明豊ファシリ Research Memo(8):公共分野の受注拡大と、AI等の先進技術の活用による生産性向上に取り組む
[20/01/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
2. 今後の事業戦略について
(1) CMマーケットの現状と公共分野への取り組み
国内の2018年度における建設総需要は約70兆円で、このうち、CMの対象となるマーケットは民間、公共の新規建設投資及びリニューアル投資(住宅除く)にかかる部分で、合計で約22.6兆円(重複するデータ分除く)になるとみている。このうち、CMの普及率がどの程度か正確な統計がないため不明だが、明豊ファシリティワークス<1717>の試算によれば約3兆円程度と全体の約13%程度になっており、2019年度はさらに上昇する見込みとなっている。2016年度は約10%だったので徐々に普及が進んでいることになる。今後もCMの認知度向上により普及率は上昇傾向が続くものと予想され、東京オリンピック後に全体の建設投資が後退局面に入ったとしても、普及率の上昇によりCM市場は安定成長が続く可能性が高いと弊社では見ている。
特に公共分野では、地方自治体が財政難と建設分野の技術者不足に苦しむなかで、コストの最適化とプロジェクト管理を行うCM事業者の活用がさらに増加していくものと予想される。国交省の調べによるとCM方式を活用している地方自治体は、2017年時点で43自治体にしかすぎなかった。2018年以降さらに増加しているとはいえ、全国には1700を超える自治体があるだけに潜在需要は大きい。このため、同社は公共分野を注力市場と位置付け、2019年3月期で約20%であった社内で管理する受注粗利益の構成比を30%まで引き上げていくことを当面の目標に掲げている。2020年3月期第2四半期累計で25%まで上昇していることから、早々に目標を達成し、市場環境によってはさらに構成比が上昇する可能性もある。
CM業界における同社のシェアは約20%※1だが、公共分野では5割前後と高シェアを占めているものと推計される※2。これは同社がCM業界のパイオニアとして、国交省が2014年度から取り組んでいる多様な入札方式のモデル事業に当初から参画し、多くの実績を積み重ねてきたことが大きい。前述したように公共施設の老朽化対策にかかる発注者支援業務の需要拡大も見込めることから、同社の業績も安定成長が見込まれる。
※1 (一社)日本CM協会が販売しているCM保険のシェアよる同社推計値。
※2 公共分野の建設投資は2.1兆円で、CMの普及率が全体と同水準の13%だったと仮定すれば、CMを利用したプロジェクトは約2,700億円となる。同社の公共分野の総工費は1,000億円以上となっていること、公共分野のCM普及率は民間よりもまだ低い水準であることから、同社のシェアは5割前後と推計される。
なお、公共分野では現在、東北から九州まで幅広い自治体から受注している。同社の事業拠点は東京と大阪しかなく、出張ベースでの対応となり生産性が低下する懸念があったが、2018年頃からはパソコンを使ったテレビ会議システムを活用し始めたことで、担当者が直接現地に赴く回数が減少するなど、距離というハードルが従来よりも大きく下がり、受注活動を行いやすい環境になってきたことが、受注件数増加の一因となっている。無論、近距離の自治体から受注するほうが効率的ではあるが、今後も地方を含めて積極的に受注活動を展開していく方針だ。
リスク要因として、新規CM事業者の参入により、受注競争が激化するリスクがある。実際、公共分野のプロポーザル方式の案件で落札できなかったケースは、価格を重要視する案件であると言う。ただ、CM業務で最も重要となる「サービス品質」や「顧客からの信頼」は一朝一夕で構築できるものではなく、今後もサービス品質の維持向上が続く限り、同社の優位性は揺るがないものと弊社では見ている。
(2) デジタル経営基盤の確立
同社は業界に先駆けて、各種建設資材のデータベース構築やマンアワーコスト管理システムを導入するなど、ITを積極的に活用した経営を推進してきたが、今後もその取り組みを一層強化していく方針となっている。
生産性向上施策の一環としてRPAツールの活用を2019年3月期よりスタートしている。第1弾として6部門18定型業務の自動化シナリオを構築し、実用化している。具体例としては、撮影した大量の工事現場写真の自動整理やプロジェクトリスク管理更新業務などが挙げられる。また、2020年3月期も新規営業アプローチのネタとなる地方公共案件の情報や各種セミナー情報等をWebで検索・収集する業務等、5部門15定型業務を自動化している。また、オフィス内にビーコンを設置し、IoTも活用したマンアワーアクティビティの向上にも取り組んでいる。
また、2021年3月期以降は自社開発による戦略的AIによる次世代プロジェクト管理システムを稼働する計画となっている。具体的には、過去に同社が手掛けてきた全てのプロジェクトデータ(ヒヤリハット対応※や成功事例、課題点等を含む)を収集し、AIによるコスト査定や構造計算、工程管理など複数のプロセスを連携させることで、生産性及びCMサービスの品質向上(顧客満足度の向上)、リスク管理や組織力の強化につなげていくシステムの構築を目指している。システムは継続的に改修し、機能強化を図っていく予定にしており、競争力の強化につながる取り組みとして注目される。
※重大な事故には至らないものの、直結してもおかしくない一歩手前の事例についての対応。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 今後の事業戦略について
