TOKAI Research Memo(6):2025年3月期は3期振りに過去最高業績を更新する見通し
[24/06/24]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*17:06JST TOKAI Research Memo(6):2025年3月期は3期振りに過去最高業績を更新する見通し
■今後の見通し
1. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績は、売上高で前期比5.4%増の244,000百万円、営業利益で同3.2%増の16,000百万円、経常利益で同3.0%増の16,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同6.1%増の9,000百万円を計画している。売上高は8期連続増収を見込み、各利益段階では3期振りに過去最高益を更新する見通しだ。継続取引顧客件数の積み上げに加えて、法人向け情報通信事業の好調が継続し、前期低調だった建築設備不動産事業もグループシナジーの創出により増収増益に転じる見込みとなっている。期末の継続取引顧客件数は3,452千件と前期末比94千件の増加を目指す。
(1) エネルギー事業
エネルギー事業は売上高で前期比2%程度の増加、営業利益で同1%程度の増加と堅調推移を見込む。都市ガス事業については前期並みの水準を想定しており、LPガス事業で伸ばす計画となっている。LPガス事業の顧客件数は前期末比50千件増加の828千件を計画している。増加分のうち、約20千件は2024年4月に子会社化した(株)フジプロによるもので、残りを新規獲得やM&Aで増やしていくことになるが、ここ2〜3年は年間30千件前後の純増ペースとなっていることから、達成可能な水準と見ることができる。また、家庭用ガスの販売量については、同3〜4%増を見込んでいる。プラス要因として顧客件数の増加と平均気温の上昇(同0.3〜0.4℃上昇を前提)で6%の増加、マイナス要因として顧客の節約志向の高まりにより顧客当たり消費量で2%の減少を織り込んだ。販売単価や仕入マージンについては前期並みの水準を想定している。2025年3月期も賃金改定による人件費の増加を見込んでいるが、顧客件数獲得の効果により増益を維持する計画となっている。
ただ、LPガス事業に関しては2024年4月に公布されたLPガスの商慣行是正に向けた改正省令の施行によって環境が変化する可能性がある。改正省令では、従来、賃貸集合住宅等の顧客獲得の際に行っていた物品や金銭の授受など過大な営業行為の制限(2024年7月施行)や三部料金制の徹底(2025年4月施行)などが盛り込まれ、違反した事業者は罰則規則が適用されることになる。これにより、賃貸集合住宅において他事業者から契約を切り替えることが難しくなり、新規顧客獲得については新築の賃貸集合住宅または戸建住宅が主なターゲットとなり、顧客獲得競争が激しくなる可能性がある。
TOKAIホールディングス<3167>にとっては賃貸集合住宅の新規獲得において影響を受けるが、一方で他社切り替えによる解約のリスクも低下するものと考えられ、顧客件数についての影響はほとんどないものと見ている。ただ、中長期的に見れば新規顧客獲得競争が激化するなかで、中小零細事業者の淘汰がさらに加速する可能性があり、同社のような大手事業者にとってはM&Aでシェアを拡大する好機になると見ている。国内の家庭業務用LPガスの需要量は、契約件数の減少やガス機器の高効率化、オール電化住宅の増加などを背景に2010年度以降、年率2%のペースで減少を続けており、販売事業者数についても2010年度の22,442事業者から2023年は15,791事業者と年率2.7%のペースで減少してきた。2024年4月26日に経済産業省が発表した「2024〜2028年度石油製品需要見通し」においても、2023年〜2028年度までの家庭業務用LPガスは年率1.6%減少の想定となっており、中小事業者の経営者の高齢化が進んでいることも考慮すれば、大手企業によるM&Aが今後、加速する可能性も十分にあると弊社では見ている。
(2) 情報通信事業
情報通信事業は売上高で前期比7%程度の増加、営業利益で同5%程度の増加となる見通し。このうちコンシューマー向け事業については売上高で減収、営業利益で若干の増益を見込んでいる。顧客件数はブロードバンドで前期末比15千件増、「LIBMO」で同16千件増を見込んでいる。「LIBMO」が顧客件数の増加により増収となるが、光コラボサービスのARPU低下によりブロードバンドで減収を見込んでいる。営業利益についてはブロードバンドで前期比横ばいとなり、「LIBMO」の増収効果で増益となる見通しだ。
