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ホットリンク Research Memo(3):SNS関連のビッグデータを扱うテクノロジー企業(2)

注目トピックス 日本株
■会社概要

2. 事業内容
ホットリンク<3680>は2020年12月期より事業区分を従来のSaaS事業・ソリューション事業・クロスバウンド事業から、SNSマーケティング支援事業・DaaS事業・クロスバウンド事業と事業主体別に変更している。これは今後の成長に向けた事業戦略として、SNSマーケティング支援事業を主軸に据える方針を2019年に決定し、SaaS事業における新規ツールの開発を停止したことによる。

(1) SNSマーケティング支援事業
ホットリンクで展開する同事業には、国内向けのSNS広告・SNS運用コンサルティングと、SNS分析ツール「クチコミ@係長」がある。2021年12月期第2四半期累計の売上構成比ではSNS広告・SNS運用コンサルティングが71.4%、SNS分析ツールが28.6%となり、訴求力向上に伴ってSNS広告・SNS運用コンサルティングの割合は今後拡大する見込みである。

SNSマーケティング支援事業では、主にTwitterを活用したマーケティング支援サービス(SNS広告代理販売・運用コンサルティングサービス)を展開する。運用コンサルティングでは、保有するソーシャル・ビッグデータと長年蓄積してきたノウハウや独自メソッドを生かして、顧客企業の商品の認知度拡大や売上アップにつながる施策をTwitterなどで実施している。現状、売上高の大半は広告販売で占められるが利益率は低く、コンサルティングサービスで利益を稼ぐビジネスモデルとなっている。一般的なケースとして、受注単価は1案件当たり数百万円でスタートしている。効果が確認されれば、取り扱い商材を増やすことで年間取引額で1億円以上に増やすことも可能となる。

顧客企業は食品・飲料、美容・コスメ、オンライン学習サイト運営などBtoC企業を中心に幅広い業種にわたっており、企業規模としては売上高で1,000億円前後の企業が多い。それ以上の大企業になるとテレビCMなどを利用する企業が多く、大手広告代理店との関係構築が既にできあがっており、参入するにはハードルが高いためだ。ただ、SNS広告運用のパフォーマンスについては大手広告代理店よりも勝っており、大手自動車メーカーから受注したケースもある。足元では業界内での評価が高まることで、少しずつではあるが大企業とのビジネスチャンスも広がりつつあるようだ。

SNSを使った効果的なプロモーション施策として、同社はUGC(User Generated Contents:ユーザーが発信する口コミなどのコンテンツ)を増やすことが重要と考えており、UGCの発生に伴って起きる一連の消費者の購買行動プロセスを「ULSSAS(ウルサス)」として体系化している。具体的には、起点となるUGC(Twitter上での投稿)に、それを見たフォロワーがLike(いいね!)を付ける。そして、SNS内での検索(Search1)や、Googleなどの検索エンジンを使って商品を確認し(Search2)、購入(Action)する。その後にTwitter上で拡散(Spread)する。このような一連のプロセスを循環させることで、顧客企業の商品の売上アップを図る。

この循環プロセスを効率的に作り上げるには、同社が長年蓄積してきた成功パターンから編み出した独自メソッドがカギを握っており、他社との差別化要因となっている。例えば、Twitterの情報収集だけでなく、ブログやほかの口コミサイトなど様々なデータを組み合わせて分析し、AIによって自動抽出した最適なUGC発信者に対してプロモーション対象商品の広告を配信している。このため、同社のマーケティング支援サービスは費用対効果の高いサービスとして注目されており、リピート率も70%以上と高く、「Twitterマーケティング」と言えば「ホットリンク」というブランドを確立している。

