新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における重症化予測マーカーの探索に関する臨床研究を実施します
[20/08/28]
提供元:PRTIMES
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千葉大学大学院医学研究院(中山 俊憲 医学研究院長)と千葉大学医学部附属病院(横手 幸太郎 病院長)は、新型コロナウイルス感染症の患者さんを対象とした臨床研究を、千葉県内の感染症指定病院を中心とする主要な病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院との連携により開始しました。
本臨床研究の目的は、患者さんから採取した血液を調べることにより、新型コロナウイルス感染症の重症化を予測するシステムを開発することです。重症化予測の新たなマーカー(指標)が明らかになれば、患者さんは今までより早期に適切な医療を受けられることが可能になり、重症化の予防が期待されます。さらに、重症患者数の減少により、医療側の負担を軽減し、医療崩壊を防ぐことも期待されます。
背景
高齢者および、糖尿病や高血圧といった基礎疾患がある患者さんにおいては、新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいことが報告されていますが、その詳細な原因はわかっておりません。さらに、若くて健康な方が感染した場合でも、ある一定の確率で、急激に重症化する患者さんがいるため、重症化の予測はとても重要です。
重症化の原因のひとつに、新型コロナウイルス感染により血管が傷つき、血管に炎症が起こることがあげられます。千葉大学大学院医学研究院免疫発生学(中山 俊憲 教授)の研究室では、これまでMyl9(ミオシン軽鎖9 ※項目7「用語説明」参照)というタンパク質が肺での血栓に起因する血管や気管支の炎症の指標になることを明らかにしました。
新型コロナウイルス感染症で重症化した患者さんでは、全身の血管炎や血栓症が報告されており、このMyl9が新型コロナウイルス感染症の病態や重症度に関与していると予測し、本臨床研究を進めています。
千葉大学大学院医学研究院長/医学部附属病院長のコメント
千葉大学大学院医学研究院長 千葉大学大学院医学研究院 免疫発生学 中山 俊憲
2020年2月に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の人々の日々の生活に大きな変化をもたらしています。新型コロナウイルス感染は、感染者の中から一定の割合で重症者が生じてしまいますが、感染時に重症化する患者さんを予測することは現時点では不可能です。そこで、今回、大学院医学研究院の“研究力”を社会へ還元すべく、医学部附属病院と研究チームを結成しました。
千葉大学大学院医学研究院では、医学部附属病院を中心とする臨床スタッフと協力し、新たな重症化マーカーに資する分子を見出し、この社会的困難な状況を科学の力で乗り越えるべく、研究者一同総力をあげて研究に邁進いたします。
千葉大学医学部附属病院長 千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学 横手 幸太郎
千葉大学医学部附属病院は、地域における“最後の砦”として、患者さんの生命を守るべく日夜診療に当たっています。一方、国内外でさまざまな研究が進む中、私たちも国立大学病院としての研究力を発揮し、新型コロナウイルス感染症の克服に貢献したいという強い思いがあります。
新型コロナウイルス感染者の大部分は軽症または無症状であるものの、その一部に重症化が見られ、生命予後に大きく影響しています。高齢者や、糖尿病患者など基礎疾患を有する患者群で重症化リスクの高いことが分かってきましたが、そのメカニズムや重症化を早期に検知する手法は未だ解明されていません。本院は、大学院医学研究院や千葉県下の関連病院と連携し、重症化の早期発見や予防に資するマーカーを明らかにする研究に、全力を尽くす所存です。
本臨床研究の計画の概要
【本臨床研究の概要】
[画像1: https://prtimes.jp/i/15177/426/resize/d15177-426-559838-3.png ]
(1)試験名
「重症化新型コロナウイルス感染症におけるバイオマーカーの探索」
(2)目的
