TOKAI Research Memo(8):資本収益性と成長性の2軸でグループの最適化を実現する事業ポートフォリオ構築
[24/06/24]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*17:08JST TOKAI Research Memo(8):資本収益性と成長性の2軸でグループの最適化を実現する事業ポートフォリオ構築
■今後の見通し
3. 企業価値向上に向けた取り組み
TOKAIホールディングス<3167>は企業価値の向上に向けて、(1) 事業ポートフォリオ経営への取り組み、(2) 各事業の拡大・効率化の推進、(3) ESG経営への取り組みを強化する方針だ。
2025年3月期における重点施策の取り組みは以下のとおり。
(1) 事業ポートフォリオ経営への取り組み
資本収益性と成長性の2軸で事業ポートフォリオを把握し、グループ全体最適を実現するポートフォリオの構築に向けマネジメントを強化していく。具体的には、事業ポートフォリオを成長領域(エネルギー、法人向け情報通信、建築設備不動産)、期待領域(再生可能エネルギー他GX関連、海外、地域連携)、成熟領域(個人向け情報通信、CATV、アクア)、改革領域(事業収益改善または撤退/売却を検討する事業)の4領域に分類し、ポートフォリオ上の位置付けに応じて各事業の拡大並びに効率化を推進していくことで、ROEの向上を目指す。期待領域については、グループの持続的成長に向け新規事業を創出する取り組みも継続していく考えだ。また、事業間連携を強化していくことで、さらなるグループシナジーの創出も図っていく。なお、事業ごとの資本収益性については、事業別ROIC Spread(事業別ROIC−事業別WACC)で管理する。
(2) 各事業の拡大・効率化の推進
a) 成長領域
エネルギー事業では、M&Aやエリア・サービスを広げることで顧客基盤を拡大し、持続的な成長を図っていく。また、収益性を維持向上すべくDXによる業務効率化などコスト削減策についても推進していく。DX戦略として、自動検針メーターの導入を進めている。検針業務のコスト削減だけでなく、リアルタイムに顧客の消費量を把握することで、最適なタイミングでの販売が可能となるほか、物流の効率化が進むものと期待される。スマートメーターの設置率は2024年3月期末で約70%となっており、2026年3月期末までに100%を目指す。また、顧客接点の強化施策としてTLC会員に対するスマートフォンアプリの導入も推進している。スマートフォンアプリを活用することで、最適なタイミングで顧客に各種情報を発信することが可能となり、解約率の低減やクロスセル率の向上といった効果が期待される。2024年3月期末でTLC会員1,214千人のうち375千人がアプリを導入しているが、2026年3月期末までに1,000千人の導入を目指す。
法人向け情報通信事業では、通信インフラ投資やデータセンターの能力増強等によるビジネスエリアの拡大並びにストック収入の拡大に加えて、M&Aも活用しながらデジタル人財を拡充することで旺盛なDX需要を取り込む方針だ。また、建築設備不動産事業では、建築不動産、土木工事、設備工事などグループ各社が持つリソースを共有し、グループシナジーを創出していくことで東海エリアでのシェア拡大を目指す。
b) 期待領域
再生可能エネルギー他GX関連事業については、太陽光発電(PPA含む)や蓄電池システムの普及促進に取り組んでいるほか、創エネルギー事業を手掛ける企業への出資も行い、再生可能エネルギー事業の運営ノウハウも収集しながら、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指していく。出資実績としては、2023年7月にTOKAIがフィリピンの水力発電事業会社であるREPOWER ENERGY DEVELOPMENT CORPORATIONの新規株式公開に参加し、65百万株(出資比率10%、1株当たり5フィリピンペソ)を約8億円で取得した。その後も株式を追加取得し、2024年2月に出資比率が20%となり持分法適用関連会社になった。また、2023年12月に(株)TOKAIベンチャーキャピタル&インキュベーションが、発電用の浮体式垂直軸型洋上風車※の開発に取り組む(株)アルバトロス・テクノロジーに出資した。アルバトロス・テクノロジーへの出資は、グループとしてGX領域における情報取集・知見の集積を目的としたものだ。
※ 浮体式垂直軸型洋上風車は、海に浮かべる浮体部分の小型化が実現できるほか風車の製造方法の工夫によって、従来型(水平軸型)の風車と比べ製造コストや運用コストの低減が期待されている技術。既に様々な企業・団体との共同研究が開始されている。
海外事業については、エネルギー事業においてベトナムでLPガス販売事業会社を、フィリピンで水力発電事業会社を持分法適用関連会社としているほか、情報通信事業においてインドネシアや台湾を中心にAWS導入支援等の事業を展開していく。インドネシアについては、TOKAIコミュニケーションズが2024年4月に現地のIT企業であるPT Sisnet Mitra Sejahteraと合弁会社PT TOKAICOM Mitra Indonesia(出資比率60%)を設立し、インドネシア市場向けにクラウドサービス関連事業及びクラウド人材育成事業を展開することを発表した。海外事業に関しては短期的な業績への影響は軽微となるが、中長期的な収益貢献を期待しての展開となる。
