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AIが可能にする新しいビジネス

FIFイノベーションワークショップ2016「AIで起こすビジネス革命」第1回

フューチャー イノベーション フォーラム(略称=FIF、代表=牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャー株式会社会長兼社長)は、5月13日にイノベーションワークショップ2016の第1回を開催しました。
本ワークショップは次世代リーダーの育成と業界を超えた企業同士の交流を深める場として2007年にスタートしました。本年は「人工知能(AI)で起こすビジネス革命」をテーマに全3回シリーズで開催します。AIで新しいビジネスモデルを創り出すベンチャー企業やAIをビジネスに活用している企業の先進事例をみながら、実際の現場でAIをどのように活用するのか、またAIによってビジネスがどう変わるのかを議論します。




[画像: http://prtimes.jp/i/4374/161/resize/d4374-161-634567-0.jpg ]



【開催概要】
講演者:東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任准教授 松尾 豊
テーマ:AIが可能にする新しいビジネス
日 時:2016年5月13日(金) 18:00 〜 20:30
会 場:フューチャー株式会社

【講演概要】
1950年代から研究が始まった人工知能(AI)は、いま第3次のブームを迎え、大きく注目されている。ディープラーニング(深層学習)の技術が飛躍的に進歩したことでビジネス展開の可能性が一気に広がり、世界各国の企業や研究機関がAIの開発に力を入れている。
AIの画像認識と強化学習による運動の習熟によって、これまで人間が行っていた作業の自動化が様々な産業で進んでいくことが予想される。ビジネスや社会に与えるインパクトは大きく、AIによってどうビジネスはどう変わるのか、日本企業はAIをどのように活用していくべきかを示唆する。

◆ 第3次AIブームの背景
2016年3月、Google傘下の英DeepMind社が開発した囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁」が、世界最高峰の韓国人棋士、イ・セドル九段に勝利し、世界中に大きな衝撃を与えた。ディープラーニングという技術を活用したAIが、予想を遥かに超えるスピードで進化を遂げていたからだ。
1950年代に研究が始まったAIは、いま第3次ブームを迎えている。これまでのブームと大きく異なるのは、ディープラーニングの飛躍的な進歩によって実用例が広がり、ビジネス活用への期待が高まっていることだ。ディープラーニングとは、ニューラルネットワーク(神経回路網)を使って人間の脳に近い情報処理を行う技術で、人間と同じように経験に基づいた学習ができる。アイデア自体は1980年代からあったが、ここ数年の技術革新によって、大量かつ高速でデータ処理ができるようになり、実現可能になった。
なかでも画像認識の進化は目覚ましい。たとえばコンピュータに「ネコ」を認識させるには、人間がネコの特徴(「耳がとがっている」「目が丸い」など)を入力する必要があったが、特徴に当てはまらないケースも多く、精度はそれほど高くなかった。しかし、ディープラーニングが劇的に進化した2012年以降は、AIにネコの画像を大量に読み込ませれば、全体像や顔などのパーツを何層にもわたって学習し、AI自らその特徴を見出せるようになった。精度も飛躍的に高まり、2015年3月には、2枚の顔写真が同一人物か否かを見分けるテストにおいて、AIが99.63%の認識率を記録し、人間の能力を超えた。AIが「特徴量」を自動的に見出すという新しい技術は、AIにおける60年来のブレークスルーであり、ビジネスや社会に今後大きなインパクトをもたらすだろう。

◆ AI技術の向上による産業・社会へのインパクト
人間が特徴量を設計していたAIを「大人の人工知能」と呼ぶのに対し、ディープラーニングで自ら特徴量を見出すAIを「子どもの人工知能」と呼ぶ。そして2013年から、子どもの人工知能に「強化学習」、すなわち行動を学習する仕組みを組み合わせて、AIの運動能力を向上させるという研究が世界各国で進められている。日本企業も自動運転の研究に取り入れており、AIが障害物や他の車との衝突を繰り返しながら自己学習し、“事故を起こさない運転技術”の習熟を図っている。
このように認識と運動の習熟ができる「子どもの人工知能」は、破壊的なイノベーションが起きる可能性を秘めている。AIの活躍の場が様々な産業に広がっていくことが予想されるが、変化の本質は大きく二つ挙げられる。ひとつは、画像認識ができないために人間が行っている作業が自動化されることだ。すでに防犯・監視の分野では、米国でAIを活用した屋外監視カメラが登場し、年内には人や車の動きを検出してスマートフォンに通知するサービスが始まる。大幅なコスト削減につながるだけでなく、ここに感情理解や行動予測、環境認識といったマルチモーダルな認識を加えれば、監視カメラで怪しい人物を見つけ出すことも可能になる。
もう一つは、農業や建設業、食品加工業、清掃業など画一的な作業ではない分野でのロボットの導入だ。たとえばトマトを収穫する場合、「熟したトマトを見つけて」「もぎ取る」という作業は、人間にとって難しくないが、トマトの位置や状態、つかみ方を個々に判断しなければならないため、自動化が難しいとされてきた。しかし、画像認識の精度とロボットの運動能力が上がれば個別の対応が可能となり、いま人手をかけて行っている作業の自動化が実現できる。農業、建設業だけをみても、かなり大きな市場が見込まれるだろう。

◆ 日本企業の可能性 ―“運動系AI”で世界と戦う
国レベルでAIの開発競争が激しさを増すなか、今後はAIをどのようにビジネスに応用していくかが主戦場となる。そこでメインプレーヤーとなるには、「とにかくやってみる」ことが大切だ。
AIの進化は目覚ましく、こうしている今も新しい技術が次々と生まれている。画像認識の領域では、Google、Facebook、Amazonなどの米国企業が先行し、追いつくのは容易ではない。だが日本企業にも勝機はある。それは“運動系”のAIだ。製品を動かしたり加工したりという技術は、ものづくりに強い日本が得意とする分野であり、正確性や安全性が求められる運動系の緻密な領域において、日本企業は世界と充分に渡り合える。また産業分野における自動化は、超少子高齢社会を迎える日本にとって、労働力不足の解決にもつながるだろう。運動系のAIには、まだキープレーヤーが存在しない。だからこそ、日本企業は一刻も早く動いて、このチャンスをつかんでほしい。試行錯誤するなかで人材を育てノウハウを蓄積していくことが、企業の競争力となっていくからだ。いかにスピード感をもって取り組めるかどうかが、日本経済再生の鍵を握っている。

【本ワークショップに関するお問い合わせ】FIF事務局 TEL:03-5740-5817
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