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日本化 Research Memo(8):社会での普及を見込む製品分野の研究・開発に注力

注目トピックス 日本株
■日本化学工業<4092>の中長期成長戦略

3. 新たな開発分野について
120年以上の歴史の中で培われた配合・合成ノウハウをベース技術として、中期的に需要拡大が期待される高付加価値製品を中心に開発を推進している。

MLCC(積層セラミックコンデンサ)に使用するパルセラムは高い誘電率特性を持つため、特にMLCCの誘電体層として電子回路の高性能化に貢献し、需要が急拡大している。なお実用化されているパルセラムの合成法としては、汎用部品に用いられる固相法、小型部品に用いられる水熱合成法、高信頼性部品に用いられるシュウ酸塩法があるが、同社は主にシュウ酸塩法で製造し、車載やIoTなどの高い信頼性が要求される高付加価値分野での事業展開を推進している。そして需要拡大に対応して生産能力を増強している。

ICチップとアンテナを接続する異方導電接着剤SMERFは、ICカード・ICタグ向けの製品として、独自の材料と技術を用いて開発した。キャッシュレス化や無人レジなどの流れを背景に需要拡大が期待されている。

量子ドット(QD=Quantum Dot)用原料の需要拡大も期待されている。量子ドットは直径2〜10ナノメートルで独特な光学特性を持つ特殊半導体である。この量子ドットが均一に配列されることで、スーパーハイビジョンが目指す広色域の映像を実現する有力な材料となることが期待されている。そして量子ドット技術を活用した液晶ディスプレイやテレビ(QDTV)は既に実用化され、今後普及が加速すると期待されている。同社は量子ドットを製造する際の原料となるトリオクチルホスフィンやトリス(トリメチルシリル)ホスフィン等のホスフィン誘導体を供給している。

この他の主な研究開発として、化学品事業のシリカ製品では環境関連の材料、リン製品では高機能性を有する各種リン酸塩、電子工業向け高純度薬品、機能品事業では高性能誘電・非鉛圧電材料、導電性ペースト、熱電変換素子、負熱膨張剤、有機化学品関連のアルキルホスフィン誘導体、キラルホスフィンリガンド、高輝度LEC(電気化学発光セル)用電解質などの開発を推進している。

なお北海道大学伊藤研究室との共同研究で開発したキラル触媒は、60年間不可能だった触媒的不斉反応を初めて実現した。不斉水添反応に用いられるキラルホスフィンリガンドの効率的開発につながると期待されている。

空調関連事業では、半導体製造設備向けの高性能ケミカルフィルタ、医薬製造設備向けのアイソレータなどのクリーン機器、集塵機や陽圧防虫システムなどの環境改善機器の開発を継続し、新たに脱臭分野や分煙分野への進出に向けた取り組みを開始している。また子会社化したロックゲートが取り扱う極低温冷却機器は、ビッグデータ解析や新薬開発で実用化が期待される量子コンピュータに使用されており、今後の展開が注目される。

なお新製品(製品登録した年度から翌々年度までを新製品として区分)の売上高実績は、2018年3月期が21億円、2019年3月期が24億円、2020年3月期が16億円だった。需要動向の変化で一部の新製品の開発計画を変更したため、新製品売上高実績が計画を下回ったが、引き続きコア技術を活用した新製品開発に取り組む方針だ。


化学企業として環境保全と安全に努めて社会の信頼向上を目指す
4. レスポンシブル・ケア
同社は企業理念の「人を大切に、技を大切に」に基づいて、1997年4月にレスポンシブル・ケア(RC)基本方針を策定している。RCは化学物質を製造または取り扱う業者が、化学物質の開発から製造・物流・使用・最終消費を経て廃棄に至るまでの全ライフサイクルにわたって、環境保全・保安防災・安全及び健康の確保を経営方針において公約し、社会との対話を通して信頼を深めていく自主管理活動である。1985年にカナダで誕生し、世界60ヶ国以上で展開されている。

具体的な基本方針として、環境保全・保安防災・労働安全衛生及び製品安全に関する国内外の法規制遵守、環境を配慮した安全操業、環境負荷の少ない安全な製品と情報の提供、環境保全に向けた資源・エネルギーの効率的使用及び廃棄物削減、環境保全や安全確保対策の実施状況に関する自主監査の実施を行い、全社員の責任の自覚と社会との信頼の向上に努めるとしている。

なお食品添加物用リン酸については、世界で初めて国際規格FSSC22000認証を取得し、2019年には日本で初めてハラール認証を取得している。また2019年7月には経営トップによる安全衛生方針のポスターを東京労働局のホームページに掲載した。

5. 中期的に収益拡大・高収益化を期待
新・中期経営計画については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が不透明なため公表を見送ったが、基本的な中長期成長戦略に大きな変化はないとしている。当面は高水準の設備投資に伴って減価償却費が増加するが、前・中期経営計画の期間中においても重点施策への取り組みは順調に進展している。MLCC用パルセラムなど高付加価値製品の需要拡大、新工場の円滑な立ち上げと生産性向上、高付加価値の新製品開発の加速など、強固な事業基盤を構築して中期的に収益拡大、そして一段の高収益化が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)




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