アジア投資 Research Memo(8):2017年3月期は大幅な営業増益、2期連続の最終黒字を達成
[17/06/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
3. 2017年3月期決算の概要
日本アジア投資<8518>の2017年3月期の業績(ファンド連結基準)は、営業収益が前期比1.9%増の4,681百万円、営業利益が739百万円(前期は123百万円の損失)、経常利益が同61.2%増の540百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同20.2%減の564百万円と増収及び大幅な営業増益(営業黒字転換)となった。
また、従来連結基準でも、営業収益が前期比2.9%減の3,926百万円、営業利益が同913.1%増の836百万円、経常利益が同18.7%増の726百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同7.2%減の553百万円と減収ながら会社予想を上回る大幅な営業(及び経常)増益となった。最終利益も一過性の営業外収益の減少や特別損失の計上等により減益となったものの、2期連続の黒字を達成した。
従来連結基準による業績の概要は以下のとおりである。
営業収益は、前期と比べて大型売却案件(海外未上場株)が少なかったことから営業投資有価証券売却高が減少したものの、メガソーラープロジェクトからの収入(売却益及び売電収益)によりカバーしたことで小幅な減収に収まった。
一方、営業総利益が前期比40.0%増の2,176百万円と大きく増益となったのは、ファンド運用残高の減少により管理報酬等が減少した一方で、メガソーラープロジェクトによる収益貢献(売却益及び売電収益)や投資損益の改善によるものである。メガソーラープロジェクトは5件(合計17.7MW)の売却益(約770百万円)を計上したほか、売電中のプロジェクト(うち、6件(合計11.2MW)は期中売電開始)により売電収益(約210百万円)を獲得した。また、投資損益については、資産の入れ替えが進んだことによる損失処理(投資損失引当金繰入額)の減少が増益要因となっている。
加えて、販管費についても一過性の特殊要因※の減少や人件費の削減等により減少したことから、大幅な営業増益を実現した。
※他社運用ファンドに対する支払成功報酬
なお、最終損益が減益となったのは、営業外収益の減少※1及び特別損失の計上※2によるものであり、どちらも一過性の要因と捉えることができる。
※1前期においては、投資有価証券に該当する海外ファンド等からの受取配当金(700百万円)が計上された。
※2投資有価証券の評価損(42百万円)及びメガソーラープロジェクトの一部を中止したことによる長期前払費用(130百万円)の減損処理を行ったものである。この長期前払費用の減損損失は、電力会社への支払が必要な工事負担金が想定よりも高額となり、これによって当初想定していた投資採算が得られない可能性が高まったことが背景となっている。なお、本件については、メガソーラープロジェクトに参入した当初の案件であり、自社で開発を進めてきたものであるが、現在は開発業者と組むことにより開発段階で発生するリスクを軽減する仕組みとなっていることから、今後は同様の損失が発生する可能性は小さいものと考えられる。
財務面(従来連結基準)では、有利子負債の返済により「現金及び預金」が大きく減少したことなどから総資産が前期末比10.5%減の20,305百万円に縮小した一方、自己資本は内部留保の積み増しや新株予約権の行使(約314百万円)により前期末比14.3%増の5,686百万円に増加したことから、自己資本比率は28.0%(前期は21.9%)に改善した。それに伴い、有利子負債(借入金・社債)残高は、前期末比16.5%減の14,128百万円に減少し、財務の安全性は順調に改善している。資本効率を示すROEも10.4%(前期は14.3%)と前期比で低下したものの、10%を超える水準を確保した。
業務別の業績は以下のとおりである。
(1) 投資事業組合等管理業務
同社グル−プが管理運用等を行っているファンドの運用残高は、ファンドの満期到来により28,753百万円(前期末比26.9%減)に縮小した。ファンド数も事業再生ファンド1件(5億円)の設立があったものの、15ファンド(前期末は17ファンド)に減少している。また、同社が目標としている国内ベンチャーファンド(50億円)の設立については実現に至らなかった。
そのため、当該業務にかかる損益(運用報酬)については、前期比36.1%減の466百万円と減少した。「管理報酬等」が運用残高の縮小に伴い前期比17.5%減の364百万円に減少するとともに、「成功報酬」も同64.9%減の101百万円にとどまった。もっとも、当該業務にかかる損益の減少は概ね想定の範囲内のようだ。
(2) 投資業務
同社グループの自己勘定及び同社グループが管理運営等を行っているファンドからの投資実行額は、メガソーラープロジェクトへの投資を含めて前期比5.4%増の4,315百万円(33件)に増加したが、その一方で、投資回収も進んだことから投資残高は前期末比11.8%減の16,558百万円に縮小した。なお、新規実行額のうちメガソーラープロジェクト17件(3,184百万円)を除くと、国内12社(547百万円)、海外(中国・香港・台湾)4社(584百万円)となっており、「IT・インターネット関連」や「サービス関連」の比重が高い。
一方、投資業務に係る損益(営業総利益)については、前述したとおり、売却高の減少により実現キャピタルゲインが減少したものの、損失処理(投資損失引当金繰入額)の一巡により、投資損益は577百万円(前期比11.0%増)に改善した。それに加えて、メガソーラープロジェクトによる収益貢献(売却益が約7.7億円、売電収益が約2.1億円)等により、営業総利益は1,690百万円(前期比106.6%増)と大きく拡大した。
以上から、前期業績を総括すると、目標としていた国内ベンチャーファンドの設立が実現できなかったこと、メガソーラープロジェクトの一部で特別損失を計上したことなどがネガティブ要因となった一方、メガソーラープロジェクトによる収益貢献や投資損失の一巡(運用資産の健全化)等により大幅な営業増益を実現したことから、業績は総じて好調に推移したと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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3. 2017年3月期決算の概要