新型コロナウイルスに感染した患者さんの血液中のMyl9の濃度を計測します。軽症から重症までの患者さんの間でその量に違いがあるのか調べます。また一人一人の患者さんの血液中のMyl9の濃度を経時的に調べることで、重症化する前にMyl9の値が上昇するのかも解析します。さらにMyl9の測定がこれまでの既存の検査方法と比べて、優れているのかを検証します。
同時に、重症化した患者さんの免疫細胞の特徴や遺伝子的な違いを先端の解析手法を用いて調べます。症状ごとに分けた患者様において医学的な差異を見出し、新規の重症化予測バイオマーカーになりうるかを明らかにすることを目的としています。
(3)試験デザイン
多施設、前向き観察研究
(4)対象疾患
新型コロナウイルス感染症
(5)対象被験者数
100名
(6)本臨床研究の流れ
[1]PCR検査などにより新型コロナウイルスに感染しているか確認します。
[2]症状などにより入院が必要かについて医師が判断します。
[3]入院となった場合、本臨床研究への参加に関する説明を行います。
[4]参加が可能な場合は、同意をいただきます。
[5]入院期間中、基本的に週に1回の採血を通常の検査時に追加で行います。
[6]血液検体は血漿、末梢血リンパ球、DNAに分けられます。
[7]血漿中Myl9濃度や遺伝子の変化を研究室で調べます。
[8]重症度とMyl9との相関や新規重症化予測マーカーを探索します。
(7)評価項目
血漿中Myl9濃度、末梢血リンパ球における1細胞レベルの遺伝子発現と一塩基多型
本臨床試験の実施体制
〇 研究代表者
千葉大学大学院医学研究院 免疫発生学 中山 俊憲
〇 研究責任者
千葉大学医学部附属病院 救急科 中田 孝明
〇 運営委員会委員長
千葉大学医学部附属病院 病院長 横手 幸太郎
〇 治験実施支援(データマネジメント、統計解析)部門
千葉大学医学部附属病院 臨床試験部 花岡 英紀
〇 臨床研究参加施設一覧(2020年8月28日時点)
1. 千葉大学医学部附属病院(研究責任者:中田 孝明)
2. 国際医療福祉大学 成田病院(研究責任者:津島 健司)
3. 国保直営総合病院 君津中央病院(研究責任者:漆原 崇司)
4. 船橋市立医療センタ-(研究責任者:中村 祐之)
5. 千葉市立青葉病院(研究責任者:瀧口 恭男)
6. 地方独立行政法人東金九十九里地域医療センター 東千葉メディカルセンター(研究責任者:笠原 靖紀)
7. 独立行政法人国立病院機構 千葉医療センター(研究責任者:金田 暁)
8. 独立行政法人地域医療機能推進機構 船橋中央病院(研究責任者:石川 哲)
9. 独立行政法人労働者健康安全機構 千葉労災病院(研究責任者:弥冨 真理)
10. 日本赤十字社成田赤十字病院(研究責任者:馳 亮太)
11. 順天堂大学医学部附属順天堂医院(研究責任者:長岡 鉄太郎)
本臨床研究への支援
本研究は、下記機関及び企業より支援を受けて実施いたします。
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
ウイルス等感染症対策技術開発事業:「新型コロナウイルス感染症における重症化の早期予測判定システムの開発」
研究代表者:千葉大学大学院医学研究院 免疫発生学 中山 俊憲
用語説明
Myl9(ミオシン軽鎖9)
Myl9はミオシン軽鎖ファミリーに属する小さな細胞内タンパク質で、主にMyh9(ミオシン重鎖9)と重合して、非筋ミオシンを形成します。(図1)。Myl9は、通常の状態では血小板の中に蓄えられています。炎症が起きて血小板が活性化すると、Myl9は血小板から外に放出され、血管の中で凝集します。
炎症が起きた血管内では凝集したMyl9が、網目状の構造物(Myl9ネット)を形成します(図2)。Myl9ネットは赤血球や血小板を含んでいることから、血栓に近いものと考えられています。さらに、活性化した白血球がMyl9に結合して血管の内から炎症組織へ侵入していきます(図3)。
以上のように、Myl9は血管や気管支の炎症の病態形成に重要な役割を果たしています。
[画像2: https://prtimes.jp/i/15177/426/resize/d15177-426-603773-1.png ]
参考文献
·Hayashizaki et al., Myosin light chains 9 and 12 are functional ligands for CD69 that regulate airway inflammation, 2016, Sci Immunol.
