Jリース Research Memo(1):2020年3月期は2ケタ増収と利益V字回復を達成(1)
[20/06/18]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
ジェイリース<7187>は、家賃債務保証業界の大手の1社である。2004年に現 代表取締役社長兼会長の中島拓(なかしまひらく)氏が大分県で設立した。当初から地域に密着した家賃債務保証サービスを行い、宮崎、熊本と支店を増やし九州の基盤を固めた。2010年には、東京、新潟を始め東日本進出に着手し、全国の主要都市に拠点を広げている(2020年5月時点で全国25拠点)。地域別には長らく九州の比率が高かったものの、現在では関東の売上構成比が九州を上回っている。2016年6月に東証マザーズに上場、2018年3月には東証1部に昇格した。
1. 事業内容
国土交通省資料によると、賃貸借契約において家賃債務保証会社の利用率は、2010年に39%、2014年には56%に上昇しており、2018年の調査結果(日本賃貸住宅管理協会調査)では、75%まで上昇している。2020年4月に施行された改正民法(債権法)も追い風になる。この改正では、連帯保証人が保証する金額の極度額(上限)が設定されるため、連帯保証人の担保価値が低下する。また、足元では新型コロナウイルス感染症の影響で家賃滞納率の上昇が懸念されていることから、結果としては家賃債務保証会社の利用を必須とする不動産オーナーが増加することが予想される。
2020年5月時点で全国25店舗を展開しており、店舗を介した地域密着が同社の強みである。地域別には、地元の九州で9店舗、近畿・中四国で3店舗、東海で2店舗、関東甲信越で9店舗、東北北海道で2店舗となっている。店舗が多いということはスタッフ人数も多くなり、同社連結で334人(2020年3月期末時点)が所属している。同社の店舗数とスタッフ人数の多さは、同業他社と比較すると明確になる。同業A社は12店舗・294人、同業B社は7店舗・104人、同業C社は10店舗・120人でそれぞれ全国をカバーしており、同社の店舗網の緊密さと人数投入量の多さは顕著である。つまり、地域密着が同社の基本戦略であると言えよう。
2. 業績動向
2020年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比10.9%増の6,744百万円、営業利益で155百万円(前期は101百万円の損失)、経常利益で105百万円(同146百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で24百万円(同149百万円の損失)となり、2ケタ増収とともに利益のV字回復を達成した。売上面では、賃貸住宅市場が底堅く推移し、改正民法による連帯保証人の保証限度額設定の義務化の追い風が吹くなか、主力の家賃債務保証事業において、積極的な営業活動を展開し、前期比で2ケタ成長を達成した。2020年3月期は新規出店がなく、既存店の市場深耕により成長した。また、商品としては、事業者向け保証商品「J-AKINAI」の拡販に力を入れるとともに、2019年11月より個人信用情報を審査に用いた新商品「Sシリーズ」の販売を拡大した。なお、売上高計画7,050百万円に対しては4.3%減の未達となったが、要因としては、与信審査の強化、取引先選別等の債権良質化への取り組みが挙げられる。債権管理面では、与信審査の強化を図り、貸倒リスクが高い案件の契約を抑制するなど、将来的な貸倒コストや訴訟関連費用を抑制するための債権良質化を推進したことに加え、回収も強化した。経費面では、東京西支店を東京本社営業部に、京都支店を大阪支店に統合するなど、業務集約化及び効率化を積極的に実行することで削減に努めた。その結果、販管費率が前期比3.7ポイント低下し、営業利益率は同4.0ポイント上昇した。新型コロナウイルス感染症の影響はあったものの、売上拡大とリスク・経費コントロールを両立し、利益のV字回復を達成した。
3. 今後の見通し
2021年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比8.2%増の7,300百万円、営業利益で同28.6%増の200百万円、経常利益で同41.5%増の150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同230.6%増の80百万円と大幅増益の見通しとなっている。売上高の予想においては、新型コロナウイルス感染症の影響がカギとなる。同社は、第1四半期に新規契約が前年同期比約15%減、第2四半期から年度末にかけて徐々に回復する想定としている。また、年間の売上高が前期比8.2%増と伸びる要因としては、既存契約からの継続保証料、代位弁済手数料、収納代行手数料等の増加などが挙げられる。つまり、新規顧客からの売上高に依存しないストック型のビジネスモデルが確立していると言えるだろう。なお、費用面では販管費の増加(前期比7.2%増)を見込んでいるが、売上高の伸びよりも販管費の伸びは抑えられる見込みだ。結果として、営業利益では前期比28.6%増、営業利益率では0.4ポイント上昇の2.7%と収益性を高める計画だ。弊社では、新型コロナウイルス感染症拡大のリスクを十分に織り込んだ計画となっており、実現性は高いと見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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ジェイリース<7187>は、家賃債務保証業界の大手の1社である。2004年に現 代表取締役社長兼会長の中島拓(なかしまひらく)氏が大分県で設立した。当初から地域に密着した家賃債務保証サービスを行い、宮崎、熊本と支店を増やし九州の基盤を固めた。2010年には、東京、新潟を始め東日本進出に着手し、全国の主要都市に拠点を広げている(2020年5月時点で全国25拠点)。地域別には長らく九州の比率が高かったものの、現在では関東の売上構成比が九州を上回っている。2016年6月に東証マザーズに上場、2018年3月には東証1部に昇格した。
