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イーストン Research Memo(3):19/3期に売上高900億円、営業利益18.2億円を目指す

注目トピックス 日本株
■新中期経営計画『PROJECT “C”』

(1)新中期経営計画の概要

ルネサスイーストン<9995>は2016年3月期で終了した中期経営計画を受け継ぐ、新中期経営計画を策定・発表した。2017年3月期から2019年3月期までの新3ヶ年中期経営計画は『PROJECT “C”』と名付けられている。

『PROJECT “C”』の“C”は“Collaborate”と“Create”の頭文字からきている。“Collaborate”(連携)に込められている意味は、同社が、顧客や仕入先、パートナー企業等と連携を図りながら、新分野・新製品の領域において事業の発展を目指すという意気込みだ。また“Create”(創造)というのは、同社の社是である「創造と革新」につながるものであるが、同社が言う「創造」には“創注”という概念が含まれている。創注というのは同社の造語で、“注文を創る”、すなわち、顧客ニーズをくみ取ることで注文(ビジネス)を自ら作り出すという、働く姿勢のあり方を表した言葉だ。社外との連携と創注という仕事へのプロアクティブな姿勢を徹底することで、自社を“Confident Company”、“Competitive Company”(自信にあふれた、競争力のある会社)へ進化させよう、というのが“C”に込められた思いだ。

新中期経営計画で掲げる業績計画は、最終年度の2019年3月期は売上高90,000百万円、営業利益1,820百万円を予想している。

同社が今回、売上目標を90,000百万円としてきた理由としては、複数の要因が考えられる。1つの理由は、ルネサスエレクトロニクスにおいて行われている、事業の選択と集中の強化や生産体制の構造改革の影響だ。ルネサスエレクトロニクスは自動車向けや産業向けを増やしてPC・オフィス用や通信用を減らす事業ポートフォリオ改革を進めるほか、工場のライン数も2013年3月末の22ライン(前工程14、後工程8)から2017年3月末には11(前工程8、後工程3)に半減させる予定だ。こうした動きは、同社のルネサスエレクトロニクスからの仕入高の一時的な減少につながり、売上高にも影響することが想定される。

もう1つは、中長期的成長エンジンと期待される自動車向け売上高の本格拡大期の関係だ。自動車向けの期待が高まる背景には、いわゆる自動運転車などの先進運転支援システム(ADAS)の実用化がある。ただし、これが実体的に収益貢献するまでには、まだしばらく時間を要し、次期中期経営計画以後になるとみられる。

前述のように、2016年3月期の市場縮小の原因は中国の過剰設備の問題に根本原因があるという見方がされている。この点がどういう形で解決されるのか、あるいはされないのか。また、これが中国経済のハードランディングにつながるのか、など不透明要因が多いこともまた、同社をして回復・成長について慎重な見方をさせている原因と言えるだろう。

(2)成長戦略

新中期経営計画『プロジェクト“C”』の具体的な成長戦略は2017年3月期の重点施策としてすでにスタートしている。主要テーマは、a)ルネサスエレクトロニクス成長商品の売り上げ拡大:自動車・産業分野における新規成長市場への拡販強化、b)新規ビジネスへの取り組み強化:顧客ニーズを把握したシステムソリューション提案の実行、の2点だ。これらは前中期経営計画から引き継がれている重要テーマでもある。

a)ルネサスエレクトロニクス成長戦略商品の売り上げ拡大
ルネサスエレクトロニクスは事業ポートフォリオの選択と集中を進めているが、その中で注力分野として強化・拡大が打ち出されているのが、自動車向けと産業向けだ。同社もルネサスエレクトロニクスの特約店として、歩調を合わせて自動車・産業両市場向けの収益拡大に注力している。

同社はかねてより、「デザイン−イン」活動を重視した営業活動を行ってきた。これは、顧客が新製品を設計する段階で顧客ニーズを満たすソリューション提案を行い、同社の取り扱うルネサスエレクトロニクス製品を顧客の新製品の仕様に組み込ませるといった方式の営業活動だ。主力の顧客事業分野である、「自動車」と「産業」の分野においてはデザイン−イン活動を通じたアプローチが非常に重要となっている。

2016年3月期は自動車向けで372億円、産業分野向けなどで279億円の、合計651億円のデザイン−イン活動を行った。2017年3月期については同様に、自動車分野向け330億円、産業分野向け320億円の合計650億円のデザイン−イン活動を計画している。これらは将来の売上高に反映されてくる。

主力であるルネサスエレクトロニクス製品は、成長分野に位置付けている自動車分野において、エンジン、トランスミッション、パワーステアリング、ADASなどの制御への拡販を強化。産業分野では、スマートメーター、ベッドサイドモニター、エンコーダー、セキュリティーアラームのほか、医療モニターでの採用事例なども出てきている。

