サイオス Research Memo(3):2017年12月期は減益となるも売上高は過去最高を7期連続で更新
[18/04/04]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2017年12月期の業績概要
2月5日付で発表されたサイオス<3744>の2017年12月期の連結業績は、売上高が前期比3.2%増の12,470百万円、営業利益が同32.4%減の320百万円、経常利益が同16.3%減の326百万円、親会社株主に帰属する当期純損失が587百万円(前期は254百万円の利益)となった。また、同社が経営指標として重視しているEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却)も、前期比23.9%減の497百万円となった。
売上高は、PCIで展開している金融機関向けアプリケーション製品が受注遅れの影響もあり減収となったが、IT投資の拡大を背景に主力の「LifeKeeper」やRed Hat,Inc関連商品、OSS関連商品、MFP向けソフトウェアがいずれもが伸長し、7期連続で過去最高を更新した。地域別の売上動向を見ると、日本向けが前期比2.3%増の11,614百万円、海外向けが同17.1%増の855百万円となった。海外の仕向地別を見ると、「LifeKeeper」の販売が好調だった米州向けが同22.0%増の607百万円、欧州向けが2.0%増の123百万円、アジア他向けが同12.0%増の124百万円となった。
営業利益の減益要因は、PCIの収益悪化に加えて、オープンシステム基盤事業でも新製品等の拡販に向けた広告宣伝費の増加や商品販売の粗利率低下が影響した。また、研究開発費も新製品・サービスの開発を中心に前期比35百万円増の588百万円と増加したことも減益要因となっている。
営業外収支は前期比90百万円改善したが、これは前期の持分法投資損失65百万円がなくなったことが主因となっている。また、当期は特別損失を807百万円計上している。このうち800百万円はPCIののれん及び顧客関連資産の減損損失分となっている。PCIの業績が買収時の事業計画を大きく下回ったことを受け、のれん等の全額を減損処理したことによる。買収時には想定していなかったマイナス金利が2016年夏以降導入されたことで、主要顧客である地方金融機関の設備投資が冷え込んだ影響が出た。この特別損失の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は2期ぶりの損失計上となった。
期初会社計画比で見ると、売上高はPCIの下振れ分を「LifeKeeper」等の好調でカバーし、ほぼ計画どおりの水準となったが、利益ベースではPCIの下振れや商品販売の粗利率低下が下振れ要因となった。
2. 事業セグメント別動向
(1) オープンシステム基盤事業
2017年12月期の売上高は前期比8.5%増の6,834百万円、セグメント利益は同20.7%減の143百万円となった。主要製品の売上動向を見ると、「LifeKeeper」は米国が大幅な増収となったほか、国内やアジア・オセアニア地域でも順調な増収となった。AWSやMicrosft Azure等のパブリッククラウドを利用する企業が増えるなかで、パブリッククラウド上でもシステム障害に備えた二重化システムの構築を図りたいとする企業からの引き合いが増えている。「LifeKeeper」は比較的容易にAWS上で二重化システムの構築をできることが差別化要因となっているようだ。国内市場でもクラウド対応で競合より先行したことで、シェアも上昇している。また、国内でのIT投資拡大を追い風に、OSSサポートサービスやOSS関連商品が順調な増収となったほか、Red Hat, Inc.関連商品も堅調な増収となった。
一方、利益面では仕入商品の販売が競争激化による粗利率低下で減益となったこと、「LifeKeeper」や「SIOS iQ」「SIOS Coati」等の拡販のための広告宣伝費を前期比で2割程度積み増したことなどが減益要因となった。
注目製品である「SIOS iQ」「SIOS Coati」の動向については以下のとおり。
a) SIOS iQ
「SIOS iQ」については2015年にリリースして以降、試験運用も含めて導入社数が着実に伸びてきている。仮想及びクラウド環境下での重要なアプリケーションの稼働状況を監視し、機械学習によってシステム故障やパフォーマンス低下のリスクを事前に検知、運用担当者にアラートを出すことで、アプリケーションのパフォーマンスや信頼性を確保しつつ、運用担当者の業務負担軽減に貢献するするソフトウェアとなる。同社では、顧客ニーズを確認しながら改修を行い製品の完成度を高めている状況にあり、機械学習を重ねることでさらに製品の完成度は上がっていくものと予想される。米国では大企業への試験導入が進んでいるほか、VMWareが毎年開催している世界最大級のカンファレンス「VMWorld 2017」でBest of Show Finalist に選ばれるなど業界で高い評価も受けており、今後の成長が期待される状況に変わりはないと弊社では見ている。
b) SIOS Coati
2017年2月にリリースした「SIOS Coati」は、AWS上でのシステム障害を自動検知・復旧し、障害発生レポートの作成まで行うことで、クラウド運用のコスト削減に寄与するサービスとなる。現時点では業績に与える影響は軽微だが、2017年9月よりソニーネットワークコミュニケーションズ(株)が提供する「マネージドクラウド with AWS」(AWSの導入・運用管理支援サービス)のオプションメニューとして「SIOS Coati」が採用されたことで、今後「マネージドクラウド with AWS」のユーザー向けにも利用が広がる可能性がある。
