グローバルビジネス学会「国際経済連携協定研究会」
[14/02/21]
提供元:PRTIMES
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(1)TPP交渉は2013年12月の閣僚会合で、同年中の妥結に失敗した。その重要な理由の一つは、日米の関税問題にあった。日本政府は2月22日からシンガポールで始まる閣僚会合において確実な合意を実現すべきであり、安倍政権は今こそ早期妥結に向けた政治決断しなければならない。TPP域内先進国として高いレベルでの市場開放を行う範を示し、TPPが目指す自由で効率的な経済社会を実現することは極めて重要である。
日本国内の政治的な理由で、アジア太平洋地域の新たな通商秩序の枠組み自体をとん挫させてはならない。
(2)日米はこれまでのTPP交渉において、アクセス問題以外の分野において溝はない。むしろ、両国は広範囲な分野で交渉妥結に向けて交渉の主導権を握ってきた。今こそ、関税問題を日米両国が解決することで、さらに他の参加国に対して建設的なリーダシップを発揮できる環境が整う。これは、参加12カ国が真に実効性のある域内市場の一体化、ルールの共通化を図るための必須条件である。
(3)日本にとっては農産物の関税撤廃は消費者のみならず、農業者、食品加工業者にも大きな利点があることを認識すべきである。消費税負担の増大が予測される中、関税減少分、納税負担が減ることで、消費者は実質所得の向上による恩恵をうける。食品業者にとっては仕入価格の大幅減少に直結し、競合する輸入加工品との間で競争上の対等な立場を確保できる。そのことで、食品工場の海外移転を防ぎ、国内農業者の出荷先確保につながる。外資の食品工場の国内誘致にもつながり、同様の効果が得られる。その結果、農産物加工品の輸出競争力が強化され、成長するアジア太平洋食品市場向けの国産原材料の実需が大きく伸びる契機となる。一方、関税撤廃によって減収が見込まれる一部農産物については直接支払い制度の導入によって補てんすれば、農業者の所得は変わらない。その総額は既存の補助金より少なくて済むことから、これまでの農業保護による国民の二重負担(高関税と補助金農政)と比べ、負担は大幅に減る。
(4)意欲のある日本の農業者が求めているのはさらなる国の保護、高関税・補助金政策ではない。むしろ、政府による農業市場への介入低減である。自由貿易協定においては関税低減・撤廃の期間として、10年から最大20年ほどを設定できる。この期間において、日本政府は国内農業向けの構造改革と激変緩和措置を実施することが可能である。
安倍政権は、アベノミクスの第3の柱として、農産物の輸出拡大を含め農業の成長産業化をそのひとつに掲げる。その戦略を実行に移すためにもっとも有効であり、かつ必要な、最初に取り組むべき改革は、最大の規制ともいえる農産物の関税撤廃である。この決断によって日本農業は改革の機会を獲得し大きく前進することができる。
以上を踏まえ、国内農業、TPP交渉の両面において、日本政府には今こそ英断を求めたい。
# # #
■この提言策定に携わった主要メンバー
座長:
近藤剛(伊藤忠商事理事、元日本道路公団総裁)
副座長:
ローレンス・グリーンウッド(在日米国商工会議所・日米リージョナルリーダーシップ委員会・共同議長、元米国APEC大使)
副座長:
渡邊頼純(慶応義塾大学教授)
主査:
中野憲一(弁護士;アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
幹事:
井之上喬(京都大学経営管理大学院特命教授、井之上パブリックリレーションズ社長)
浅川芳裕(ジャーナリスト、株式会社農業技術通信社顧問)
顧問:
林康夫(JETRO顧問、元同理事長)
白井克彦(放送大学学園理事長、前早稲田大学総長)
*なお国際経済連携協定研究会では、3月23日(日)当学会が京都大学で開催する「第2回全国大会」特別セッションにおいて中間報告を行います。詳しくは学会HP(http://s-gb.net/news/1074/)をご参照ください。
■グローバルビジネス学会(Society of Global Business)の概要
