神戸物産 Research Memo(6):業務スーパーの好調持続で2018年10月期の業績計画は上振れの公算
[18/08/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2018年10月期の業績見通し
神戸物産<3038>の2018年10月期の連結業績予想は、売上高が前期比5.4%増の265,000百万円、営業利益が同2.7%増の15,000百万円、経常利益が同6.2%減の14,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同15.0%増の9,600百万円と期初会社計画を据え置いている。経常利益だけが減益見込みとなるが、これは営業外で前期計上した為替差益やデリバティブ評価益を見込んでいないためだ。また、為替の前提レートは公表していないが、112円/米ドルと前期並みの水準を想定しているとみられる。第2四半期末は円高に振れたためデリバティブ評価損が発生したが、現状の112円/ドル水準で推移すれば評価損は減少する見込みとなっている。
業務スーパーの出店数については前期末比30店舗増の計画だが、前述したように第2四半期までに22店舗増となっており、足下の出店計画によれば9月末には目標の810店舗に達する見込みとなっている。最終的には数店舗の上積みとなる可能性がある。また、既存店向けの出荷額についても6月は前年同月比4.2%増と引き続き強含みで推移している。7月に発生した西日本豪雨についても、販売への影響は軽微だったものと見られる。岡山で鶏肉の生産、加工を行う(株)グリーンポートリーについても、幹線道路が通行止めとなり物流面での影響が出たものの、大きなダメージとはなっていない。このため、為替レートに今後大きな変動がなければ、業績は会社計画をやや上振れする可能性が高いと弊社では見ている。
店舗数拡大と既存店売上の増収により業務スーパー事業の安定成長が続く
2. 事業セグメント別の見通し
(1) 業務スーパー事業
主力の業務スーパー事業の売上高は前期比5〜6%増を見込んでいる。新規出店に関しては首都圏エリアを中心に今後も増やしていく方針だが、その他のエリアにおいてもFC企業の出店意欲が旺盛で、今期もすべてのエリアで店舗数の拡大が続く見通し。既存店の売上げが着実に増加していることが背景にあり、今後も条件にかなう出店候補地が見つかれば積極的に出店してくことが予想される。出店についてはドミナント戦略で近隣に店舗を出店し、商圏を広げていく格好となる。また、自社開発のPB商品についても品ぞろえを強化していく計画となっており、PB商品比率は前期の31.0%から上昇する見込み。
収益性向上施策としては自社PB商品の開発強化や製造ラインでの機械化投資による生産性向上、物流コストの低減などを継続的に取り組んでいく。このうち、物流に関してはFC店舗における他の商材についても同社で取り扱うことで、全体の物流コスト圧縮につなげているほか、倉庫業者や物流業者との価格交渉もスケールメリットを打ち出しながら低減するよう取り組んでいる。
なお、海外市場の取り組み状況としては2016年4月に米国でJPN Mart Inc.が運営する日系のスーパーマーケット「Seiwa Market」(カリフォルニア州2店舗、テキサス州1店舗)内で約500アイテムのPB商品などを販売、2016年秋からは香港のスーパーマーケット向けにも間接的に卸販売を開始している。このうち、米国については順調に拡大しているが、香港については物流がボトルネックとなり伸び悩んでいるもようで、今後の課題となっている。現在、20〜30店舗に出荷しているが、相手先企業はグループ全体で約200店舗のスーパーマーケットを運営しており、物流の課題が解消できれば一段の拡大が期待される。
(2) 神戸クック事業
神戸クック事業は、売上高が前期比増収となり、営業損失も縮小する見通しとなっている。前述したように在庫評価の見直しがほぼ一巡したこともあり、下期だけで見れば黒字転換する見通しだ。
「神戸クック・ワールドビュッフェ」については通期で前期末比4店舗増の20店舗を計画している。6月に「イオン明石店」(兵庫県)を賃貸借契約満了に伴い閉店したが、7月に九州エリア初となる久留米店を出店し、7月末時点で19店舗となっており、残り1店舗を出店する予定だ。同業態については、一部店舗で不採算店が残っているものの全体としては黒字経営となっており、今後も 各地でFCによる新規出店を行いながら事業規模を拡大していく予定になっている。
一方、惣菜事業については新業態となる「馳走菜」を今後、業務スーパー店舗内で出店していく予定となっている。2018年5月には大阪に2号店をオープンしている。「Green's K」については利益率向上に取り組みながら現状を維持していくものと見られる。通期では両業態合わせて前期末比4店舗増の13店舗を計画しており、「馳走菜」であと3店舗を今期中に出店していくことになる。「馳走菜」については将来的には業務スーパー以外の他店舗への展開も視野に入れている。
(3) クックイノベンチャー事業