(1) CMマーケットの現状と公共分野への取り組み
国内の2018年度における建設総需要は約70兆円で、このうち、CMの対象となるマーケットは民間、公共の新規建設投資及びリニューアル投資(住宅除く)にかかる部分で、合計で約22.6兆円(重複するデータ分除く)になるとみている。このうち、CMの普及率がどの程度か正確な統計がないため不明だが、明豊ファシリティワークス<1717>の試算によれば約3兆円程度と全体の約13%程度になっており、2019年度はさらに上昇する見込みとなっている。2016年度は約10%だったので徐々に普及が進んでいることになる。今後もCMの認知度向上により普及率は上昇傾向が続くものと予想され、東京オリンピック後に全体の建設投資が後退局面に入ったとしても、普及率の上昇によりCM市場は安定成長が続く可能性が高いと弊社では見ている。
特に公共分野では、地方自治体が財政難と建設分野の技術者不足に苦しむなかで、コストの最適化とプロジェクト管理を行うCM事業者の活用がさらに増加していくものと予想される。国交省の調べによるとCM方式を活用している地方自治体は、2017年時点で43自治体にしかすぎなかった。2018年以降さらに増加しているとはいえ、全国には1700を超える自治体があるだけに潜在需要は大きい。このため、同社は公共分野を注力市場と位置付け、2019年3月期で約20%であった社内で管理する受注粗利益の構成比を30%まで引き上げていくことを当面の目標に掲げている。2020年3月期第2四半期累計で25%まで上昇していることから、早々に目標を達成し、市場環境によってはさらに構成比が上昇する可能性もある。
CM業界における同社のシェアは約20%※1だが、公共分野では5割前後と高シェアを占めているものと推計される※2。これは同社がCM業界のパイオニアとして、国交省が2014年度から取り組んでいる多様な入札方式のモデル事業に当初から参画し、多くの実績を積み重ねてきたことが大きい。前述したように公共施設の老朽化対策にかかる発注者支援業務の需要拡大も見込めることから、同社の業績も安定成長が見込まれる。
※1 (一社)日本CM協会が販売しているCM保険のシェアよる同社推計値。
※2 公共分野の建設投資は2.1兆円で、CMの普及率が全体と同水準の13%だったと仮定すれば、CMを利用したプロジェクトは約2,700億円となる。同社の公共分野の総工費は1,000億円以上となっていること、公共分野のCM普及率は民間よりもまだ低い水準であることから、同社のシェアは5割前後と推計される。
なお、公共分野では現在、東北から九州まで幅広い自治体から受注している。同社の事業拠点は東京と大阪しかなく、出張ベースでの対応となり生産性が低下する懸念があったが、2018年頃からはパソコンを使ったテレビ会議システムを活用し始めたことで、担当者が直接現地に赴く回数が減少するなど、距離というハードルが従来よりも大きく下がり、受注活動を行いやすい環境になってきたことが、受注件数増加の一因となっている。無論、近距離の自治体から受注するほうが効率的ではあるが、今後も地方を含めて積極的に受注活動を展開していく方針だ。
リスク要因として、新規CM事業者の参入により、受注競争が激化するリスクがある。実際、公共分野のプロポーザル方式の案件で落札できなかったケースは、価格を重要視する案件であると言う。ただ、CM業務で最も重要となる「サービス品質」や「顧客からの信頼」は一朝一夕で構築できるものではなく、今後もサービス品質の維持向上が続く限り、同社の優位性は揺るがないものと弊社では見ている。
(2) デジタル経営基盤の確立
同社は業界に先駆けて、各種建設資材のデータベース構築やマンアワーコスト管理システムを導入するなど、ITを積極的に活用した経営を推進してきたが、今後もその取り組みを一層強化していく方針となっている。
生産性向上施策の一環としてRPAツールの活用を2019年3月期よりスタートしている。第1弾として6部門18定型業務の自動化シナリオを構築し、実用化している。具体例としては、撮影した大量の工事現場写真の自動整理やプロジェクトリスク管理更新業務などが挙げられる。また、2020年3月期も新規営業アプローチのネタとなる地方公共案件の情報や各種セミナー情報等をWebで検索・収集する業務等、5部門15定型業務を自動化している。また、オフィス内にビーコンを設置し、IoTも活用したマンアワーアクティビティの向上にも取り組んでいる。
また、2021年3月期以降は自社開発による戦略的AIによる次世代プロジェクト管理システムを稼働する計画となっている。具体的には、過去に同社が手掛けてきた全てのプロジェクトデータ(ヒヤリハット対応※や成功事例、課題点等を含む)を収集し、AIによるコスト査定や構造計算、工程管理など複数のプロセスを連携させることで、生産性及びCMサービスの品質向上(顧客満足度の向上)、リスク管理や組織力の強化につなげていくシステムの構築を目指している。システムは継続的に改修し、機能強化を図っていく予定にしており、競争力の強化につながる取り組みとして注目される。
※重大な事故には至らないものの、直結してもおかしくない一歩手前の事例についての対応。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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