超音波パルスによるリアルタイム混相流量計の開発
[08/07/24]
提供元:PRTIMES
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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
北海道大学大学院工学研究科
現場配管にクランブオンするだけで計測開始
配管の外側をセンサージャケットで覆うだけで気体・液体・固体が混在する
管内の成分別の流れをリアルタイムに計測
成分流量計測誤差範囲は5%以内と高精度
パイプラインによる資源や原料の効率的・計画的な輸送に寄与
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、北海道大学の准教授、村井祐一氏は、金属や塩ビの配管の外側から簡単に管内部の成分別流量を計測できるシステムを開発しました。
超音波を利用したこの計測システムは、従来の手法である「通常停留装置に放流して正確に容積換算する方法」との計測誤差は5%以内であり、なおかつ配管設備を稼働しながら正確に成分別流量計測ができるシステムとしては唯一の技術です。
開発したシステムは、超音波ドップラー法(注1)による界面検知方法を確立すると共に、これにエコー強度法(注2)を導入し、ドップラー信号とエコー強度のハイブリッド処理によって、超音波パルスによる成分別流量測定を可能としています。気体、液体、固体が混ざった混相流の計測精度を高めることで、これまで経験的法則に頼っていて定量的な計測が困難であった石油、天然ガスのパイプラインなどの資源計測を明確にすることができ、資源売買などの経済面、温暖化ガス排出量の換算係数での誤差縮小などに役立つものと期待されています。
(注1)超音波ドップラー法=移動する物体に超音波を照射するとき、その反射波の周波数が元の周波数からずれることを利用して、速度を逆算によって求める方法。
(注2)エコー強度法=超音波が異物に当たって反射するとき、その反射強度から異物の種類や位置を特定する方法である。
1.背景および研究概要
大流量の混相流をリアルタイムで、しかも成分別に計測する装置はこれまでに存在しませんでした。例えば石油、天然ガス混合流体のパイプラインでの計測では、一旦大規模な停留装置に放流して相分離をさせてから容積換算するという方法がとられており、多大な時間と人的労力が伴っていました。
また混相流パイプラインでは、長距離輸送の間に流れの状態、形式が変化しやすく、このためパイプラインの任意の場所での局所流量のその場モニタリング等の管理上のニーズが存在していました。そして流量の誤差はそのまま経済的な誤差や石油の二酸化炭素排出換算などに直結するため、より実態に近い形で計測できる技術開発が求められていました。
開発した技術は超音波を利用して、金属、塩ビなど管の材質を問わず、外部から成分別の流量計測を誤差5%の範囲でおこなうものであり、配管の稼働を止めることなくガスや液体別の流量を任意の場所で測定することができるので、管の運転・管理上、有益な技術です。
石油、天然ガスなど既存のパイプライン網の管理水準を向上させるに留まらず、化学工場等プラント内、上下水道などにおいて、災害時の流体物質漏洩をリアルタイムで検知することができる等、都市災害時における社会への安心・安全の提供にも貢献する技術です。
2.競合技術への強み
1) 非接触:管外部に装着する計測器(超音波)で管内部の流量計測をするため、リアルタイムで計測が可能です。
2) 流動条件に拘束されない:内部が見えない不透明管路でも、センサーを周方向に2本以上配置することで内部の流れの状態を超音波パルスで可視化して把握することができます。流量の出力は最大20Hzのサンプリングレートまで実現可能です。
3) 広い応用範囲:本計測器が内部情報として持つ断面速度分布・相分布の結果を利用するオプションを活用すると、流量だけでなく、成分ごとの体積率、最大流速、淀みの有無の検出など目的にあわせた必要な情報が出力可能です。
4) 計測誤差範囲5%:超音波ドップラー法とエコー強度法を組み合わせて気液界面の計測制度を高め、この結果を単純速度分布積分することで時間平均流量で誤差5%以内を確認しました。
5) 資源輸送の高度管理化へ:パイプラインの稼働を止めることなく流量分量の測定を可能とするため、輸送管理水準の向上をもたらします。
3.今後の展望
次の段階は、提携企業を中心として産業界に広く活用できるツールへと汎用化設計に入ることです。課題は実際のパイプラインやプラントで実地試験をおこない、実用化のためのデータを揃えていきます。現在は海外の天然ガスのポンプ製造会社や国内の企業などからのリクエストが来ているので、これら企業との連携を強め製品化への実現を目指していきます。
