トラストテック Research Memo(3):技術者の確保が成長のカギ
[19/03/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
3. 技術系領域セグメントの収益構造
技術系領域セグメントは、トラスト・テック<2154>が抱える技術者を活用した顧客企業の研究開発、設計、生産技術などの技術分野に対する人材提供サービスだ。実際の業務内容は技術者の派遣と、開発・設計等の受託の2種類に大別されるが、約5分の4が技術者派遣、5分の1が受託という構成となっている。受託の場合であっても、同社の技術者が顧客の施設において業務を行うことが基本であり、同社の自社施設において受託開発を行うようなケースは極めてまれだ。
技術系領域は、製造系領域と比較して、“技術者”という付加価値があるため単価が高い。これが両セグメント間の利益率の差につながっている。同じ技術系領域の中で派遣と受託とを比較した場合、本来的には受託の収益性が高くなるはずだが、現実には工数見積もりや納期などで当初予算と比べてずれが生じやすいため、両者の間には差がないという状況だ。
技術系領域の成長のカギは、優秀な技術者をいかに多く確保するかにある。とりわけ、現在のようなタイトな労働需給下にあっては、派遣先を見つけること以上に技術者を確保することが先決という状況だ。同社はかねてより、即戦力社員が得られるキャリア採用(いわゆる中途採用)を通じた人材獲得に注力しているが、2019年6月期にはギアを一段引き上げた。さらに、数年前からは新卒技術者の採用も積極化させており、2018年4月には約500名の新卒者を採用した。2019年4月入社組の採用も順調に進捗しており、現状では約750新卒者の入社が予定されている
採用と並んで重要なポイントは技術者の定着率の向上だ。同社は派遣単価を引き上げて技術者の処遇を改善することに注力している。単価引き上げは、より高単価の派遣先に配属することで実現するケースが多い。そのためには個々の技術者のスキルと市場価値を正確に把握し、それに見合った派遣先とマッチングさせることが重要だ。同社はこうしたタレントマネジメントに注力してきたが、今後も一段と強化する方針だ。
収益性の確保が最重要課題。地域密着型の人材獲得と営業により効率的マッチングを徹底追求
4. 製造系領域セグメントの収益構造
製造系領域セグメントの事業は、同社が抱える製造ラインスタッフを活用した顧客企業の製造ラインに対する人材提供サービスだ。具体的な形態としては操業請負(構内請負)と製造スタッフの派遣の2つの形態がある。請負と派遣の構成比はその時々で変動するが、おおよそ半々とみられる。製造における請負と派遣との比較では、本来的には請負のほうが自助努力による生産性向上などにより高い収益性を期待できるが、現実には顧客側から提示される条件が厳しく、両者間にはあまり差がない。
製造系領域は、技術系領域に比べて単価が低く、製造する製品に対する需要の変動の影響を受けやすいため売上高の変動も大きい。また、契約期間も短い傾向がある。こうした要因から、製造系領域は技術系領域と比較して収益性が低い状況にある。
同社では製造系領域の収益性を高めるために、地域密着型の人材採用と営業活動に注力している。遠隔地に製造要員を派遣する場合、移動や滞在にかかる費用がかさむ。これを圧縮・削減することが目的だ。日本では自動車関連や電機関連などの企業城下町が各地に存在している。そうした各地方都市圏において、労働者と請負・派遣先とを共に確保して当該地域内で両者をマッチングできればそれだけ効率性を高めることができる。こうした地域密着型の地道な努力が奏功して、同社の製造系領域セグメントの採算性は着実に改善しており、2019年6月期第2四半期のEBITDAマージンは5.2%、営業利益率は5.1%と、業界トップクラスの水準にある。
製造系領域セグメントの社員数はこれまで2,000人から2,500人のレンジで推移してきた。これは、製造請負・派遣の需要変動への対応のためだ。また製造請負・派遣の需要は、顧客企業における労務費削減需要に根差している。こうした背景があるため、同社も製造系領域の社員は無期雇用契約社員と有期雇用契約社員とを組み合わせることで柔軟な対応を可能としている。同社は、日本の製造現場における人手不足は構造的なものであり、中長期的に製造スタッフに対する需要は拡大基調が続くとみている。
