アトラエ Research Memo(1):独自性の高いPeople Tech事業で注目を集めるITベンチャー企業
[19/12/05]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
アトラエ<6194>は、人材サービスとテクノロジー(Human Resources※×Technology、HR Tech)を掛け合わせたサービスを提供するITベンチャー企業である。2018年9月期に、“テクノロジーによって人の可能性を拡げる事業を創造していく”という想いを込め、「People Tech Company」として自社を再定義した。主力事業である求人メディア「Green」が右肩上がりの成長を持続していることに加え、組織改善プラットフォーム「wevox」の導入企業数が1,100を超えるなど大幅に増加している。2019年9月期通期は過去最高の売上高、営業利益を更新した。2018年6月に東証1部に昇格している。
※Human Resorce(HR)とは企業の人的資源に関わる人材サービスの領域を指す。人材サービスには人材派遣、人材紹介、業務請負、求人メディアの運営、採用支援、教育研修等がある。
1. 事業概要
同社の主力サービスはIT業界に強みを持つマッチングプラットフォーム「Green」である。広告型求人メディアが主流のなか、成功報酬型と言う同社独自のサービス内容が好評で、業績が右肩上がりで拡大し高成長を続けている。「Green」に続くサービスとして、組織改善プラットフォーム「wevox」(2017年5月リリース)がある。「wevox」は人材難のなかで組織強化を図りたい企業のニーズを捉え、1,100社を超えて導入されており、利用者が急増している。ビジネスパーソン向けマッチングアプリ「yenta」(2016年1月リリース)は企業から個人へのパワーシフトの流れを捉え、利用者から高い評価を受けている。
2. 2019年9月期通期業績
2019年9月期通期の業績は、売上高が3,229百万円(前期比40.0%増)、営業利益が710百万円(同2.8%増)、経常利益が713百万円(同8.2%増)、当期純利益が502百万円(同8.3%増)と大幅増収とともに、堅調な増益を達成した。主力サービスである「Green」については、主要KPIが順調に推移した。2019年9月期末のアクティブユーザー数は38,423人(前期末比27.5%増)、2019年9月期第4四半期の入社人数は839人(前年同四半期比35.5%増)、期末掲載求人数は16,583件(前期末比18.6%増)である。結果として売上高成長率で前期比33.4%増と継続的な高成長を続けている。新規事業は「wevox」がけん引し成長率で同233.5%増となった。「wevox」は、業種・業界の壁を越えてサービス提供が広がっており、導入企業数が1,100社を超え、なお急増している。営業費用に関しては、大きな割合を占める広告費が売上比で49.7%(前期から7.6ポイント上昇)まで上昇した。これは従来のWeb販促に加えて動画広告(TVCM)を実施したためである。営業利益に関しては大きな先行投資をしつつも、売上高営業利益率で22.0%を達成しており、同社のビジネスモデルの秀逸性がわかる。
3. 今後の見通し
2020年9月期は売上高4,200百万円(前期比30.1%増)、営業利益880百万円(同23.8%増)、経常利益870百万円(同21.9%増)、当期純利益543百万円(同8.0%増)と大幅な増収増益を見込んでいる。同社の成長戦略は、確固たる競争優位を持つ「Green」の伸びをベースに、先行投資フェーズにある「wevox」、「yenta」のマネタイズを本格化させ、右肩上がりの成長を実現しようと言うものである。売上高に関しては、前期比30%以上の成長継続を予測する。営業利益に関しては、売上高営業利益率で22.0%だった前期と近い21.0%が予想である。営業費用面で「Green」への広告投資(Web、TVCM)をしっかり行いつつ、「wevox」などの新規事業への投資を行うという戦略でも前期を踏襲する。「wevox」が黒字転換するのは2021年9月期となる予想だ。
4. 中長期的の成長戦略
2020年9月期に大きな飛躍が期待できるのが、「wevox」である。「wevox」の成長性として、3点挙げられる。1点目は対象者が幅広く、企業だけでなく、スポーツチームや教育機関にも利用可能であることである。潜在的にはすべての就業者(6,725万人)が対象となる。2点目がSaaSモデルであり、月額300円と単価が低く、圧倒的な価格競争力があることである。また、この価格はあくまで現状のサービスを前提としたものであり、将来的にビッグデータを活用して提供価値が高まった際には、さらに高単価のプランも考えられる。この2点から導き出される3点目として、年間2,400億円超という大きな市場が見込まれることである。同社はまずはこの市場の10%獲得を目指しているが、この市場に対して他社に先駆け注力している同社には大きな成長性があると考えられる。「wevox」は単なる“従業員アンケートシステム”ではない。アンケートの質問項目、集計システムなどは他社でも、あるいは顧客企業内でも同様のものを実現しようとすれば難しくはない。真の価値は「ユーザー回答データの蓄積」にある。膨大な回答履歴と属性情報、その他のデータを組み合わせて解析することで、組織の課題がより明確になり、より事前に手を打てる。2019年9月の時点で回答データの蓄積は11百万件を超えており、利用価値が十分高まっている。
■Key Points
・成功報酬型求人メディア「Green」がITを最大限活用して圧倒的な優位性を確立。膨大な成長ポテンシャルが魅力
・2019年9月期通期は大幅増収、増益を達成。主力の「Green」が30%超える安定成長、組織改善
ツール「wevox」は導入1,100社を超え急成長
・2020年9月期は大幅増収増益を予想。広告費等に積極投資しながらも、経常利益率20%以上の高利益水準見込む
・潜在市場が大きい組織改善ツール「wevox」。優位性の鍵は「ユーザー回答データの蓄積」