一方、SNS分析ツールとなる「クチコミ@係長」の特長は、国内最大級のソーシャルメディアデータを保有し、トレンド分析や属性分析などを簡単操作、かつリアルタイムに実行できること、また、テレビやWebニュースなどとのクロスメディア分析、自社が保有するデータ(アンケート、コールログ等)のテキストマイニングを行うデータインポート分析機能なども実装していることが挙げられる。特に、ソーシャルメディア分析では国内ブログの約90%をカバーしているほか、投稿サイト「5ちゃんねる」の過去データや、全世界のTwitterデータを相手先との契約に基づいてすべて収集するなど、国内では圧倒的なソーシャルメディアデータを保有していることが強みとなる。

顧客企業は「クチコミ@係長」を使ってソーシャル・ビッグデータを分析し、自社の商品開発や販促活動、競合他社比較等の調査などに利用している。初期導入費用は10万円、月額利用料は13万円からで、利用可能ID数や対象メディア、データ容量などによって料金が加算される。大口ユーザーでは月額100万円程度となる企業もある。累積導入社数は1,000社以上で、このうち現在の実稼働数は約300社となっている。利用企業の約8割は大企業で、消費財メーカーやサービス、金融機関など幅広い企業に導入されている。

(2) DaaS事業
DaaS事業は、Effyis(ブランド名:Socialgist)がグローバルで展開するソーシャルメディアのデータアクセス権販売事業となる。Twitterを除く世界中の公開型SNS運営会社とソーシャルメディア(ブログ、掲示板、Q&A、レビューサイト等)のデータアクセス権に関する販売契約を締結し、グローバルIT企業(ソーシャル・ビッグデータ分析、マーケティングプラットフォーム、BI等のツールベンダーなど)に販売している。言わば、ソーシャル・ビッグデータの流通企業で世界最大級の企業となる。主要顧客にはsalesforce.comやIBMなどのほか、金融機関や政府機関、SaaS事業等を手掛けるベンチャーIT企業など数多くの企業がある。

(3) クロスバウンド事業
子会社のトレンドExpressで展開するクロスバウンド事業は、主にソーシャル・ビッグデータを活用したクロスバウンドの消費動向を分析するレポーティングサービスや2017年より開始した中国市場向けWebプロモーション支援「トレンドPR」、中国市場向けの越境EC支援サービス「越境EC X」などが含まれる。レポーティングサービスでは、訪日外国人の消費動向を分析した定期発行の「中国トレンドExpress」(月額8万円)や、顧客ニーズに合わせたカスタムリサーチサービスを提供している。また、今後の注力分野は中国市場向けのプロモーション支援や越境EC支援サービスとなる。

「トレンドPR」は自社の商品やブランドを中国市場で認知・育成し、売上拡大を目指す企業に対して費用対効果の高いマーケティング支援を提供するサービスとなる。具体的には、同社が強みとする中国市場でのソーシャル・ビッグデータ分析に基づき、最適なマーケティング施策の企画・立案、実行(中国人に刺さるネット記事の作成や最適なWebメディアへの露出等)と、その後の効果測定や改善提案までPDCAサイクルを回す。このような形で中国市場での販売拡大を支援するサービスである。顧客側から見ればデータがすべて可視化されるため、費用対効果が明確となり、プロモーション施策のための予算を組みやすくなるといったメリットがある。1案件(PDCAサイクル1回転分)当たりの料金は様々だが、平均で300万〜500万円程度となる。顧客は化粧品や日用品、ヘルスケア商品などのBtoC企業が多い。

一方、「越境EC X」は大手ECサイトの「Taobao」内に出店する有力店舗や有力KOL(Key Opinion Leader:インフルエンサーと同意語。中国のインフルエンサーを指すことが多い)の個人店舗のほか、約7,000万人のユーザーを抱える。日中間のソーシャルバイヤー約45万店舗をネットワーク化している「微店」などと提携し、これらのネットワークを使って販売プロモーションを行い、効率的に中国市場での認知度を向上させ、商品の販売を増やすサービスとなる。集客から販売・物流・カスタマーサポートまでをワンストップで提供し、対象となる商品の販売額に応じた成果報酬を得るビジネスモデルとなっていることが特長だ。このため、プロモーション期間中に対象商品が爆発的にヒットした場合には、収益への貢献度が大きくなる可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)



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