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筑波大学名誉教授 遠藤誉氏インタビュー vol.2 米中対立の根幹は『中国製造2025』にあり【フィスコ 株・企業報】

注目トピックス 経済総合
◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 Vol.7 −米中冷戦の行方と日本の未来』(3月29日発売)の特集「米中対立の根幹は『中国製造2025』にあり 〜遠藤誉氏に聞く〜」の一部である。全2回に分けて配信する。


2018年以降、米中貿易戦争が顕在化している。アメリカは中国へ制裁関税を課し、これに対して中国も報復関税を発動。アメリカは、中国の国家戦略「中国製造2025」により中国に追い抜かれることを恐れている。「中国製造2025」とは何か、アメリカを脅かす中国の行く末はどうなるのか。中国研究の第一人者である遠藤誉氏にお話を伺った。

■日本とは異なり、中国は半導体で絶対に譲らない

アメリカの大統領がブルーカラー労働者から支持を受け、知的財産の侵害を声高に主張する光景、それは今の中国だけでなく、過去の日本に対しても向けられたものだ。米国市場に留まりたいがために、過去の日本はアメリカと取引をして、結果としてアメリカにとって大きな脅威ではなくなった。

日本電気(現NEC)が半導体売上高でアメリカ企業を抜いて世界トップとなり、日本発のOSトロンが出るに至り、安全保障上でも脅威となるハードとソフトで世界を日本に席巻される脅威をアメリカは感じたのだろう。ロックフェラーやコロンビア映画を買収するなど、ジャパン・マネーがアメリカを席捲したのも、この時期と重なる。これらの記載で日本の企業名など固有名詞を隠してみれば、まるで現在の中国と中国企業の状況を述べているようだ。

過去、日本の躍進に対して、アメリカは様々な手を打っている。1984年の日米円ドル委員会において、金融の国際化・自由化による閉鎖的な市場の開放がアメリカから日本へ要求され、1985年のプラザ合意へ至ってゆく。急激な円高が日本製造業の競争力低下の一因となり、日本銀行による政策金利の調整でバブルの芽も生まれた。

1987年にはパソコンやテレビなどに100%の関税を課す対日制裁措置を発動して交渉を優位に進めようとしている。1989年から始まった日米構造協議では、貿易赤字削減のための日本の内需拡大という名目のもとで、10年間の投資総額として財政が軋むほどの巨額投資を日本に計画させた。借金漬け、過剰投資、バブルの加速と破綻、その結果としての不良債権の増大、公共投資への依存、財政悪化につながった日本の状況は記憶に新しい。

1986年にかけての日米半導体協定においては、アメリカ市場から締め出されたくないという日本企業の思惑、それに伴うアメリカ半導体企業への配慮から、アメリカ半導体企業にその後の復活も許した(1991年に改定された協定においては、外国製の半導体が「日本市場でシェア20%以上」とすることが明文化されている)。結局は低価格化の流れのなかで必要以上に高付加価値路線を追求してしまったことが日本半導体の敗因ともいわれるが、日米半導体協定がきっかけとなったことは疑いない。

かつて日本の半導体は世界を席巻した。同盟国である日本に対しても、安全保障上の観点からアメリカは危機感を募らせた。中国の半導体企業が力を付けるとなればなおさらだろう。日本はアメリカの同盟国であるが故に、日米半導体協議で譲歩をしてしまった面もある。一方、中国は絶対に譲歩しないというのが遠藤氏の見方だ。

【遠藤誉Profile】
筑波大学名誉教授、理学博士。1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃習近平はいま何を目論んでいるのか』、『チャイナセブン〈紅い皇帝〉習近平』、『毛沢東日本軍と共謀した男』など多数。




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