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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アトラエ<6194>は、人材サービスとテクノロジー(Human Resources※×Technology、HR Tech)を掛け合わせたサービスを提供するITベンチャー企業である。2018年9月期に、“テクノロジーによって人の可能性を拡げる事業を創造していく”という想いを込め、「People Tech Company」として自社を再定義した。主力事業である求人メディア「Green」が右肩上がりの成長を持続していることに加え、組織改善プラットフォーム「wevox」の導入企業数が1,100を超えるなど大幅に増加している。2019年9月期通期は過去最高の売上高、営業利益を更新した。2018年6月に東証1部に昇格している。
※Human Resorce(HR)とは企業の人的資源に関わる人材サービスの領域を指す。人材サービスには人材派遣、人材紹介、業務請負、求人メディアの運営、採用支援、教育研修等がある。
1. 事業概要
同社の主力サービスはIT業界に強みを持つマッチングプラットフォーム「Green」である。広告型求人メディアが主流のなか、成功報酬型と言う同社独自のサービス内容が好評で、業績が右肩上がりで拡大し高成長を続けている。「Green」に続くサービスとして、組織改善プラットフォーム「wevox」(2017年5月リリース)がある。「wevox」は人材難のなかで組織強化を図りたい企業のニーズを捉え、1,100社を超えて導入されており、利用者が急増している。ビジネスパーソン向けマッチングアプリ「yenta」(2016年1月リリース)は企業から個人へのパワーシフトの流れを捉え、利用者から高い評価を受けている。
2. 2019年9月期通期業績
2019年9月期通期の業績は、売上高が3,229百万円(前期比40.0%増)、営業利益が710百万円(同2.8%増)、経常利益が713百万円(同8.2%増)、当期純利益が502百万円(同8.3%増)と大幅増収とともに、堅調な増益を達成した。主力サービスである「Green」については、主要KPIが順調に推移した。2019年9月期末のアクティブユーザー数は38,423人(前期末比27.5%増)、2019年9月期第4四半期の入社人数は839人(前年同四半期比35.5%増)、期末掲載求人数は16,583件(前期末比18.6%増)である。結果として売上高成長率で前期比33.4%増と継続的な高成長を続けている。新規事業は「wevox」がけん引し成長率で同233.5%増となった。「wevox」は、業種・業界の壁を越えてサービス提供が広がっており、導入企業数が1,100社を超え、なお急増している。営業費用に関しては、大きな割合を占める広告費が売上比で49.7%(前期から7.6ポイント上昇)まで上昇した。これは従来のWeb販促に加えて動画広告(TVCM)を実施したためである。営業利益に関しては大きな先行投資をしつつも、売上高営業利益率で22.0%を達成しており、同社のビジネスモデルの秀逸性がわかる。
3. 今後の見通し
2020年9月期は売上高4,200百万円(前期比30.1%増)、営業利益880百万円(同23.8%増)、経常利益870百万円(同21.9%増)、当期純利益543百万円(同8.0%増)と大幅な増収増益を見込んでいる。同社の成長戦略は、確固たる競争優位を持つ「Green」の伸びをベースに、先行投資フェーズにある「wevox」、「yenta」のマネタイズを本格化させ、右肩上がりの成長を実現しようと言うものである。売上高に関しては、前期比30%以上の成長継続を予測する。営業利益に関しては、売上高営業利益率で22.0%だった前期と近い21.0%が予想である。営業費用面で「Green」への広告投資(Web、TVCM)をしっかり行いつつ、「wevox」などの新規事業への投資を行うという戦略でも前期を踏襲する。「wevox」が黒字転換するのは2021年9月期となる予想だ。
4. 中長期的の成長戦略
2020年9月期に大きな飛躍が期待できるのが、「wevox」である。「wevox」の成長性として、3点挙げられる。1点目は対象者が幅広く、企業だけでなく、スポーツチームや教育機関にも利用可能であることである。潜在的にはすべての就業者(6,725万人)が対象となる。2点目がSaaSモデルであり、月額300円と単価が低く、圧倒的な価格競争力があることである。また、この価格はあくまで現状のサービスを前提としたものであり、将来的にビッグデータを活用して提供価値が高まった際には、さらに高単価のプランも考えられる。この2点から導き出される3点目として、年間2,400億円超という大きな市場が見込まれることである。同社はまずはこの市場の10%獲得を目指しているが、この市場に対して他社に先駆け注力している同社には大きな成長性があると考えられる。「wevox」は単なる“従業員アンケートシステム”ではない。アンケートの質問項目、集計システムなどは他社でも、あるいは顧客企業内でも同様のものを実現しようとすれば難しくはない。真の価値は「ユーザー回答データの蓄積」にある。膨大な回答履歴と属性情報、その他のデータを組み合わせて解析することで、組織の課題がより明確になり、より事前に手を打てる。2019年9月の時点で回答データの蓄積は11百万件を超えており、利用価値が十分高まっている。
■Key Points
・成功報酬型求人メディア「Green」がITを最大限活用して圧倒的な優位性を確立。膨大な成長ポテンシャルが魅力
・2019年9月期通期は大幅増収、増益を達成。主力の「Green」が30%超える安定成長、組織改善
ツール「wevox」は導入1,100社を超え急成長
・2020年9月期は大幅増収増益を予想。広告費等に積極投資しながらも、経常利益率20%以上の高利益水準見込む
・潜在市場が大きい組織改善ツール「wevox」。優位性の鍵は「ユーザー回答データの蓄積」
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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