クロスマーケ Research Memo(7):「アジアNo.1マーケティング企業」の土台となった前中期経営計画
[18/09/20]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期経営計画
1.前中期経営計画の振り返り
クロス・マーケティンググループ<3675>は2014年に中期経営計画を策定し、2015年−2017年を「事業領域と事業エリアの積極的な拡大」と位置付け、2017年12月期に売上高17,985百万円、経常利益1,500百万円を目指した。しかし、最終年度の2017年12月期の着地業績は、売上高16,758百万円、経常利益597百万円と未達となった上、Kadenceに関する特殊なのれん償却や減損損失が発生、親会社株主に帰属する当期純損失は703百万円となった。このように目標数値は未達となったが、国内外ともマーケティング関連市場は堅調に推移、前中期経営計画で目指したエリア展開は順調に進み、タイでのM&Aやフィリピンでの新会社準備などアジアでは面展開が終盤に入った。米国西海岸でも事業展開を開始する一方、足元では重複エリアなど子会社の整理統合も始めようとしている。事業領域の拡大については、医療や覆面調査など新領域への進出、プロモーション事業(ディーアンドエム)やエンジニア派遣事業など周辺事業も育ってきた。3年間の事業エリアと事業領域の積極拡大により、「アジアNo.1マーケティング企業」へ向けた土台作りは着実に進捗したと言え、次期中期経営計画に向けて大きな弾みとなると思われた。
顧客ポートフォリオの変化への対応を織り込んだ中期経営計画を策定中
2.次期中期経営計画へ向けての課題
前中期経営計画が終了したことで見えてきた課題がある。既存事業においては、着実な成長と収益基盤の確立を目指したが、成長・拡大は実現したものの、主力である国内リサーチ事業の収益回復は今後の成長のために必須となった。人財戦略では、既存社員の育成・底上げを狙ったが、組織の底上げは着実に進捗したものの、新入社員の育成・教育が継続課題となった。新規事業については、事業育成と領域拡大は順調に進捗したが、今後はより収益性や成長力のある事業にチャレンジする必要もあるだろう。海外展開については、アジア全域でのネットワーク確立を目指しエリア展開はほぼ最終局面となったが、海外子会社のグリップと未進出エリアへの展開という課題もある。
次期中期経営計画は、当初こうした課題をクリアし、足元の業績回復状況を確認したのち、改めて成長戦略を練り直して2018年夏頃に開示する予定とされていた。しかし、各事業さまざまな課題があり足元の成長基盤の確認を含めた新たな成長戦略の策定に時間を要しているようだ。加えて、ITソリューション事業では大型案件の受注が継続しているためエンジニアの確保、その他事業では下期成長トレンド入りへ向けて好採算のデータ連携・提携の拡大も課題となった。なかでも、顧客ポートフォリオの変化への対応は、短期業績のみならず、事業構造そのものに与えるインパクトが大きいので、中長期的観点からも慎重に見極めねばならず、課題解消の策を練るにも一定の時間が必要と考える。したがって、遠からず、しっかりとした中期経営計画が策定されることを期待したい。
2018年12月期については、第2四半期の状況のままならば原価率の上昇は止まらず、一方で販管費の削減余地は狭まり、通期業績予想の達成が危ぶまれるだろう。しかし、同社は現在、原価コントロールを中心とする各種課題への対策を進めているところであり、現状、通期業績予想は射程圏内と判断できる。また、そうした対策は、同時にリサーチ事業の中期再成長を支える基盤となることが期待される。さらに、本来利益が大きくなりやすい直接販売や、リサーチ周辺事業の強化ができれば、中長期的に2ケタ成長も可能と考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<MH>
1.前中期経営計画の振り返り
クロス・マーケティンググループ<3675>は2014年に中期経営計画を策定し、2015年−2017年を「事業領域と事業エリアの積極的な拡大」と位置付け、2017年12月期に売上高17,985百万円、経常利益1,500百万円を目指した。しかし、最終年度の2017年12月期の着地業績は、売上高16,758百万円、経常利益597百万円と未達となった上、Kadenceに関する特殊なのれん償却や減損損失が発生、親会社株主に帰属する当期純損失は703百万円となった。このように目標数値は未達となったが、国内外ともマーケティング関連市場は堅調に推移、前中期経営計画で目指したエリア展開は順調に進み、タイでのM&Aやフィリピンでの新会社準備などアジアでは面展開が終盤に入った。米国西海岸でも事業展開を開始する一方、足元では重複エリアなど子会社の整理統合も始めようとしている。事業領域の拡大については、医療や覆面調査など新領域への進出、プロモーション事業(ディーアンドエム)やエンジニア派遣事業など周辺事業も育ってきた。3年間の事業エリアと事業領域の積極拡大により、「アジアNo.1マーケティング企業」へ向けた土台作りは着実に進捗したと言え、次期中期経営計画に向けて大きな弾みとなると思われた。
顧客ポートフォリオの変化への対応を織り込んだ中期経営計画を策定中
2.次期中期経営計画へ向けての課題
前中期経営計画が終了したことで見えてきた課題がある。既存事業においては、着実な成長と収益基盤の確立を目指したが、成長・拡大は実現したものの、主力である国内リサーチ事業の収益回復は今後の成長のために必須となった。人財戦略では、既存社員の育成・底上げを狙ったが、組織の底上げは着実に進捗したものの、新入社員の育成・教育が継続課題となった。新規事業については、事業育成と領域拡大は順調に進捗したが、今後はより収益性や成長力のある事業にチャレンジする必要もあるだろう。海外展開については、アジア全域でのネットワーク確立を目指しエリア展開はほぼ最終局面となったが、海外子会社のグリップと未進出エリアへの展開という課題もある。
次期中期経営計画は、当初こうした課題をクリアし、足元の業績回復状況を確認したのち、改めて成長戦略を練り直して2018年夏頃に開示する予定とされていた。しかし、各事業さまざまな課題があり足元の成長基盤の確認を含めた新たな成長戦略の策定に時間を要しているようだ。加えて、ITソリューション事業では大型案件の受注が継続しているためエンジニアの確保、その他事業では下期成長トレンド入りへ向けて好採算のデータ連携・提携の拡大も課題となった。なかでも、顧客ポートフォリオの変化への対応は、短期業績のみならず、事業構造そのものに与えるインパクトが大きいので、中長期的観点からも慎重に見極めねばならず、課題解消の策を練るにも一定の時間が必要と考える。したがって、遠からず、しっかりとした中期経営計画が策定されることを期待したい。
2018年12月期については、第2四半期の状況のままならば原価率の上昇は止まらず、一方で販管費の削減余地は狭まり、通期業績予想の達成が危ぶまれるだろう。しかし、同社は現在、原価コントロールを中心とする各種課題への対策を進めているところであり、現状、通期業績予想は射程圏内と判断できる。また、そうした対策は、同時にリサーチ事業の中期再成長を支える基盤となることが期待される。さらに、本来利益が大きくなりやすい直接販売や、リサーチ周辺事業の強化ができれば、中長期的に2ケタ成長も可能と考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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