霞ヶ関キャピタル Research Memo(5):物流施設開発事業を大幅に拡大。新規事業にも積極的に取り組む(1)
[23/05/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*15:15JST 霞ヶ関キャピタル Research Memo(5):物流施設開発事業を大幅に拡大。新規事業にも積極的に取り組む(1)
■事業別の取り組み
1. 物流施設開発事業
霞ヶ関キャピタル<3498>は、コロナ禍収束後(以下、ポストコロナ)の環境下では物流施設需要が大きく伸びると見込んでいる。個人向けインターネット販売市場(EC市場)の拡大を受け、宅配取扱個数は過去最高の更新が続いているが、日本のEC化率は諸外国に比べて低いことから、今後もこの増加トレンドは継続すると予想される。そのため、物流システム全体の強化、スケールアップ、効率化は社会的課題と言える。
物流施設市場の拡大に呼応して、首都圏の物流施設の空室率は2021年1月の0.2%から2023年1月には4.4%に上昇、関西圏は2021年10月の1.1%から2023年1月には2.4%に上昇している(出所:一五不動産情報サービス「物流施設の賃貸マーケットに関する調査」)。継続的な供給により需給緩和が進行し、立地条件や倉庫種別によっては競争激化が見え始めているものの、これは2020年の市場環境が良すぎただけで、ロケーション、スペック、賃料のバランスが取れ、適正なマーケットになる過程と同社では見ている。さらに、この数字はドライ型倉庫の空室率であり、同社の主力商品である冷凍冷蔵倉庫及び自動冷凍倉庫は供給量が極めて少なく、需要は旺盛であることに留意が必要だ。消費行動の変化や労働人口の減少といった社会全体の大きな変化を背景としたEC企業による先進大型物流施設に対する需要拡大や、物流施設の省人化設備や自動化設備導入のための需要拡大は、長期的に続くトレンドであると同社は見ている。
さらに、オゾン層破壊や地球温暖化への影響の懸念から、国際協定に基づき2030年にはHCFCフロンの生産が全廃されることから、今後は冷凍冷蔵倉庫ではアンモニア使用型への転換が主流になると考えられる。東京都における冷凍冷蔵倉庫の約42%は築30年以上経過(同社調べ)しており、それらがスクラップ&ビルドの対象と考えられるが、アンモニア使用型への転換には数億円以上の設備投資が必要なため、体力の乏しい準大手企業を中心に、冷凍冷蔵倉庫の多くが一斉に廃棄される可能性が大きい。一方、冷凍食品の国内消費量は、(1) 加工技術の向上、(2) 保存期間の長期化、(3) 共働き世代の増加、(4) 冷凍食品に対する抵抗感の減少などの要素により増加傾向にあり、今後も冷凍冷蔵倉庫の需要は拡大すると想定される。
こうした環境変化を見据えて同社では、物流需要が高い地域に適切な物流施設を開発する予定である。その一環として、物流ブランド「LOGI FLAG」を設立し、商標を登録した。ドライ型倉庫である「LOGI FLAG」(常温倉庫)と、2030年フロン問題にも適応したコールド型倉庫「LOGI FLAG COLD」(冷凍冷蔵倉庫)の2タイプを提供していたが、これらに加え2022年8月期よりオートメーション型倉庫「LOGI FLAG TECH」の開発に着手している。オートメーション型倉庫は、空間の有効活用、作業の効率化、省人化など、施設利用者にとってメリットの多い自動倉庫設備を設置した倉庫であり、ECからの需要が高い施設である。常温倉庫は大手不動産会社の参入により取得競争が厳しい状況にあるものの、冷凍冷蔵倉庫は新しい分野であり、高付加価値で利益も大きく、環境配慮型の物流施設となることから展開を進めている。物流施設開発事業は、世の中のニーズや市場環境の変化を捉えていち早く新規ビジネスとして立ち上げ主力事業に育てるという、同社の柔軟なビジネスモデルの好例と言えよう。なお、同社では、これまで首都圏及び関西圏を中心に事業展開してきたが、2022年8月期には仙台及び福岡でも展開を開始した。今後も物流需要が高いエリアへ拡大する考えだ。
また同社では、業界最高水準の物流施設開発体制が整っている。すなわち、物流施設開発のプロセス((1) テーマ構築、(2) ソーシング、(3) リーシング、(4) プロジェクトマネジメント)を内製化している。具体的には、市街化区域では付加価値の高い冷凍冷蔵倉庫を選択し、ドライ型倉庫は市街化調整区域での開発を行うことで競争優位性を実現している。特に、「(1) テーマ構築」が同社の競争力の源泉となっていることに注目したい。長年の実績と豊富なノウハウを持つメンバーが多数所属している強みを生かした「テーマ構築」により、資金が流入し、同社の業績にも好影響を与えると考えられる。
