国内株式市場見通し:ギリシャなど外部環境不透明さが日本株安定につながる
[15/06/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
■日経平均はITバブル時の高値(20833.21円)を上回る
先週の日経平均は上昇。24日には20952.71円まで上げ幅を拡大させており、2000年のITバブル時の高値(20833.21円)を上回った。財政危機にあるギリシャへの金融支援について、支援合意が視野に入ってきたとの楽観的な見方などを背景に、リバウンド基調が強まった。特に前週には1ヶ月ぶりに2万円の大台を割り込む局面をみせていたこともあり、目先調整が強まるとの見方がコンセンサスとなる中での週初からの意外高だった。この相場反転により、ファンド筋などの売り方は一気に買い戻しを迫られる状況となった。週初に20400を回復した日経平均は、翌23日には381円高と今年最大の上げ幅を記録。そして24日にはITバブル時の高値水準を上回り、1996年以来の高値水準を回復した。
■ギリシャ情勢が上値の重石
今週もギリシャ情勢が上値の重石となる状況が続くことになりそうだが、相対的に日本への安心感が高まっているなか、断続的な資金流入が意識されることになろう。ギリシャの支援協議については、独メルケル首相は29日の金融市場の取引開始までに合意する必要があるとの考えを示している。29日のドイツ議会での採決には週末27日の協議が最終となる。この結果を受けた市場反応は東京市場が一番となるため、週初は27日の協議の結果を受けての値動きの荒い展開が意識されそうだ。
また、ギリシャのチプラス首相は欧州連合(EU)など支援者側が金融支援の条件として示した改革案の受け入れの賛否を問う国民投票を7月5日に行うと表明した。閣僚らは相次いで国民が反対に投票するよう呼びかけている。国際通貨基金(IMF)への多額の債務返済が今月末に期限を迎えるのを前にギリシャ政府が突然、国民投票の実施を表明したことで、ギリシャの債務問題の行方は不透明さを増した格好である。
■海外勢による日本株への関心は高い
もっとも、今週は米国では雇用統計など重要指標の発表を控えているため、市場の関心はギリシャから米国の利上げ再開の時期に関心が向かいやすい。その他、中国市場が足元で不安定な値動きをみせてきている。景気鈍化懸念なども警戒されているなかで、中国製造業PMIなど経済指標が注目されよう。世界的に不安定な相場環境が続く中で、短期的には日本株にもその影響は避けがたいところ。しかし、株主重視への転換基調、日銀・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の参入などを背景に、海外勢による日本株への関心は高い。中国など外部環境の不透明さが、より日本株の安定感につながる。特に6月から企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)が適用されるなど、日本特有の横並び意識が変化していることは日本に資金を向かいやすくさせている。
日経平均は2000年のITバブル時の高値を更新し、心理的には達成感が意識されやすいところ。ただし、先週の日経平均を短期間で870円程度を押し上げた中で、個人投資家が積極的にポジションを取りに行ったとの見方は少ない。外部環境の不透明からキャッシュポジションを積み上げているとの見方が大勢だ。過去のバブル時のように大きく買いに傾いた需給状況ではないため、先高感は依然として強いだろう。
■政府の成長戦略、TPP、米マイクロン急落
株主総会が通過したことで、週明けには企業の成長戦略、資本戦略等を手掛かりとした物色が意識される。また、週明けにも成長戦略「日本再興戦略」が発表される。目新しい材料ではないが、IoTやビッグデータ、人工知能(AI)など最先端技術による社会構造変化を見据えた施策が大きな目玉となるため、これら関連銘柄に注目したい。その他、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の大筋合意に向け、参加12カ国は閣僚会合を7月下旬に開き、政治決着を目指す方向となった。再びTPP交渉が動き出したことから、改めて関連銘柄を探る動きが強まりやすいと考えられる。一方、26日の米国市場では、米半導体大手マイクロン・テクノロジーが18%超の急落となった。業績予想がコンセンサスをしたまわってことが嫌気され、これが他の半導体株への売りにつながっていた。ハイテクセクターへの重石になる可能性がある。
経済スケジュールでは、29日に5月の鉱工業生産指数、29日に欧州連合(EU)・中国首脳会議、30日に6月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)、そしてギリシャ支援プログラムが期日を迎え、IMFへの15億ユーロ(約2100億円)の支払い期日。7月1日に日銀が企業短期経済観測調査(短観6月調査)を発表。その他、2015年分の路線価、6月の中国製造業PMI、6月の米ISM製造業景況指数、2日に6月の米雇用統計が発表される。
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