【研究発表:「省エネ・ピークカットへの取り組みがもたらす企業ブランド価値」に関する調査研究】 ピークカットに向けた企業の節電設備行動が最も企業ブランド価値を高める
[13/11/28]
提供元:PRTIMES
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ガス空調等の節電設備導入を行った場合、経済価値は1.4倍の向上に寄与する
関西大学商学部 陶山計介教授と一般社団法人ブランド戦略研究所(大阪府吹田市)は、2013年8月〜11月に、節電や環境対策として先進的取組を行っている企業の総務・財務や環境管理部門の設備従事者や、一般企業に勤める関東・関西の有職者を対象に、「省エネ・ピークカットへの取り組みがもたらす企業ブランド価値」に関する調査研究を行いました。
「企業ブランド価値」とは、中・長期的に企業活動を継続するために必要な指標であり、【経済価値】【環境価値】【社会的価値】【顧客価値】【従業員価値】の5つの成分価値をもとに算出したものです。この調査では、省エネ・ピークカットに先進的に取り組んでいる企業へインタビューを行った上で、企業規模や意識・行動レベルを軸に、節電や環境における企業の取組みが企業価値にどの様に寄与するかを定量調査にて検証し、分析したものです。
その結果、企業の環境・節電における取組みのうち、節電設備導入が、企業価値を最も高めるということが明らかになりました。本格的な設備導入行動は、短期的にはコスト負担増をもたらしますが、中長期的には企業の【環境価値】だけでなく、【経済価値】【社会的価値】を含むすべての要素において寄与し、企業ブランド価値を高める原動力となると言えます。更には、省エネ・ピークカット施策に関する意識の高い先進的企業が震災後、関東関西ともに積極的に取り入み始めている、「ガス空調」「自家発電」「ガスコージェネレーション」に積極的に取り組んだ場合、【経済価値】が1.41倍、【環境価値】1.60倍、【社会価値】1.81倍上昇し、企業ブランド価値に大きく寄与することも今回の調査分析の結果明らかになりました。
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《「省エネ・ピークカットへの取り組みがもたらす企業ブランド価値上昇効果」調査研究成果》
1. 環境・節電に関する意識・行動
関西2府6県の有職者(課長クラス以上)を対象にした定量調査では、環境問題への関心度は約70%、節電意識としては、約90%が企業としての取組みを「多少でも必要」としている。また、関東・関西において一般企業に勤める有職者での東西比較定量調査でも大きな差は見られなかった。更に、その中でも、企業にとって急務の課題は、直接・間接の節電行動、電力のピークカットやピークシフトに積極的に取り組むことであり、環境や節電に対する意識の高い層や企業においては最優先事項の1つとして認識されはじめてきている。
2. 節電設備導入行動と企業ブランド価値
企業ブランド価値に対して、企業が節電や環境施策として設備導入を行うことが、その価値向上に最も寄与する。特に、節電・ピークカットへの取り組みが、設備導入行動、すなわち「ガス空調」「自家発電」「ガスコージェネレーション」の導入に「積極的に取り組んでいる」へと変化した場合、【経済価値】を1.41倍、【環境価値】を1.60倍、【社会価値】を1.81倍上昇させ、【環境価値】のみならず、【社会的価値】【経済価値】をも向上させる。
3. 省エネ・節電行動を推進するための必要要素
経営トップが環境や節電などに関するビジョンや経営方針を示し、専門の担当部署を設置して責任体制を明確にするとともに、全社的な社内体制を整備することが不可欠の条件である。また、企業によるエコ・節電の取り組みを促進ないし推進するためには、1.業界団体や行政による規制、2.国や自治体による認証や経産省の顕彰制度、3.中立的な第三者機関によるランキング、も必要とされる。
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1. 環境・節電に関する意識・行動
<環境・節電意識に関する東西比較>
