積水化学と日立、材料開発におけるMI推進に向け、先進デジタル技術を用いた協創を開始
[22/09/20]
提供元:PRTIMES
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積水化学工業株式会社(代表取締役社長:加藤敬太、以下「積水化学」)と株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:小島啓二、以下「日立」)は、このたび、材料開発におけるマテリアルズ・インフォマティクス(以下「MI」)の推進に向け、協創を開始します。
今回の協創は、材料に関するデータとAIなどのデジタル技術を駆使することにより、短期間で効率的に材料特性や知見を見出すことが可能なMIの推進に取り組むもので、新材料開発の加速や研究開発の効率化・高度化を目指します。日立のLumada*1で展開されるさまざまなソリューションのほか、先行研究として進める先進技術も幅広く活用し、積水化学の実業務においてその有用性を検証します。
具体的には、MIに必要となる材料開発のためのナレッジや実験データを社内外から自動で収集・整理・蓄積・統合し、最大限活用できる環境を構築します。また、実験ワークフローをサイバー空間上で表現したデジタルツインの構築により、材料開発の領域におけるサイバーフィジカルシステムの有用性の実証を進めていきます。なお、これらの検証は、積水化学の機能性材料に関する研究を対象に開始します。
積水化学の材料開発分野における高度なナレッジ・実績と、日立の先進デジタル技術・ナレッジを融合することにより、サステナブルな社会に向けたデータ駆動型の材料開発基盤の実現を目指します。
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■協創の背景
MIとは、統計分析などを活用したインフォマティクスの手法により、材料開発を高効率化する取り組みです。これまでの材料開発は、研究者の経験や勘に大きく依存し、実用化までに非常に長い時間と費用を要していました。一方で、市場では製品ライフサイクルの短命化、資源の制約などを起点として、材料開発への要求が多様化・高度化しており、その要求に応えるべく、世界的にMIへの取り組みが本格化しています。
積水化学は、サステナブルな社会の実現と企業としての持続的な成長を目指す「Vision2030」実現に向けた施策の一環として、専門部署によるMIを活用した革新的な材料開発に取り組んでいます。その成果として、さまざまな新材料のさらなる研究開発のスピード向上や高度化を実現してきました。
日立は、データを活用して材料開発プロセスを効率化するデータ管理・アナリティクス基盤の実現に向け、継続的に技術開発を積み重ねるとともに、MIを適用した「材料開発ソリューション*2」を、Lumadaソリューションの一つとして提供しており、素材産業をはじめとしたさまざまなお客さまのニーズに対応してきました。
今回の協創は、2021年度に実施した、日立の「協創の森*3(東京都国分寺市)」における、研究開発部門が開発した3つの技術に関する紹介と、積水化学の「水無瀬イノベーションセンター*4(大阪府三島郡)」における実際の実験に基づく意見交換を行うことで実現しました。日立の先進デジタル技術を積水化学のMIに適用し、その有用性を検証することでイノベーションの創出を加速します。
■協創の内容
1.CMOSアニーリングを活用した材料特性の最適条件探索による、材料開発の高度化
日立が開発した量子コンピュータを疑似的に再現するCMOSアニーリング*5を、材料開発分野に適用し、その効果検証を行います。新材料の開発では、試作と評価などの実験を繰り返し行う必要があり、時間やコストを要しています。多くの選択肢の中から最適な条件の組み合わせを高速かつ高精度に予測可能なアニーリング技術の活用により、積水化学が得意とするMIを用いた複雑な配合設計を加速し、新材料の開発サイクルのさらなる短縮や高度化を目指します。
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2.AIを用いて材料開発知識の整理を自動化し、多様な知識を蓄積するナレッジベースを構築
日立独自のAIを用いて、社内外のさまざまなデータの整理を自動化、さらに国や研究機関が公開するデータベースと統合して、研究者が着目する多様な知識を蓄積する「材料開発統合ナレッジベース」を構築し、その有用性を検証します。
既存データの整理だけでなく、公開データとの統合により不足情報を自動的に補完するほか、AIを用いて正しい情報を整理できたかなど不確実性の評価も行い、情報の信頼性向上を図ります。研究者は、蓄積した材料開発知識を横断的に検索できることで、実験情報の収集工数を削減し、多くのデータを用いた高度な新材料候補の予測が可能となるなど、材料開発の効率化が期待できます。
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3.実験デジタルツインの構築と実験データ収集の自動化による材料実験業務のDX化
材料開発の現場で行われる実験ワークフローをサイバー空間上に再現し、各プロセスの実験データ(例えば、材料・手法・装置・作業者など)を関連づけ、実験デジタルツインを構築します。また、実験業務の自動化・リモート化に向けて、実験で用いられる計測装置と実験デジタルツインの連携に向けた検討も行い、材料開発の効率向上に関する効果を検証します。
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試料合成や計測など実験過程で生まれるさまざまなデータを収集し、各データと実験ワークフローを日立の「IoTコンパス*6」を用いて関連づけ、データを統合的に管理します。また、計測装置と「IoTコンパス」を直接連携させることで、データ収集や解析の自動化を目指します。
従来、一元管理の難しかった膨大な実験データを、個々に関連付けて、俯瞰的な分析を容易にするほか、データ検索やフォーマットの整合作業など負荷を軽減し、実験結果の解釈や意思決定までのスピード向上が期待できます。また、実験データの一元化により、研究者間のデータ共有や他の研究でのデータの再利用にもつながります。
<注釈>
*1 Lumada:お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。https://www.hitachi.co.jp/lumada/
*2 材料開発ソリューション:MIによるお客さまの新材料の開発を支援するサービス。https://www.hitachi.co.jp/app/mi/
*3 日立 協創の森:https://www.hitachi.co.jp/rd/open/kyosonomori/
*4 積水化学 水無瀬イノベーションセンター:https://www.sekisuichemical-hppc.com/mic/
*5 CMOSアニーリング:磁性体の性質を説明するために考案されたイジングモデルを用いて組合せ最適化問題を解くために日立が開発している新型コンピュータ。https://www.hitachi.co.jp/rd/sc/qc/index.html
*6 IoTコンパス:設備の稼働状況や品質情報などのOTデータと、計画や在庫管理などのITデータをデジタル空間上で紐づけて、デジタルデータを容易に利用できるようにし、生産工程全体の最適化を支援ソリューション。
https://www.hitachi.co.jp/products/it/IoTM2M/list/iotcompas/?nr0920
■今後の展望
今回の協創開始に先立ち、両社は、2021年度よりデータ管理・アナリティクス基盤の実用性、有用性の検証を行ってきました。今後も、積水化学と日立は、さまざまな新技術を適用した共同実証を行い、市場ニーズの把握から材料開発までのリードタイム短縮を目的とした、研究開発のDXおよびMIの推進加速に取り組みます。これにより、新材料でのソリューション提案を実現し、サステナブルな社会の実現をはじめとする社会課題の解決に貢献していきます。
■イベントの出展について
本協創は、日立が2022年10月25日(火)〜27日(木)に開催する、「Hitachi Social Innovation Forum 2022 Japan」の協創セッション「積水化学工業との最新デジタル技術を活用した研究DX」において、ご紹介します。詳しくは、オフィシャルサイト( https://www.service.event.hitachi/ )をご覧ください。
以上