プレサンス Research Memo(1):2019年3月期は9年連続の増収増益。各利益は30%を超える伸び
[19/06/14]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■要約
プレサンスコーポレーション<3254>は、ファミリーマンション及びワンルームマンションの企画・開発・分譲から賃貸及び建物管理まで一貫して手掛ける独立系の総合マンションデベロッパーである。近畿圏及び東海・中京圏のマンション供給数はそれぞれ9年連続、7年連続で1位であり、全国でも1位の住友不動産<8830>に次いで2年連続2位(2018年)を維持する。都心主要駅近くで利便性の良い立地に、自社で企画開発するプレサンスシリーズのマンションを展開する。士気の高い販売部隊も強みであり、完成在庫の売れ残りは極めて少ない。1997年の設立以来、順調な成長を続けており、2007年に東証2部上場、リーマンショックにも大きな影響を受けずに2013年には東証1部上場を果たし、2015年に「JPX日経インデックス400」の構成銘柄に、2016年には「JPX日経中小型株指数」の構成銘柄に選定されており、株式市場の評価も高い。
同社はワンルームマンションからファミリーマンション、一棟販売(ワンルームマンションの卸売)からホテルまで多様な事業を展開している稀有な企業である。多彩な商品ラインナップは、土地の情報が入った時に最適な活用法を可能にし、仕入ボリュームを大きくすることができ、競合よりも有利に土地取得・建築を進めることができる。
1. 市場動向
全国の新築マンション供給は足元堅調に推移している。その中で、首都圏と近畿圏を比較すると市場動向に違いも見られる。首都圏では供給戸数が前年比3.4%増の37,132戸(2018年1月〜2018年12月)であるのに対し、近畿圏では前年比7.1%増の20,958戸(同)と伸びが著しい。また、マンションの契約率(初月契約戸数/発売戸数、2018年1月−2018年12月)で見ても、首都圏が62.1%に対して近畿圏は74.5%と好不調の目安とされている70%を年間通して上回った。近畿圏での展開が主体の同社にとっては、好ましい市場環境と言えるだろう。
2. 強み
同社は、マンションを近畿圏や東海・中京圏の中でも特に人口の増加率の高い地域にフォーカスして供給する戦略を徹底してきた。大阪市においては、同社がワンルームマンションを集中して供給するのは6区(中央区、北区、西区、福島区、浪速区、淀川区)であり、人口の増加率は他区及び大阪府と比較して高い(過去3年間で5.3%増)。また愛知県においても、同様の戦略である。フォーカスするエリアの特徴としては、都市中心部でオフィスや商業施設等が多く、「住んで良し、働いて良し」の利便性の高いエリアである。コンパクトシティ化が進むなかでも、その価値が色あせない。「都心エリアの利便性の高い立地への供給」という戦略は、人口動態にも、消費者ニーズにも合致しており、同社が急成長を続ける要因の1つと考えられる。
3. 業績動向
2019年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比19.8%増の160,580百万円、営業利益が同33.2%増の27,118百万円、経常利益が同33.6%増の26,531百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同33.0%増の18,296百万円となり、大幅な増収増益となった。増収増益は9年連続、過去最高の業績を更新した。売上面では、ワンルームマンションの販売戸数が2,363戸(前期比36.9%増)と大幅に伸び、ファミリーマンションの販売戸数も2,078戸(同11.7%増)と堅調に推移した。ホテル販売は、980室(同435.5%増)と売上開始から2年目で飛躍的に伸びた。売上総利益率の相対的に高いワンルームマンションの構成比が高かったこと等から前期比1.8ポイント増の27.5%となった。販管費(主に販売手数料や人件費)構成比率は同0.1ポイント増加したものの、営業利益率は同1.7ポイント増の16.9%と高い水準となった。また、営業利益は同33.2%増と高い伸びを記録した。
