MCJ Research Memo(7):「取扱製品(ハード)」と「コンテンツ・サービス分野」の相乗効果を狙う
[17/08/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
MCJ<6670>は決算発表と同時に、2017年度から2019年度まで3年間の中期経営計画について、その初年度の実績をふまえた進捗状況について発表した。
1. 中期経営計画における2017年3月期の位置付け
今回の中期経営計画(2017年3月期〜2019年3月期)は、将来ビジョン実現のための基盤固めのフェーズであり、その中でも2017年3月期は、方針策定に加え、体制及び実績の構築期という位置付けであるとしている。したがって、初年度が様々な手法・方針の策定・開示による準備期間であり、2〜3年目に具体的な諸施策を実行する着手期間であるということである。例えば、ベンチャー投資については、初年度にその方針などを定め、出資の実績((株)ネインと(株)桜花一門)を積んだ。新製品・新サービスの開発や実際の事業としての効果は今後進めていく中で追求するというものである。
2. 経営ビジョン及び事業方針
基本的なビジョンや事業方針について当初の発表から大きな変更はなく、引き続き、パソコンにこだわらない「取扱製品(ハード)の拡充」と「コンテンツ・サービス分野への事業領域の拡大」の2つの起点において、相乗効果も狙っていくものである。
(1)製品力とIT感度の高い顧客層が強み
同社グループとして、製品力とIT感度の高い顧客層という2つの強みを生かし、両辺の価値の最大化を図るとしている。まず、製品力については、同社グループの起点であるPC関連はもとより、「PC関連に限らず、使って楽しい、役に立つ、目新しい、広義のITデバイス製品のタイムリーな開発・仕入・販売を通じて、総合ITデバイス企業を目指す」としている。したがって、PC、VR、AR(Augmented Reality:拡張現実)、ドローン、ウェアラブルなど顧客の求める多様なデバイスを、店頭を始めとした情報リサーチで把握し、開発・仕入・販売していく。このため、自社だけでなく、必要な製品開発力を持ったベンチャー企業に対して、投資を行い、グループとして取り扱う製品群の拡充と開発力の強化を図る方針である。
次に、IT感度の高い顧客層を持つという強みである。これらの層は最先端のITデバイスへの感度の高い層であり、またかかる顧客層はそれぞれのITデバイスを使う上で、ソフトウェア、セキュリティ、コンテンツなど様々な利便性、楽しさ、安全性などを要求する。そこで同社グループは、これらの顧客ニーズを満足させるサービスを提供する。
この目指す事業領域が、同グループの標榜しているマルチデバイス・マルチサービスの総合IT企業のイメージである。
(2)中長期ビジョンにおける今回の中期経営計画の位置付け
今後は、日常社会の中でIoT(Internet of Things)化が進展していくことが確実であり、様々な製品がネットワークにつながり、色々なサービスニーズが生まれてくることが予想される。同社グループのビジョンは、無限のビジネスチャンスの可能性を秘めるなかで、非常に遠大で一見夢物語的にも見えるかもしれない。しかし、中長期ビジョンは10年単位のビジョンかもしれないが、足元で何をすべきかという点で、同社グループは着実に具体的な行動計画を立てている。
上記の中長期ビジョンにおける目指す姿を実現するために、2019年までの中期経営計画期間は、まず基盤固めのフェーズという位置づけである。つまり、コア事業であるパソコン関連事業の強化は継続しつつ、デバイスの種類拡充を図る期間としている。そして、各デバイスに関わるサービスについては、進出のための基盤作りを行う方針である。デバイス・サービス、それぞれの新規開発について、必要に応じてM&Aを含めベンチャー企業との事業連携を加速させていく。そのため、同社では、かかる経営のスピードアップを担う経営人材の育成強化を行うとしている。
(3) M&A・アライアンス方針
