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イブキとVIE STYLE、ニューロフィードバックを用いたゴルフにおける“チョーキング現象”を克服する新たなトレーニング技術の開発に着手

ニューロテクノロジーで、練習場では上手くいくのに本番ではダメを解消

 次世代型ウェアラブル・イヤホン型脳波計の開発とニューロテクノロジーの社会実装を行うVIE STYLE株式会社(代表取締役: 今村 泰彦、本社所在地: 神奈川県鎌倉市、以下VIE STYLE(ヴィー スタイル))とGolfingスタジオを運営する株式会社イブキ(代表取締役: 平井 孝幸、本社所在地: 東京都千代田区、以下イブキ)は、ニューロフィードバック技術を用いることで緊張状態におけるゴルフパフォーマンスの低下(チョーキング現象)を予防する技術開発を開始したことをお知らせします。
 ニューロフィードバックのシステムの開発は完了し、予備的ではありますが、ゴルフパッティングにおいてニューロフィードバックの有効性を示す結果も得られ始めています。今後このニューロフィードバック技術を基盤に「脱力」スキルを、フィジカルとメンタル両面から身に着けるという新しい観点のトレーニング技術の研究開発を進め、プロ/アマ向けトレーニングサービスの開発・提供に着手していく予定です。




[画像1: https://prtimes.jp/i/67474/28/resize/d67474-28-7ab2719bf97babadcde0-0.png ]




1. 研究の背景

 スポーツなどの身体パフォーマンスを行う際、様々な心理的プレッシャー(成果、報酬、観衆、勝敗、など)の影響を受けます。この心理的プレッシャー要因により自身に不安を感じ、一時的に動作等が円滑に行うことができなくなることを「Choking under pressure(プレッシャー下の窒息・チョーキング)」現象と呼びます(日本では「あがり」とも)。この「Choking under pressure」によりパフォーマンスが低下してしまうことは、ゴルフに限らず、他のスポーツや仕事におけるプレゼンなど私たち誰もが経験することです。
 先行研究では、例えば,手先の繊細な運動処理を行うバスケットボール・ゴルフは「Choking under pressure」の影響を受けやすいため,ホーム試合の観衆数が+14.7%増えるほど,プロバスケットボール選手のフリースローの成功率10%低下する事例(注1)やゴルフの大会において賞金が10,000$上がるほどゴルフパッティング成功率が0.18%低下することが報告されています(注2)。このように膨大な練習を重ね実力をつけたスポーツアスリートでさえも、本番のプレッシャーで文字通り筋肉が緊張してしまう「あがり」状態に陥ってしまい身体パフォーマンスが低下してしまいます。
 このチョーキング現象には、緊張する外的な環境下で自動的に沸き起こる心理的な不安・緊張が関与している=脳内で起きている症状だと考えられており、「頭ではリラックスして力を抜きたくても、意識的に力を抜くのが難しい」ことが問題点です。この課題に対して有効性が示唆されているのが「ニューロフィードバック」と呼ばれる技術です。ニューロフィードバックとは脳内で起こっている様々な精神生理学的な変化である非意識的情報を脳計測を通してリアルタイムで個人にフィードバックし、個人の心身のパフォーマンス向上を自己促進することをサポ―トする技術です 。以下にいくつか先行研究を紹介します。


1.1 ニューロフィードバック研究(あがり・スポーツ不安)

 先行研究において、不安やプレッシャーに対してニューロフィードバックトレーニングを行ったところ緊張が誘発する「あがり」症状とスポーツ不安スコアが改善した事例が存在します。感覚運動リズム(SMR)とも呼ばれる(12〜15Hz)に着目したニューロフィードバックトレーニングを行ったところアンケートから得られた不安尺度が改善され、緊張・ストレスの指標であるコルチゾール成分の減少が増加したと報告されています(注3.4)。また、SMRのみでなくα波/θ波や前頭葉α波の非対称性に着目したニューロフィードバックトレーニングを行ったところ、サッカー選手の不安スコアの低減や否定的感情・不安の軽減を示唆している研究もあります(注5.6)。


1.2 ニューロフィードバック研究(身体パフォーマンス)

