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トラストテック Research Memo(5):新3ヶ年中経を発表。2022年6月期にEBITDA100億円超を目指す

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略と進捗状況

1. 新中期経営計画の概要
トラスト・テック<2154>はこれまで、中長期的成長に向けた指針としてローリング式の中期経営計画を策定(初回は2015年8月発表)し、実現に向けて取り組んできた。そこで掲げていた中期的なEBITDA目標を2019年6月期に2年前倒しで達成した※ことを受け、新たに3ヶ年の新中期経営計画を策定した。

※前中期経営計画では方針として「年率20%以上の成長スピード維持」、「連結営業利益率10%以上の達成」の2つを掲げていたが、これをもとにすると利益成長率は年率25%ということになる。これに従うと2021年6月期においては6,217百万円のEBITDA目標値が算出されるが、2019年6月期のEBITDAは6,843百万円でこれを超えたことを言っている。


また、前中期経営計画では機械・輸送用機器と電気機器のいわゆる機電系に集中した事業構造から脱却し、「IT・ソフト」、「海外」の収益を成長させて、“一本足経営”から“ポートフォリオ経営”への移行を目指した。この点でも実績を達成し、中核の機電系の幹を太くすると同時に、IT・ソフト分野と海外事業からの利益を存在感のある規模へと成長させた。

新中期経営計画では、成長率重視の姿勢で臨んだ前中期経営計画とは対照的に、現在の事業ポートフォリオをベースとして、持続的成長を実現することに重点を置いている点が大きく異なっている。こう書くと同社が低成長企業へと変わったかのような印象を受ける向きもあろうが決してそうではない。同社が目指すのは“安定的かつ高成長”であり、中核事業と位置付ける技術系領域については、新中期経営計画期間において売上高・EBITDA共に毎年2ケタ成長を目指すことを目標に掲げている。

その結果としての業績目標については、2022年6月期において、EBITDAで100億円超の達成を掲げている。これは2019年6月期を起点に2022年6月期までの3年間の年平均成長率(CAGR)が約15%ということになる。その実現に向けては、上記のように、技術系領域が年率2ケタ成長を実現してけん引役としての責務を担うことが予定されている。


技術系領域は“IT”、製造系領域は“利益率”、海外領域は“基盤固め”がそれぞれキーワード
2. 事業セグメント別戦略・方針
事業セグメント別戦略・方針の一覧は以下のようになっている。

(1) 技術系領域
前述のように、技術系領域には収益の成長の主エンジンとしての役割が期待されている。その領域の市場成長率を年8〜10%と想定し、事業環境としては旺盛な研究開発投資の持続、技術の短サイクル化、外国人技術者の活用などの追い風がある一方、理系人材・IT人材が不足しており争奪戦からコストアップが懸念される状況と認識している。そのなかで同社は、市場平均をアウトパフォームする年15%前後の成長を目指しているとみられる。その実現に向けては、経営資源の積極投入(M&A、提携、広告宣伝費等)や事業モデルの高度化(システム、シェアードサービス強化等)を図る方針だ。今中期経営計画期間における技術系領域のキーワード(あるいは攻めの切り口)は“IT”だ。これは前中期経営計画においても重要取り組みテーマであったが、今中期経営計画ではさらにその重要性が高まり、成長戦略の中核になってきている(詳細は次項を参照)。

(2) 製造系領域
製造系領域については、市場全体の成長率を年5%前後と想定しており、事業環境として、プラス面では生産の国内回帰や製造派遣シフトを、マイナス面では労働人口不足を、重要項目として認識している。こうしたなか同社は、製造系領域については“高収益体質の堅持を最優先にしながら着実な事業拡大を継続する”ことを方針として掲げている。同社が言う高収益体質とは、営業利益率5%(製造系領域ではEBITDAマージンと営業利益率がほぼ同じ状況にある)をクリアすることを言う。これは業界最高水準であり、現下の製造業派遣の事業構造においては、現実的なターゲットゾーンの上限という認識だ。

同社の製造系領域は子会社のTTMが担っているが、TTMが同社の子会社になる以前と以後とでは事業戦略や経営目標が大きく変わった。子会社化後に同社が進めてきたのは地域密着型営業による高効率経営の推進とそれによる高営業利益率の実現だ。子会社化以前からの顧客の中にはそうした同社の営業戦略に沿わないものがまだ残っており、同社はこの点の改善を今中期経営計画期間中にさらに進める方針だ。したがって、売上高の成長については、上述の市場平均を下回る年も出る可能性があると弊社ではみている。しかしそれは、製造系領域の収益体質強化には必要不可欠のプロセスであると弊社では考えている。

(3) 海外領域
海外領域については、英国とアジア地域とに分けて考える必要があるが、今中期経営計画期間における収益貢献という観点では英国が圧倒的に重要で、アジアについては次の中期経営計画期間における飛躍を期待して推移を見守るというレベルと言える。

英国については前中期経営計画期間中に3社を子会社化し、年商規模で300億円超にまで拡大した。前述のように、利益面でものれん償却後の営業利益が黒字に転換し、EBITDAベースでは10億円が視野に入る規模になってきている。この市場について同社は、横ばいから年3%程度の成長と慎重な見方をしている。安定市場で労働力不足に基づく派遣需要の底堅さというプラス面はあるものの、ブレグジットの影響やそれに伴う為替変動リスクが英国での派遣需要に及ぼす影響が不透明であることが背景だ。したがって、今中期経営計画期間においては、既存の3社によって売上高300億円の事業基盤を確立し、日本の製造系領域同様、利益重視の成長を目指す方針だ。M&Aについては特段言及されていないが、仮に魅力的な案件が出てくれば是々非々で判断していくとみられる。しかし英国が抱えるブレグジットや為替変動などのリスク要因を考慮し、その判断基準はこれまで以上に厳しくなると弊社ではみている。

アジア地域については、前述のように中国の2つの合弁会社とベトナムの1社の合計3つの持分法適用関連会社を擁し、派遣事業を展開している。中国の2社は黒字化し、ベトナムの1社は同社の出資以前から軌道に経営が乗っていた。したがって同社はこれら3社からの持分法投資利益を獲得すると期待されるが、その金額は合計で1億円に満たない水準だ。市場の成長性は中国が年10〜15%、ベトナムが年20%と高いため、順調に成長すれば次期中期経営計画期間においては存在感のある利益規模になると期待される。ベトナムに関しては、その成長スピード次第では同社が出資比率を引き上げて子会社化する可能性もある。この点も注目点と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)




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