クックイノベンチャー事業は、減収減益となる見通し。ジー・コミュニケーショングループの見通しをそのまま業績計画に織り込んでいる。グループの中核企業であるジー・テイストの2019年3月期業績は、収益構造改革を実施するため、売上高で前期比9.3%減の23,000百万円、営業利益で同21.2%減の330百万円、親会社株主に帰属する当期純損失で390百万円(前期は370百万円の損失)を計画している。また、2018年6月に中期経営計画を発表しており、経営数値目標としては2021年3月期に売上高で26,048百万円、営業利益で730百万円を掲げている。同社の連結業績としては2020年10月期以降、増収増益に寄与してくるものと予想される。
(4) エコ再生エネルギー事業
エコ再生エネルギー事業は、増収増益となる見込み。2017年10月期の下期に大阪府、徳島県、茨城県の3ヶ所で合計6.6MWの発電所の稼働を開始しており、既存のソーラー発電所だけで前期比15.7%増の612百万円の収入が見込まれ、2018年2月に大阪で2.1MW(年間売電収入81百万円)の発電所が稼働したほか、2018年9月には和歌山で1.6MW(年間売電収入58百万円)が稼働する予定となっている。また、2018年8月には北海道の木質バイオマス発電所(年間売電収入約13億円)も本稼働を開始した。同発電所については徐々に出力を上げていくため初年度の売上げとしては軽微となるが、2019年10月期以降の増収に寄与することになる。
ソーラー発電事業については福島県、宮城県で10MW以上の大型プロジェクトが残っており、すべて完成すれば最終的に60MW程度まで発電能力が拡大することになる。ただ、これら大型プロジェクトについてはまだ具体的な計画策定までには至っておらず時期も未定となっている。
(5) その他
輸入食品店「ガレオン」については、小型店舗となるため業績への影響は軽微だが、駅ナカやショッピングモール等への店舗展開を今後進めていく方針で、店舗数が増えてくればスケールメリットにより取扱商品を業務スーパーでも扱えるようになり、業務スーパーの品ぞろえの強化につながるといった相乗効果を見込んでいる。
「ホットラグーン大分」に関しては、前述したとおり現在は、リニューアルに向けた計画を策定中となっており2018年10月期の売上計上を見込んでいない。一方、北海道の茅部郡森町で進めている観光果樹園については開園に向けて屋外で苗木を育成するなど準備を進めており、開園時期は2020年とする従来の目標から変更はない。同果樹園では地熱を活用した温水エコハウスで、青パパイヤやマンゴーなど南国の果樹も育成しており、ファミリーで楽しめる観光果樹園を計画している。なお観光事業に関しては、地域の活性化や雇用創出など社会貢献を目的とした事業であり、業績面での寄与は想定していない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2018年10月期の業績見通し
神戸物産<3038>の2018年10月期の連結業績予想は、売上高が前期比5.4%増の265,000百万円、営業利益が同2.7%増の15,000百万円、経常利益が同6.2%減の14,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同15.0%増の9,600百万円と期初会社計画を据え置いている。経常利益だけが減益見込みとなるが、これは営業外で前期計上した為替差益やデリバティブ評価益を見込んでいないためだ。また、為替の前提レートは公表していないが、112円/米ドルと前期並みの水準を想定しているとみられる。第2四半期末は円高に振れたためデリバティブ評価損が発生したが、現状の112円/ドル水準で推移すれば評価損は減少する見込みとなっている。
業務スーパーの出店数については前期末比30店舗増の計画だが、前述したように第2四半期までに22店舗増となっており、足下の出店計画によれば9月末には目標の810店舗に達する見込みとなっている。最終的には数店舗の上積みとなる可能性がある。また、既存店向けの出荷額についても6月は前年同月比4.2%増と引き続き強含みで推移している。7月に発生した西日本豪雨についても、販売への影響は軽微だったものと見られる。岡山で鶏肉の生産、加工を行う(株)グリーンポートリーについても、幹線道路が通行止めとなり物流面での影響が出たものの、大きなダメージとはなっていない。このため、為替レートに今後大きな変動がなければ、業績は会社計画をやや上振れする可能性が高いと弊社では見ている。
店舗数拡大と既存店売上の増収により業務スーパー事業の安定成長が続く
2. 事業セグメント別の見通し
(1) 業務スーパー事業
主力の業務スーパー事業の売上高は前期比5〜6%増を見込んでいる。新規出店に関しては首都圏エリアを中心に今後も増やしていく方針だが、その他のエリアにおいてもFC企業の出店意欲が旺盛で、今期もすべてのエリアで店舗数の拡大が続く見通し。既存店の売上げが着実に増加していることが背景にあり、今後も条件にかなう出店候補地が見つかれば積極的に出店してくことが予想される。出店についてはドミナント戦略で近隣に店舗を出店し、商圏を広げていく格好となる。また、自社開発のPB商品についても品ぞろえを強化していく計画となっており、PB商品比率は前期の31.0%から上昇する見込み。