(2) アプリケーション事業
2017年12月期の売上高は前期比2.5%減の5,636百万円、セグメント利益は同39.6%減の177百万円となった。MFP向けソフトウェア製品が堅調な増収となったほか、システム開発・構築支援も順調な増収となったが、PCIが展開する金融機関向けアプリケーション製品の販売が、投資マインドの冷え込みや期ズレの影響もあって大幅減収となったことが減収要因となった。KPSの売上についてはほぼ前期並みの水準となっている。
一方、利益面では利益率の高い金融機関向けアプリケーション製品の販売減や、システム構築支援における大型案件の利益率低下が影響して減益となった。
3. 財務状況と経営指標
2017年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比406百万円減少の4,849百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では現預金が455百万円、売掛金が31百万円それぞれ増加した。一方、固定資産ではのれんが752百万円減少したほか、その他無形固定資産も160百万円減少した。
負債合計は前期末比163百万円増加の3,772百万円となった。有利子負債が113百万円減少した一方で、前受金が112百万円、買掛金が51百万円それぞれ増加した。また、純資産は親会社株主に帰属する当期純損失587百万円の計上により、前期末比570百万円減少の1,076百万円となった。
経営指標を見ると、自己資本比率が当期純損失の計上により前期末の30.8%から21.5%へ低下したが、有利子負債は975百万円から862百万円に減少しており、またネットキャッシュ(現預金-有利子負債)も前期末の948百万円から1,516百万円に拡大するなど、実質的には財務体質はやや改善していると判断される。収益性に関しては売上高営業利益率で前期比1.3ポイント低下の2.6%に、ROAで同0.7ポイント低下の6.5%になるなど若干低下している。売上営業利益率は長らく5%以下の水準が続いており、営業利益率の向上が同社にとって当面の解題と言える。ただ、同社では将来の成長を見据えた研究開発投資は積極的に投下していく方針としており、収益性が大きく向上してくるのは新製品・サービスが収益に本格貢献してくる3年後くらいからとなりそうだ。
なお、同社は今後もM&Aに関しては前向きに検討していく姿勢を見せている。対象となるのは、同社が顧客基盤を持たない業界特化型のシステム開発企業や、シナジーが期待できる最先端テクノロジーのノウハウを持つ企業となる。M&A資金としては手元キャッシュや借入金で賄う方針としている。このため、今後もM&Aを実施した段階では一時的に財務体質が悪化する可能性はあるものの、超低金利が長期化する状況下において、財務レバレッジを効かせた投資戦略は有効と考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<MW>
1. 2017年12月期の業績概要
2月5日付で発表されたサイオス<3744>の2017年12月期の連結業績は、売上高が前期比3.2%増の12,470百万円、営業利益が同32.4%減の320百万円、経常利益が同16.3%減の326百万円、親会社株主に帰属する当期純損失が587百万円(前期は254百万円の利益)となった。また、同社が経営指標として重視しているEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却)も、前期比23.9%減の497百万円となった。
売上高は、PCIで展開している金融機関向けアプリケーション製品が受注遅れの影響もあり減収となったが、IT投資の拡大を背景に主力の「LifeKeeper」やRed Hat,Inc関連商品、OSS関連商品、MFP向けソフトウェアがいずれもが伸長し、7期連続で過去最高を更新した。地域別の売上動向を見ると、日本向けが前期比2.3%増の11,614百万円、海外向けが同17.1%増の855百万円となった。海外の仕向地別を見ると、「LifeKeeper」の販売が好調だった米州向けが同22.0%増の607百万円、欧州向けが2.0%増の123百万円、アジア他向けが同12.0%増の124百万円となった。
営業利益の減益要因は、PCIの収益悪化に加えて、オープンシステム基盤事業でも新製品等の拡販に向けた広告宣伝費の増加や商品販売の粗利率低下が影響した。また、研究開発費も新製品・サービスの開発を中心に前期比35百万円増の588百万円と増加したことも減益要因となっている。
営業外収支は前期比90百万円改善したが、これは前期の持分法投資損失65百万円がなくなったことが主因となっている。また、当期は特別損失を807百万円計上している。このうち800百万円はPCIののれん及び顧客関連資産の減損損失分となっている。PCIの業績が買収時の事業計画を大きく下回ったことを受け、のれん等の全額を減損処理したことによる。買収時には想定していなかったマイナス金利が2016年夏以降導入されたことで、主要顧客である地方金融機関の設備投資が冷え込んだ影響が出た。この特別損失の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は2期ぶりの損失計上となった。
期初会社計画比で見ると、売上高はPCIの下振れ分を「LifeKeeper」等の好調でカバーし、ほぼ計画どおりの水準となったが、利益ベースではPCIの下振れや商品販売の粗利率低下が下振れ要因となった。
2. 事業セグメント別動向
(1) オープンシステム基盤事業