グローバルビジネス学会(理事長・小林潔司 京都大学経営管理大学院教授、会長・大竹美喜アメリカンファミリー生命保険会社創業者兼最高顧問)は、グローバルビジネスに関する研究発表、知見や知識の交換、会員相互および内外の関連学会と連携強化を図ることにより、国内経済の活性化はもとより、世界経済の発展に寄与する人材育成を目的に学術団体として 2012年4月に設立し、活動を行っています。詳しくはホームページ(http://s-gb.net)をご覧ください。
日本国内の政治的な理由で、アジア太平洋地域の新たな通商秩序の枠組み自体をとん挫させてはならない。
(2)日米はこれまでのTPP交渉において、アクセス問題以外の分野において溝はない。むしろ、両国は広範囲な分野で交渉妥結に向けて交渉の主導権を握ってきた。今こそ、関税問題を日米両国が解決することで、さらに他の参加国に対して建設的なリーダシップを発揮できる環境が整う。これは、参加12カ国が真に実効性のある域内市場の一体化、ルールの共通化を図るための必須条件である。
(3)日本にとっては農産物の関税撤廃は消費者のみならず、農業者、食品加工業者にも大きな利点があることを認識すべきである。消費税負担の増大が予測される中、関税減少分、納税負担が減ることで、消費者は実質所得の向上による恩恵をうける。食品業者にとっては仕入価格の大幅減少に直結し、競合する輸入加工品との間で競争上の対等な立場を確保できる。そのことで、食品工場の海外移転を防ぎ、国内農業者の出荷先確保につながる。外資の食品工場の国内誘致にもつながり、同様の効果が得られる。その結果、農産物加工品の輸出競争力が強化され、成長するアジア太平洋食品市場向けの国産原材料の実需が大きく伸びる契機となる。一方、関税撤廃によって減収が見込まれる一部農産物については直接支払い制度の導入によって補てんすれば、農業者の所得は変わらない。その総額は既存の補助金より少なくて済むことから、これまでの農業保護による国民の二重負担(高関税と補助金農政)と比べ、負担は大幅に減る。
(4)意欲のある日本の農業者が求めているのはさらなる国の保護、高関税・補助金政策ではない。むしろ、政府による農業市場への介入低減である。自由貿易協定においては関税低減・撤廃の期間として、10年から最大20年ほどを設定できる。この期間において、日本政府は国内農業向けの構造改革と激変緩和措置を実施することが可能である。
安倍政権は、アベノミクスの第3の柱として、農産物の輸出拡大を含め農業の成長産業化をそのひとつに掲げる。その戦略を実行に移すためにもっとも有効であり、かつ必要な、最初に取り組むべき改革は、最大の規制ともいえる農産物の関税撤廃である。この決断によって日本農業は改革の機会を獲得し大きく前進することができる。
以上を踏まえ、国内農業、TPP交渉の両面において、日本政府には今こそ英断を求めたい。
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■この提言策定に携わった主要メンバー
座長:
近藤剛(伊藤忠商事理事、元日本道路公団総裁)
副座長:
ローレンス・グリーンウッド(在日米国商工会議所・日米リージョナルリーダーシップ委員会・共同議長、元米国APEC大使)
副座長:
渡邊頼純(慶応義塾大学教授)
主査:
中野憲一(弁護士;アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
幹事:
井之上喬(京都大学経営管理大学院特命教授、井之上パブリックリレーションズ社長)
浅川芳裕(ジャーナリスト、株式会社農業技術通信社顧問)
顧問:
林康夫(JETRO顧問、元同理事長)
白井克彦(放送大学学園理事長、前早稲田大学総長)
*なお国際経済連携協定研究会では、3月23日(日)当学会が京都大学で開催する「第2回全国大会」特別セッションにおいて中間報告を行います。詳しくは学会HP(http://s-gb.net/news/1074/)をご参照ください。
■グローバルビジネス学会(Society of Global Business)の概要
グローバルビジネス学会(理事長・小林潔司 京都大学経営管理大学院教授、会長・大竹美喜アメリカンファミリー生命保険会社創業者兼最高顧問)は、グローバルビジネスに関する研究発表、知見や知識の交換、会員相互および内外の関連学会と連携強化を図ることにより、国内経済の活性化はもとより、世界経済の発展に寄与する人材育成を目的に学術団体として 2012年4月に設立し、活動を行っています。詳しくはホームページ(http://s-gb.net)をご覧ください。