収益性向上施策としては自社PB商品の開発強化や製造ラインでの機械化投資による生産性向上、物流コストの低減などを継続的に取り組んでいく。このうち、物流に関してはFC店舗における他の商材についても同社で取り扱うことで、全体の物流コスト圧縮につなげているほか、倉庫業者や物流業者との価格交渉もスケールメリットを打ち出しながら低減するよう取り組んでいる。
なお、海外市場の取り組み状況としては2016年4月に米国でJPN Mart Inc.が運営する日系のスーパーマーケット「Seiwa Market」(カリフォルニア州2店舗、テキサス州1店舗)内で約500アイテムのPB商品などを販売、2016年秋からは香港のスーパーマーケット向けにも間接的に卸販売を開始している。このうち、米国については順調に拡大しているが、香港については物流がボトルネックとなり伸び悩んでいるもようで、今後の課題となっている。現在、20〜30店舗に出荷しているが、相手先企業はグループ全体で約200店舗のスーパーマーケットを運営しており、物流の課題が解消できれば一段の拡大が期待される。
(2) 神戸クック事業
神戸クック事業は、売上高が前期比増収となり、営業損失も縮小する見通しとなっている。前述したように在庫評価の見直しがほぼ一巡したこともあり、下期だけで見れば黒字転換する見通しだ。
「神戸クック・ワールドビュッフェ」については通期で前期末比4店舗増の20店舗を計画している。6月に「イオン明石店」(兵庫県)を賃貸借契約満了に伴い閉店したが、7月に九州エリア初となる久留米店を出店し、7月末時点で19店舗となっており、残り1店舗を出店する予定だ。同業態については、一部店舗で不採算店が残っているものの全体としては黒字経営となっており、今後も 各地でFCによる新規出店を行いながら事業規模を拡大していく予定になっている。
一方、惣菜事業については新業態となる「馳走菜」を今後、業務スーパー店舗内で出店していく予定となっている。2018年5月には大阪に2号店をオープンしている。「Green's K」については利益率向上に取り組みながら現状を維持していくものと見られる。通期では両業態合わせて前期末比4店舗増の13店舗を計画しており、「馳走菜」であと3店舗を今期中に出店していくことになる。「馳走菜」については将来的には業務スーパー以外の他店舗への展開も視野に入れている。
(3) クックイノベンチャー事業
クックイノベンチャー事業は、減収減益となる見通し。ジー・コミュニケーショングループの見通しをそのまま業績計画に織り込んでいる。グループの中核企業であるジー・テイストの2019年3月期業績は、収益構造改革を実施するため、売上高で前期比9.3%減の23,000百万円、営業利益で同21.2%減の330百万円、親会社株主に帰属する当期純損失で390百万円(前期は370百万円の損失)を計画している。また、2018年6月に中期経営計画を発表しており、経営数値目標としては2021年3月期に売上高で26,048百万円、営業利益で730百万円を掲げている。同社の連結業績としては2020年10月期以降、増収増益に寄与してくるものと予想される。
(4) エコ再生エネルギー事業
エコ再生エネルギー事業は、増収増益となる見込み。2017年10月期の下期に大阪府、徳島県、茨城県の3ヶ所で合計6.6MWの発電所の稼働を開始しており、既存のソーラー発電所だけで前期比15.7%増の612百万円の収入が見込まれ、2018年2月に大阪で2.1MW(年間売電収入81百万円)の発電所が稼働したほか、2018年9月には和歌山で1.6MW(年間売電収入58百万円)が稼働する予定となっている。また、2018年8月には北海道の木質バイオマス発電所(年間売電収入約13億円)も本稼働を開始した。同発電所については徐々に出力を上げていくため初年度の売上げとしては軽微となるが、2019年10月期以降の増収に寄与することになる。
ソーラー発電事業については福島県、宮城県で10MW以上の大型プロジェクトが残っており、すべて完成すれば最終的に60MW程度まで発電能力が拡大することになる。ただ、これら大型プロジェクトについてはまだ具体的な計画策定までには至っておらず時期も未定となっている。
(5) その他
輸入食品店「ガレオン」については、小型店舗となるため業績への影響は軽微だが、駅ナカやショッピングモール等への店舗展開を今後進めていく方針で、店舗数が増えてくればスケールメリットにより取扱商品を業務スーパーでも扱えるようになり、業務スーパーの品ぞろえの強化につながるといった相乗効果を見込んでいる。
「ホットラグーン大分」に関しては、前述したとおり現在は、リニューアルに向けた計画を策定中となっており2018年10月期の売上計上を見込んでいない。一方、北海道の茅部郡森町で進めている観光果樹園については開園に向けて屋外で苗木を育成するなど準備を進めており、開園時期は2020年とする従来の目標から変更はない。同果樹園では地熱を活用した温水エコハウスで、青パパイヤやマンゴーなど南国の果樹も育成しており、ファミリーで楽しめる観光果樹園を計画している。なお観光事業に関しては、地域の活性化や雇用創出など社会貢献を目的とした事業であり、業績面での寄与は想定していない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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