UTグループ Research Memo(7):2018年3月期会社計画は保守的、中期経営計画達成の可能性も
[17/08/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
●2018年3月期の通期業績見通し
UTグループ<2146>の2018年3月期は、売上高が前期比21.6%増の70,000百万円、営業利益は同23.0%増の4,200百万円、経常利益は同22.7%増の4,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同37.7%増の2,800百万円と、2ケタの増収・増益を見込む会社計画となっている。
2017年3月期は2016年4月に起きた熊本地震で待機人員が増加したことなどの影響(売上高、営業利益で200百万円)を織り込み保守的計画を設定したが、結果的には影響は一時的なものであった。
2018年3月期については、継続的な人手不足から多くの分野で人材需要が大きい。また改正労働者派遣法や改正労働契約法など、法改正等の影響が同社にとって有利に働く状況が継続する、としている。2015年9月施行の改正労働者派遣法は、従来の派遣期間の制限の見直しなど派遣事業者への規制強化となるものだが、同社のような正社員で無期雇用派遣の場合は期間制限がないため、顧客企業側からのニーズが高くなる。同様に、2013年4月施行の改正労働契約法は、有期契約社員使用への規制強化となっており、こちらは派遣利用への切り替えニーズが生じている。これらの法改正により、無期雇用派遣への社会的ニーズが非常に高まっており、これに対応できない中小の派遣事業者が淘汰されつつある状況となっている。この流れは少なくともここ数年間続くと思われ、同社にとっては追い風となるだろう。
なお、2018年3月期より、従来の製造派遣事業を製造業向け人材派遣・請負の「マニュファクチャリング事業」と、構造改革支援の「ソリューション事業」に区分、エンジニア派遣事業を「エンジニアリング事業」と呼称変更し、3つの事業セグメントとすることを発表した。1つ目の狙いは、派遣事業とは性格の異なるソリューション事業を製造派遣事業から区分し、よりわかりやすいセグメント区分としたことである。顧客企業社員を同社へ転籍させ、3年間の保証期間の間に、職種転換などの選択肢を用意して構造改革を推進することは一種の顧客企業のBPOであり、派遣事業とは明確に区分したわけである。また、2つ目の狙いは、事業名から「派遣」という表現を消していることである。これは、「派遣」に伴うネガティブなイメージを抱く従業員に対して、それを払拭するためである。
事業戦略については、各事業セグメントが有機的に連携することから、セグメント別ではなく、従業員のキャリアプラットフォームの拡充と顧客企業向けのサービスの拡大という2つの切り口で施策を発表した。これは、後述する中期経営計画の2大カスタマー戦略に沿ったものでもある。
(1) キャリアプラットフォームの拡充
以下の施策によって、「はたらく人に最も選ばれる会社へ」していこうという戦略である。
a) 良質な職場の拡大
新卒者や未経験者などの社員が短期間に待遇の良い部門で働けるように、チーム派遣に適した職場を開拓していく。具体的には、自動車・電機などの大手企業との取引を拡大していく。また工場1つ当たりの派遣人数を拡大していくことで連帯感を醸成させるなど、安心して働ける職場環境を構築していく。
b) はたらく人のバリューアップ推進
キャリア形成を管理者の重要指標にしてキャリアコンサルティング体制の構築を進める。2017年3月期に開設したUTACC※などエンジニア育成施設を積極活用して職業訓練プログラムを充実させる。グループ内転職や顧客企業への紹介促進を行うことで、はたらく人の価値向上を図る。
※UT Advanced Career Center:現場で即戦力となるエンジニアを育成し、社員のキャリア形成を支援するための施設
(2) 企業向けサービスの拡大
以下の施策によって、「モノづくり企業へ幅広い価値を提供」していくという戦略である。
a) 大規模需要への対応力強化
全国対応の大規模動員力が同社の大きな強みであるが、2017年3月期の月間750人体制から、2018年3月期は月間1,000名採用体制への構築を進める。
b) 構造改革需要の取り込み
ソリューション事業として、過去5年間で累計5社、約1,000人の転籍実績がある。今後も、正社員の転籍受入れと工程一括請負を合わせたインハウスソリューションとして大型案件等も含めて進めていく。顧客企業及びその従業員からの信頼関係がなければ成立しない事業だが、同社が製造派遣事業でこれまでに培ってきた実績で、十分に信頼関係が形成されており、同社への期待が高い。
c) 低単価領域の開拓
技能実習法による海外人材の紹介・管理代行など低単価領域での事業開拓を狙っていく。当面はベトナムなど東南アジア圏の人材活用を進める。
d) エンジニア派遣事業の拡大
育成体制をさらに強化し、供給力を増強する。新卒採用、未経験者、製造派遣技術者からの職種転換など、IT系エンジニアへの多岐な道筋を用意するとともに、UTACCを活用した育成体制を強化する。また、エンジニア採用においては、M&Aも必要に応じて検討するとのことである。
弊社では、 1)2015年9月に施行された改正労働者派遣法が同社にとって想定以上にプラス要因として働いている、2)期初時点における技術者数が前期比約4,500名増で、全員稼働すればおおむね予算値レベルの売上高達成が推測できる、3)新型車、次世代スマートフォンなどの同社の主力顧客業種における需要が旺盛である、 4)高単価、高採算案件を選別受注している、などを考慮すると、会社計画は保守的で、後述の中期計画目標値の達成の可能性もあると見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)
