ギフト Research Memo(6):中期経営計画を着実に進めることで、通期でも大幅な増収・増益を計画
[21/07/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2021年10月期第2四半期の業績概要
ギフト<9279>の2021年10月期第2四半期の業績は、売上高6,303百万円(前年同期比18.9%増)、営業利益306百万円(同4.7%増)、経常利益553百万円(同73.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益355百万円(同107.5%増)となった。国内経済は2020年末から持ち直し基調にあった国内景気がコロナ禍により先行き不透明な状況となっている。同社が属する外食産業においては、ここ数年の最重要経営課題であった人手不足解消が一転、コロナ禍による営業時間短縮要請を受け、既存従業員の雇用継続が難しい状況に至っている。
このような環境の下で同社は、店内滞在時間が短いラーメン業態であることから、日常食という強みを生かし、店内における各種感染症対策を万全に講じ、コロナ禍でも直営店事業、プロデュース店事業のいずれにおいても休業となるケースはほとんどないなど、安定的に事業展開を図った。特に、前期より開始した宅配サービスが順調に店舗売上を下支えした。また、人材確保が順調に進捗したことで新規出店は計画通りに進み、時短営業・外出自粛の影響が少ない住宅街・郊外ロードサイドに加え、アフターコロナを見据えた都心の一等地へも積極的に出店した。利益面では、直営店比率の上昇により売上総利益率は前年同期比2.3ポイント上昇したものの、営業時間短縮要請に応じたことなどにより客数が想定を下回ったことに加え、休業手当支給などによる販管費の増加(同24.3%増)をカバーできず、営業利益は当初予想を下回ることとなった。一方、経常利益及び親会社株主に帰属する四半期純利益については、営業時間短縮に伴う時短協力金が押し上げた格好となった。なお、時短協力金は営業時間を短縮したタイミングと収益計上のタイミングに差異が生じるため、第3四半期以降で収益認識される額が第2四半期を上回ることになると予測される。
出店状況は、国内直営店事業が17店舗の新規出店、2店舗の退店により15店舗の純増と積極的な出店を続けた。新規出店のうち「横浜家系ラーメン」は駅近エリア4店舗、ロードサイドエリア11店舗の合計15店舗と、コロナ禍の影響が比較的少ないロードサイドエリアへのドミナント出店を進めた。また、駅近エリア4店はいずれもアフターコロナを見据えた都心の一等地への出店で、インバウンド需要やビジネス街及び繁華街の活気が一定程度戻れば、繁盛店になると期待される。一方、国内プロデュース事業は32店舗の純増となった。既存出店地域においては、これまで通り出店ルールに基づいてプロデュース店と直営店との間できめ細かく調整を行いながら出店を進めた。また、未出店地域のうち直営店を出店する予定のない地域については、新規オーナーの開拓を精力的に行った。しかし、プロデュース店もコロナ禍の影響を受け一部店舗で営業時間短縮要請に応じたことにより、来客数の減少に伴い売上が減少したため、テイクアウト対応や宅配ニーズの掘り起こしに着手した。海外直営店事業については、直営店の米国E.A.K.RAMEN(ロサンゼルス1店舗、ニューヨーク2店舗)は、ロックダウンなどコロナ禍の影響を日本以上に受けることになったが、雇用調整を行う一方、補助金申請することにより損失を最小限に留めた。海外プロデュース事業は、既存オーナーの出店意思を確認しながら新規出店地域の検討を行い、2店舗を新たに出店した。
2. 3つの改革の進捗
2021年10月期上期では、3つの改革の効果が顕在化した。標準化・単純化を推進したことで人時生産性が向上したことに加え、この仕組みを構築し実行したことで、利益を最大化できた。また、店舗運営におけるオペレーション改革などにより、人材の定着率を高めた。さらに、人材確保の採用コストを抑えつつ、住宅地・郊外ロードサイトやアフターコロナを見据えた都心一等地などの好立地に、計画通りに出店できた。
また、3つの改革の実行により、収益性も向上した。具体的には、適正シフトと実績シフトの差異をRPA※によってリルタイムに見える化することで、無駄のないシフト運用が可能となった。また、店内調理工程の削減及び単純化、トッピングの共通化、物流センターからの一括納品により、仕込みや閉店作業など営業時間外の作業時間を削減できた。このほか、「RUN&GUN」の浸透を図る一方、受注をコントロールすることで宅配の対応を最適化した。この結果、作業オペレーションの効率化が進展し、2021年4月時点で人時売上高が5,669円へと前年同月比17.2%増、人件費率も25.8%と同7.5ポイント改善するなど収益性が向上した。人材面では、こうした店舗オペレーション改革などにより、第2四半期の退職率を14.6%(前年同期23.9%)へと低減して人材の定着率を高める一方、110人(前年同期93人)を採用して人材を確保、アルバイトの採用単価を2.0万円(前年同期4.8万円)と大きく抑制することができた。
