに加えて、一部緩和されましたが、損金の繰り越し期限をさらに延ばすといったこともお願いしています。
エムトレ:JAIIの活動といえば、企業見学会やセミナーなどは今後も活発に行われるのでしょうか?
奥:企業を実際に目で見て、話を聞くのは大事なことです。そうした投資家教育については積極的に続けていきます。セミナーも定期的に開いていますし、ジャイコミを通じた情報提供も軌道に乗りましたので、さらに拡大していきたいと考えています。
エムトレ:私たちも、ネット情報だけを集めるのではなく、こうやって直接取材し、生の声を読者に届けることを目指しています。JAIIの活動取材も頑張りますので、よろしくお願いします。今日はありがとうございました。
奥:こちらこそありがとうございました。今後もよろしくお願いします。
【ニュース提供・エムトレ】
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