北海道大学大学院工学研究科
現場配管にクランブオンするだけで計測開始
配管の外側をセンサージャケットで覆うだけで気体・液体・固体が混在する
管内の成分別の流れをリアルタイムに計測
成分流量計測誤差範囲は5%以内と高精度
パイプラインによる資源や原料の効率的・計画的な輸送に寄与
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、北海道大学の准教授、村井祐一氏は、金属や塩ビの配管の外側から簡単に管内部の成分別流量を計測できるシステムを開発しました。
超音波を利用したこの計測システムは、従来の手法である「通常停留装置に放流して正確に容積換算する方法」との計測誤差は5%以内であり、なおかつ配管設備を稼働しながら正確に成分別流量計測ができるシステムとしては唯一の技術です。
開発したシステムは、超音波ドップラー法(注1)による界面検知方法を確立すると共に、これにエコー強度法(注2)を導入し、ドップラー信号とエコー強度のハイブリッド処理によって、超音波パルスによる成分別流量測定を可能としています。気体、液体、固体が混ざった混相流の計測精度を高めることで、これまで経験的法則に頼っていて定量的な計測が困難であった石油、天然ガスのパイプラインなどの資源計測を明確にすることができ、資源売買などの経済面、温暖化ガス排出量の換算係数での誤差縮小などに役立つものと期待されています。
(注1)超音波ドップラー法=移動する物体に超音波を照射するとき、その反射波の周波数が元の周波数からずれることを利用して、速度を逆算によって求める方法。
(注2)エコー強度法=超音波が異物に当たって反射するとき、その反射強度から異物の種類や位置を特定する方法である。
1.背景および研究概要
大流量の混相流をリアルタイムで、しかも成分別に計測する装置はこれまでに存在しませんでした。例えば石油、天然ガス混合流体のパイプラインでの計測では、一旦大規模な停留装置に放流して相分離をさせてから容積換算するという方法がとられており、多大な時間と人的労力が伴っていました。
また混相流パイプラインでは、長距離輸送の間に流れの状態、形式が変化しやすく、このためパイプラインの任意の場所での局所流量のその場モニタリング等の管理上のニーズが存在していました。そして流量の誤差はそのまま経済的な誤差や石油の二酸化炭素排出換算などに直結するため、より実態に近い形で計測できる技術開発が求められていました。
開発した技術は超音波を利用して、金属、塩ビなど管の材質を問わず、外部から成分別の流量計測を誤差5%の範囲でおこなうものであり、配管の稼働を止めることなくガスや液体別の流量を任意の場所で測定することができるので、管の運転・管理上、有益な技術です。
石油、天然ガスなど既存のパイプライン網の管理水準を向上させるに留まらず、化学工場等プラント内、上下水道などにおいて、災害時の流体物質漏洩をリアルタイムで検知することができる等、都市災害時における社会への安心・安全の提供にも貢献する技術です。
2.競合技術への強み
1) 非接触:管外部に装着する計測器(超音波)で管内部の流量計測をするため、リアルタイムで計測が可能です。
2) 流動条件に拘束されない:内部が見えない不透明管路でも、センサーを周方向に2本以上配置することで内部の流れの状態を超音波パルスで可視化して把握することができます。流量の出力は最大20Hzのサンプリングレートまで実現可能です。
3) 広い応用範囲:本計測器が内部情報として持つ断面速度分布・相分布の結果を利用するオプションを活用すると、流量だけでなく、成分ごとの体積率、最大流速、淀みの有無の検出など目的にあわせた必要な情報が出力可能です。
4) 計測誤差範囲5%:超音波ドップラー法とエコー強度法を組み合わせて気液界面の計測制度を高め、この結果を単純速度分布積分することで時間平均流量で誤差5%以内を確認しました。
5) 資源輸送の高度管理化へ:パイプラインの稼働を止めることなく流量分量の測定を可能とするため、輸送管理水準の向上をもたらします。
3.今後の展望
次の段階は、提携企業を中心として産業界に広く活用できるツールへと汎用化設計に入ることです。課題は実際のパイプラインやプラントで実地試験をおこない、実用化のためのデータを揃えていきます。現在は海外の天然ガスのポンプ製造会社や国内の企業などからのリクエストが来ているので、これら企業との連携を強め製品化への実現を目指していきます。