IBMのAI(Watsonテクノロジー)を活用した世界初となる日本人の生活習慣等を踏まえた2型糖尿病悪化の予測モデル構築
[17/09/22]
提供元:@Press
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学校法人藤田学園 藤田保健衛生大学(以下、藤田保健衛生大学)、第一生命保険株式会社(以下、第一生命)は、2016年7月より開始した共同検討により、糖尿病、中でも日本では圧倒的に罹患者の多い2型糖尿病(※1)(以下、糖尿病)の悪化を予測するモデルの構築に成功しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/138351/LL_img_138351_1.jpg
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全世界における糖尿病患者は4億1,500万人にのぼり、2040年までには6億4,200万人にまで増加することが予想されています。日本でも既に316万6,000人の糖尿病患者がおり、年間1兆2,076億円の医療費がかかっています。糖尿病に罹患することで、腎症や網膜症、神経障害、脳梗塞などといった合併症を引き起こすリスクも高くなるため、糖尿病発症や重篤化のリスクを正確に予測し、適切なタイミングで適切な健康指導や治療を実施できるようになることは、国民の健康寿命の延伸、医療費抑制の観点からも大変重要な取組みとなります。
予測モデルの構築にあたっては、藤田保健衛生大学病院電子カルテデータに記録されている匿名化された132,210名(糖尿病患者64,059名、糖尿病以外の患者68,151名)の各種検査値や、従来の技術では解析が困難であった診療記録・栄養指導記録といったテキストデータ、継続通院患者の情報から把握できる時系列データ等に対し、日本IBMのWatsonテクノロジーを活用したデータ解析を行いました。得られたデータより、予測モデルの構築に寄与する特徴量を抽出し、高い精度の予測モデルを構築しました。今回構築した予測モデルは、日本人の生活習慣等を踏まえた世界初の予測モデルです(藤田保健衛生大学調べ)。
藤田保健衛生大学は、従来人の手では解析が行えなかった多数の実臨床のデータを解析することで、より一層安全かつ効率の良い医療を提供する取組みを目指しています。このプロジェクトで得られた成果は、疾病管理技術と指導水準の向上とに直接結びつくものであり、より良い医療の実現に寄与することと考えます。
さらに、第一生命においては、データ解析結果および予測モデルを保険事業や関連サービスへ応用していくことを検討していきます。具体的には、糖尿病の予防および改善などお客さまの健康増進に向けたサービスの提供、より高度なリスク管理基準を設けることによる保険引受基準の拡大、新たな保険商品の開発などを目指していきます。
【共同研究の詳細】
■予測モデルの構築プロセス
(1) 予測モデルの構築に向け、まずは電子カルテデータに記録されている患者プロファイル、検体検査結果、病名や治療内容(処置内容、投薬内容)にもとづく情報からベースとなる予測モデルを構築しました。(イメージ図内(1))
(2) 加えて、これまで膨大なデータ量から解析することが困難であった電子カルテに記録されているテキストデータ(診療記録や栄養指導記録など)に対しては、日本IBMのWatsonテクノロジーによる自然言語処理および機械学習を行なうことで、その文脈から患者の生活習慣や治療に対する意欲などを機械的に解釈し、予測モデルの性能向上に寄与する特徴量を発見しました。(イメージ図内(2))
(3) 検体検査結果データなど同時に多数の検査結果項目が取得可能なデータを時系列に整理し、日本IBMのWatsonテクノロジーのディープラーニング技術を活用することで、多数の検査項目の時系列変化から病状推移に影響するパターンを抽出し、予測モデルの性能向上を実現しました。(イメージ図内(3))
(4) この一連のプロセスにおいて第一生命は研究内容の方針を策定するなど、プロジェクトを推進しました。
■予測モデル概要
(1) 糖尿病腎症の180日後の悪化・非悪化を予測するモデル
糖尿病の合併症のなかでも悪化すると人工透析など治療に大きな負担がかかる糖尿病腎症にフォーカスし、その進行に関する予測モデルを構築しました。