同社は中長期ビジョンを実現するために、積極的にM&A・アライアンスを行っていくとしており、その基本的な方針を示している。1つは、既存事業関連で、Value Chain強化と製品・顧客軸強化を進めることで、今後の事業拡大のためのオペレーション上の基盤強化と取り扱うデバイスの拡充、商流の強化を図ることである。次に、新規事業関連では、ITデバイスによらない既存事業の枠外の投資やソフトウェア、セキュリティ、コンテンツなど領域は限定しないものの、あくまでデバイス事業との相乗効果が期待できる領域を選択して新事業を探求するとしている。
(4)ベンチャー投資方針
2016年3月24日に発表したものづくりベンチャープラットフォーム構想では、「最先端のデバイス情報取得や取扱いデバイスの拡充に、ベンチャー育成をミックスする」とし、投資の基本方針を定めている。同社グループが持つ既存のValue Chain上の開発・仕入・製造・販売・アフターサービスの各機能で培ったノウハウを活かして、投資先のVB(ベンチャー・ビジネス)が自社で対応できない機能を各社のニーズに合わせてテーラーメイド型で補完・支援を行うという考え方である。
したがって、同社グループの各社の事業とのシナジーが期待できるVBを投資対象先とし、事業上のバリューアップありきで投資を行うので、投機目的の投資などは対象外である。また、同社はグループ事業を束ねて、かかる効果的な投資を行うための経営人材を採用・育成していくとしている。
3. 中期経営計画の進捗状況
上記中長期ビジョンに沿って、2017年3月期もしくは直近で以下のような具体的な活動を行っている。現時点ではハードの方が先行し、コンテンツ・サービス分野はVR関係で始まったばかりではあるが、今後様々なハードが出そろい、それに応じた利用シーンが展開されてくれば、同社グループの狙いとする双方の相乗効果というものが期待できるだろう。
(1) VR関連
a) HTC Vive(台湾HTCのVRヘッドセット)の日本国内販売代理店としてアユートが取り扱いを開始し、ユニットコムの一部店舗においてもデモ機を設置した。
b) Oculus Touch(VR用コントローラー)の取り扱いをマウスコンピューターで開始、店舗での体験コーナーを展開した。
c) VRイベントへの機材提供による協賛を行った。
(2) 自社開発バリューチェーン関連
a) Windows Hello機能に対応する製品として、指紋認証リーダーや顔認証カメラの販売を開始した。
b) ユニットコム店舗を活用したベンチャー企業製品や他社製品としてQrioやmineo等の取り扱いを開始した。
(3) 投資関連
a) ワイヤレスイヤホンと音声認識技術を活用したヒアラブルデバイス開発企業のネインへVB出資した。
b) VR専用ゲームコンテンツ開発企業である桜花一門へVB出資した。
なお、ハード及びコンテンツ・サービス分野ともに、外部リソースを活用するために、VCファンドへLimited Partnership(投資はするが自ら投資関係業務は行わない)として参加するほかに、ソーシングパートナーネットワーク(ネットワークを通じて外部リソースの活用の情報提供・仲介を得る)を強化するとのことである。
4. 重要視する事業上の経営管理指標
同社では、営業利益率、ROIC、ROE、配当性向の4つを最重要KPI(Key Performance Indicators)とし、安定的にそれぞれの目標値を達成することとしている。ROICをKPIに選定しているのは、M&Aやベンチャー投資を積極的に推進する同社として、この指標をよりどころとするゆえんである。また、株主還元を重視し配当性向方針については当初20%以上としていたが、2017年3月期は25%以上へ上方修正した。
2017年3月期実績では、4つのKPIをすべて超過達成した。同社では、配当性向を除く3指標については、現在の企業ステージにおいては継続的な上昇を意図するものではないとし、目標値をさらに上方修正はしないとしている。今後は、成長企業として広告宣伝等の先行投資を継続するなどの売上拡大策を当面は図る方針で、過度に営業利益率を高めるよりは、営業利益の絶対額を追求するとしている。また、企業規模及び事業ドメイン拡大に向けてM&A等を推進する見込みで、一時的にROE、ROICに影響を及ぼす可能性もあるとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)