2020年3月期通期の連結業績予想は、売上高が前期比30.3%増の209,219百万円、営業利益が同20.0%増の32,531百万円、経常利益が同18.5%増の31,429百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同17.6%増の21,520百万円と、大幅な増収増益を予想する。達成すれば、売上高で初の2,000億円超え、10年連続の2ケタ増益並びに過去最高業績となる。商品セグメント別売上高計画では、ワンルームマンションは70,901百万円(前期比64.8%増)と大幅に伸長する計画。最大のセグメントであるファミリーマンションは74,757百万円(同3.4%減)で横ばいの予想。営業利益の成長率予想は前期比20.0%増であり、経営目標である「10%以上」は余裕を持って達成しそうだ。同社は1年〜2年先を見越して事業を進めている。2020年3月期をスタートする時点で、既に売上計画の73.3%分(147,102百万円分)の受注を獲得している。同社の計画精度の高さも加味すると予想の信頼性は高く、下振れの可能性は非常に低いと考えられる。
同社は2021年3月期までの3ヵ年中期経営計画を上方修正した。2020年3月期は、修正前の2021年3月期利益計画を1年前倒しで達成する計画に上方修正した。また、2021年3月期通期の計画は、売上高が前期比20.0%増の250,960百万円、営業利益が同12.0%増の36,434百万円、経常利益が同11.7%増の35,108百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同11.4%増の23,984百万円で、10%以上の利益成長を継続する計画に上方修正した。
4. 成長戦略・トピック
同社は、2019年4月にAIを活用した投資用不動産の総合サイト「Braight(ブライト)」の稼働を開始、不動産テックを活用して業績成長を加速する取り組みを始めた。「Braight」という名前は、AI(人口知能)とbright(照らす)を掛け合わせたもので、不動産投資市場の未来を明るく照らしたいとの思いから名付けられた。今回スタートしたサイトは5つ。顧客が不動産投資に興味・関心を持つ段階から、物件の比較検討、購入後のアフター・サービスまで一貫した情報・サービスを提供する。新たな顧客層の開拓とともに業務効率の向上を目指し、不動産テックをしっかりと事業に結び付けていく計画である。Braight会員数は、5年目の2024年3月期に75,000人を目指す。売上高では2024年3月期に24,480百万円(うち中古物件7,200百万円、うち新築物件17,280百万円)を計画する。なお、Braight ビジネスによる売上高は、現在2年目を迎える中期経営計画の目標数字には含まれていないため、Braightの成果が出れば、同社業績の上振れ要因になる。
5. 株主還元
同社は、配当による株主への利益還元を重要な経営課題としている。「毎年、対前年比10%以上の営業利益成長による配当原資の拡大」、「配当性向を2023年3月期までに20%へ段階的に引き上げ」、「配当総額を前年比15%以上の増額」を基本方針としており、中期的な増配ペースの加速が期待できる。2019年3月期は、配当金40.50円(上期末17.50円、下期末23.00円、前期から11.10円増、37.8%増)、配当性向13.7%となった。期初の配当予想は35.00円(上期末17.50円、下期末17.50円)だったが、好調な業績を受けて期末に増配となった。2020年3月期は、配当金52.00円(上期末26.00円、下期末26.00円)、配当性向15.0%を予想する。
■Key Points
・近畿圏は需要が堅調で市場環境良好。都心の中でも人気のエリアに集中する立地戦略で快進撃
・2019年3月期は9年連続の増収増益を達成。ワンルームの売上が増加し、各利益は30%を超える伸び
・2021年3月期までの3ヵ年中期経営計画を上方修正。修正前の2021年3月期利益計画を1年前倒しで2年目に達成し、3年目も10%以上の利益成長を更に継続する計画
・仕掛販売用不動産が増えて資産規模は3,000億円を突破。財務の安全性も堅持
・AIを活用した不動産テックを本格導入。投資用不動産の総合サイト「Braight(ブライト)」の稼働開始
・「利益成長」と「配当性向引き上げ」の掛け算に加え、中計の上方修正により増配ペースを加速。2019年3月期は前期比37.8%増の増配