·Kimura et al., Crucial role for CD69 in allergic inflammatory responses: CD69-Myl9 system in the pathogenesis of airway inflammation, 2017, Immunol Rev.
本臨床研究の目的は、患者さんから採取した血液を調べることにより、新型コロナウイルス感染症の重症化を予測するシステムを開発することです。重症化予測の新たなマーカー(指標)が明らかになれば、患者さんは今までより早期に適切な医療を受けられることが可能になり、重症化の予防が期待されます。さらに、重症患者数の減少により、医療側の負担を軽減し、医療崩壊を防ぐことも期待されます。
背景
高齢者および、糖尿病や高血圧といった基礎疾患がある患者さんにおいては、新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいことが報告されていますが、その詳細な原因はわかっておりません。さらに、若くて健康な方が感染した場合でも、ある一定の確率で、急激に重症化する患者さんがいるため、重症化の予測はとても重要です。
重症化の原因のひとつに、新型コロナウイルス感染により血管が傷つき、血管に炎症が起こることがあげられます。千葉大学大学院医学研究院免疫発生学(中山 俊憲 教授)の研究室では、これまでMyl9(ミオシン軽鎖9 ※項目7「用語説明」参照)というタンパク質が肺での血栓に起因する血管や気管支の炎症の指標になることを明らかにしました。
新型コロナウイルス感染症で重症化した患者さんでは、全身の血管炎や血栓症が報告されており、このMyl9が新型コロナウイルス感染症の病態や重症度に関与していると予測し、本臨床研究を進めています。
千葉大学大学院医学研究院長/医学部附属病院長のコメント
千葉大学大学院医学研究院長 千葉大学大学院医学研究院 免疫発生学 中山 俊憲
2020年2月に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の人々の日々の生活に大きな変化をもたらしています。新型コロナウイルス感染は、感染者の中から一定の割合で重症者が生じてしまいますが、感染時に重症化する患者さんを予測することは現時点では不可能です。そこで、今回、大学院医学研究院の“研究力”を社会へ還元すべく、医学部附属病院と研究チームを結成しました。
千葉大学大学院医学研究院では、医学部附属病院を中心とする臨床スタッフと協力し、新たな重症化マーカーに資する分子を見出し、この社会的困難な状況を科学の力で乗り越えるべく、研究者一同総力をあげて研究に邁進いたします。
千葉大学医学部附属病院長 千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学 横手 幸太郎
千葉大学医学部附属病院は、地域における“最後の砦”として、患者さんの生命を守るべく日夜診療に当たっています。一方、国内外でさまざまな研究が進む中、私たちも国立大学病院としての研究力を発揮し、新型コロナウイルス感染症の克服に貢献したいという強い思いがあります。
新型コロナウイルス感染者の大部分は軽症または無症状であるものの、その一部に重症化が見られ、生命予後に大きく影響しています。高齢者や、糖尿病患者など基礎疾患を有する患者群で重症化リスクの高いことが分かってきましたが、そのメカニズムや重症化を早期に検知する手法は未だ解明されていません。本院は、大学院医学研究院や千葉県下の関連病院と連携し、重症化の早期発見や予防に資するマーカーを明らかにする研究に、全力を尽くす所存です。
本臨床研究の計画の概要
【本臨床研究の概要】
[画像1: https://prtimes.jp/i/15177/426/resize/d15177-426-559838-3.png ]
(1)試験名
「重症化新型コロナウイルス感染症におけるバイオマーカーの探索」
(2)目的
新型コロナウイルスに感染した患者さんの血液中のMyl9の濃度を計測します。軽症から重症までの患者さんの間でその量に違いがあるのか調べます。また一人一人の患者さんの血液中のMyl9の濃度を経時的に調べることで、重症化する前にMyl9の値が上昇するのかも解析します。さらにMyl9の測定がこれまでの既存の検査方法と比べて、優れているのかを検証します。
