3Dマトリック Research Memo(1):止血材の国内での治験計画届を提出、中国企業へのライセンスアウトも実現
[17/05/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
スリー・ディー・マトリックス<7777>は2004年に設立されたバイオマテリアル(医療用材料)のベンチャー企業である。米マサチューセッツ工科大学において開発された「自己組織化ペプチド技術」を使って外科医療分野の吸収性局所止血材(以下、止血材)・血管塞栓材、再生医療分野の歯槽骨再建材・創傷治癒材、その他分野では核酸医薬向けDDS(ドラッグデリバリーシステム)等の開発を国内外で進めている。
1. 止血材のライセンス契約締結で2017年4月期業績を上方修正
同社は4月4日付で2017年4月期業績の上方修正を発表した。止血材の販売は期初計画を下回るものの、中国での開発・製造・販売に関するライセンス許諾契約を締結し、契約一時金480百万円(450万ドル、期末為替レート107円/ドル想定)を計上することが決まったことによる。事業収益は前期比329.0%増の605百万円(期初計画547百万円)、営業損失は前期1,821百万円の損失から1,185百万円の損失(同1,807百万円の損失)に縮小したもようだ。また、止血材については4月11日付で内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)下の漏出性出血を適応対象とした治験計画届をPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に提出し、5月〜6月に治験が開始される見込みとなった。順調に進めば1年で治験が終了し、2020年4月期中にも国内での製造販売承認が得られる見通しだ。また、欧州ではフランス・ポルトガル・オランダにおける販売権許諾契約をPENTAX Europe GmbH(以下、PENTAX)と4月12日付で締結したと発表した。当初の計画よりは遅れ気味ではあるものの、止血材の収益化に向けた販売ネットワークの構築が着々と進んできたと言える。
2. 止血材については用途拡大に加えて次世代止血材の開発も進める
止血材については、ESD後の後出血予防や創傷治癒効果に加えて、手術時の組織癒着防止効果も臨床データから確認されるなど、今後、適用領域の拡大が期待されている。欧州では後出血予防材としてのCEマーキングを申請中で、2018年4月期中にも認可される見込みだ。止血材以外の用途の広がりが出てくれば、同社が目指している欧州全域における独占販売ライセンス契約も実現の可能性が高まってくると見られる。さらには、次世代止血材の開発も進んでいる。従来品よりも止血効果が高いだけでなく、低コストで取扱いも容易なことが特徴で、血管吻合部や臓器からの滲出性出血に対する止血材として欧州で開発を進めていく方針だ。治験に向けた協議が長引いている米国市場は、政権が変わったこともあり医療政策の動向を見ながら今後の開発戦略を決定していく予定で、まずは欧州や日本、アジア等の米国以外の市場で開拓していくことになりそうだ。
3. その他パイプラインでは歯槽骨再建材、核酸医薬向けDDSにも注目
その他のパイプラインでは、米国で進められている歯槽骨再建材の臨床試験の結果が2017年夏ごろに判明する見通しだ。結果が良好であれば製造販売承認申請を行う予定で、ライセンス契約締結の可能性も出てくる。また、国内で医師主導の臨床第1相試験が行われているトリプルネガティブ乳がんを対象とした核酸医薬向けDDSも注目される。同社が開発した「TDM-812」をDDS材料として使うことで核酸医薬の安定性が高まり、薬効を高める効果が期待されている。第1相臨床試験は2018年1月頃に終了する予定で、安全性が確認されれば製薬企業とのライセンス交渉も本格化することが予想される。既に、複数の大手製薬メーカー向けには材料のサンプル提供を行っており、今後、共同研究に発展する可能性もあり、その動向が注目される。
■Key Points
・中国でのライセンス契約締結で2017年4月期業績を上方修正
・止血材の販売は着実に増加、次世代止血材、癒着防止材の開発を欧州で進めていく方針
・止血材や次世代止血材の開発費用等を目的に新株予約権を発行
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>
スリー・ディー・マトリックス<7777>は2004年に設立されたバイオマテリアル(医療用材料)のベンチャー企業である。米マサチューセッツ工科大学において開発された「自己組織化ペプチド技術」を使って外科医療分野の吸収性局所止血材(以下、止血材)・血管塞栓材、再生医療分野の歯槽骨再建材・創傷治癒材、その他分野では核酸医薬向けDDS(ドラッグデリバリーシステム)等の開発を国内外で進めている。
1. 止血材のライセンス契約締結で2017年4月期業績を上方修正
同社は4月4日付で2017年4月期業績の上方修正を発表した。止血材の販売は期初計画を下回るものの、中国での開発・製造・販売に関するライセンス許諾契約を締結し、契約一時金480百万円(450万ドル、期末為替レート107円/ドル想定)を計上することが決まったことによる。事業収益は前期比329.0%増の605百万円(期初計画547百万円)、営業損失は前期1,821百万円の損失から1,185百万円の損失(同1,807百万円の損失)に縮小したもようだ。また、止血材については4月11日付で内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)下の漏出性出血を適応対象とした治験計画届をPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に提出し、5月〜6月に治験が開始される見込みとなった。順調に進めば1年で治験が終了し、2020年4月期中にも国内での製造販売承認が得られる見通しだ。また、欧州ではフランス・ポルトガル・オランダにおける販売権許諾契約をPENTAX Europe GmbH(以下、PENTAX)と4月12日付で締結したと発表した。当初の計画よりは遅れ気味ではあるものの、止血材の収益化に向けた販売ネットワークの構築が着々と進んできたと言える。
2. 止血材については用途拡大に加えて次世代止血材の開発も進める
止血材については、ESD後の後出血予防や創傷治癒効果に加えて、手術時の組織癒着防止効果も臨床データから確認されるなど、今後、適用領域の拡大が期待されている。欧州では後出血予防材としてのCEマーキングを申請中で、2018年4月期中にも認可される見込みだ。止血材以外の用途の広がりが出てくれば、同社が目指している欧州全域における独占販売ライセンス契約も実現の可能性が高まってくると見られる。さらには、次世代止血材の開発も進んでいる。従来品よりも止血効果が高いだけでなく、低コストで取扱いも容易なことが特徴で、血管吻合部や臓器からの滲出性出血に対する止血材として欧州で開発を進めていく方針だ。治験に向けた協議が長引いている米国市場は、政権が変わったこともあり医療政策の動向を見ながら今後の開発戦略を決定していく予定で、まずは欧州や日本、アジア等の米国以外の市場で開拓していくことになりそうだ。
3. その他パイプラインでは歯槽骨再建材、核酸医薬向けDDSにも注目
その他のパイプラインでは、米国で進められている歯槽骨再建材の臨床試験の結果が2017年夏ごろに判明する見通しだ。結果が良好であれば製造販売承認申請を行う予定で、ライセンス契約締結の可能性も出てくる。また、国内で医師主導の臨床第1相試験が行われているトリプルネガティブ乳がんを対象とした核酸医薬向けDDSも注目される。同社が開発した「TDM-812」をDDS材料として使うことで核酸医薬の安定性が高まり、薬効を高める効果が期待されている。第1相臨床試験は2018年1月頃に終了する予定で、安全性が確認されれば製薬企業とのライセンス交渉も本格化することが予想される。既に、複数の大手製薬メーカー向けには材料のサンプル提供を行っており、今後、共同研究に発展する可能性もあり、その動向が注目される。
■Key Points
・中国でのライセンス契約締結で2017年4月期業績を上方修正
・止血材の販売は着実に増加、次世代止血材、癒着防止材の開発を欧州で進めていく方針
・止血材や次世代止血材の開発費用等を目的に新株予約権を発行
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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