英国では3子会社で製造スタッフ派遣事業を展開中。アジアでもベトナムへ事業拡大
5. 海外領域の事業内容と収益構造
“海外領域”というのは事業の地理的側面に基づく分類であり、国内のような事業の性質に根差した分類ではない。その海外事業については、社会の成熟度合いによって人材サービス業の発達度合いも異なるため、先進国を主体とした成熟市場と、アジアなどの未成熟市場とに分けて進出形態や成長戦略を変えている。
成熟市場の国々では、人材サービス会社も数多く存在するため、現地企業のM&Aを通じて進出を図ることを基本方針としている。英国ではMTrec、GAP及びQuattro Groupの3社を子会社化しているが、事業内容としては国内における製造系領域に相当する。したがってその収益構造は国内の製造系領域のそれとほぼ同じとみられる。
一方アジアは未成熟市場であるため、市場の発展状況に合わせてじっくりと構えている。現地子会社においては人材紹介事業のみを手掛けている。派遣市場が未発達で、現時点では市場調査や情報収集などの拠点という位置づけであるためだ。収益面では、これら子会社群はコスト構造が軽いためいずれも黒字化している模様だ。
一方、パートナーの存在によって事業リスクが軽減できる合弁事業ではもう少し積極的に事業を進めている。中国の合弁企業2社はいずれも、日本式の人材派遣事業を展開している。先発の山東省の合弁企業はすでに黒字化を達成し、広東省の合弁企業も山東省と同じ流れを歩んでいて近い将来の黒字化が視野に入った状況だ。2019年1月にはベトナムで大手人材派遣企業に出資した。これら合弁企業や投資先企業の業績が順調に拡大すれば、将来的には、同社自身がアジアでの人材派遣事業を本格的に展開するステージに移行すると期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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3. 技術系領域セグメントの収益構造
技術系領域セグメントは、トラスト・テック<2154>が抱える技術者を活用した顧客企業の研究開発、設計、生産技術などの技術分野に対する人材提供サービスだ。実際の業務内容は技術者の派遣と、開発・設計等の受託の2種類に大別されるが、約5分の4が技術者派遣、5分の1が受託という構成となっている。受託の場合であっても、同社の技術者が顧客の施設において業務を行うことが基本であり、同社の自社施設において受託開発を行うようなケースは極めてまれだ。
技術系領域は、製造系領域と比較して、“技術者”という付加価値があるため単価が高い。これが両セグメント間の利益率の差につながっている。同じ技術系領域の中で派遣と受託とを比較した場合、本来的には受託の収益性が高くなるはずだが、現実には工数見積もりや納期などで当初予算と比べてずれが生じやすいため、両者の間には差がないという状況だ。
技術系領域の成長のカギは、優秀な技術者をいかに多く確保するかにある。とりわけ、現在のようなタイトな労働需給下にあっては、派遣先を見つけること以上に技術者を確保することが先決という状況だ。同社はかねてより、即戦力社員が得られるキャリア採用(いわゆる中途採用)を通じた人材獲得に注力しているが、2019年6月期にはギアを一段引き上げた。さらに、数年前からは新卒技術者の採用も積極化させており、2018年4月には約500名の新卒者を採用した。2019年4月入社組の採用も順調に進捗しており、現状では約750新卒者の入社が予定されている
採用と並んで重要なポイントは技術者の定着率の向上だ。同社は派遣単価を引き上げて技術者の処遇を改善することに注力している。単価引き上げは、より高単価の派遣先に配属することで実現するケースが多い。そのためには個々の技術者のスキルと市場価値を正確に把握し、それに見合った派遣先とマッチングさせることが重要だ。同社はこうしたタレントマネジメントに注力してきたが、今後も一段と強化する方針だ。