同時に、重症化した患者さんの免疫細胞の特徴や遺伝子的な違いを先端の解析手法を用いて調べます。症状ごとに分けた患者様において医学的な差異を見出し、新規の重症化予測バイオマーカーになりうるかを明らかにすることを目的としています。
(3)試験デザイン
多施設、前向き観察研究
(4)対象疾患
新型コロナウイルス感染症
(5)対象被験者数
100名
(6)本臨床研究の流れ
[1]PCR検査などにより新型コロナウイルスに感染しているか確認します。
[2]症状などにより入院が必要かについて医師が判断します。
[3]入院となった場合、本臨床研究への参加に関する説明を行います。
[4]参加が可能な場合は、同意をいただきます。
[5]入院期間中、基本的に週に1回の採血を通常の検査時に追加で行います。
[6]血液検体は血漿、末梢血リンパ球、DNAに分けられます。
[7]血漿中Myl9濃度や遺伝子の変化を研究室で調べます。
[8]重症度とMyl9との相関や新規重症化予測マーカーを探索します。
(7)評価項目
血漿中Myl9濃度、末梢血リンパ球における1細胞レベルの遺伝子発現と一塩基多型
本臨床試験の実施体制
〇 研究代表者
千葉大学大学院医学研究院 免疫発生学 中山 俊憲
〇 研究責任者
千葉大学医学部附属病院 救急科 中田 孝明
〇 運営委員会委員長
千葉大学医学部附属病院 病院長 横手 幸太郎
〇 治験実施支援(データマネジメント、統計解析)部門
千葉大学医学部附属病院 臨床試験部 花岡 英紀
〇 臨床研究参加施設一覧(2020年8月28日時点)
1. 千葉大学医学部附属病院(研究責任者:中田 孝明)
2. 国際医療福祉大学 成田病院(研究責任者:津島 健司)
3. 国保直営総合病院 君津中央病院(研究責任者:漆原 崇司)
4. 船橋市立医療センタ-(研究責任者:中村 祐之)
5. 千葉市立青葉病院(研究責任者:瀧口 恭男)
6. 地方独立行政法人東金九十九里地域医療センター 東千葉メディカルセンター(研究責任者:笠原 靖紀)
7. 独立行政法人国立病院機構 千葉医療センター(研究責任者:金田 暁)
8. 独立行政法人地域医療機能推進機構 船橋中央病院(研究責任者:石川 哲)
9. 独立行政法人労働者健康安全機構 千葉労災病院(研究責任者:弥冨 真理)
10. 日本赤十字社成田赤十字病院(研究責任者:馳 亮太)
11. 順天堂大学医学部附属順天堂医院(研究責任者:長岡 鉄太郎)
本臨床研究への支援
本研究は、下記機関及び企業より支援を受けて実施いたします。
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
ウイルス等感染症対策技術開発事業:「新型コロナウイルス感染症における重症化の早期予測判定システムの開発」
研究代表者:千葉大学大学院医学研究院 免疫発生学 中山 俊憲
用語説明
Myl9(ミオシン軽鎖9)
Myl9はミオシン軽鎖ファミリーに属する小さな細胞内タンパク質で、主にMyh9(ミオシン重鎖9)と重合して、非筋ミオシンを形成します。(図1)。Myl9は、通常の状態では血小板の中に蓄えられています。炎症が起きて血小板が活性化すると、Myl9は血小板から外に放出され、血管の中で凝集します。
炎症が起きた血管内では凝集したMyl9が、網目状の構造物(Myl9ネット)を形成します(図2)。Myl9ネットは赤血球や血小板を含んでいることから、血栓に近いものと考えられています。さらに、活性化した白血球がMyl9に結合して血管の内から炎症組織へ侵入していきます(図3)。
以上のように、Myl9は血管や気管支の炎症の病態形成に重要な役割を果たしています。
[画像2: https://prtimes.jp/i/15177/426/resize/d15177-426-603773-1.png ]
参考文献
·Hayashizaki et al., Myosin light chains 9 and 12 are functional ligands for CD69 that regulate airway inflammation, 2016, Sci Immunol.
·Kimura et al., Crucial role for CD69 in allergic inflammatory responses: CD69-Myl9 system in the pathogenesis of airway inflammation, 2017, Immunol Rev.