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<YM>
プレサンスコーポレーション<3254>は、ファミリーマンション及びワンルームマンションの企画・開発・分譲から賃貸及び建物管理まで一貫して手掛ける独立系の総合マンションデベロッパーである。近畿圏及び東海・中京圏のマンション供給数はそれぞれ9年連続、7年連続で1位であり、全国でも1位の住友不動産<8830>に次いで2年連続2位(2018年)を維持する。都心主要駅近くで利便性の良い立地に、自社で企画開発するプレサンスシリーズのマンションを展開する。士気の高い販売部隊も強みであり、完成在庫の売れ残りは極めて少ない。1997年の設立以来、順調な成長を続けており、2007年に東証2部上場、リーマンショックにも大きな影響を受けずに2013年には東証1部上場を果たし、2015年に「JPX日経インデックス400」の構成銘柄に、2016年には「JPX日経中小型株指数」の構成銘柄に選定されており、株式市場の評価も高い。
同社はワンルームマンションからファミリーマンション、一棟販売(ワンルームマンションの卸売)からホテルまで多様な事業を展開している稀有な企業である。多彩な商品ラインナップは、土地の情報が入った時に最適な活用法を可能にし、仕入ボリュームを大きくすることができ、競合よりも有利に土地取得・建築を進めることができる。
1. 市場動向
全国の新築マンション供給は足元堅調に推移している。その中で、首都圏と近畿圏を比較すると市場動向に違いも見られる。首都圏では供給戸数が前年比3.4%増の37,132戸(2018年1月〜2018年12月)であるのに対し、近畿圏では前年比7.1%増の20,958戸(同)と伸びが著しい。また、マンションの契約率(初月契約戸数/発売戸数、2018年1月−2018年12月)で見ても、首都圏が62.1%に対して近畿圏は74.5%と好不調の目安とされている70%を年間通して上回った。近畿圏での展開が主体の同社にとっては、好ましい市場環境と言えるだろう。
2. 強み
同社は、マンションを近畿圏や東海・中京圏の中でも特に人口の増加率の高い地域にフォーカスして供給する戦略を徹底してきた。大阪市においては、同社がワンルームマンションを集中して供給するのは6区(中央区、北区、西区、福島区、浪速区、淀川区)であり、人口の増加率は他区及び大阪府と比較して高い(過去3年間で5.3%増)。また愛知県においても、同様の戦略である。フォーカスするエリアの特徴としては、都市中心部でオフィスや商業施設等が多く、「住んで良し、働いて良し」の利便性の高いエリアである。コンパクトシティ化が進むなかでも、その価値が色あせない。「都心エリアの利便性の高い立地への供給」という戦略は、人口動態にも、消費者ニーズにも合致しており、同社が急成長を続ける要因の1つと考えられる。
3. 業績動向
2019年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比19.8%増の160,580百万円、営業利益が同33.2%増の27,118百万円、経常利益が同33.6%増の26,531百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同33.0%増の18,296百万円となり、大幅な増収増益となった。増収増益は9年連続、過去最高の業績を更新した。売上面では、ワンルームマンションの販売戸数が2,363戸(前期比36.9%増)と大幅に伸び、ファミリーマンションの販売戸数も2,078戸(同11.7%増)と堅調に推移した。ホテル販売は、980室(同435.5%増)と売上開始から2年目で飛躍的に伸びた。売上総利益率の相対的に高いワンルームマンションの構成比が高かったこと等から前期比1.8ポイント増の27.5%となった。販管費(主に販売手数料や人件費)構成比率は同0.1ポイント増加したものの、営業利益率は同1.7ポイント増の16.9%と高い水準となった。また、営業利益は同33.2%増と高い伸びを記録した。