一般企業に勤める関東と関西の有職者を対象とした環境や節電に対する意識(関心・知識)の定量調査では、関東と関西では同じような傾向をもつが、関西の方が関東に比べて環境意識の点ではやや低い結果も見られた。しかし、実際の環境への取り組みに対する評価は、個人でも会社でも関東・関西でほとんど差は見受けられない。また、節電に取り組む理由としては、関東に比べ関西では「コスト削減」が高い一方、「地球環境への貢献」では低く、両者の違いが出た。また、節電に積極的な企業に対するイメージは、関東・関西共通で、「社会的責任」を果たし、「一流」で「ブランド資産が多い」や、「好感」と「信頼を持てる」がとなり、普段の節電行動よりも太陽光発電やガスコージェネのような設備導入行動の方が、顧客志向、イノベーター、メジャー、CSRという企業イメージにより強く影響するという分析結果が出た。ただ、関西では関東より、節電行動とイメージ面での企業評価との関連が全体として少し弱い傾向にあるが、関西においても環境意識が高い層や中位の層では、設備導入行動面と企業イメージの向上との関係性が見受けられるので、個人の環境意識を高めることが肝要であると考えられる。
<企業規模と環境・節電対策の関心と意識>
近畿2府4県の課長クラス以上を対象にした定量調査において、企業規模が大きいほど環境問題への関心度は高く、環境対策に関する方針・目標を設定しているのは中規模(101人〜299人)、小規模(1人〜100人)よりも大規模企業(300人以上)が多くなった。また、大企業ほど企業のブランド価値向上が節電の目的と考えられており、節電意識や代替エネルギーの活用への取り組みへの期待、太陽光発電やカーボンオフセット(温室効果ガス対策)への期待がそれぞれ大きい。企業規模別で節電意識を見ると、「多少でも必要」の計は90%、「取組みが必要」の計は67%を占める。企業規模別では、大企業ほど節電に対しての必要性を強く持っている。(図1)
本調査は近畿2府4県の課長クラス以上を対象としているが、東西比較調査でもそれに近い結果がでているため、関東でも同様の結果になるものと推測される
【今後の節電行動のTOPは「空調関連」、「照明関連」、
大企業ほど節電への従業員の意識づけや代替エネルギーへの取り組み期待が大きい】
今以上に会社が取り組むべき節電行動施策としては、「空調関連」(51%)、「照明関連」(51%)が特に高く、「従業員の意識づけ」(33%)などが続く。企業の規模別では、とくに「従業員の意識づけ」「代替エネルギーの活用」で大きな差異が見受けられる。(図2)
また、環境・節電対策として、今後の導入を検討してほしいこととしては、1位「CO2削減」(75%) 2位「ピークカット」(73%) 3位「クリーンエネルギー」(71%)の順で高い。企業の規模別でも、全体と似た傾向をとるが、企業規模が大きい層ほど強く対処してほしいと考える傾向が見受けられる。とくに「企業規模・大」と「企業規模・小」で大きな差が見受けられ、「カーボンオフセット」「太陽光発電」では、15ポイント程「企業規模・大」が高い。
2. 節電意識、行動と企業ブランド価値の関係性
<ガス空調など節電設備導入による企業価値上昇効果:モデルとシミュレーション結果>
環境・節電対策に関する定量調査より、環境・節電における「設備導入行動」が「企業価値・全体」 「企業価値・個別」に与える影響指数を明らかにし、 「設備導入行動」が変化したときの影響を推定。
(図3)の2つの工程より「設備導入行動」と「企業価値」の関係式を算出し、シュミュレーションを行った。
環境・節電における「設備導入行動」のうち、「ガス空調」「自家発電システム」「ガスコージェネレーション」の3つが、現状の「ある程度」よりも「積極的に取り組んでいる」へと変化したとき、【社会的価値】は1.81倍、【環境価値】は1.60倍、【経済価値】は1.41倍、【従業員価値】は1.25倍、【顧客価値】は1.13倍に上昇し、企業ブランド価値に寄与することが明らかになった。また、企業の設備・環境従事担当者へのインタビューにおいて、節電・ピークカットへの取り組みとして導入が多かった「ガス空調」への取り組みだけを見ても、現状の「ある程度」から「積極的に取り組んでいる」へと変化したとき、 【社会的価値】 は1.28倍、【環境価値】は1.21倍、【経済価値】は1.14倍上昇する結果となった。(図4・図5)
3. 省エネ・節電行動を推進するための必要要素
環境問題・節電への企業の取り組みを促進するための要因としては、「行政の推進施策の利用」(47%)が最も高く、「行政による積極的な指導説明」(37%)、「社会全体での意識の高まり」(37%)が続く。企業規模別では、 「業界内での意識が高まること」「社会全体での意識の高まり」などで、若干の差異が生じるものの、全項目で似た傾向をとる。(図6)