物流施設開発事業は2021年8月期に立ち上げた新事業であるにもかかわらず、急成長し主力事業となり、2023年8月期第2四半期には全社の業績をけん引した。同社は中小規模の冷凍冷蔵倉庫をメインターゲットに物流施設開発を進めており、2023年8月期第2四半期は物流施設開発用地4件を開発フェーズに移行させ、物流施設2件が竣工した。2023年3月には物流施設開発用地1件を取得、物流施設1件が竣工するなど、開発は順調だ。2023年3月末のプロジェクトパイプラインは、土地確保済み5件/605億円(2022年8月末比7.8%増)、着工済・竣工済13件/746億円(同66.1%増)と急拡大している。立地条件としては、1,000坪(3,305m2)以上とサイズはやや小さめながら、首都圏を中心に市場へのアクセスが便利な場所を選んでいる。なお、同事業はコストがかかるが、開発利益を取り込むことで十分な利益を得ることができるほか、開発と並行して複数社と交渉することで買手や賃貸先を早期に見つけられるメリットがある。現在の竣工済は4件であるが、今後も竣工予定であり、ある程度の件数と規模に達すれば、長期ファンドに移す考えだ。
2023年8月期第2四半期のトピックスとしては、「次世代対応型の自動冷凍倉庫開発」が挙げられる。倉庫業界でのDXや省人化ニーズに対応するため、同社は自動冷凍倉庫の全国展開を進める方針を掲げている。同社初となる共同開発による自動冷凍倉庫は埼玉県所沢エリア物件となるが、大消費地に近いエリアで高回転型の倉庫としての役割を担っている。2件目となる青森県八戸市物件は2023年2月に開発フェーズへ移行した。同物件は大消費地に近くはないものの既にテナントを確保しており、保管型の自動冷凍倉庫として機能することを示すことができた。このほかにも、千葉県市川市物件や京都府京都市物件なども竣工前にテナントが決定しており、ロケーションやスペックも含め、マーケットの需要と合致した倉庫を開発している証左と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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■事業別の取り組み
1. 物流施設開発事業
霞ヶ関キャピタル<3498>は、コロナ禍収束後(以下、ポストコロナ)の環境下では物流施設需要が大きく伸びると見込んでいる。個人向けインターネット販売市場(EC市場)の拡大を受け、宅配取扱個数は過去最高の更新が続いているが、日本のEC化率は諸外国に比べて低いことから、今後もこの増加トレンドは継続すると予想される。そのため、物流システム全体の強化、スケールアップ、効率化は社会的課題と言える。
物流施設市場の拡大に呼応して、首都圏の物流施設の空室率は2021年1月の0.2%から2023年1月には4.4%に上昇、関西圏は2021年10月の1.1%から2023年1月には2.4%に上昇している(出所:一五不動産情報サービス「物流施設の賃貸マーケットに関する調査」)。継続的な供給により需給緩和が進行し、立地条件や倉庫種別によっては競争激化が見え始めているものの、これは2020年の市場環境が良すぎただけで、ロケーション、スペック、賃料のバランスが取れ、適正なマーケットになる過程と同社では見ている。さらに、この数字はドライ型倉庫の空室率であり、同社の主力商品である冷凍冷蔵倉庫及び自動冷凍倉庫は供給量が極めて少なく、需要は旺盛であることに留意が必要だ。消費行動の変化や労働人口の減少といった社会全体の大きな変化を背景としたEC企業による先進大型物流施設に対する需要拡大や、物流施設の省人化設備や自動化設備導入のための需要拡大は、長期的に続くトレンドであると同社は見ている。
さらに、オゾン層破壊や地球温暖化への影響の懸念から、国際協定に基づき2030年にはHCFCフロンの生産が全廃されることから、今後は冷凍冷蔵倉庫ではアンモニア使用型への転換が主流になると考えられる。東京都における冷凍冷蔵倉庫の約42%は築30年以上経過(同社調べ)しており、それらがスクラップ&ビルドの対象と考えられるが、アンモニア使用型への転換には数億円以上の設備投資が必要なため、体力の乏しい準大手企業を中心に、冷凍冷蔵倉庫の多くが一斉に廃棄される可能性が大きい。一方、冷凍食品の国内消費量は、(1) 加工技術の向上、(2) 保存期間の長期化、(3) 共働き世代の増加、(4) 冷凍食品に対する抵抗感の減少などの要素により増加傾向にあり、今後も冷凍冷蔵倉庫の需要は拡大すると想定される。