※RPA(Robotic Process Automation):ロボットによって業務を自動化するシステム。PC上の定型業務やルーティンワークなどで強みを発揮する。
3. 2021年10月期の業績見通し
2021年10月期の業績見通しについては、売上高15,150百万円(前期比37.9%増)、営業利益1,080百万円(同134.1%増)、経常利益1,130百万円(同120.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益590百万円(同423.7%増)を見込んでいる。中期経営計画を着実に進めることで、大幅な増収・増益を計画している。
2021年10月期の直営店の出店戦略としては、「横浜家系ラーメン」では、首都圏、北関東、東北を中心にロードサイド及び駅近エリアへの出店を加速する。「豚山」では、投資回収の早い居抜物件を中心に関東での駅近エリアへの出店を加速する。これにより、2021年10月期は「横浜家系ラーメン」30店舗(住宅街・ロードサイド25店舗、ビジネス街・繁華街5店舗)、「豚山」5店舗(ビジネス街・繁華街)の出店を計画している。ほかに、M&Aで取得したみそ業態に加え、需要の大きいしょうゆ業態「長岡食堂」の多店舗展開を模索している。さらに、年間で2つの新業態を開発目標として進行中である。
プロデュース店の出店に関しては、既存オーナーからの増店要請や、地方エリアでの新規オーナー獲得などにより、当初予想の50店を上回る勢いになっているようだ。プロデュース店の出店戦略としては、直営店における3つの改革の成果をプロデュース店へ展開する。具体的には、直営店での単純化・標準化の取り組みと実績・成果を元に収益パッケージを作成し、プロデュース店へインストールすることに加え、店舗開発を積極的に支援する方針である。
また、中期ビジョン達成に向けた2021年10月期下期以降の取り組みとしては、3つの改革を実行・継続することで質の追求と効率化を進め、利益を最大化することを目指す。具体的には、コロナ禍が収束するまでは時短要請が継続されると想定し、事業環境の変化に対して柔軟・迅速に対応する方針である。一例を挙げると、コロナ禍により好立地、好条件の物件が都心部やロードサイドで増加したり、人材の流動化が進み、採用がしやすい状況になる可能性がある。また、M&A案件の増加により新業態参入、好立地確保の選択肢も増えているようだ。これらの事業環境の変化に対し同社では、都心一等地への出店強化やプロデュース店への収益モデルのインストール準備など、アフターコロナを見据えた体制強化を図っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2021年10月期第2四半期の業績概要
ギフト<9279>の2021年10月期第2四半期の業績は、売上高6,303百万円(前年同期比18.9%増)、営業利益306百万円(同4.7%増)、経常利益553百万円(同73.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益355百万円(同107.5%増)となった。国内経済は2020年末から持ち直し基調にあった国内景気がコロナ禍により先行き不透明な状況となっている。同社が属する外食産業においては、ここ数年の最重要経営課題であった人手不足解消が一転、コロナ禍による営業時間短縮要請を受け、既存従業員の雇用継続が難しい状況に至っている。
このような環境の下で同社は、店内滞在時間が短いラーメン業態であることから、日常食という強みを生かし、店内における各種感染症対策を万全に講じ、コロナ禍でも直営店事業、プロデュース店事業のいずれにおいても休業となるケースはほとんどないなど、安定的に事業展開を図った。特に、前期より開始した宅配サービスが順調に店舗売上を下支えした。また、人材確保が順調に進捗したことで新規出店は計画通りに進み、時短営業・外出自粛の影響が少ない住宅街・郊外ロードサイドに加え、アフターコロナを見据えた都心の一等地へも積極的に出店した。利益面では、直営店比率の上昇により売上総利益率は前年同期比2.3ポイント上昇したものの、営業時間短縮要請に応じたことなどにより客数が想定を下回ったことに加え、休業手当支給などによる販管費の増加(同24.3%増)をカバーできず、営業利益は当初予想を下回ることとなった。一方、経常利益及び親会社株主に帰属する四半期純利益については、営業時間短縮に伴う時短協力金が押し上げた格好となった。なお、時短協力金は営業時間を短縮したタイミングと収益計上のタイミングに差異が生じるため、第3四半期以降で収益認識される額が第2四半期を上回ることになると予測される。