本モデルは、検体検査等の検査結果をもとに、腎症を進行レベルによって5つのステージ(第1期から第5期まで順に悪化)にラベル付けし、第1期の軽度な糖尿病腎症患者について、180日後の病状進行(ステージ変化)を高い性能で予測します。
(2) 患者指導を行った時点から180日後のHbA1c改善予測モデル
糖尿病のさまざまな合併症の発症に影響が強いHbA1cの値にフォーカスし、各種検査値に加え、患者指導(主に栄養指導)テキストデータから患者の生活習慣や治療に対する意欲などを分析し、HbA1cの改善予測モデルを構築しました。
本モデルは、糖尿病患者に指導(主に栄養指導)を行った日から180日後のHbA1cの値が改善するか否かを高い性能で予測します。
また、これらのデータ解析を進めるなかで、各モデルによる180日後の予測が非常に重篤な症状の長期的な発生率と関連するかどうかについて検討し、180日後の腎症の悪化が将来の透析導入や重篤な合併症の発症に関連することを見いだしました。
今後は本共同検討において構築された予測モデルの更なる精度向上、有効性の検証を行うことを目的に、臨床上の知見も踏まえ研究を継続していきます。また、糖尿病患者の日々の食事や運動と体況の変化との相関を予測モデルに反映し、より詳細な治療方針や生活習慣へのアドバイスを提供するヘルスケアサービスの開発につなげるため、食事や運動の改善サポートを共同で実証していく予定です。
【イメージ】共同検討全体像
https://www.atpress.ne.jp/releases/138351/img_138351_1.jpg
(参考)日本人の糖尿病有病率
※平成27年「国民健康・栄養調査」の結果(概要)より抜粋
https://www.atpress.ne.jp/releases/138351/img_138351_2.png
(※1) 2型糖尿病は体質(遺伝)や肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌量や効果が低下し十分作用しなくなることで、血液中のブドウ糖(血糖)が正常より多くなる病気です。
糖尿病には他に、膵臓のβ細胞が壊れ、インスリンが全く分泌されなくなってしまう1型糖尿病などがあります。世界的には糖尿病全体の約5%が1型糖尿病と言われており、生活習慣が関わる2型糖尿病とは、原因、治療が大きく異なります。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/138351/LL_img_138351_1.jpg
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全世界における糖尿病患者は4億1,500万人にのぼり、2040年までには6億4,200万人にまで増加することが予想されています。日本でも既に316万6,000人の糖尿病患者がおり、年間1兆2,076億円の医療費がかかっています。糖尿病に罹患することで、腎症や網膜症、神経障害、脳梗塞などといった合併症を引き起こすリスクも高くなるため、糖尿病発症や重篤化のリスクを正確に予測し、適切なタイミングで適切な健康指導や治療を実施できるようになることは、国民の健康寿命の延伸、医療費抑制の観点からも大変重要な取組みとなります。
予測モデルの構築にあたっては、藤田保健衛生大学病院電子カルテデータに記録されている匿名化された132,210名(糖尿病患者64,059名、糖尿病以外の患者68,151名)の各種検査値や、従来の技術では解析が困難であった診療記録・栄養指導記録といったテキストデータ、継続通院患者の情報から把握できる時系列データ等に対し、日本IBMのWatsonテクノロジーを活用したデータ解析を行いました。得られたデータより、予測モデルの構築に寄与する特徴量を抽出し、高い精度の予測モデルを構築しました。今回構築した予測モデルは、日本人の生活習慣等を踏まえた世界初の予測モデルです(藤田保健衛生大学調べ)。
藤田保健衛生大学は、従来人の手では解析が行えなかった多数の実臨床のデータを解析することで、より一層安全かつ効率の良い医療を提供する取組みを目指しています。このプロジェクトで得られた成果は、疾病管理技術と指導水準の向上とに直接結びつくものであり、より良い医療の実現に寄与することと考えます。