こうした環境変化を見据えて同社では、物流需要が高い地域に適切な物流施設を開発する予定である。その一環として、物流ブランド「LOGI FLAG」を設立し、商標を登録した。ドライ型倉庫である「LOGI FLAG」(常温倉庫)と、2030年フロン問題にも適応したコールド型倉庫「LOGI FLAG COLD」(冷凍冷蔵倉庫)の2タイプを提供していたが、これらに加え2022年8月期よりオートメーション型倉庫「LOGI FLAG TECH」の開発に着手している。オートメーション型倉庫は、空間の有効活用、作業の効率化、省人化など、施設利用者にとってメリットの多い自動倉庫設備を設置した倉庫であり、ECからの需要が高い施設である。常温倉庫は大手不動産会社の参入により取得競争が厳しい状況にあるものの、冷凍冷蔵倉庫は新しい分野であり、高付加価値で利益も大きく、環境配慮型の物流施設となることから展開を進めている。物流施設開発事業は、世の中のニーズや市場環境の変化を捉えていち早く新規ビジネスとして立ち上げ主力事業に育てるという、同社の柔軟なビジネスモデルの好例と言えよう。なお、同社では、これまで首都圏及び関西圏を中心に事業展開してきたが、2022年8月期には仙台及び福岡でも展開を開始した。今後も物流需要が高いエリアへ拡大する考えだ。
また同社では、業界最高水準の物流施設開発体制が整っている。すなわち、物流施設開発のプロセス((1) テーマ構築、(2) ソーシング、(3) リーシング、(4) プロジェクトマネジメント)を内製化している。具体的には、市街化区域では付加価値の高い冷凍冷蔵倉庫を選択し、ドライ型倉庫は市街化調整区域での開発を行うことで競争優位性を実現している。特に、「(1) テーマ構築」が同社の競争力の源泉となっていることに注目したい。長年の実績と豊富なノウハウを持つメンバーが多数所属している強みを生かした「テーマ構築」により、資金が流入し、同社の業績にも好影響を与えると考えられる。
物流施設開発事業は2021年8月期に立ち上げた新事業であるにもかかわらず、急成長し主力事業となり、2023年8月期第2四半期には全社の業績をけん引した。同社は中小規模の冷凍冷蔵倉庫をメインターゲットに物流施設開発を進めており、2023年8月期第2四半期は物流施設開発用地4件を開発フェーズに移行させ、物流施設2件が竣工した。2023年3月には物流施設開発用地1件を取得、物流施設1件が竣工するなど、開発は順調だ。2023年3月末のプロジェクトパイプラインは、土地確保済み5件/605億円(2022年8月末比7.8%増)、着工済・竣工済13件/746億円(同66.1%増)と急拡大している。立地条件としては、1,000坪(3,305m2)以上とサイズはやや小さめながら、首都圏を中心に市場へのアクセスが便利な場所を選んでいる。なお、同事業はコストがかかるが、開発利益を取り込むことで十分な利益を得ることができるほか、開発と並行して複数社と交渉することで買手や賃貸先を早期に見つけられるメリットがある。現在の竣工済は4件であるが、今後も竣工予定であり、ある程度の件数と規模に達すれば、長期ファンドに移す考えだ。
2023年8月期第2四半期のトピックスとしては、「次世代対応型の自動冷凍倉庫開発」が挙げられる。倉庫業界でのDXや省人化ニーズに対応するため、同社は自動冷凍倉庫の全国展開を進める方針を掲げている。同社初となる共同開発による自動冷凍倉庫は埼玉県所沢エリア物件となるが、大消費地に近いエリアで高回転型の倉庫としての役割を担っている。2件目となる青森県八戸市物件は2023年2月に開発フェーズへ移行した。同物件は大消費地に近くはないものの既にテナントを確保しており、保管型の自動冷凍倉庫として機能することを示すことができた。このほかにも、千葉県市川市物件や京都府京都市物件なども竣工前にテナントが決定しており、ロケーションやスペックも含め、マーケットの需要と合致した倉庫を開発している証左と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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