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NEDO事業においてソフトバンクが遅延制約下でスループットを最大化するシステムを開発

―エッジのみ処理に比べ2倍の実効スループット達成で、自動運転などへの応用に期待―




 NEDOの委託事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(以下「本事業」)において、ソフトバンク株式会社は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)と共同でポスト5G時代に求められるMEC/クラウド環境を用いた分散処理システムで、遅延制約を満たすと同時に、スループットを最大化するためのアプリケーションを構成するコンポーネントの最適配置を動的に行うシステムを開発しました。
 本事業のユースケースをV2Xとし、その想定要件である遅延制約の目標を25ms(1ms:1000分の1秒)以下で検証を行った結果、14.8msでの処理を達成し、エッジのみで処理した場合に比べ、2倍の実効スループットを達成しました。
 今回本事業で開発したシステムのプラットフォームは、オープンなインターフェースとして、5Gデジタルサービスの開発・運用を可能にする環境の提供を想定しています。今後、5GデバイスやMECを用いた実証実験を通して、自動運転や工場のスマート化などのユースケースに関わる実用化検証を行う予定です。

[画像1: https://prtimes.jp/i/135644/29/resize/d135644-29-64d4ad9d61211b4d2741-0.png ]


1.背景
 ポスト5G時代においては、超低遅延、多数同時接続といった5G(第5世代移動通信システム)の機能の強化や、近年の急速な人工知能(AI)の発展により、さまざまな場所や環境で情報を収集して、リアルタイムにデータを処理する需要が拡大し、IoTデバイスが計算資源※1へ行うリクエスト数が増大することが見込まれます。そのため、低遅延を維持しつつ、大量のリクエストを処理するための基盤技術が必要とされています。
 しかし、従来のクラウドとデバイスを用いた処理システムでは、5Gネットワークを用いてもIoTデバイスからクラウドまでは通信遅延が大きく、データを応答性の高い速度(低遅延)で処理することは困難です。それに対して、近年ではMEC※2などのデバイス近傍の拠点を生かしたエッジコンピューティング技術を用いて低遅延でデータの処理を行うための技術開発が進められていますが、MECの限られた計算資源だけでは大量のIoTデバイスからのリクエストを処理することが困難になることが予測されます。
 したがって、クラウド資源も利用しトータルでアプリケーションのコンポーネント※3を最適配置※4することにより、低遅延かつ、スループット※5を最大化する技術が求められます。
 こうした背景を踏まえ、NEDOの本事業※6において、2020年10月から2023年10月まで、ソフトバンクは、産総研と共同でポスト5Gに対応しクラウドやMECなどのネットワーク資源が協調してデータ処理を行うことで、処理能力のスケーラブルな拡張を可能にし、低遅延性を確保しながら大規模なデータ処理を実現するシステムの開発に取り組みました。従来のIoTデバイスとクラウドのみを想定した分散システムには存在しない、MECも含めたネットワーク環境における分散処理※7において、今回開発した独自配置アルゴリズムを通じて計算資源の管理手法を明らかにします。また、MECの有用性を定量的に検証し、MECを適切に利用することで、従来よりも1桁小さい遅延処理を目指しました。

2.今回の成果
(1)アプリケーションのコンポーネントの自動最適配置を行うシステム開発
 今回、自動的に遅延制約※8を満たしつつ大規模な処理に対応するアプリケーションのコンポーネントを最適に配置するためのシステム(以下「本システム」)を開発しました。本システムは、5Gシステムからのネットワークの情報とMECやクラウドの計算資源に関する情報をリアルタイムに監視・取得し、その状況に応じた、アプリケーションを構成する複数のコンポーネントの最適配置解を計算し、その結果に基づき、コンポーネントを動的に配置します。最適配置解の計算については、独自のアルゴリズムを開発しました。今回開発したアルゴリズムは、アプリケーションおよび計算機の特性や性能を厳密に計算し、アプリケーションからの遅延要求を満たす中で、最大のスループットを達成するコンポーネントの配置解を導出します。このアルゴリズムを用いたシステムにおいて、ネットワークの状態変化や計算資源の状況に応じて満たすべき遅延制約やスループットを確保しながら、動的にコンポーネントの配置解を導き出すことを確認しました。

(2)最適配置の有効性確認
 本システムの特長を生かすため、低遅延・多数同時接続・広域性を必要とするユースケースに鑑み、V2X※9による自動車の衝突回避支援を想定したシミュレーションを実施しました。シミュレーションにおいては疑似的なV2Xアプリケーションを開発し、ネットワークの状態や計算資源で疑似的なポスト5G環境を構築した上で、最適配置の有効性について確認を行いました。V2Xに求められる遅延制約を25msと設定し検証した結果、クラウド(1番デバイスから遠い計算資源)にのみ配置した時では満たせない25ms以下である14.8msを達成し、ファーエッジ(1番デバイス近傍の計算資源)のみにコンポーネントを配置した場合に比べ、実効スループットが2倍になることを確認しました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/135644/29/resize/d135644-29-e56497b55906e40665de-1.png ]


3.今後の予定
 ソフトバンクは、各領域の産業活性化やデジタルライフラインの実現に向けて一翼を担う技術として本システムを推進していきます。そのため、本システムのプラットフォームは、オープンなインターフェースとして、5Gデジタルサービスの開発・運用が可能な環境の提供を想定しています。
 今後は、学会発表での発信や、ソフトバンク5Gコンソーシアム※10に参画するパートナー企業との連携も含めた5GデバイスやMECを用いた実証実験を通して、自動運転や工場のスマート化などのユースケースに関わる実用化検証を行う予定です。
 また、NEDOは、本事業をはじめ、ポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術の研究開発を今後も推進し、日本のポスト5G情報通信システムの構築・製造基盤強化に貢献します。


【注釈】
※1 計算資源
アプリケーションを処理するためのサーバやコンピュータなどです。
※2 MEC
Multi-access Edge Computingの略であり、インターネットのネットワークなどに置かれる計算資源のことです。
※3 コンポーネント
アプリケーションを構成する一つの機能のことです。
※4 最適配置
求められる条件に対して、分散処理システムのシステム群を適切な計算資源で動作させることです。
※5 スループット
コンピュータやネットワーク機器が単位時間あたりに処理できるデータ量のことです。
※6 本事業
事業名:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(委託)/リアルタイム制御技術(超低遅延性)
事業期間:2020年度〜2023年度
事業概要:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業 https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100172.html
※7 分散処理
複数のサーバやコンピュータが協調して計算処理などを行うことです。
※8 遅延制約
任意のアプリケーションが求める処理遅延時間などの条件のことです。
※9 V2X
Vehicle to X。車両とさまざまなものとの間の通信や連携を行う技術のことです。
※10 ソフトバンク5Gコンソーシアム
製造・運輸・建設・医療・スマートシティの五つの各領域の有識者や企業、5G通信機器、クラウド、エッジコンピューティング、
IoTデバイスなどの5G時代を支えるサプライヤー、ソリューションパートナーが集まり、その各領域の課題などに対して
具体的な解決方法を議論・検討し、オープンに実証実験(PoC)を行う組織です。
SoftBank 5G Consortium特設サイト https://5gc.itc.softbank.jp/s/

【商標関連】
SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
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