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MCJ<6670>は決算発表と同時に、2017年度から2019年度まで3年間の中期経営計画について、その初年度の実績をふまえた進捗状況について発表した。
1. 中期経営計画における2017年3月期の位置付け
今回の中期経営計画(2017年3月期〜2019年3月期)は、将来ビジョン実現のための基盤固めのフェーズであり、その中でも2017年3月期は、方針策定に加え、体制及び実績の構築期という位置付けであるとしている。したがって、初年度が様々な手法・方針の策定・開示による準備期間であり、2〜3年目に具体的な諸施策を実行する着手期間であるということである。例えば、ベンチャー投資については、初年度にその方針などを定め、出資の実績((株)ネインと(株)桜花一門)を積んだ。新製品・新サービスの開発や実際の事業としての効果は今後進めていく中で追求するというものである。
2. 経営ビジョン及び事業方針
基本的なビジョンや事業方針について当初の発表から大きな変更はなく、引き続き、パソコンにこだわらない「取扱製品(ハード)の拡充」と「コンテンツ・サービス分野への事業領域の拡大」の2つの起点において、相乗効果も狙っていくものである。
(1)製品力とIT感度の高い顧客層が強み
同社グループとして、製品力とIT感度の高い顧客層という2つの強みを生かし、両辺の価値の最大化を図るとしている。まず、製品力については、同社グループの起点であるPC関連はもとより、「PC関連に限らず、使って楽しい、役に立つ、目新しい、広義のITデバイス製品のタイムリーな開発・仕入・販売を通じて、総合ITデバイス企業を目指す」としている。したがって、PC、VR、AR(Augmented Reality:拡張現実)、ドローン、ウェアラブルなど顧客の求める多様なデバイスを、店頭を始めとした情報リサーチで把握し、開発・仕入・販売していく。このため、自社だけでなく、必要な製品開発力を持ったベンチャー企業に対して、投資を行い、グループとして取り扱う製品群の拡充と開発力の強化を図る方針である。
次に、IT感度の高い顧客層を持つという強みである。これらの層は最先端のITデバイスへの感度の高い層であり、またかかる顧客層はそれぞれのITデバイスを使う上で、ソフトウェア、セキュリティ、コンテンツなど様々な利便性、楽しさ、安全性などを要求する。そこで同社グループは、これらの顧客ニーズを満足させるサービスを提供する。
この目指す事業領域が、同グループの標榜しているマルチデバイス・マルチサービスの総合IT企業のイメージである。
(2)中長期ビジョンにおける今回の中期経営計画の位置付け
今後は、日常社会の中でIoT(Internet of Things)化が進展していくことが確実であり、様々な製品がネットワークにつながり、色々なサービスニーズが生まれてくることが予想される。同社グループのビジョンは、無限のビジネスチャンスの可能性を秘めるなかで、非常に遠大で一見夢物語的にも見えるかもしれない。しかし、中長期ビジョンは10年単位のビジョンかもしれないが、足元で何をすべきかという点で、同社グループは着実に具体的な行動計画を立てている。
上記の中長期ビジョンにおける目指す姿を実現するために、2019年までの中期経営計画期間は、まず基盤固めのフェーズという位置づけである。つまり、コア事業であるパソコン関連事業の強化は継続しつつ、デバイスの種類拡充を図る期間としている。そして、各デバイスに関わるサービスについては、進出のための基盤作りを行う方針である。デバイス・サービス、それぞれの新規開発について、必要に応じてM&Aを含めベンチャー企業との事業連携を加速させていく。そのため、同社では、かかる経営のスピードアップを担う経営人材の育成強化を行うとしている。
(3) M&A・アライアンス方針
同社は中長期ビジョンを実現するために、積極的にM&A・アライアンスを行っていくとしており、その基本的な方針を示している。1つは、既存事業関連で、Value Chain強化と製品・顧客軸強化を進めることで、今後の事業拡大のためのオペレーション上の基盤強化と取り扱うデバイスの拡充、商流の強化を図ることである。次に、新規事業関連では、ITデバイスによらない既存事業の枠外の投資やソフトウェア、セキュリティ、コンテンツなど領域は限定しないものの、あくまでデバイス事業との相乗効果が期待できる領域を選択して新事業を探求するとしている。