出店状況は、国内直営店事業が17店舗の新規出店、2店舗の退店により15店舗の純増と積極的な出店を続けた。新規出店のうち「横浜家系ラーメン」は駅近エリア4店舗、ロードサイドエリア11店舗の合計15店舗と、コロナ禍の影響が比較的少ないロードサイドエリアへのドミナント出店を進めた。また、駅近エリア4店はいずれもアフターコロナを見据えた都心の一等地への出店で、インバウンド需要やビジネス街及び繁華街の活気が一定程度戻れば、繁盛店になると期待される。一方、国内プロデュース事業は32店舗の純増となった。既存出店地域においては、これまで通り出店ルールに基づいてプロデュース店と直営店との間できめ細かく調整を行いながら出店を進めた。また、未出店地域のうち直営店を出店する予定のない地域については、新規オーナーの開拓を精力的に行った。しかし、プロデュース店もコロナ禍の影響を受け一部店舗で営業時間短縮要請に応じたことにより、来客数の減少に伴い売上が減少したため、テイクアウト対応や宅配ニーズの掘り起こしに着手した。海外直営店事業については、直営店の米国E.A.K.RAMEN(ロサンゼルス1店舗、ニューヨーク2店舗)は、ロックダウンなどコロナ禍の影響を日本以上に受けることになったが、雇用調整を行う一方、補助金申請することにより損失を最小限に留めた。海外プロデュース事業は、既存オーナーの出店意思を確認しながら新規出店地域の検討を行い、2店舗を新たに出店した。
2. 3つの改革の進捗
2021年10月期上期では、3つの改革の効果が顕在化した。標準化・単純化を推進したことで人時生産性が向上したことに加え、この仕組みを構築し実行したことで、利益を最大化できた。また、店舗運営におけるオペレーション改革などにより、人材の定着率を高めた。さらに、人材確保の採用コストを抑えつつ、住宅地・郊外ロードサイトやアフターコロナを見据えた都心一等地などの好立地に、計画通りに出店できた。
また、3つの改革の実行により、収益性も向上した。具体的には、適正シフトと実績シフトの差異をRPA※によってリルタイムに見える化することで、無駄のないシフト運用が可能となった。また、店内調理工程の削減及び単純化、トッピングの共通化、物流センターからの一括納品により、仕込みや閉店作業など営業時間外の作業時間を削減できた。このほか、「RUN&GUN」の浸透を図る一方、受注をコントロールすることで宅配の対応を最適化した。この結果、作業オペレーションの効率化が進展し、2021年4月時点で人時売上高が5,669円へと前年同月比17.2%増、人件費率も25.8%と同7.5ポイント改善するなど収益性が向上した。人材面では、こうした店舗オペレーション改革などにより、第2四半期の退職率を14.6%(前年同期23.9%)へと低減して人材の定着率を高める一方、110人(前年同期93人)を採用して人材を確保、アルバイトの採用単価を2.0万円(前年同期4.8万円)と大きく抑制することができた。
※RPA(Robotic Process Automation):ロボットによって業務を自動化するシステム。PC上の定型業務やルーティンワークなどで強みを発揮する。
3. 2021年10月期の業績見通し
2021年10月期の業績見通しについては、売上高15,150百万円(前期比37.9%増)、営業利益1,080百万円(同134.1%増)、経常利益1,130百万円(同120.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益590百万円(同423.7%増)を見込んでいる。中期経営計画を着実に進めることで、大幅な増収・増益を計画している。
2021年10月期の直営店の出店戦略としては、「横浜家系ラーメン」では、首都圏、北関東、東北を中心にロードサイド及び駅近エリアへの出店を加速する。「豚山」では、投資回収の早い居抜物件を中心に関東での駅近エリアへの出店を加速する。これにより、2021年10月期は「横浜家系ラーメン」30店舗(住宅街・ロードサイド25店舗、ビジネス街・繁華街5店舗)、「豚山」5店舗(ビジネス街・繁華街)の出店を計画している。ほかに、M&Aで取得したみそ業態に加え、需要の大きいしょうゆ業態「長岡食堂」の多店舗展開を模索している。さらに、年間で2つの新業態を開発目標として進行中である。
プロデュース店の出店に関しては、既存オーナーからの増店要請や、地方エリアでの新規オーナー獲得などにより、当初予想の50店を上回る勢いになっているようだ。プロデュース店の出店戦略としては、直営店における3つの改革の成果をプロデュース店へ展開する。具体的には、直営店での単純化・標準化の取り組みと実績・成果を元に収益パッケージを作成し、プロデュース店へインストールすることに加え、店舗開発を積極的に支援する方針である。
また、中期ビジョン達成に向けた2021年10月期下期以降の取り組みとしては、3つの改革を実行・継続することで質の追求と効率化を進め、利益を最大化することを目指す。具体的には、コロナ禍が収束するまでは時短要請が継続されると想定し、事業環境の変化に対して柔軟・迅速に対応する方針である。一例を挙げると、コロナ禍により好立地、好条件の物件が都心部やロードサイドで増加したり、人材の流動化が進み、採用がしやすい状況になる可能性がある。また、M&A案件の増加により新業態参入、好立地確保の選択肢も増えているようだ。これらの事業環境の変化に対し同社では、都心一等地への出店強化やプロデュース店への収益モデルのインストール準備など、アフターコロナを見据えた体制強化を図っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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