また、節電・ピークカットに関する先進企業などへのヒアリングを通じて、省エネ・節電行動を推進するためには、経営トップが環境や節電などに関するビジョンや経営方針を示し、専門の担当部署を設置して責任体制を明確にするとともに、従業員の環境教育を推進するなど全社的な社内体制を整備することが不可欠の条件となることが明らかとなった。そうした地道な取り組みが、最終的には企業価値の高評価につながるのである。
企業によるエコ・節電の取り組みを促進ないし推進するためには、それを企業価値の評価に結びつける制度や仕組みとして、1.業界団体や行政による規制、2.国や自治体による認証や経産省の優良店制度といった顕彰制度、3.中立的な第三者機関によるランキング、が期待される。またエコ・節電に積極的に取り組んでいる企業や商品、小売店舗を優先的に選択する消費者・生活者が増大することが望ましい。
<最後に>
2011年の東日本大震災以降、消費電力の削減や代替エネルギーの模索は急務の課題となっています。とりわけ太陽光発電、風力発電、地熱発電と並んでガスヒートポンプやガスコージェネレーションが現在注目されています。
なぜなら、それらはピークカットによる節電を実現し、クリーンでエネルギー高効率というだけでなく、BCP(事業継続計画)、地域や社会との共生という観点からも地域社会や日本経済に貢献するからです。そうした見地からガス空調や自家発電、ガスコージェネレーションなどの節電に貢献する設備が積極的に導入されてきました。
その一方で、エネルギーや節電に対する取組みが関東圏に比べ、震災による計画停電等直接的被害を受けなかった関西圏では若干遅れているのも事実であり、先進的な企業に節電設備行動の意義がようやく理解されはじめ、少しずつ取り組みがなされてきている状況です。
その背景には、こうした取り組みが企業価値にどの様に影響するのかが十分に理解されていないことや、企業経営に対する有効性がなかなか判断しにくい状況があります。本調査研究では、エネルギー関連の設備導入が、企業経営、ひいては企業ブランド価値向上に与える影響度を指標化しましたが、多くの企業にとって今回の調査が今後の節電設備の導入判断の一助となることを願っています。
◆プロフィール
陶山 計介 (Suyama Keisuke)
関西大学商学部教授/日本商業学会元会長/日本広告学会元理事/一般社団法人ブランド戦略研究所理事長。1982年、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得。博士(経済学)。専門はブランド・マーケティング。
訳書に『ブランド・エクイティ戦略』『ブランド優位の戦略』『バリュースペース戦略』(いずれもダイヤモンド社)、著書に『マーケティング戦略と需給斉合』(中央経済社)をはじめ、『日本型ブランド優位戦略』(ダイヤモンド社)、『マーケティング・ネットワーク論』 (有斐閣) 、『大阪ブランド・ルネッサンス』 (ミネルヴァ書房)等がある。
常に現場に目を据え、トヨタ、リクルート、JH、ハウス食品、イズミヤ、大広、大阪府等多数の企業、各種団体の幹部研修等も行い、産学交流を推進している。 文科省、経産省等の各種専門委員や大阪ブランドコミッティ・プロデューサー等、学外活動多数。英国エジンバラ大学マネジメントスクール客員教授(2002年)
協力:一般社団法人ブランド戦略研究所(大阪府吹田市)
アイザック・マーケティング株式会社(東京都港区:代表取締役 畑圭一)
◆調査概要
・「節電・ピークカットに関する先進企業などへのヒアリング」調査
ヒアリング協力企業:
株式会社LIXILビバ、株式会社久我、学校法人関西大学、株式会社ユー・エス・ジェイ、
株式会社ケーズホールディングス、株式会社王将フードサービス、株式会社湯川家具、イオンリテール株式会社
・「環境・節電に関する東西比較調査」
エリア:関東 1都6県/関西 2府4県 性年代:MF20〜65
業種:製造業/非製造業 職種:有職者(派遣、パート、アルバイト含む)
サンプル数:N=600(関東 n=300、関東n=300) 調査方法:定量調査(インターネットリサーチ)
・「環境・節電対策に関する調査」
エリア:関西 (大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,滋賀県,和歌山県)
性年代:MF20〜65 役職:課長職以上(役職 : 会長/副会長/代表取締役(社長)/副社長/専務取締役・常務取締役・役員・取締役/顧問・監 査役/事業本部長/部長/部長代理/課長)