1. 事業内容
国土交通省資料によると、賃貸借契約において家賃債務保証会社の利用率は、2010年に39%、2014年には56%に上昇しており、2018年の調査結果(日本賃貸住宅管理協会調査)では、75%まで上昇している。2020年4月に施行された改正民法(債権法)も追い風になる。この改正では、連帯保証人が保証する金額の極度額(上限)が設定されるため、連帯保証人の担保価値が低下する。また、足元では新型コロナウイルス感染症の影響で家賃滞納率の上昇が懸念されていることから、結果としては家賃債務保証会社の利用を必須とする不動産オーナーが増加することが予想される。
2020年5月時点で全国25店舗を展開しており、店舗を介した地域密着が同社の強みである。地域別には、地元の九州で9店舗、近畿・中四国で3店舗、東海で2店舗、関東甲信越で9店舗、東北北海道で2店舗となっている。店舗が多いということはスタッフ人数も多くなり、同社連結で334人(2020年3月期末時点)が所属している。同社の店舗数とスタッフ人数の多さは、同業他社と比較すると明確になる。同業A社は12店舗・294人、同業B社は7店舗・104人、同業C社は10店舗・120人でそれぞれ全国をカバーしており、同社の店舗網の緊密さと人数投入量の多さは顕著である。つまり、地域密着が同社の基本戦略であると言えよう。
2. 業績動向
2020年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比10.9%増の6,744百万円、営業利益で155百万円(前期は101百万円の損失)、経常利益で105百万円(同146百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で24百万円(同149百万円の損失)となり、2ケタ増収とともに利益のV字回復を達成した。売上面では、賃貸住宅市場が底堅く推移し、改正民法による連帯保証人の保証限度額設定の義務化の追い風が吹くなか、主力の家賃債務保証事業において、積極的な営業活動を展開し、前期比で2ケタ成長を達成した。2020年3月期は新規出店がなく、既存店の市場深耕により成長した。また、商品としては、事業者向け保証商品「J-AKINAI」の拡販に力を入れるとともに、2019年11月より個人信用情報を審査に用いた新商品「Sシリーズ」の販売を拡大した。なお、売上高計画7,050百万円に対しては4.3%減の未達となったが、要因としては、与信審査の強化、取引先選別等の債権良質化への取り組みが挙げられる。債権管理面では、与信審査の強化を図り、貸倒リスクが高い案件の契約を抑制するなど、将来的な貸倒コストや訴訟関連費用を抑制するための債権良質化を推進したことに加え、回収も強化した。経費面では、東京西支店を東京本社営業部に、京都支店を大阪支店に統合するなど、業務集約化及び効率化を積極的に実行することで削減に努めた。その結果、販管費率が前期比3.7ポイント低下し、営業利益率は同4.0ポイント上昇した。新型コロナウイルス感染症の影響はあったものの、売上拡大とリスク・経費コントロールを両立し、利益のV字回復を達成した。
3. 今後の見通し
2021年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比8.2%増の7,300百万円、営業利益で同28.6%増の200百万円、経常利益で同41.5%増の150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同230.6%増の80百万円と大幅増益の見通しとなっている。売上高の予想においては、新型コロナウイルス感染症の影響がカギとなる。同社は、第1四半期に新規契約が前年同期比約15%減、第2四半期から年度末にかけて徐々に回復する想定としている。また、年間の売上高が前期比8.2%増と伸びる要因としては、既存契約からの継続保証料、代位弁済手数料、収納代行手数料等の増加などが挙げられる。つまり、新規顧客からの売上高に依存しないストック型のビジネスモデルが確立していると言えるだろう。なお、費用面では販管費の増加(前期比7.2%増)を見込んでいるが、売上高の伸びよりも販管費の伸びは抑えられる見込みだ。結果として、営業利益では前期比28.6%増、営業利益率では0.4ポイント上昇の2.7%と収益性を高める計画だ。弊社では、新型コロナウイルス感染症拡大のリスクを十分に織り込んだ計画となっており、実現性は高いと見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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