2020年3月期通期の連結業績予想は、売上高が前期比30.3%増の209,219百万円、営業利益が同20.0%増の32,531百万円、経常利益が同18.5%増の31,429百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同17.6%増の21,520百万円と、大幅な増収増益を予想する。達成すれば、売上高で初の2,000億円超え、10年連続の2ケタ増益並びに過去最高業績となる。商品セグメント別売上高計画では、ワンルームマンションは70,901百万円(前期比64.8%増)と大幅に伸長する計画。最大のセグメントであるファミリーマンションは74,757百万円(同3.4%減)で横ばいの予想。営業利益の成長率予想は前期比20.0%増であり、経営目標である「10%以上」は余裕を持って達成しそうだ。同社は1年〜2年先を見越して事業を進めている。2020年3月期をスタートする時点で、既に売上計画の73.3%分(147,102百万円分)の受注を獲得している。同社の計画精度の高さも加味すると予想の信頼性は高く、下振れの可能性は非常に低いと考えられる。
同社は2021年3月期までの3ヵ年中期経営計画を上方修正した。2020年3月期は、修正前の2021年3月期利益計画を1年前倒しで達成する計画に上方修正した。また、2021年3月期通期の計画は、売上高が前期比20.0%増の250,960百万円、営業利益が同12.0%増の36,434百万円、経常利益が同11.7%増の35,108百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同11.4%増の23,984百万円で、10%以上の利益成長を継続する計画に上方修正した。
4. 成長戦略・トピック
同社は、2019年4月にAIを活用した投資用不動産の総合サイト「Braight(ブライト)」の稼働を開始、不動産テックを活用して業績成長を加速する取り組みを始めた。「Braight」という名前は、AI(人口知能)とbright(照らす)を掛け合わせたもので、不動産投資市場の未来を明るく照らしたいとの思いから名付けられた。今回スタートしたサイトは5つ。顧客が不動産投資に興味・関心を持つ段階から、物件の比較検討、購入後のアフター・サービスまで一貫した情報・サービスを提供する。新たな顧客層の開拓とともに業務効率の向上を目指し、不動産テックをしっかりと事業に結び付けていく計画である。Braight会員数は、5年目の2024年3月期に75,000人を目指す。売上高では2024年3月期に24,480百万円(うち中古物件7,200百万円、うち新築物件17,280百万円)を計画する。なお、Braight ビジネスによる売上高は、現在2年目を迎える中期経営計画の目標数字には含まれていないため、Braightの成果が出れば、同社業績の上振れ要因になる。
5. 株主還元
同社は、配当による株主への利益還元を重要な経営課題としている。「毎年、対前年比10%以上の営業利益成長による配当原資の拡大」、「配当性向を2023年3月期までに20%へ段階的に引き上げ」、「配当総額を前年比15%以上の増額」を基本方針としており、中期的な増配ペースの加速が期待できる。2019年3月期は、配当金40.50円(上期末17.50円、下期末23.00円、前期から11.10円増、37.8%増)、配当性向13.7%となった。期初の配当予想は35.00円(上期末17.50円、下期末17.50円)だったが、好調な業績を受けて期末に増配となった。2020年3月期は、配当金52.00円(上期末26.00円、下期末26.00円)、配当性向15.0%を予想する。
■Key Points
・近畿圏は需要が堅調で市場環境良好。都心の中でも人気のエリアに集中する立地戦略で快進撃
・2019年3月期は9年連続の増収増益を達成。ワンルームの売上が増加し、各利益は30%を超える伸び
・2021年3月期までの3ヵ年中期経営計画を上方修正。修正前の2021年3月期利益計画を1年前倒しで2年目に達成し、3年目も10%以上の利益成長を更に継続する計画
・仕掛販売用不動産が増えて資産規模は3,000億円を突破。財務の安全性も堅持
・AIを活用した不動産テックを本格導入。投資用不動産の総合サイト「Braight(ブライト)」の稼働開始
・「利益成長」と「配当性向引き上げ」の掛け算に加え、中計の上方修正により増配ペースを加速。2019年3月期は前期比37.8%増の増配
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<YM>