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PCIーHD Research Memo(7):新規事業拡大により収益の拡大ペースが加速する可能性

注目トピックス 日本株
■中長期成長戦略

PCIホールディングス<3918>は中期経営計画を公表していないため、コミットした中長期の目標数値はない。しかし、今後の更なる成長に向けて、既存子会社で補完できない分野や強化すべき分野に関してはM&Aを行うことでグループ総合力の向上を図るほか、ソフトウェア開発においてはビジネスパートナーの積極的な活用により開発体制を強化することなどにより、成長性と効率性のバランスを重視した経営を行うとしている。同社では、売上高成長率と営業利益率を重要な経営指標として位置付けており、営業利益率7%の維持を当面の目標としている。

こうした状況下で、同社ではエンベデッド開発の豊富な実績により培ってきた技術、ノウハウを活用し、今後需要が一段と拡大すると期待される自動車業界向け(V-Low※)マルチメディア放送、V2X:車車間通信モジュール)やエネルギー業界向け(Power Station)のソリューションの開発に取り組み、新規事業として拡大することに注力している。
※地上アナログテレビ終了後に空いたVHF帯の周波数跡地のうち、90MHzから108MHzの帯域を指す。

(1) V-Lowマルチメディア放送

V-Lowマルチメディア放送は、V-Low帯の地上電波と通信回線を使用し、主に移動体端末向けに音声・映像・データ等のコンテンツの配信を行う新しい放送形態で2016年3月に福岡、大阪、東京で本放送が開始される予定になっており、その後放送エリアを順次拡大することで2019年7月には全国の40,677千世帯(78.3%)をカバーすることになっている。

同社は、放送と通信、位置情報(GPS)とビッグデータを融合した日本初のモビリティー向け専用デジタルラジオ放送局である(株)アマネク・テレマティクスデザイン※1に出資※2しており、V-Low Amanekソフトウェアモジュールの開発に携わっている。同社にとっては、共通プラットフォームモジュールの開発及びライセンス販売に加えて、カスタマイズ開発が収入となるほか、中期的には新サービスに絡んだ開発やアマネク・テレマティクスデザインのインカムゲインも収益になると考えられる。
※1元本田技研工業<7267>役員待遇参事グローバルテレマティクス部長の今井武(いまいたけし)氏と、レコチョク・ラボ所長の庄司明弘(しょうじあきひろ)氏により設立された。
※2出資企業は、同社のほか、(株)アイ・トランスポート・ラボ、(株)エフエム東京、オリエンタルコンサルタンツ(ACKグループ<2498>)、オリックス<8591>、キャンバスマップル(株)、ジグノシステムジャパン(株)、住友電気工業<5802>、ゼンリン<9474>、大日本印刷<7912>、一般財団法人日本気象協会、バイテックシステムエンジニアリング(株)の計12社。

アマネク・テレマティクスデザインは、広くあまねく、全国を走るドライバーのための音声とデータを提供。近年多発している気象のリスクを避け、減災につながるおよそ15分先の気象情報や、ドライブに快適な音楽、交通情報や旬な行楽情報などを、スタジオにいるナビゲーターの肉声と自動音声(TTS)で伝える。また、放送と連動し配信するデータに位置情報を付与し、車載機によって走行エリアの情報やクーポン、データをダウンロードすることができるサービスを提供する。気になった情報は車載機画面をタップすることで、リンクしたスマホの「アマネクアプリ」に登録できる。2020年に500万人リスナーの獲得を目標としている。

(2) V2X:車車間通信モジュール

同社では車と車が情報のやり取りを行うV2Xユニットのソフトウェアの開発を行っており、一般社団法人のゲートウェイ・アップ・ジャパンを通じてV2Xを活用した新サービスをバス、タクシーなどの公共交通機関や交通情報企業などのユーザーに現在提案している。当面はこうした新サービスの提案が主体となるが、将来的には自動運転への応用といった展開に発展する可能性も考えられる。

(3) Power Station

Power Stationは、再生可能エネルギー発電所の運用・維持管理業務(O&M業務)を支える統合管理システム。太陽光発電所の発電量モニタリング、ストリングセンサによる障害監視、及び保守作業や障害対応の進捗管理を統合的に実施できるポータルサービス。PCに加えて、タブレットやスマートフォンにも対応しており、いつでも、どこからでも発電所の状況を把握できるのが特徴。

同社では、発電事業者と大手コンサルティングファームの3社の関係強化により受注を積み上げる体制を整えている。2015年9月期に2拠点の受注を獲得したほか、2016年9月期には4拠点の受注を見込んでいる。ユーザーである再生可能エネルギー発電所は長期運転が前提であるため、同社にとって長期安定収入となる。

弊社では、1)内容が明らかになっているV-Lowマルチメデイア放送関連、Power-Stationともにベースとなる開発はほぼ終了していること、それぞれストック型のビジネスモデルとなっていること、2)これまで積極的に活用してこなかったBPを積極的に活用する計画であることなどを考慮すると、今後、同社の収益拡大ペースが一段と加速することになると予想する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)



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