シナネンHD Research Memo(7):石油価格やプロパンCPの高騰にもかかわらず、期初計画を超過達成
[22/07/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2022年3月期の業績動向
シナネンホールディングス<8132>の2022年3月期の業績は、売上高289,340百万円(前期比※33.3%増)、営業利益2,480百万円(同15.5%減)、経常利益3,272百万円(同8.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,487百万円(同8.4%減)となった。期初計画比では売上高で45,340百万円、営業利益で380百万円、経常利益で1,572百万円、親会社株主に帰属する当期純利益では987百万円の超過達成となった。なお、同社は前期比増減を決算短信に表示していないが、これは2022年3月期初より収益認識会計基準等を適用したためである。収益認識会計基準等を適用したことで売上高が10,137百万円減少、営業利益、経常利益もそれぞれ4百万円減少しているため、実質的には売上高で前期比37.9%増、営業利益で15.4%減、経常利益で8.4%増となり、親会社株主に帰属する当期純利益は変わらない。
※売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利の前期比はフィスコ算出。
日本経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大と収束が繰り返されるなか、経済活動への厳しい制限が徐々に緩和され、社会活動や個人消費に持ち直しの動きが見られた。しかし、ウクライナ情勢など地政学的リスクの高まりに加え、世界的な半導体不足や資源価格の高騰などにより、景気の先行きは予断を許さない状況が依然として続いている。国内エネルギー業界においては、年度初めより上昇基調にあった原油価格・プロパンCPが、地政学的リスクの顕在化による供給不足の懸念が強まり、2014年以来の高値水準での推移となった。一方、石油・ガスの国内需要は、少子高齢化の進展、省エネ機器の普及やライフスタイルの変化などにより全体としては減少傾向が続いている。また、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画を弾みに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた動きが加速する見込みとなった。
このように同社を取り巻く事業環境が大きく変化するなか、第二次中期経営計画の定量目標とするROE6.0%以上に向け、引き続き3つの定性目標を達成するための取り組みを推進した。具体的には、「資本効率の改善」に向けて埼玉県川口市の固定資産を譲渡、「持続的成長を実現する投資の実行」では、再生可能エネルギーやシェアサイクルなど新規事業への戦略投資に加えDX推進に向けたIT関連投資を実行し、第三次中期経営計画での躍進に向けた基盤整備を進めた。また、「社員の考え方・慣習・行動様式の変革」に向けた風土改革・働き方改革も引き続き推進した。
この結果、売上高は、原油価格やプロパンCPの高騰による販売単価の上昇を受けたBtoC事業とBtoB事業がともに好調に推移、非エネルギー事業も、ステーション数などインフラを拡充したシェアサイクル事業、医療施設向けの感染消毒清掃が好調だった建物維持管理事業がけん引して増収を確保した。利益面では、市況上昇による増収だったため売上総利益への効果が限定的だったうえ、新規事業に向けた戦略投資やIT関連投資、中途採用に伴う人件費の増加などにより販管費が増加、営業減益となった。一方、保険返戻金の増加や貸倒引当金繰入額の減少により営業外損益が改善して経常利益が増益に、有価証券売却益はあったものの固定資産売却益の減少やのれん償却の発生により親会社株主に帰属する当期純利益は減益となった。
なお、業績が期初計画から超過達成した要因は、売上高が原油価格やプロパンCPの高騰のほか、BtoB事業のオイルスクエア拡充策による増販などが挙げられる。また、営業利益については、BtoB事業の増販に伴う差益確保やシステム事業で電力CISが順調に推移したことによる。バランスシートに関しては、今般の原油価格やプロパンCPの高騰による販売単価の上昇によって、売上債権が大幅に増加したが、親会社株主に帰属する当期純利益の増加によって自己資本も拡大したため、自己資本比率は50%超を確保、健全な状態を維持することができた。しかしながら、ROEが4.7%と、中期経営計画における進捗としてはやや物足りない結果となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2022年3月期の業績動向
シナネンホールディングス<8132>の2022年3月期の業績は、売上高289,340百万円(前期比※33.3%増)、営業利益2,480百万円(同15.5%減)、経常利益3,272百万円(同8.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,487百万円(同8.4%減)となった。期初計画比では売上高で45,340百万円、営業利益で380百万円、経常利益で1,572百万円、親会社株主に帰属する当期純利益では987百万円の超過達成となった。なお、同社は前期比増減を決算短信に表示していないが、これは2022年3月期初より収益認識会計基準等を適用したためである。収益認識会計基準等を適用したことで売上高が10,137百万円減少、営業利益、経常利益もそれぞれ4百万円減少しているため、実質的には売上高で前期比37.9%増、営業利益で15.4%減、経常利益で8.4%増となり、親会社株主に帰属する当期純利益は変わらない。
※売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利の前期比はフィスコ算出。
日本経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大と収束が繰り返されるなか、経済活動への厳しい制限が徐々に緩和され、社会活動や個人消費に持ち直しの動きが見られた。しかし、ウクライナ情勢など地政学的リスクの高まりに加え、世界的な半導体不足や資源価格の高騰などにより、景気の先行きは予断を許さない状況が依然として続いている。国内エネルギー業界においては、年度初めより上昇基調にあった原油価格・プロパンCPが、地政学的リスクの顕在化による供給不足の懸念が強まり、2014年以来の高値水準での推移となった。一方、石油・ガスの国内需要は、少子高齢化の進展、省エネ機器の普及やライフスタイルの変化などにより全体としては減少傾向が続いている。また、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画を弾みに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた動きが加速する見込みとなった。
このように同社を取り巻く事業環境が大きく変化するなか、第二次中期経営計画の定量目標とするROE6.0%以上に向け、引き続き3つの定性目標を達成するための取り組みを推進した。具体的には、「資本効率の改善」に向けて埼玉県川口市の固定資産を譲渡、「持続的成長を実現する投資の実行」では、再生可能エネルギーやシェアサイクルなど新規事業への戦略投資に加えDX推進に向けたIT関連投資を実行し、第三次中期経営計画での躍進に向けた基盤整備を進めた。また、「社員の考え方・慣習・行動様式の変革」に向けた風土改革・働き方改革も引き続き推進した。
この結果、売上高は、原油価格やプロパンCPの高騰による販売単価の上昇を受けたBtoC事業とBtoB事業がともに好調に推移、非エネルギー事業も、ステーション数などインフラを拡充したシェアサイクル事業、医療施設向けの感染消毒清掃が好調だった建物維持管理事業がけん引して増収を確保した。利益面では、市況上昇による増収だったため売上総利益への効果が限定的だったうえ、新規事業に向けた戦略投資やIT関連投資、中途採用に伴う人件費の増加などにより販管費が増加、営業減益となった。一方、保険返戻金の増加や貸倒引当金繰入額の減少により営業外損益が改善して経常利益が増益に、有価証券売却益はあったものの固定資産売却益の減少やのれん償却の発生により親会社株主に帰属する当期純利益は減益となった。
なお、業績が期初計画から超過達成した要因は、売上高が原油価格やプロパンCPの高騰のほか、BtoB事業のオイルスクエア拡充策による増販などが挙げられる。また、営業利益については、BtoB事業の増販に伴う差益確保やシステム事業で電力CISが順調に推移したことによる。バランスシートに関しては、今般の原油価格やプロパンCPの高騰による販売単価の上昇によって、売上債権が大幅に増加したが、親会社株主に帰属する当期純利益の増加によって自己資本も拡大したため、自己資本比率は50%超を確保、健全な状態を維持することができた。しかしながら、ROEが4.7%と、中期経営計画における進捗としてはやや物足りない結果となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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