権限:『経営』もしくは『社内設備』へ関わるサンプル
企業規模:従業員数100人以上の職場、企業へ勤めているサンプル
サンプル数:N=337 /調査方法:定量調査(インターネットリサーチ)
関西大学商学部 陶山計介教授と一般社団法人ブランド戦略研究所(大阪府吹田市)は、2013年8月〜11月に、節電や環境対策として先進的取組を行っている企業の総務・財務や環境管理部門の設備従事者や、一般企業に勤める関東・関西の有職者を対象に、「省エネ・ピークカットへの取り組みがもたらす企業ブランド価値」に関する調査研究を行いました。
「企業ブランド価値」とは、中・長期的に企業活動を継続するために必要な指標であり、【経済価値】【環境価値】【社会的価値】【顧客価値】【従業員価値】の5つの成分価値をもとに算出したものです。この調査では、省エネ・ピークカットに先進的に取り組んでいる企業へインタビューを行った上で、企業規模や意識・行動レベルを軸に、節電や環境における企業の取組みが企業価値にどの様に寄与するかを定量調査にて検証し、分析したものです。
その結果、企業の環境・節電における取組みのうち、節電設備導入が、企業価値を最も高めるということが明らかになりました。本格的な設備導入行動は、短期的にはコスト負担増をもたらしますが、中長期的には企業の【環境価値】だけでなく、【経済価値】【社会的価値】を含むすべての要素において寄与し、企業ブランド価値を高める原動力となると言えます。更には、省エネ・ピークカット施策に関する意識の高い先進的企業が震災後、関東関西ともに積極的に取り入み始めている、「ガス空調」「自家発電」「ガスコージェネレーション」に積極的に取り組んだ場合、【経済価値】が1.41倍、【環境価値】1.60倍、【社会価値】1.81倍上昇し、企業ブランド価値に大きく寄与することも今回の調査分析の結果明らかになりました。
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《「省エネ・ピークカットへの取り組みがもたらす企業ブランド価値上昇効果」調査研究成果》
1. 環境・節電に関する意識・行動
関西2府6県の有職者(課長クラス以上)を対象にした定量調査では、環境問題への関心度は約70%、節電意識としては、約90%が企業としての取組みを「多少でも必要」としている。また、関東・関西において一般企業に勤める有職者での東西比較定量調査でも大きな差は見られなかった。更に、その中でも、企業にとって急務の課題は、直接・間接の節電行動、電力のピークカットやピークシフトに積極的に取り組むことであり、環境や節電に対する意識の高い層や企業においては最優先事項の1つとして認識されはじめてきている。
2. 節電設備導入行動と企業ブランド価値
企業ブランド価値に対して、企業が節電や環境施策として設備導入を行うことが、その価値向上に最も寄与する。特に、節電・ピークカットへの取り組みが、設備導入行動、すなわち「ガス空調」「自家発電」「ガスコージェネレーション」の導入に「積極的に取り組んでいる」へと変化した場合、【経済価値】を1.41倍、【環境価値】を1.60倍、【社会価値】を1.81倍上昇させ、【環境価値】のみならず、【社会的価値】【経済価値】をも向上させる。
3. 省エネ・節電行動を推進するための必要要素
経営トップが環境や節電などに関するビジョンや経営方針を示し、専門の担当部署を設置して責任体制を明確にするとともに、全社的な社内体制を整備することが不可欠の条件である。また、企業によるエコ・節電の取り組みを促進ないし推進するためには、1.業界団体や行政による規制、2.国や自治体による認証や経産省の顕彰制度、3.中立的な第三者機関によるランキング、も必要とされる。
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1. 環境・節電に関する意識・行動
<環境・節電意識に関する東西比較>
