プロパスト Research Memo(6):大幅な増益決算、第三者割当増資で財務体質も大きく改善
[21/02/02]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■プロパスト<3236>の業績動向
1. 2021年5月期第2四半期の業績
2021年5月期第2四半期累計期間におけるわが国経済は、コロナ禍の影響により依然として厳しい状況にあるものの、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」や令和2年度第1次・第2次補正予算の効果も相まって、個人消費の改善等を背景に持ち直しの動きが見られる。個人消費は、2020年10月の消費総合指数が前月比2.1%増となったほか、実質消費支出も同2.1%増となり回復の兆しがある。一方、消費マインドを示す消費者態度指数は11月が33.7となり、3ヶ月連続で前月を上回っているものの、コロナ禍以前の水準を下回っており、依然として厳しい状況が続いている。また、設備投資は減少しており、法人企業統計季報の2020年7-9月期の全産業(金融業、保険業除く)では、季節調整済みで前期比1.2%減と2四半期連続で減少した。
同社が属する不動産業界では、先行指標となる新設住宅着工戸数の季節調整済み年率換算値が10月で80.2万戸と3ヶ月連続で減少している等、弱含みでの推移となっている。今後はコロナ禍の影響による企業業績の悪化を反映した雇用・所得環境の先行きに対する不透明感の高まり等が、住宅購入意欲を減退させる要因となってくる可能性が考えられる。
このような状況下、同社は、分譲開発事業や賃貸開発事業及びバリューアップ事業における新規物件の取得や保有物件の売却及び分譲開発事業の個別分譲販売を進めた。この結果、売上高は13,214百万円(前年同期比5.4%増)、営業利益1,715百万円(同34.3%増)、経常利益1,526百万円(同45.1%増)、四半期純利益1,067百万円(同41.8%増)の増収増益決算で、特に利益の増加は目覚ましかった。通期の業績予想に対して、売上高は7割強、各段階の利益は通期計画を上回る好決算であり、厳しい経営環境下でも環境に応じて3事業のバランスを柔軟に変える同社の事業戦略が奏功した決算であったと言えるだろう。この結果、利益率は大きく上昇し、収益性が高まっている。
セグメント別では、分譲開発事業は、自社販売物件としてプルームヌーベル武蔵野(東京都武蔵野市)の販売を実施した結果、売上高は465百万円(前年同期比73.7%減)、営業利益は28百万円(同67.3%減)となった。コロナ禍に伴う緊急事態宣言の発出により、モデルルームでの販売開始時期の遅れや集客業務への制限が発生したこと等が影響した。
また、賃貸開発事業では、首都圏を中心に用地取得から小規模賃貸マンション建築・販売まで行っており、神田司町プロジェクト、南麻布2プロジェクト及び上目黒プロジェクト等、13プロジェクトを売却した。この結果、売上高は10,371百万円(前年同期比45.4%増)、営業利益は1,932百万円(同49.2%増)となり、同社の好決算をけん引する原動力となった。個人の相続税対策として、都心の優良物件に対するニーズが強いようだ。
さらに、バリューアップ事業では、中古の収益ビルをバリューアップしたうえで個人投資家等に売却しており、山王3プロジェクト、代田2プロジェクト及び上馬2プロジェクト等、6棟の収益ビルを売却した。この結果、売上高は2,377百万円(前年同期比34.4%減)、営業利益は268百万円(同33.1%減)となった。
このように、2021年5月期第2四半期は賃貸開発事業が大幅な増収増益となり、分譲開発事業とバリューアップ事業の減収減益をカバーした。同社では、3事業部門が補完し合うことで、会社全体として増収増益基調を維持している。
2. 財務状態及びキャッシュ・フローの状況
2021年5月期第2四半期末の資産は、前期末比1,013百万円減の20,719百万円となった。今後の不動産市況の不透明感を勘案しつつ、資産の増加を抑制するために慎重に物件を見極めたうえでの物件取得を進める一方、保有物件の売却を積極的に推進したことに伴い、販売用不動産及び仕掛販売用不動産とこれらに係る前渡金が合わせて3,713百万円減少したことによる。一方、販売用物件の売却を推進したこと等から現金及び預金が2,364百万円増加している。