 先行研究において、γ波帯域(32〜55Hz)の脳波を抑制させるニューロフィードバックトレーニングを行ったところ、緊張を伴う航空機を操縦するタスクのスコアが向上し、自らの心拍数を調節し興奮を抑えることができたと報告しています(注7)。また、繊細な身体パフォーマンが必要となるためチョーキングの影響を受けやすいゴルフパッティング課題を用いてニューロフィードバックを行っている研究もいくつかあり、感覚運動リズム(SMR:12〜15Hz)に着目しニューロフィードバックしたところゴルフのパフォーマンスが向上した研究(注8)や、同じ台湾のグループが行った、専門コーチに指導してもらう従来の機能別指導(FSI)アプローチに加えて前頭正中線θ波(Fmθ)を減少させるニューロフィードバックトレーニングでパッティングパフォーマンスが有意な改善を示唆した研究が存在します(注9)。
 以上のように、チョーキング対策やゴルフパフォーマンスを上げるためのニューロフィードバック研究は長年行われてきており、トレーニングによって過度な緊張状態である「あがり」の改善・身体パフォーマンスの向上させる可能性が示唆されています。
 そこで我々は、特に心理的プレッシャーの影響を受けやすいと考えられるゴルフパッティングをターゲットに、チョーキング下でもパフォーマンスを向上させることができるトレーニングを行うニューロフィードバック(NF)システムの構築を行いました。そのシステムおよび、予備的な実験結果を紹介します。

2. ゴルフパフォーマンス向上のためのニューロフィードバックシステム

 外耳道電極による脳波(In-Ear EEG)デバイスVIE ZONEを用いてゴルフパッティングパフォーマンスを向上させるNFトレーニングのシステムを開発し、3名のゴルフ初心者を対象に予備的な検証実験を行いました。初めにPreセッションがあり、このセッションでは「No Pressure」、「Pressure」試行を交互に3試行ずつ行い、後のNFトレーニングに用いる脳波データを取得します。そのデータを元に「上手くいった(か失敗したか)」を分類する脳情報解読モデル(デコーダー)を作成し、そのモデルを用いてNFトレーニング(NFT)を10回行ってもらう実験フローとなっています(Fig.1)。

[画像2: https://prtimes.jp/i/67474/28/resize/d67474-28-a6d041588f0644a3bbd5-1.png ]

 「Pressure」条件では参加者に心理的プレッシャーを感じてもらうために、計3パットを成功するまで次の試行に移行しないデザインとしました(「No Pressure」では成功・失敗を問わずに3パットを行う)。成功の定義は、パッティングしたボールがホールの中心から10[cm]以下の場合としました(今回の実験では成功となるトライアルが少なかったため、失敗したパッティングから20[cm]以上パッティングパフォーマンスが向上した場合も成功としました。※成功パッティングが少ない場合NFに用いるモデルが構築できないことが理由)。
 NFトレーニングでは、成功パッティングの脳波(脳活動)に近いほどVIE ZONEから聞こえる心拍音(本人のものではなく合成音)が大きくなるので、その音をなるべく大きくしてもらうように教示をしました(Fig.2)。
[画像3: https://prtimes.jp/i/67474/28/resize/d67474-28-6d54e48badd4c4a4b0ed-2.png ]



3. 予備的な実験の結果

 NFの結果(上手く脳活動をコントロールできたか)とパッティングパフォーマンスの関連を分析したところ、今回の実験においては、統計的に有意な相関とはなりませんでしたが、パッティング直前のNfVolumeが大きい(=成功した時の脳活動に近い脳活動を起こせた時)ほど高いパフォーマンス(ホール中心からの絶対値小さくなる)となる傾向にありました(Fig.3)。


[画像4: https://prtimes.jp/i/67474/28/resize/d67474-28-5ba467675efbbca39622-3.png ]

 また、試行を重ねるごとのパフォーマンスを分析すると、NF前のPreセッションではトライアルを重ねても、パフォーマンスの向上率が緩やかで分散も大きい傾向にありました。一方でNFセッションでは、トライアルを重ねるごとのパッティングパフォーマンス向上率がPre試行より高くばらつきが小さい傾向となりました(Fig.4)。

[画像5: https://prtimes.jp/i/67474/28/resize/d67474-28-769295008a52fecff62f-4.png ]

 今回、先行研究から示唆されているニューロフィードバックによるゴルフパフォーマンスの向上トレーニングを、ウェアラブルIn-Ear EEG(イヤホン型脳波計:VIE ZONE)で行うシステムを開発しました。結果、予備的な結果ではあるものの心理的プレッシャー下でのゴルフパッティングパフォーマンスが向上する可能性が示唆されました。今後は開発したシステムを利用し、より本格的な検証実験を行っていく予定です。


4. 今後の展望

 こうした心理的プレッシャー下により誘発される「あがり」によってパフォーマンスが低下してしまう状態の対処は、ゴルフ以外にも転移可能なスキルであると考えられ、対面発表や試験などにおいて緊張しやすい方々(社交不安障害なども対象)に対しての効果も期待できます。ゴルフにおいて、「緊張しない・力まない」スキルをトレーニングすることをきっかけとして、日々の生活におけるパフォーマンスも上げることも期待されます。
 今後、このニューロフィードバック技術を基盤に「脱力」スキルをフィジカルとメンタル両面から身に着けるという新しい観点のトレーニング技術の研究開発を進め、プロ/アマ向けトレーニングサービスの開発・提供に着手していきます。
 さらに発展的な可能性として、本技術とクラブを組み合わせることで、ハイパフォーマンスを目指せる次世代クラブ・トレーニングテクノロジーの開発などにもパートナーを探索しながら着手していく予定です(Fig.5)。
[画像6: https://prtimes.jp/i/67474/28/resize/d67474-28-0006c0d450bf7e4ce481-5.png ]