一般企業に勤める関東と関西の有職者を対象とした環境や節電に対する意識(関心・知識)の定量調査では、関東と関西では同じような傾向をもつが、関西の方が関東に比べて環境意識の点ではやや低い結果も見られた。しかし、実際の環境への取り組みに対する評価は、個人でも会社でも関東・関西でほとんど差は見受けられない。また、節電に取り組む理由としては、関東に比べ関西では「コスト削減」が高い一方、「地球環境への貢献」では低く、両者の違いが出た。また、節電に積極的な企業に対するイメージは、関東・関西共通で、「社会的責任」を果たし、「一流」で「ブランド資産が多い」や、「好感」と「信頼を持てる」がとなり、普段の節電行動よりも太陽光発電やガスコージェネのような設備導入行動の方が、顧客志向、イノベーター、メジャー、CSRという企業イメージにより強く影響するという分析結果が出た。ただ、関西では関東より、節電行動とイメージ面での企業評価との関連が全体として少し弱い傾向にあるが、関西においても環境意識が高い層や中位の層では、設備導入行動面と企業イメージの向上との関係性が見受けられるので、個人の環境意識を高めることが肝要であると考えられる。
<企業規模と環境・節電対策の関心と意識>
近畿2府4県の課長クラス以上を対象にした定量調査において、企業規模が大きいほど環境問題への関心度は高く、環境対策に関する方針・目標を設定しているのは中規模(101人〜299人)、小規模(1人〜100人)よりも大規模企業(300人以上)が多くなった。また、大企業ほど企業のブランド価値向上が節電の目的と考えられており、節電意識や代替エネルギーの活用への取り組みへの期待、太陽光発電やカーボンオフセット(温室効果ガス対策)への期待がそれぞれ大きい。企業規模別で節電意識を見ると、「多少でも必要」の計は90%、「取組みが必要」の計は67%を占める。企業規模別では、大企業ほど節電に対しての必要性を強く持っている。(図1)
本調査は近畿2府4県の課長クラス以上を対象としているが、東西比較調査でもそれに近い結果がでているため、関東でも同様の結果になるものと推測される
【今後の節電行動のTOPは「空調関連」、「照明関連」、
大企業ほど節電への従業員の意識づけや代替エネルギーへの取り組み期待が大きい】
今以上に会社が取り組むべき節電行動施策としては、「空調関連」(51%)、「照明関連」(51%)が特に高く、「従業員の意識づけ」(33%)などが続く。企業の規模別では、とくに「従業員の意識づけ」「代替エネルギーの活用」で大きな差異が見受けられる。(図2)
また、環境・節電対策として、今後の導入を検討してほしいこととしては、1位「CO2削減」(75%) 2位「ピークカット」(73%) 3位「クリーンエネルギー」(71%)の順で高い。企業の規模別でも、全体と似た傾向をとるが、企業規模が大きい層ほど強く対処してほしいと考える傾向が見受けられる。とくに「企業規模・大」と「企業規模・小」で大きな差が見受けられ、「カーボンオフセット」「太陽光発電」では、15ポイント程「企業規模・大」が高い。
2. 節電意識、行動と企業ブランド価値の関係性
<ガス空調など節電設備導入による企業価値上昇効果:モデルとシミュレーション結果>
環境・節電対策に関する定量調査より、環境・節電における「設備導入行動」が「企業価値・全体」 「企業価値・個別」に与える影響指数を明らかにし、 「設備導入行動」が変化したときの影響を推定。
(図3)の2つの工程より「設備導入行動」と「企業価値」の関係式を算出し、シュミュレーションを行った。
環境・節電における「設備導入行動」のうち、「ガス空調」「自家発電システム」「ガスコージェネレーション」の3つが、現状の「ある程度」よりも「積極的に取り組んでいる」へと変化したとき、【社会的価値】は1.81倍、【環境価値】は1.60倍、【経済価値】は1.41倍、【従業員価値】は1.25倍、【顧客価値】は1.13倍に上昇し、企業ブランド価値に寄与することが明らかになった。また、企業の設備・環境従事担当者へのインタビューにおいて、節電・ピークカットへの取り組みとして導入が多かった「ガス空調」への取り組みだけを見ても、現状の「ある程度」から「積極的に取り組んでいる」へと変化したとき、 【社会的価値】 は1.28倍、【環境価値】は1.21倍、【経済価値】は1.14倍上昇する結果となった。(図4・図5)
3. 省エネ・節電行動を推進するための必要要素
環境問題・節電への企業の取り組みを促進するための要因としては、「行政の推進施策の利用」(47%)が最も高く、「行政による積極的な指導説明」(37%)、「社会全体での意識の高まり」(37%)が続く。企業規模別では、 「業界内での意識が高まること」「社会全体での意識の高まり」などで、若干の差異が生じるものの、全項目で似た傾向をとる。(図6)
また、節電・ピークカットに関する先進企業などへのヒアリングを通じて、省エネ・節電行動を推進するためには、経営トップが環境や節電などに関するビジョンや経営方針を示し、専門の担当部署を設置して責任体制を明確にするとともに、従業員の環境教育を推進するなど全社的な社内体制を整備することが不可欠の条件となることが明らかとなった。そうした地道な取り組みが、最終的には企業価値の高評価につながるのである。