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●2018年3月期の通期業績見通し
UTグループ<2146>の2018年3月期は、売上高が前期比21.6%増の70,000百万円、営業利益は同23.0%増の4,200百万円、経常利益は同22.7%増の4,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同37.7%増の2,800百万円と、2ケタの増収・増益を見込む会社計画となっている。
2017年3月期は2016年4月に起きた熊本地震で待機人員が増加したことなどの影響(売上高、営業利益で200百万円)を織り込み保守的計画を設定したが、結果的には影響は一時的なものであった。
2018年3月期については、継続的な人手不足から多くの分野で人材需要が大きい。また改正労働者派遣法や改正労働契約法など、法改正等の影響が同社にとって有利に働く状況が継続する、としている。2015年9月施行の改正労働者派遣法は、従来の派遣期間の制限の見直しなど派遣事業者への規制強化となるものだが、同社のような正社員で無期雇用派遣の場合は期間制限がないため、顧客企業側からのニーズが高くなる。同様に、2013年4月施行の改正労働契約法は、有期契約社員使用への規制強化となっており、こちらは派遣利用への切り替えニーズが生じている。これらの法改正により、無期雇用派遣への社会的ニーズが非常に高まっており、これに対応できない中小の派遣事業者が淘汰されつつある状況となっている。この流れは少なくともここ数年間続くと思われ、同社にとっては追い風となるだろう。
なお、2018年3月期より、従来の製造派遣事業を製造業向け人材派遣・請負の「マニュファクチャリング事業」と、構造改革支援の「ソリューション事業」に区分、エンジニア派遣事業を「エンジニアリング事業」と呼称変更し、3つの事業セグメントとすることを発表した。1つ目の狙いは、派遣事業とは性格の異なるソリューション事業を製造派遣事業から区分し、よりわかりやすいセグメント区分としたことである。顧客企業社員を同社へ転籍させ、3年間の保証期間の間に、職種転換などの選択肢を用意して構造改革を推進することは一種の顧客企業のBPOであり、派遣事業とは明確に区分したわけである。また、2つ目の狙いは、事業名から「派遣」という表現を消していることである。これは、「派遣」に伴うネガティブなイメージを抱く従業員に対して、それを払拭するためである。
事業戦略については、各事業セグメントが有機的に連携することから、セグメント別ではなく、従業員のキャリアプラットフォームの拡充と顧客企業向けのサービスの拡大という2つの切り口で施策を発表した。これは、後述する中期経営計画の2大カスタマー戦略に沿ったものでもある。
(1) キャリアプラットフォームの拡充
以下の施策によって、「はたらく人に最も選ばれる会社へ」していこうという戦略である。
a) 良質な職場の拡大
新卒者や未経験者などの社員が短期間に待遇の良い部門で働けるように、チーム派遣に適した職場を開拓していく。具体的には、自動車・電機などの大手企業との取引を拡大していく。また工場1つ当たりの派遣人数を拡大していくことで連帯感を醸成させるなど、安心して働ける職場環境を構築していく。
b) はたらく人のバリューアップ推進
キャリア形成を管理者の重要指標にしてキャリアコンサルティング体制の構築を進める。2017年3月期に開設したUTACC※などエンジニア育成施設を積極活用して職業訓練プログラムを充実させる。グループ内転職や顧客企業への紹介促進を行うことで、はたらく人の価値向上を図る。
※UT Advanced Career Center:現場で即戦力となるエンジニアを育成し、社員のキャリア形成を支援するための施設
(2) 企業向けサービスの拡大
以下の施策によって、「モノづくり企業へ幅広い価値を提供」していくという戦略である。
a) 大規模需要への対応力強化
全国対応の大規模動員力が同社の大きな強みであるが、2017年3月期の月間750人体制から、2018年3月期は月間1,000名採用体制への構築を進める。
b) 構造改革需要の取り込み
ソリューション事業として、過去5年間で累計5社、約1,000人の転籍実績がある。今後も、正社員の転籍受入れと工程一括請負を合わせたインハウスソリューションとして大型案件等も含めて進めていく。顧客企業及びその従業員からの信頼関係がなければ成立しない事業だが、同社が製造派遣事業でこれまでに培ってきた実績で、十分に信頼関係が形成されており、同社への期待が高い。
c) 低単価領域の開拓
技能実習法による海外人材の紹介・管理代行など低単価領域での事業開拓を狙っていく。当面はベトナムなど東南アジア圏の人材活用を進める。
d) エンジニア派遣事業の拡大
育成体制をさらに強化し、供給力を増強する。新卒採用、未経験者、製造派遣技術者からの職種転換など、IT系エンジニアへの多岐な道筋を用意するとともに、UTACCを活用した育成体制を強化する。また、エンジニア採用においては、M&Aも必要に応じて検討するとのことである。
弊社では、 1)2015年9月に施行された改正労働者派遣法が同社にとって想定以上にプラス要因として働いている、2)期初時点における技術者数が前期比約4,500名増で、全員稼働すればおおむね予算値レベルの売上高達成が推測できる、3)新型車、次世代スマートフォンなどの同社の主力顧客業種における需要が旺盛である、 4)高単価、高採算案件を選別受注している、などを考慮すると、会社計画は保守的で、後述の中期計画目標値の達成の可能性もあると見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)
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