自動車分野での注目点はADAS(先進運転支援システム)が最も注目される。自動車1台に搭載されるマイコンの数は、電子制御される項目数が増加するに従って増加し、現在では高級車の場合、数百個に及ぶとされており、これが自動運転車になると1ケタ上がるとみられている。完全自動運転車の実用化はかなり先のことと考えられるが、自動ブレーキや自動駐車システムなどは既に実用化されており、これらの普及がルネサスエレクトロニクス及び同社の収益拡大につながっていくことになる。ルネサスエレクトロニクスはADAS用に「R-Car」を製品化しており、同社はR-Carの持つ画像認識、車両認識、STOPランプ認識や演算性能向上などの強みをアピールしながら、採用を働きかけている。

産業用分野では医療用モニタが一例として挙げられる。これは心電図やバイタル情報を高画質3画面表示することを可能にした「RZマイコン」の活用事例だ。フルHD動画やリアルタイム処理性能、マルチメディア対応などセールスポイントに、当該マイコンの採用を売り込んでいく方針だ。

こうしたデザイン−イン活動の状況などを踏まえて、同社では需要分野別売上高見通しを予想している。自動車向けは、2017年3月期こそ363億円(前期比0.8%減)と前期から微減となるが、2018年3月期は前期比10.7%増の402億円、2019年3月期は同4.2%増の419億円と堅調に伸びる予想となっている。これは自動車のモデルチェンジサイクルの影響とみられる。一方、産業向けは、2017年3月期は同4.5%増と伸びるものの、それ以後は緩やかな回復を見込んでいる。これは中国要因の不透明さを考慮してのこととみられる。

自動車向けの売上については、次期中期経営計画期間にかかる2020年3月期以降に一段の飛躍が期待される。ADASが一段と普及し、車1台当たりのマイコン搭載数が大きく増加すると予想されることが一番の理由だ。産業向けもまたIoT(モノのインターネット)の進展が進むことで市場拡大が期待される。その意味では、今中期経営計画期間は、次期中期経営計画に向けて水面下でどのような商談(すなわち、デザイン−イン)が行われているかという点こそが、真に重要なポイントと言えるだろう。

b)新規ビジネス(CSB製品)への取り組み強化
同社はルネサスエレクトロニクスと日立グループ以外の取扱製品を、新規ビジネス、あるいはCSB(Customer Satisfaction Business)と呼称している。CSB製品の業容拡大は前中期経営計画における重要テーマの1つであり、2016年3月期には売上高200億円を目指したが122億円で着地した。

CSB製品の売り上げ拡大は、新中期経営計画においても引き続き重要テーマである。現実の売込み活動では、デザイン−イン活動が基本となるのはCSB製品も同様だ。2016年3月期実績のデザイン−イン金額は153億円であった。2017年3月期はこれを200億円に拡大させる計画だ。

2016年3月期におけるデザイン−インの事例を下の表にまとめた。GIANTPLUS社から導入した液晶パネルをデジカメ向けに納入する案件の他、電力センサ(電力見える化)やACアダプタレスノートPCなど、多方面に商談が拡大している。

CSB製品デザイン−イン実績を見ると、民生分野の案件が目立つ。これはしかし、結果論であって、民生分野を強化しているというわけではない。

電力センサはEnOcean社のIoT(モノのインターネット)無線通信モジュールだ。ビルオートメーションやスマート住宅でのエネルギーマネジメントシステムを構成する重要な部品だ。EnOcean社は「EnOcean Alliance」グループを形成しており、世界中の企業がEnOcean技術(規格)を採用した製品を発売している状況だ。電力全面自由化ともあいまって、今後はスマートハウスの普及も徐々に進むことが予想され、それに応じて電力センサのビジネスも拡大が期待される。

ACアダプタレスノートPCは、同社の取り扱うPayton社製トランスを採用することで、ノートPCの持運びの際の悩みの種だったACアダプタ問題を解決できるというものだ。同社はこのパーツの採用をノートPCメーカーに働きかけており、既に採用実績がある。ノートPCユーザの目線で見た場合、ACアダプタレスノートPCの使用価値は高いと考えられるため、今後も採用実績が積み上がっていくと弊社では期待している。

CSB製品の売上高は、2016年3月期は122億円にとどまったが、新中期経営計画期間中においては着実な拡大が期待されており、2019年3月期の新中期経営計画の最終年度において215億円の売上高にまで拡大させることを目指している。各製品分野別の収益拡大シナリオは以下のとおりだ。

CSB製品の拡大は、同社が中期経営計画で掲げる重要テーマの1つである収益性重視の経営の推進、すなわち利益率の改善に対しても、プラスに働くと弊社では期待している。CSB製品としての取扱いについて採否を決定する際は、利益率が既存製品(ルネサスエレクトロニクス製品、日立グループ製品)よりも高いことが最低条件となっているもようだ(ただし、液晶パネルは競争条件の厳しさからその条件に当てはまらないとみられる)。したがってCSB製品の売上構成比が上昇すれば、構成差による売上総利益率の改善が期待できると弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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