企業によるエコ・節電の取り組みを促進ないし推進するためには、それを企業価値の評価に結びつける制度や仕組みとして、1.業界団体や行政による規制、2.国や自治体による認証や経産省の優良店制度といった顕彰制度、3.中立的な第三者機関によるランキング、が期待される。またエコ・節電に積極的に取り組んでいる企業や商品、小売店舗を優先的に選択する消費者・生活者が増大することが望ましい。
<最後に>
2011年の東日本大震災以降、消費電力の削減や代替エネルギーの模索は急務の課題となっています。とりわけ太陽光発電、風力発電、地熱発電と並んでガスヒートポンプやガスコージェネレーションが現在注目されています。
なぜなら、それらはピークカットによる節電を実現し、クリーンでエネルギー高効率というだけでなく、BCP(事業継続計画)、地域や社会との共生という観点からも地域社会や日本経済に貢献するからです。そうした見地からガス空調や自家発電、ガスコージェネレーションなどの節電に貢献する設備が積極的に導入されてきました。
その一方で、エネルギーや節電に対する取組みが関東圏に比べ、震災による計画停電等直接的被害を受けなかった関西圏では若干遅れているのも事実であり、先進的な企業に節電設備行動の意義がようやく理解されはじめ、少しずつ取り組みがなされてきている状況です。
その背景には、こうした取り組みが企業価値にどの様に影響するのかが十分に理解されていないことや、企業経営に対する有効性がなかなか判断しにくい状況があります。本調査研究では、エネルギー関連の設備導入が、企業経営、ひいては企業ブランド価値向上に与える影響度を指標化しましたが、多くの企業にとって今回の調査が今後の節電設備の導入判断の一助となることを願っています。
◆プロフィール
陶山 計介 (Suyama Keisuke)
関西大学商学部教授/日本商業学会元会長/日本広告学会元理事/一般社団法人ブランド戦略研究所理事長。1982年、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得。博士(経済学)。専門はブランド・マーケティング。
訳書に『ブランド・エクイティ戦略』『ブランド優位の戦略』『バリュースペース戦略』(いずれもダイヤモンド社)、著書に『マーケティング戦略と需給斉合』(中央経済社)をはじめ、『日本型ブランド優位戦略』(ダイヤモンド社)、『マーケティング・ネットワーク論』 (有斐閣) 、『大阪ブランド・ルネッサンス』 (ミネルヴァ書房)等がある。
常に現場に目を据え、トヨタ、リクルート、JH、ハウス食品、イズミヤ、大広、大阪府等多数の企業、各種団体の幹部研修等も行い、産学交流を推進している。 文科省、経産省等の各種専門委員や大阪ブランドコミッティ・プロデューサー等、学外活動多数。英国エジンバラ大学マネジメントスクール客員教授(2002年)
協力:一般社団法人ブランド戦略研究所(大阪府吹田市)
アイザック・マーケティング株式会社(東京都港区:代表取締役 畑圭一)
◆調査概要
・「節電・ピークカットに関する先進企業などへのヒアリング」調査
ヒアリング協力企業:
株式会社LIXILビバ、株式会社久我、学校法人関西大学、株式会社ユー・エス・ジェイ、
株式会社ケーズホールディングス、株式会社王将フードサービス、株式会社湯川家具、イオンリテール株式会社
・「環境・節電に関する東西比較調査」
エリア:関東 1都6県/関西 2府4県 性年代:MF20〜65
業種:製造業/非製造業 職種:有職者(派遣、パート、アルバイト含む)
サンプル数:N=600(関東 n=300、関東n=300) 調査方法:定量調査(インターネットリサーチ)
・「環境・節電対策に関する調査」
エリア:関西 (大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,滋賀県,和歌山県)
性年代:MF20〜65 役職:課長職以上(役職 : 会長/副会長/代表取締役(社長)/副社長/専務取締役・常務取締役・役員・取締役/顧問・監 査役/事業本部長/部長/部長代理/課長)
権限:『経営』もしくは『社内設備』へ関わるサンプル
企業規模:従業員数100人以上の職場、企業へ勤めているサンプル
サンプル数:N=337 /調査方法:定量調査(インターネットリサーチ)