負債については前期末比2,991百万円減の14,327百万円となった。保有物件の売却を推進したことに伴い借入金の返済が進んだことから、借入金(有利子負債)が3,423百万円減少したことによる。
また、純資産については前期末比1,977百万円増の6,392百万円となった。利益剰余金が1,009百万円増加したことに加え、2020年11月に実施したシノケングループ向けの第三者割当増資を主因に、資本金が500百万円増加したこと及び資本剰余金が499百万円増加したことも寄与している。
利益の積み上げと増資の結果、自己資本比率は30.4%と、2013年5月期末の9.5%から大幅に上昇し、同社が中期的な目標としていた30%台に到達し、財務体質は東証1部不動産業の平均並みに強化された。これに伴い、コロナ禍に伴う不測の事態への備えは十分に整ったと評価できるだろう。また、強固な財務内容は不動産の仕入など事業面でも有利に働くと考えられる。筆頭株主のシノケングループとの関係強化によって、シノケングループが運用する私募REITへの賃貸不動産を供給するなど新たな協業もスタートし、今後も同社にとって有力な販売先として期待される。このように、グループ会社間でのシナジーを発揮することで収益力が一層強化されていくだろう。
現金及び現金同等物の2021年5月期第2四半期末残高は、前期末より2,334百万円増加し、4,884百万円となった。各キャッシュ・フローの状況について見ると、営業活動により獲得した資金は5,135百万円となった。これは、税引前四半期純利益を1,542百万円計上したこと、たな卸資産が2,763百万円減少したことなどによる。また、投資活動により使用した資金は290百万円となった。これは、主に投資有価証券として250百万円の出資を行ったことに加えて、定期預金を45百万円作成したことによる。さらに、財務活動により使用した資金は2,511百万円となった。これは、主に新規物件の取得等に伴う7,499百万円の借入を実行したこと及び第三者割当増資に伴う株式発行により996百万円を獲得した一方で、保有物件の売却等により借入金を10,921百万円返済したことなどによるものである。
以上の結果、同社が自由に使うことができるフリー・キャッシュ・フローは4,845百万円に増加して手元資金は厚くなっており、経営の安定度が高まっていると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 2021年5月期第2四半期の業績
2021年5月期第2四半期累計期間におけるわが国経済は、コロナ禍の影響により依然として厳しい状況にあるものの、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」や令和2年度第1次・第2次補正予算の効果も相まって、個人消費の改善等を背景に持ち直しの動きが見られる。個人消費は、2020年10月の消費総合指数が前月比2.1%増となったほか、実質消費支出も同2.1%増となり回復の兆しがある。一方、消費マインドを示す消費者態度指数は11月が33.7となり、3ヶ月連続で前月を上回っているものの、コロナ禍以前の水準を下回っており、依然として厳しい状況が続いている。また、設備投資は減少しており、法人企業統計季報の2020年7-9月期の全産業(金融業、保険業除く)では、季節調整済みで前期比1.2%減と2四半期連続で減少した。
同社が属する不動産業界では、先行指標となる新設住宅着工戸数の季節調整済み年率換算値が10月で80.2万戸と3ヶ月連続で減少している等、弱含みでの推移となっている。今後はコロナ禍の影響による企業業績の悪化を反映した雇用・所得環境の先行きに対する不透明感の高まり等が、住宅購入意欲を減退させる要因となってくる可能性が考えられる。
このような状況下、同社は、分譲開発事業や賃貸開発事業及びバリューアップ事業における新規物件の取得や保有物件の売却及び分譲開発事業の個別分譲販売を進めた。この結果、売上高は13,214百万円(前年同期比5.4%増)、営業利益1,715百万円(同34.3%増)、経常利益1,526百万円(同45.1%増)、四半期純利益1,067百万円(同41.8%増)の増収増益決算で、特に利益の増加は目覚ましかった。通期の業績予想に対して、売上高は7割強、各段階の利益は通期計画を上回る好決算であり、厳しい経営環境下でも環境に応じて3事業のバランスを柔軟に変える同社の事業戦略が奏功した決算であったと言えるだろう。この結果、利益率は大きく上昇し、収益性が高まっている。