さらに、第一生命においては、データ解析結果および予測モデルを保険事業や関連サービスへ応用していくことを検討していきます。具体的には、糖尿病の予防および改善などお客さまの健康増進に向けたサービスの提供、より高度なリスク管理基準を設けることによる保険引受基準の拡大、新たな保険商品の開発などを目指していきます。
【共同研究の詳細】
■予測モデルの構築プロセス
(1) 予測モデルの構築に向け、まずは電子カルテデータに記録されている患者プロファイル、検体検査結果、病名や治療内容(処置内容、投薬内容)にもとづく情報からベースとなる予測モデルを構築しました。(イメージ図内(1))
(2) 加えて、これまで膨大なデータ量から解析することが困難であった電子カルテに記録されているテキストデータ(診療記録や栄養指導記録など)に対しては、日本IBMのWatsonテクノロジーによる自然言語処理および機械学習を行なうことで、その文脈から患者の生活習慣や治療に対する意欲などを機械的に解釈し、予測モデルの性能向上に寄与する特徴量を発見しました。(イメージ図内(2))
(3) 検体検査結果データなど同時に多数の検査結果項目が取得可能なデータを時系列に整理し、日本IBMのWatsonテクノロジーのディープラーニング技術を活用することで、多数の検査項目の時系列変化から病状推移に影響するパターンを抽出し、予測モデルの性能向上を実現しました。(イメージ図内(3))
(4) この一連のプロセスにおいて第一生命は研究内容の方針を策定するなど、プロジェクトを推進しました。
■予測モデル概要
(1) 糖尿病腎症の180日後の悪化・非悪化を予測するモデル
糖尿病の合併症のなかでも悪化すると人工透析など治療に大きな負担がかかる糖尿病腎症にフォーカスし、その進行に関する予測モデルを構築しました。
本モデルは、検体検査等の検査結果をもとに、腎症を進行レベルによって5つのステージ(第1期から第5期まで順に悪化)にラベル付けし、第1期の軽度な糖尿病腎症患者について、180日後の病状進行(ステージ変化)を高い性能で予測します。
(2) 患者指導を行った時点から180日後のHbA1c改善予測モデル
糖尿病のさまざまな合併症の発症に影響が強いHbA1cの値にフォーカスし、各種検査値に加え、患者指導(主に栄養指導)テキストデータから患者の生活習慣や治療に対する意欲などを分析し、HbA1cの改善予測モデルを構築しました。
本モデルは、糖尿病患者に指導(主に栄養指導)を行った日から180日後のHbA1cの値が改善するか否かを高い性能で予測します。
また、これらのデータ解析を進めるなかで、各モデルによる180日後の予測が非常に重篤な症状の長期的な発生率と関連するかどうかについて検討し、180日後の腎症の悪化が将来の透析導入や重篤な合併症の発症に関連することを見いだしました。
今後は本共同検討において構築された予測モデルの更なる精度向上、有効性の検証を行うことを目的に、臨床上の知見も踏まえ研究を継続していきます。また、糖尿病患者の日々の食事や運動と体況の変化との相関を予測モデルに反映し、より詳細な治療方針や生活習慣へのアドバイスを提供するヘルスケアサービスの開発につなげるため、食事や運動の改善サポートを共同で実証していく予定です。
【イメージ】共同検討全体像
https://www.atpress.ne.jp/releases/138351/img_138351_1.jpg
(参考)日本人の糖尿病有病率
※平成27年「国民健康・栄養調査」の結果(概要)より抜粋
https://www.atpress.ne.jp/releases/138351/img_138351_2.png
(※1) 2型糖尿病は体質(遺伝)や肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌量や効果が低下し十分作用しなくなることで、血液中のブドウ糖(血糖)が正常より多くなる病気です。
糖尿病には他に、膵臓のβ細胞が壊れ、インスリンが全く分泌されなくなってしまう1型糖尿病などがあります。世界的には糖尿病全体の約5%が1型糖尿病と言われており、生活習慣が関わる2型糖尿病とは、原因、治療が大きく異なります。