(4)ベンチャー投資方針
2016年3月24日に発表したものづくりベンチャープラットフォーム構想では、「最先端のデバイス情報取得や取扱いデバイスの拡充に、ベンチャー育成をミックスする」とし、投資の基本方針を定めている。同社グループが持つ既存のValue Chain上の開発・仕入・製造・販売・アフターサービスの各機能で培ったノウハウを活かして、投資先のVB(ベンチャー・ビジネス)が自社で対応できない機能を各社のニーズに合わせてテーラーメイド型で補完・支援を行うという考え方である。
したがって、同社グループの各社の事業とのシナジーが期待できるVBを投資対象先とし、事業上のバリューアップありきで投資を行うので、投機目的の投資などは対象外である。また、同社はグループ事業を束ねて、かかる効果的な投資を行うための経営人材を採用・育成していくとしている。
3. 中期経営計画の進捗状況
上記中長期ビジョンに沿って、2017年3月期もしくは直近で以下のような具体的な活動を行っている。現時点ではハードの方が先行し、コンテンツ・サービス分野はVR関係で始まったばかりではあるが、今後様々なハードが出そろい、それに応じた利用シーンが展開されてくれば、同社グループの狙いとする双方の相乗効果というものが期待できるだろう。
(1) VR関連
a) HTC Vive(台湾HTCのVRヘッドセット)の日本国内販売代理店としてアユートが取り扱いを開始し、ユニットコムの一部店舗においてもデモ機を設置した。
b) Oculus Touch(VR用コントローラー)の取り扱いをマウスコンピューターで開始、店舗での体験コーナーを展開した。
c) VRイベントへの機材提供による協賛を行った。
(2) 自社開発バリューチェーン関連
a) Windows Hello機能に対応する製品として、指紋認証リーダーや顔認証カメラの販売を開始した。
b) ユニットコム店舗を活用したベンチャー企業製品や他社製品としてQrioやmineo等の取り扱いを開始した。
(3) 投資関連
a) ワイヤレスイヤホンと音声認識技術を活用したヒアラブルデバイス開発企業のネインへVB出資した。
b) VR専用ゲームコンテンツ開発企業である桜花一門へVB出資した。
なお、ハード及びコンテンツ・サービス分野ともに、外部リソースを活用するために、VCファンドへLimited Partnership(投資はするが自ら投資関係業務は行わない)として参加するほかに、ソーシングパートナーネットワーク(ネットワークを通じて外部リソースの活用の情報提供・仲介を得る)を強化するとのことである。
4. 重要視する事業上の経営管理指標
同社では、営業利益率、ROIC、ROE、配当性向の4つを最重要KPI(Key Performance Indicators)とし、安定的にそれぞれの目標値を達成することとしている。ROICをKPIに選定しているのは、M&Aやベンチャー投資を積極的に推進する同社として、この指標をよりどころとするゆえんである。また、株主還元を重視し配当性向方針については当初20%以上としていたが、2017年3月期は25%以上へ上方修正した。
2017年3月期実績では、4つのKPIをすべて超過達成した。同社では、配当性向を除く3指標については、現在の企業ステージにおいては継続的な上昇を意図するものではないとし、目標値をさらに上方修正はしないとしている。今後は、成長企業として広告宣伝等の先行投資を継続するなどの売上拡大策を当面は図る方針で、過度に営業利益率を高めるよりは、営業利益の絶対額を追求するとしている。また、企業規模及び事業ドメイン拡大に向けてM&A等を推進する見込みで、一時的にROE、ROICに影響を及ぼす可能性もあるとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)
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