地域連携については、各グループ会社で地域密着サービスや官民連携による取り組みを推進している。具体的には、CATV事業を担う子会社がフィットネスジム※を3店舗運営しているほか、東海ガスが静岡県内にキャンプ場を2ヶ所運営している。1ヶ所目は2024年3月にオープンした「びく石山 静かな夜のキャンプ場」で、藤枝市が取り組む「ふじえだ陶芸村構想」の実現に向けた中山間地域の活性化を図るための拠点である。もう1ヶ所は掛川市が開設したキャンプ場及び温泉施設「森の都ならここの里」(2022年度利用者数:キャンプ場7.4万人/温泉館6.3万人)の事業譲受案件となる。掛川市が民営化を目的に公募し、同社が2023年10月に選定され、2024年4月から運営を開始している。
※ (株)ケイアイリンクがフランチャイズ展開する24時間年中無休のフィットネスジム「RETIO BODY DESIGN(レシオボディデザイン)」を(株)TOKAIケーブルネットワークで2店舗、(株)倉敷ケーブルテレビで1店舗運営している。
(3) ESG経営への取り組み
同社は、持続的成長につながるESGの取り組みを加速させることで、PERのさらなる向上を目指している。
a) 環境(Environment)
2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとして、顧客のエネルギー利用及び自らの事業活動でGXを推進する。顧客のエネルギー利用では、省エネ機器の普及促進や再生可能エネルギーの導入促進、地域と一体となった低・脱炭素化の推進、原料の脱炭素化への対応を強化していく。また、自らの事業活動では、DX推進によるLPガス事業の配送効率化や自動検針化、太陽光発電設備の自社設置、事業所で使用する電気の再生可能エネルギー化に取り組む方針だ。
b) 社会(Society)
人的資本投資として、人財・組織の活力最大化や、従業員のウェルビーイング向上を推進する。具体的には、「理想の個」の実現に向けて、自律キャリア支援やリスキリング支援などを充実させる。また、「理想の組織」の実現に向けて、多様な働き方の実現、働きがいを高める制度の改定、トップレベルの健康経営の実践、管理職への心理的安全性研修やコーチング研修に取り組む。
c) ガバナンス(Governance)
コンプライアンス・ガバナンスの徹底を図るべく、役員・管理者研修を強化し、組織のさらなるコンプライアンス意識の向上を推進する。また、内部統制を強化し、組織全体にガバナンスを浸透させていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SO>
■今後の見通し
3. 企業価値向上に向けた取り組み
TOKAIホールディングス<3167>は企業価値の向上に向けて、(1) 事業ポートフォリオ経営への取り組み、(2) 各事業の拡大・効率化の推進、(3) ESG経営への取り組みを強化する方針だ。
2025年3月期における重点施策の取り組みは以下のとおり。
(1) 事業ポートフォリオ経営への取り組み
資本収益性と成長性の2軸で事業ポートフォリオを把握し、グループ全体最適を実現するポートフォリオの構築に向けマネジメントを強化していく。具体的には、事業ポートフォリオを成長領域(エネルギー、法人向け情報通信、建築設備不動産)、期待領域(再生可能エネルギー他GX関連、海外、地域連携)、成熟領域(個人向け情報通信、CATV、アクア)、改革領域(事業収益改善または撤退/売却を検討する事業)の4領域に分類し、ポートフォリオ上の位置付けに応じて各事業の拡大並びに効率化を推進していくことで、ROEの向上を目指す。期待領域については、グループの持続的成長に向け新規事業を創出する取り組みも継続していく考えだ。また、事業間連携を強化していくことで、さらなるグループシナジーの創出も図っていく。なお、事業ごとの資本収益性については、事業別ROIC Spread(事業別ROIC−事業別WACC)で管理する。
(2) 各事業の拡大・効率化の推進
a) 成長領域
エネルギー事業では、M&Aやエリア・サービスを広げることで顧客基盤を拡大し、持続的な成長を図っていく。また、収益性を維持向上すべくDXによる業務効率化などコスト削減策についても推進していく。DX戦略として、自動検針メーターの導入を進めている。検針業務のコスト削減だけでなく、リアルタイムに顧客の消費量を把握することで、最適なタイミングでの販売が可能となるほか、物流の効率化が進むものと期待される。スマートメーターの設置率は2024年3月期末で約70%となっており、2026年3月期末までに100%を目指す。また、顧客接点の強化施策としてTLC会員に対するスマートフォンアプリの導入も推進している。スマートフォンアプリを活用することで、最適なタイミングで顧客に各種情報を発信することが可能となり、解約率の低減やクロスセル率の向上といった効果が期待される。2024年3月期末でTLC会員1,214千人のうち375千人がアプリを導入しているが、2026年3月期末までに1,000千人の導入を目指す。