日本アジア投資<8518>の2017年3月期の業績(ファンド連結基準)は、営業収益が前期比1.9%増の4,681百万円、営業利益が739百万円(前期は123百万円の損失)、経常利益が同61.2%増の540百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同20.2%減の564百万円と増収及び大幅な営業増益(営業黒字転換)となった。
また、従来連結基準でも、営業収益が前期比2.9%減の3,926百万円、営業利益が同913.1%増の836百万円、経常利益が同18.7%増の726百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同7.2%減の553百万円と減収ながら会社予想を上回る大幅な営業(及び経常)増益となった。最終利益も一過性の営業外収益の減少や特別損失の計上等により減益となったものの、2期連続の黒字を達成した。
従来連結基準による業績の概要は以下のとおりである。
営業収益は、前期と比べて大型売却案件(海外未上場株)が少なかったことから営業投資有価証券売却高が減少したものの、メガソーラープロジェクトからの収入(売却益及び売電収益)によりカバーしたことで小幅な減収に収まった。
一方、営業総利益が前期比40.0%増の2,176百万円と大きく増益となったのは、ファンド運用残高の減少により管理報酬等が減少した一方で、メガソーラープロジェクトによる収益貢献(売却益及び売電収益)や投資損益の改善によるものである。メガソーラープロジェクトは5件(合計17.7MW)の売却益(約770百万円)を計上したほか、売電中のプロジェクト(うち、6件(合計11.2MW)は期中売電開始)により売電収益(約210百万円)を獲得した。また、投資損益については、資産の入れ替えが進んだことによる損失処理(投資損失引当金繰入額)の減少が増益要因となっている。
加えて、販管費についても一過性の特殊要因※の減少や人件費の削減等により減少したことから、大幅な営業増益を実現した。
※他社運用ファンドに対する支払成功報酬
なお、最終損益が減益となったのは、営業外収益の減少※1及び特別損失の計上※2によるものであり、どちらも一過性の要因と捉えることができる。
※1前期においては、投資有価証券に該当する海外ファンド等からの受取配当金(700百万円)が計上された。
※2投資有価証券の評価損(42百万円)及びメガソーラープロジェクトの一部を中止したことによる長期前払費用(130百万円)の減損処理を行ったものである。この長期前払費用の減損損失は、電力会社への支払が必要な工事負担金が想定よりも高額となり、これによって当初想定していた投資採算が得られない可能性が高まったことが背景となっている。なお、本件については、メガソーラープロジェクトに参入した当初の案件であり、自社で開発を進めてきたものであるが、現在は開発業者と組むことにより開発段階で発生するリスクを軽減する仕組みとなっていることから、今後は同様の損失が発生する可能性は小さいものと考えられる。
財務面(従来連結基準)では、有利子負債の返済により「現金及び預金」が大きく減少したことなどから総資産が前期末比10.5%減の20,305百万円に縮小した一方、自己資本は内部留保の積み増しや新株予約権の行使(約314百万円)により前期末比14.3%増の5,686百万円に増加したことから、自己資本比率は28.0%(前期は21.9%)に改善した。それに伴い、有利子負債(借入金・社債)残高は、前期末比16.5%減の14,128百万円に減少し、財務の安全性は順調に改善している。資本効率を示すROEも10.4%(前期は14.3%)と前期比で低下したものの、10%を超える水準を確保した。
業務別の業績は以下のとおりである。
(1) 投資事業組合等管理業務
同社グル−プが管理運用等を行っているファンドの運用残高は、ファンドの満期到来により28,753百万円(前期末比26.9%減)に縮小した。ファンド数も事業再生ファンド1件(5億円)の設立があったものの、15ファンド(前期末は17ファンド)に減少している。また、同社が目標としている国内ベンチャーファンド(50億円)の設立については実現に至らなかった。
そのため、当該業務にかかる損益(運用報酬)については、前期比36.1%減の466百万円と減少した。「管理報酬等」が運用残高の縮小に伴い前期比17.5%減の364百万円に減少するとともに、「成功報酬」も同64.9%減の101百万円にとどまった。もっとも、当該業務にかかる損益の減少は概ね想定の範囲内のようだ。
(2) 投資業務
同社グループの自己勘定及び同社グループが管理運営等を行っているファンドからの投資実行額は、メガソーラープロジェクトへの投資を含めて前期比5.4%増の4,315百万円(33件)に増加したが、その一方で、投資回収も進んだことから投資残高は前期末比11.8%減の16,558百万円に縮小した。なお、新規実行額のうちメガソーラープロジェクト17件(3,184百万円)を除くと、国内12社(547百万円)、海外(中国・香港・台湾)4社(584百万円)となっており、「IT・インターネット関連」や「サービス関連」の比重が高い。
一方、投資業務に係る損益(営業総利益)については、前述したとおり、売却高の減少により実現キャピタルゲインが減少したものの、損失処理(投資損失引当金繰入額)の一巡により、投資損益は577百万円(前期比11.0%増)に改善した。それに加えて、メガソーラープロジェクトによる収益貢献(売却益が約7.7億円、売電収益が約2.1億円)等により、営業総利益は1,690百万円(前期比106.6%増)と大きく拡大した。
以上から、前期業績を総括すると、目標としていた国内ベンチャーファンドの設立が実現できなかったこと、メガソーラープロジェクトの一部で特別損失を計上したことなどがネガティブ要因となった一方、メガソーラープロジェクトによる収益貢献や投資損失の一巡(運用資産の健全化)等により大幅な営業増益を実現したことから、業績は総じて好調に推移したと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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