収益性の確保が最重要課題。地域密着型の人材獲得と営業により効率的マッチングを徹底追求
4. 製造系領域セグメントの収益構造
製造系領域セグメントの事業は、同社が抱える製造ラインスタッフを活用した顧客企業の製造ラインに対する人材提供サービスだ。具体的な形態としては操業請負(構内請負)と製造スタッフの派遣の2つの形態がある。請負と派遣の構成比はその時々で変動するが、おおよそ半々とみられる。製造における請負と派遣との比較では、本来的には請負のほうが自助努力による生産性向上などにより高い収益性を期待できるが、現実には顧客側から提示される条件が厳しく、両者間にはあまり差がない。
製造系領域は、技術系領域に比べて単価が低く、製造する製品に対する需要の変動の影響を受けやすいため売上高の変動も大きい。また、契約期間も短い傾向がある。こうした要因から、製造系領域は技術系領域と比較して収益性が低い状況にある。
同社では製造系領域の収益性を高めるために、地域密着型の人材採用と営業活動に注力している。遠隔地に製造要員を派遣する場合、移動や滞在にかかる費用がかさむ。これを圧縮・削減することが目的だ。日本では自動車関連や電機関連などの企業城下町が各地に存在している。そうした各地方都市圏において、労働者と請負・派遣先とを共に確保して当該地域内で両者をマッチングできればそれだけ効率性を高めることができる。こうした地域密着型の地道な努力が奏功して、同社の製造系領域セグメントの採算性は着実に改善しており、2019年6月期第2四半期のEBITDAマージンは5.2%、営業利益率は5.1%と、業界トップクラスの水準にある。
製造系領域セグメントの社員数はこれまで2,000人から2,500人のレンジで推移してきた。これは、製造請負・派遣の需要変動への対応のためだ。また製造請負・派遣の需要は、顧客企業における労務費削減需要に根差している。こうした背景があるため、同社も製造系領域の社員は無期雇用契約社員と有期雇用契約社員とを組み合わせることで柔軟な対応を可能としている。同社は、日本の製造現場における人手不足は構造的なものであり、中長期的に製造スタッフに対する需要は拡大基調が続くとみている。
英国では3子会社で製造スタッフ派遣事業を展開中。アジアでもベトナムへ事業拡大
5. 海外領域の事業内容と収益構造
“海外領域”というのは事業の地理的側面に基づく分類であり、国内のような事業の性質に根差した分類ではない。その海外事業については、社会の成熟度合いによって人材サービス業の発達度合いも異なるため、先進国を主体とした成熟市場と、アジアなどの未成熟市場とに分けて進出形態や成長戦略を変えている。
成熟市場の国々では、人材サービス会社も数多く存在するため、現地企業のM&Aを通じて進出を図ることを基本方針としている。英国ではMTrec、GAP及びQuattro Groupの3社を子会社化しているが、事業内容としては国内における製造系領域に相当する。したがってその収益構造は国内の製造系領域のそれとほぼ同じとみられる。
一方アジアは未成熟市場であるため、市場の発展状況に合わせてじっくりと構えている。現地子会社においては人材紹介事業のみを手掛けている。派遣市場が未発達で、現時点では市場調査や情報収集などの拠点という位置づけであるためだ。収益面では、これら子会社群はコスト構造が軽いためいずれも黒字化している模様だ。
一方、パートナーの存在によって事業リスクが軽減できる合弁事業ではもう少し積極的に事業を進めている。中国の合弁企業2社はいずれも、日本式の人材派遣事業を展開している。先発の山東省の合弁企業はすでに黒字化を達成し、広東省の合弁企業も山東省と同じ流れを歩んでいて近い将来の黒字化が視野に入った状況だ。2019年1月にはベトナムで大手人材派遣企業に出資した。これら合弁企業や投資先企業の業績が順調に拡大すれば、将来的には、同社自身がアジアでの人材派遣事業を本格的に展開するステージに移行すると期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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