一方、法人向け事業は売上高で前期比12%程度の増加、営業利益で同5%程度の増加と増収増益となる見通し。売上高はデータセンターや通信インフラの能力増強もあって、通信回線サービスやクラウドサービスなどのストック収入がけん引する。営業利益については電力料の上昇分は価格転嫁するものの、前期と同様に人件費の増加を見込んでいることが利益率の低下要因となる。
(3) CATV事業
CATV事業は売上高で前期比3%程度の増加、営業利益で同横ばい水準となる見通し。顧客件数は通信サービスを中心に前期末比19千件増を見込む。前期は四半期ごとに通信サービスで5千件を上積みしており、同様のペースで拡大を見込んでいることになる。営業利益については、人件費の増加や顧客獲得コストの増加を織り込み前期比横ばい水準とした。
(4) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業は売上高で前期比20%程度の増加、営業利益で同10%程度の増加と増収増益に転じる見通し。人件費が増加するものの、土木工事や大型設備工事、建築不動産販売が改善し、増収増益を見込む。東海エリアでM&Aした子会社のシナジーが2025年3月期から業績面で顕在化する見通しだ。グループ会社それぞれのリソースを活用することで、受注規模が従来よりも大型化する傾向になっているようで、今後の東海エリアでのシェア拡大による一段の成長が期待される。
(5) アクア事業
アクア事業は売上高で前期比5%程度の増加、営業利益は人件費の増加を見込んでいることで横ばい水準となる見通しだ。顧客件数は前期末比6千件増を目指している。巣ごもり需要の一巡で国内の宅配水市場は2023年に減少に転じるなど市場環境としては厳しいものの、給水型浄水ウォーターサーバー「しずくりあ」を中心に顧客獲得を進めていく。特に、西日本エリアにおいてはCATV事業の子会社などを通じた「しずくりあ」の顧客獲得も増えており、グループのネットワークも生かしながら顧客件数を増やす方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SO>
■今後の見通し
1. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績は、売上高で前期比5.4%増の244,000百万円、営業利益で同3.2%増の16,000百万円、経常利益で同3.0%増の16,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同6.1%増の9,000百万円を計画している。売上高は8期連続増収を見込み、各利益段階では3期振りに過去最高益を更新する見通しだ。継続取引顧客件数の積み上げに加えて、法人向け情報通信事業の好調が継続し、前期低調だった建築設備不動産事業もグループシナジーの創出により増収増益に転じる見込みとなっている。期末の継続取引顧客件数は3,452千件と前期末比94千件の増加を目指す。
(1) エネルギー事業
エネルギー事業は売上高で前期比2%程度の増加、営業利益で同1%程度の増加と堅調推移を見込む。都市ガス事業については前期並みの水準を想定しており、LPガス事業で伸ばす計画となっている。LPガス事業の顧客件数は前期末比50千件増加の828千件を計画している。増加分のうち、約20千件は2024年4月に子会社化した(株)フジプロによるもので、残りを新規獲得やM&Aで増やしていくことになるが、ここ2〜3年は年間30千件前後の純増ペースとなっていることから、達成可能な水準と見ることができる。また、家庭用ガスの販売量については、同3〜4%増を見込んでいる。プラス要因として顧客件数の増加と平均気温の上昇(同0.3〜0.4℃上昇を前提)で6%の増加、マイナス要因として顧客の節約志向の高まりにより顧客当たり消費量で2%の減少を織り込んだ。販売単価や仕入マージンについては前期並みの水準を想定している。2025年3月期も賃金改定による人件費の増加を見込んでいるが、顧客件数獲得の効果により増益を維持する計画となっている。