セグメント別では、分譲開発事業は、自社販売物件としてプルームヌーベル武蔵野(東京都武蔵野市)の販売を実施した結果、売上高は465百万円(前年同期比73.7%減)、営業利益は28百万円(同67.3%減)となった。コロナ禍に伴う緊急事態宣言の発出により、モデルルームでの販売開始時期の遅れや集客業務への制限が発生したこと等が影響した。
また、賃貸開発事業では、首都圏を中心に用地取得から小規模賃貸マンション建築・販売まで行っており、神田司町プロジェクト、南麻布2プロジェクト及び上目黒プロジェクト等、13プロジェクトを売却した。この結果、売上高は10,371百万円(前年同期比45.4%増)、営業利益は1,932百万円(同49.2%増)となり、同社の好決算をけん引する原動力となった。個人の相続税対策として、都心の優良物件に対するニーズが強いようだ。
さらに、バリューアップ事業では、中古の収益ビルをバリューアップしたうえで個人投資家等に売却しており、山王3プロジェクト、代田2プロジェクト及び上馬2プロジェクト等、6棟の収益ビルを売却した。この結果、売上高は2,377百万円(前年同期比34.4%減)、営業利益は268百万円(同33.1%減)となった。
このように、2021年5月期第2四半期は賃貸開発事業が大幅な増収増益となり、分譲開発事業とバリューアップ事業の減収減益をカバーした。同社では、3事業部門が補完し合うことで、会社全体として増収増益基調を維持している。
2. 財務状態及びキャッシュ・フローの状況
2021年5月期第2四半期末の資産は、前期末比1,013百万円減の20,719百万円となった。今後の不動産市況の不透明感を勘案しつつ、資産の増加を抑制するために慎重に物件を見極めたうえでの物件取得を進める一方、保有物件の売却を積極的に推進したことに伴い、販売用不動産及び仕掛販売用不動産とこれらに係る前渡金が合わせて3,713百万円減少したことによる。一方、販売用物件の売却を推進したこと等から現金及び預金が2,364百万円増加している。
負債については前期末比2,991百万円減の14,327百万円となった。保有物件の売却を推進したことに伴い借入金の返済が進んだことから、借入金(有利子負債)が3,423百万円減少したことによる。
また、純資産については前期末比1,977百万円増の6,392百万円となった。利益剰余金が1,009百万円増加したことに加え、2020年11月に実施したシノケングループ向けの第三者割当増資を主因に、資本金が500百万円増加したこと及び資本剰余金が499百万円増加したことも寄与している。
利益の積み上げと増資の結果、自己資本比率は30.4%と、2013年5月期末の9.5%から大幅に上昇し、同社が中期的な目標としていた30%台に到達し、財務体質は東証1部不動産業の平均並みに強化された。これに伴い、コロナ禍に伴う不測の事態への備えは十分に整ったと評価できるだろう。また、強固な財務内容は不動産の仕入など事業面でも有利に働くと考えられる。筆頭株主のシノケングループとの関係強化によって、シノケングループが運用する私募REITへの賃貸不動産を供給するなど新たな協業もスタートし、今後も同社にとって有力な販売先として期待される。このように、グループ会社間でのシナジーを発揮することで収益力が一層強化されていくだろう。
現金及び現金同等物の2021年5月期第2四半期末残高は、前期末より2,334百万円増加し、4,884百万円となった。各キャッシュ・フローの状況について見ると、営業活動により獲得した資金は5,135百万円となった。これは、税引前四半期純利益を1,542百万円計上したこと、たな卸資産が2,763百万円減少したことなどによる。また、投資活動により使用した資金は290百万円となった。これは、主に投資有価証券として250百万円の出資を行ったことに加えて、定期預金を45百万円作成したことによる。さらに、財務活動により使用した資金は2,511百万円となった。これは、主に新規物件の取得等に伴う7,499百万円の借入を実行したこと及び第三者割当増資に伴う株式発行により996百万円を獲得した一方で、保有物件の売却等により借入金を10,921百万円返済したことなどによるものである。
以上の結果、同社が自由に使うことができるフリー・キャッシュ・フローは4,845百万円に増加して手元資金は厚くなっており、経営の安定度が高まっていると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<EY>