2017年12月期の売上高は前期比8.5%増の6,834百万円、セグメント利益は同20.7%減の143百万円となった。主要製品の売上動向を見ると、「LifeKeeper」は米国が大幅な増収となったほか、国内やアジア・オセアニア地域でも順調な増収となった。AWSやMicrosft Azure等のパブリッククラウドを利用する企業が増えるなかで、パブリッククラウド上でもシステム障害に備えた二重化システムの構築を図りたいとする企業からの引き合いが増えている。「LifeKeeper」は比較的容易にAWS上で二重化システムの構築をできることが差別化要因となっているようだ。国内市場でもクラウド対応で競合より先行したことで、シェアも上昇している。また、国内でのIT投資拡大を追い風に、OSSサポートサービスやOSS関連商品が順調な増収となったほか、Red Hat, Inc.関連商品も堅調な増収となった。
一方、利益面では仕入商品の販売が競争激化による粗利率低下で減益となったこと、「LifeKeeper」や「SIOS iQ」「SIOS Coati」等の拡販のための広告宣伝費を前期比で2割程度積み増したことなどが減益要因となった。
注目製品である「SIOS iQ」「SIOS Coati」の動向については以下のとおり。
a) SIOS iQ
「SIOS iQ」については2015年にリリースして以降、試験運用も含めて導入社数が着実に伸びてきている。仮想及びクラウド環境下での重要なアプリケーションの稼働状況を監視し、機械学習によってシステム故障やパフォーマンス低下のリスクを事前に検知、運用担当者にアラートを出すことで、アプリケーションのパフォーマンスや信頼性を確保しつつ、運用担当者の業務負担軽減に貢献するするソフトウェアとなる。同社では、顧客ニーズを確認しながら改修を行い製品の完成度を高めている状況にあり、機械学習を重ねることでさらに製品の完成度は上がっていくものと予想される。米国では大企業への試験導入が進んでいるほか、VMWareが毎年開催している世界最大級のカンファレンス「VMWorld 2017」でBest of Show Finalist に選ばれるなど業界で高い評価も受けており、今後の成長が期待される状況に変わりはないと弊社では見ている。
b) SIOS Coati
2017年2月にリリースした「SIOS Coati」は、AWS上でのシステム障害を自動検知・復旧し、障害発生レポートの作成まで行うことで、クラウド運用のコスト削減に寄与するサービスとなる。現時点では業績に与える影響は軽微だが、2017年9月よりソニーネットワークコミュニケーションズ(株)が提供する「マネージドクラウド with AWS」(AWSの導入・運用管理支援サービス)のオプションメニューとして「SIOS Coati」が採用されたことで、今後「マネージドクラウド with AWS」のユーザー向けにも利用が広がる可能性がある。
(2) アプリケーション事業
2017年12月期の売上高は前期比2.5%減の5,636百万円、セグメント利益は同39.6%減の177百万円となった。MFP向けソフトウェア製品が堅調な増収となったほか、システム開発・構築支援も順調な増収となったが、PCIが展開する金融機関向けアプリケーション製品の販売が、投資マインドの冷え込みや期ズレの影響もあって大幅減収となったことが減収要因となった。KPSの売上についてはほぼ前期並みの水準となっている。
一方、利益面では利益率の高い金融機関向けアプリケーション製品の販売減や、システム構築支援における大型案件の利益率低下が影響して減益となった。
3. 財務状況と経営指標
2017年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比406百万円減少の4,849百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では現預金が455百万円、売掛金が31百万円それぞれ増加した。一方、固定資産ではのれんが752百万円減少したほか、その他無形固定資産も160百万円減少した。
負債合計は前期末比163百万円増加の3,772百万円となった。有利子負債が113百万円減少した一方で、前受金が112百万円、買掛金が51百万円それぞれ増加した。また、純資産は親会社株主に帰属する当期純損失587百万円の計上により、前期末比570百万円減少の1,076百万円となった。
経営指標を見ると、自己資本比率が当期純損失の計上により前期末の30.8%から21.5%へ低下したが、有利子負債は975百万円から862百万円に減少しており、またネットキャッシュ(現預金-有利子負債)も前期末の948百万円から1,516百万円に拡大するなど、実質的には財務体質はやや改善していると判断される。収益性に関しては売上高営業利益率で前期比1.3ポイント低下の2.6%に、ROAで同0.7ポイント低下の6.5%になるなど若干低下している。売上営業利益率は長らく5%以下の水準が続いており、営業利益率の向上が同社にとって当面の解題と言える。ただ、同社では将来の成長を見据えた研究開発投資は積極的に投下していく方針としており、収益性が大きく向上してくるのは新製品・サービスが収益に本格貢献してくる3年後くらいからとなりそうだ。
なお、同社は今後もM&Aに関しては前向きに検討していく姿勢を見せている。対象となるのは、同社が顧客基盤を持たない業界特化型のシステム開発企業や、シナジーが期待できる最先端テクノロジーのノウハウを持つ企業となる。M&A資金としては手元キャッシュや借入金で賄う方針としている。このため、今後もM&Aを実施した段階では一時的に財務体質が悪化する可能性はあるものの、超低金利が長期化する状況下において、財務レバレッジを効かせた投資戦略は有効と考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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