法人向け情報通信事業では、通信インフラ投資やデータセンターの能力増強等によるビジネスエリアの拡大並びにストック収入の拡大に加えて、M&Aも活用しながらデジタル人財を拡充することで旺盛なDX需要を取り込む方針だ。また、建築設備不動産事業では、建築不動産、土木工事、設備工事などグループ各社が持つリソースを共有し、グループシナジーを創出していくことで東海エリアでのシェア拡大を目指す。
b) 期待領域
再生可能エネルギー他GX関連事業については、太陽光発電(PPA含む)や蓄電池システムの普及促進に取り組んでいるほか、創エネルギー事業を手掛ける企業への出資も行い、再生可能エネルギー事業の運営ノウハウも収集しながら、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指していく。出資実績としては、2023年7月にTOKAIがフィリピンの水力発電事業会社であるREPOWER ENERGY DEVELOPMENT CORPORATIONの新規株式公開に参加し、65百万株(出資比率10%、1株当たり5フィリピンペソ)を約8億円で取得した。その後も株式を追加取得し、2024年2月に出資比率が20%となり持分法適用関連会社になった。また、2023年12月に(株)TOKAIベンチャーキャピタル&インキュベーションが、発電用の浮体式垂直軸型洋上風車※の開発に取り組む(株)アルバトロス・テクノロジーに出資した。アルバトロス・テクノロジーへの出資は、グループとしてGX領域における情報取集・知見の集積を目的としたものだ。
※ 浮体式垂直軸型洋上風車は、海に浮かべる浮体部分の小型化が実現できるほか風車の製造方法の工夫によって、従来型(水平軸型)の風車と比べ製造コストや運用コストの低減が期待されている技術。既に様々な企業・団体との共同研究が開始されている。
海外事業については、エネルギー事業においてベトナムでLPガス販売事業会社を、フィリピンで水力発電事業会社を持分法適用関連会社としているほか、情報通信事業においてインドネシアや台湾を中心にAWS導入支援等の事業を展開していく。インドネシアについては、TOKAIコミュニケーションズが2024年4月に現地のIT企業であるPT Sisnet Mitra Sejahteraと合弁会社PT TOKAICOM Mitra Indonesia(出資比率60%)を設立し、インドネシア市場向けにクラウドサービス関連事業及びクラウド人材育成事業を展開することを発表した。海外事業に関しては短期的な業績への影響は軽微となるが、中長期的な収益貢献を期待しての展開となる。
地域連携については、各グループ会社で地域密着サービスや官民連携による取り組みを推進している。具体的には、CATV事業を担う子会社がフィットネスジム※を3店舗運営しているほか、東海ガスが静岡県内にキャンプ場を2ヶ所運営している。1ヶ所目は2024年3月にオープンした「びく石山 静かな夜のキャンプ場」で、藤枝市が取り組む「ふじえだ陶芸村構想」の実現に向けた中山間地域の活性化を図るための拠点である。もう1ヶ所は掛川市が開設したキャンプ場及び温泉施設「森の都ならここの里」(2022年度利用者数:キャンプ場7.4万人/温泉館6.3万人)の事業譲受案件となる。掛川市が民営化を目的に公募し、同社が2023年10月に選定され、2024年4月から運営を開始している。
※ (株)ケイアイリンクがフランチャイズ展開する24時間年中無休のフィットネスジム「RETIO BODY DESIGN(レシオボディデザイン)」を(株)TOKAIケーブルネットワークで2店舗、(株)倉敷ケーブルテレビで1店舗運営している。
(3) ESG経営への取り組み
同社は、持続的成長につながるESGの取り組みを加速させることで、PERのさらなる向上を目指している。
a) 環境(Environment)
2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとして、顧客のエネルギー利用及び自らの事業活動でGXを推進する。顧客のエネルギー利用では、省エネ機器の普及促進や再生可能エネルギーの導入促進、地域と一体となった低・脱炭素化の推進、原料の脱炭素化への対応を強化していく。また、自らの事業活動では、DX推進によるLPガス事業の配送効率化や自動検針化、太陽光発電設備の自社設置、事業所で使用する電気の再生可能エネルギー化に取り組む方針だ。
b) 社会(Society)
人的資本投資として、人財・組織の活力最大化や、従業員のウェルビーイング向上を推進する。具体的には、「理想の個」の実現に向けて、自律キャリア支援やリスキリング支援などを充実させる。また、「理想の組織」の実現に向けて、多様な働き方の実現、働きがいを高める制度の改定、トップレベルの健康経営の実践、管理職への心理的安全性研修やコーチング研修に取り組む。
c) ガバナンス(Governance)
コンプライアンス・ガバナンスの徹底を図るべく、役員・管理者研修を強化し、組織のさらなるコンプライアンス意識の向上を推進する。また、内部統制を強化し、組織全体にガバナンスを浸透させていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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