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カイカ Research Memo(5):2019年10月期業績は、今後の事業拡大に向けた基盤整備で一定の成果あり

注目トピックス 日本株
■決算概要

1. 2019年10月期決算の概要
カイカ<2315>の2019年10月期の連結業績は、売上高が前期比0.5%減の7,600百万円、営業損失が615百万円(前期は395百万円の損失)、経常損失が1,111百万円(同612百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失が1,753百万円(同550百万円の利益)と減収となり営業損失幅も拡大した。特に、大幅な仮想通貨売却益(915百万円)を計上した2018年10月期と比べて最終損益が大きく落ち込んでいる。また、増収増益を見込んでいた期初計画に対しても、大きく下振れる着地となった。

売上高は、アイスタディの連結効果(7ヶ月分)がプラス要因となったものの、ネクス・ソリューションズの売却に伴う影響(2019年10月期業績への寄与は9ヶ月分)等により僅かに減収となった。特に、売上高が期初計画を大きく下回ったのは、ネクス・ソリューションズの売却等による「情報サービス事業」の下振れのほか、「金融商品取引事業」における投資家心理の冷え込みなど外部環境によるものである。

利益面でも、売上高の下振れに加え、仮想通貨交換所システムの開発コストや「金融商品取引事業」におけるマーケティング費用(セミナー開催や新商品のリリース等)、アイスタディ買収に伴うのれん償却額(56百万円)など、将来を見据えた先行費用の高止まりにより営業損失を計上。さらには、FDAGによる持分法投資損失※やソフトウェア(開発費の一部)の減損損失の計上等により、大幅な最終損失に落ち込んだ。

※仮想通貨の相場停滞の影響等を勘案し、FDAGの事業計画が見直されたことに伴う処理。


財政状態については、アイスタディ買収に伴って「のれん」(無形固定資産)が大きく増加したものの、ネクス・ソリューションズ売却のほか、FDAGへの投資損失やソフトウェアの減損損失の影響等により総資産は前期末比4.8%減の10,494百万円に減少。一方、自己資本も最終損失の計上等により同25.2%減の5,432百万円に大きく減少したことから、自己資本比率は51.8%(前期末は65.9%)に低下した。もっとも、潤沢な「現金及び預金」などにより流動比率は高い水準を維持しており、財務の安全性に懸念はない。

各事業別の業績は以下のとおりである。

(1) 情報サービス事業
売上高は前期比5.8%減の7,267百万円、セグメント利益は同65.9%減の81百万円であった。同社単体については、金融機関向け大型の新規案件の引き合いは少なかったものの、保険業向けの既存案件が堅調であったことやクレジットカード案件が拡大したほか、2018年10月期に受注した官公庁向け案件や大手ECサイト運営企業におけるスマートペイの開発等が引き続き業績寄与したことから底堅く推移。ただ、ネクス・ソリューションズの売却に伴う影響(2019年10月期業績への寄与は9ヶ月分)等により売上高全体では減収となった。また、東京テックについても、受注は安定しているものの、技術者不足により低調に推移したようだ。利益面でも、減収による収益の押し下げに加え、仮想通貨交換所関連に技術者を優先配分することによる開発コストの拡大や、ネクス・ソリューションズにおける販管費の増加等により大幅な減益となった。

(2) 仮想通貨関連事業
売上高は12百万円(前期は80百万円のマイナス)、セグメント損失は310百万円(同671百万円の損失)であった。仮想通貨関連のシステム開発については、仮想通貨交換所「Zaif」や「フィスコ仮想通貨取引所」の保守・改修に加え、第2四半期に受注した外部向けの「仮想通貨交換所システム」のインフラ構築等、着実に実績を積み上げることができた。一方、仮想通貨の投融資運用は、2018年10月期と比べて少額での運用に抑えたほか、従前から保有している活発な市場の存在しない仮想通貨の評価損として141百万円を売上高から減額処理したことから、売上高は実態よりも低水準にとどまったと言える。利益面では、仮想通貨関連システムの開発コスト等によりセグメント損失の状況が継続。ただ、FinTech分野向けの自社製品としてすでに開発・販売している「仮想通貨交換所システム」の多機能版が近々完成予定であり、今後は投資回収フェーズに入っていく見通しである。

(3) 金融商品取引事業
売上高は457百万円、セグメント損失は266百万円であった。eワラント証券などの連結化(2018年2月)により開始されたため、2019年10月期は12ヶ月分(2018年10月期は7ヶ月分)の業績がフルに反映されている。主力商品の「eワラント」について、これまでのオンライン証券を通じた取引から、eワラント証券自身による直接販売「eワラント・ダイレクト」への切り替え(2019年9月より開始)に向けて過渡期となったことや、米中貿易摩擦の長期化などへの警戒感から国内個人投資家の売買が低調に推移したことから、取引高が計画を下回った。一方、運用成績についてはヘッジ運用の方針変更により着実に改善しているようだ。利益面でも、商品理解の促進のためのセミナー開催や新商品の開発※及びリリース等のマーケティング関連費用のほか、内部管理体制の強化費用、市場調査費用など、今後の直接販売拡大に向けた先行費用の投入により、セグメント損失となっている。

※特定のテーマに関連する企業群にまとめて投資ができる「バスケットeワラント」の新商品として、「5G関連株バスケットeワラント」「自動運転関連バスケット3eワラント」を追加したほか、5Gや自動運転など市場の注目を集めるテーマに関連する企業群に5倍のレバレッジ投資をすることができる新商品「テーマ株バスケットレバレッジトラッカー」の取り扱いを開始した。


(4) HRテクノロジー事業
売上高は517百万円、セグメント損失は46百万円であった。アイスタディの連結化(2019年4月)により開始されたため、2019年10月期は7ヶ月分の業績が反映されている。「ソフトウェア事業」は、銀行案件の受注が増加するなど好調に推移。さらには、中堅企業向けの新LMS「SLAP」を2019年11月にリリースし、順調に立ち上がってきた。一方、「研修サービス事業」については、AI及びブロックチェーンカテゴリを主力としてコース体系化を推進するとともに、デジタルトランスフォーメーション(DX)人材の育成を支援するeラーニングの販売を開始。また、「iStudy ACADEMY」においても、AI関連の人材ニーズを反映し、個人受講が増加傾向にあることに加え、エイム・ソフト及びその子会社のネクストエッジを子会社化(2019年10月31日)したことで、より積極的な事業展開の礎を整えることができた。利益面では、のれん償却費(56百万円)のほか、事業拡大に向けた先行費用によりセグメント損失となっている。

2. 2019年10月期業績の総括
以上から2019年10月期業績を総括すると、決算数値については、外部環境(仮想通貨の相場停滞や投資家心理の冷え込み等)や子会社売却の影響により総じて低調に推移したものの、定性面では今後の事業拡大に向けて一定の成果を残したと言える。特に、FinTech分野向けの自社製品として開発を進めてきた「仮想通貨交換所システム」の外販や「eワラント」の直販体制の確立、アイスタディの連結化による人材確保面での連携などは評価すべきポイントと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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