ただ、LPガス事業に関しては2024年4月に公布されたLPガスの商慣行是正に向けた改正省令の施行によって環境が変化する可能性がある。改正省令では、従来、賃貸集合住宅等の顧客獲得の際に行っていた物品や金銭の授受など過大な営業行為の制限(2024年7月施行)や三部料金制の徹底(2025年4月施行)などが盛り込まれ、違反した事業者は罰則規則が適用されることになる。これにより、賃貸集合住宅において他事業者から契約を切り替えることが難しくなり、新規顧客獲得については新築の賃貸集合住宅または戸建住宅が主なターゲットとなり、顧客獲得競争が激しくなる可能性がある。
TOKAIホールディングス<3167>にとっては賃貸集合住宅の新規獲得において影響を受けるが、一方で他社切り替えによる解約のリスクも低下するものと考えられ、顧客件数についての影響はほとんどないものと見ている。ただ、中長期的に見れば新規顧客獲得競争が激化するなかで、中小零細事業者の淘汰がさらに加速する可能性があり、同社のような大手事業者にとってはM&Aでシェアを拡大する好機になると見ている。国内の家庭業務用LPガスの需要量は、契約件数の減少やガス機器の高効率化、オール電化住宅の増加などを背景に2010年度以降、年率2%のペースで減少を続けており、販売事業者数についても2010年度の22,442事業者から2023年は15,791事業者と年率2.7%のペースで減少してきた。2024年4月26日に経済産業省が発表した「2024〜2028年度石油製品需要見通し」においても、2023年〜2028年度までの家庭業務用LPガスは年率1.6%減少の想定となっており、中小事業者の経営者の高齢化が進んでいることも考慮すれば、大手企業によるM&Aが今後、加速する可能性も十分にあると弊社では見ている。
(2) 情報通信事業
情報通信事業は売上高で前期比7%程度の増加、営業利益で同5%程度の増加となる見通し。このうちコンシューマー向け事業については売上高で減収、営業利益で若干の増益を見込んでいる。顧客件数はブロードバンドで前期末比15千件増、「LIBMO」で同16千件増を見込んでいる。「LIBMO」が顧客件数の増加により増収となるが、光コラボサービスのARPU低下によりブロードバンドで減収を見込んでいる。営業利益についてはブロードバンドで前期比横ばいとなり、「LIBMO」の増収効果で増益となる見通しだ。
一方、法人向け事業は売上高で前期比12%程度の増加、営業利益で同5%程度の増加と増収増益となる見通し。売上高はデータセンターや通信インフラの能力増強もあって、通信回線サービスやクラウドサービスなどのストック収入がけん引する。営業利益については電力料の上昇分は価格転嫁するものの、前期と同様に人件費の増加を見込んでいることが利益率の低下要因となる。
(3) CATV事業
CATV事業は売上高で前期比3%程度の増加、営業利益で同横ばい水準となる見通し。顧客件数は通信サービスを中心に前期末比19千件増を見込む。前期は四半期ごとに通信サービスで5千件を上積みしており、同様のペースで拡大を見込んでいることになる。営業利益については、人件費の増加や顧客獲得コストの増加を織り込み前期比横ばい水準とした。
(4) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業は売上高で前期比20%程度の増加、営業利益で同10%程度の増加と増収増益に転じる見通し。人件費が増加するものの、土木工事や大型設備工事、建築不動産販売が改善し、増収増益を見込む。東海エリアでM&Aした子会社のシナジーが2025年3月期から業績面で顕在化する見通しだ。グループ会社それぞれのリソースを活用することで、受注規模が従来よりも大型化する傾向になっているようで、今後の東海エリアでのシェア拡大による一段の成長が期待される。
(5) アクア事業
アクア事業は売上高で前期比5%程度の増加、営業利益は人件費の増加を見込んでいることで横ばい水準となる見通しだ。顧客件数は前期末比6千件増を目指している。巣ごもり需要の一巡で国内の宅配水市場は2023年に減少に転じるなど市場環境としては厳しいものの、給水型浄水ウォーターサーバー「しずくりあ」を中心に顧客獲得を進めていく。特に、西日本エリアにおいてはCATV事業の子会社などを通じた「しずくりあ」の顧客獲得も増えており、グループのネットワークも生かしながら顧客件数を増やす方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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