株式会社イブキ

 イブキは、健康経営領域を中心に企業向けウェルビーイングゴルフプログラム開発やウェルネスワーケーション、脱力とZONEをテーマにしたゴルフプログラムの開発を行っています。そのオリジナルプログラムを活用した『Golfingスタジオ※』の展開も行い、2025年までに100店舗を展開していくことを予定しています。ゴルフを活用し、多くの企業のビジネスパーソンの健康やパフォーマンスアップをサポートしています。


※Golfingスタジオ(https://www.golfing-jpn.com/

 ゴルフの本質的な上達には『クラブを振らずにボールを打たずにスイング感覚を磨く』というコンセプトのもと、2022年5月神田にオープン。トッププロを教えるプロゴルファーである増田哲仁プロが40年かけて培ってきた自然とゴルフが上手くなれるメソッドを元にしたサーキットプログラムジムです。


イヤホン型脳波計「VIE ZONE」

 VIE STYLEが開発するイヤホン型脳波計「VIE ZONE(ヴィー ゾーン)」は、イヤーチップが電極となり、耳(外耳道)から脳波を取得できるウェアラブルデバイスです。イヤホン型脳波計(In-Ear EEG)は従来課題だった日常生活における脳波計測デバイスの煩雑性(装着するのが面倒、見た目が悪い等)の問題がなく、いつものようにイヤホンをつければ脳波を測れるという、近年注目を集めている技術です。


[画像7: https://prtimes.jp/i/67474/28/resize/d67474-28-f632d814bffc81377e42-6.png ]




VIE STYLE株式会社

 VIE STYLEは、「味わい深い人生を〜Feel the life〜」をミッションに掲げ、ニューロテクノロジーとエンターテインメントで、人々の感性をアップデートし、ウェルビーイングに貢献することを目指しています。世界の人々が感性豊かな人生をおくることをサポートするプロダクトを創造し、エンターテイメントからデジタルセラピューティクス(DTx)の発展にも寄与していきます。


[表: https://prtimes.jp/data/corp/67474/table/28_1_9d432e48c15c5312807f68affa5998f0.jpg ]


(注1)Böheim, R., Grübl, D., & Lackner, M. (2019). Choking under pressure–Evidence of the causal effect of audience size on performance. Journal of Economic Behavior & Organization, 168, 76-93.
(注2)Hickman, D. C., & Metz, N. E. (2015). The impact of pressure on performance: Evidence from the PGA TOUR. Journal of Economic Behavior & Organization, 116, 319-330.
(注3)Liu, S., Hao, X., Liu, X., He, Y., Zhang, L., An, X., ... & Ming, D. (2022). Sensorimotor rhythm neurofeedback training relieves anxiety in healthy people. Cognitive Neurodynamics, 16(3), 531-544.
(注4)Gadea, M., Aliño, M., Hidalgo, V., Espert, R., & Salvador, A. (2020). Effects of a single session of SMR neurofeedback training on anxiety and cortisol levels. Neurophysiologie Clinique, 50(3), 167-173.
(注5)Zadkhosh, S. M., Zandi, H. G., & Hemayattalab, R. (2018). Neurofeedback versus mindfulness on young football players anxiety and performance. Turkish Journal of Kinesiology, 4(4), 132-141.
(注6)Mennella, R., Patron, E., & Palomba, D. (2017). Frontal alpha asymmetry neurofeedback for the reduction of negative affect and anxiety. Behaviour research and therapy, 92, 32-40.
(注7)Faller, J., Cummings, J., Saproo, S., & Sajda, P. (2019). Regulation of arousal via online neurofeedback improves human performance in a demanding sensory-motor task. Proceedings of the National Academy of Sciences, 116(13), 6482-6490.
(注8)Cheng, M. Y., Huang, C. J., Chang, Y. K., Koester, D., Schack, T., & Hung, T. M. (2015). Sensorimotor rhythm neurofeedback enhances golf putting performance. Journal of Sport and Exercise Psychology, 37(6), 626-636.
(注9)Chen, T. T., Wang, K. P., Chang, W. H., Kao, C. W., & Hung, T. M. (2022). Effects of the function-specific instruction approach to neurofeedback training on frontal midline theta waves and golf putting performance. Psychology of Sport and Exercise, 61, 102211.
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