デロイト トウシュ トーマツ調査レポートより ベンチャーキャピタルの海外投資動向を分析・調査
[08/06/25]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
−アジア太平洋地域は海外投資に関心はあるものの、近隣諸国への投資に留まる
※下記は、2007年12月のデロイト トウシュ トーマツによる
“2007 Global Venture Capital Survey”のアジア太平洋地域(APAC)に関する
調査結果を一部抜粋、翻訳したものです。
2007年12月 − デロイト トウシュ トーマツ(本部:ニューヨーク)のTMT(Technology,Media,Telecommunication)グループは、2007年のグローバル ベンチャーキャピタル 調査レポート“2007 Global Venture Capital Survey”*を発表した。本レポートは、ベンチャーキャピタル(VC)の今後5年間の地域別・産業別の海外投資傾向を調査したもので、2007年時点でのVCによる海外投資は、「拡大傾向にあるが、成長の速度は遅く、慎重な姿勢を見せている」との結果となった。
また、海外投資における実態比較を、アジア太平洋地域、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域、北南米地域で行い、VCの海外投資への関心の高さと実際の計画との差が、地域間にあることを明らかにしている。
*グローバル ベンチャーキャピタル 調査レポート について
・調査実施時期:2007年4月 (2005年に始まり今回で3回目)
・対象会社数:528社 〔北南米地域281社、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域174社、アジア太平洋地域73社(うち日本法人は20社)〕
・対象会社規模:資産1億ドル未満から10億ドル以上の様々なタイプのVCを対象
主要な項目は以下の通りである。
アジア太平洋地域は海外投資に関心はあるものの、近隣諸国への投資に留まる
アジア太平洋地域のVCは、他地域と比較して対外投資への展開に大きな関心を示す結果となった。2007年度海外投資案件数を見ると、自社案件のうち、「1〜2案件」が国際投資であると回答しているのが48%と最も多く、次いで、「3〜5案件」が23%であり、「16案件以上」と回答しているものは19%となっている(図1参照)。
また、アジア太平洋地域における、VCの海外投資先としての注目地域は中国で、37%が、「今後投資を拡大させる対象とする」と回答している。中国政府は経済成長を促進させるためにVCの投資を支援しており、VCに対するより健全な規制環境に加えて、自国と外国との間で人民元建てのVCを奨励している。
中国に続く投資先としては、27%が、「シンガポールなど他のアジア諸国に関心を持つ」と回答した(図2参照)。
また、投資先としてアメリカに対する関心が低くなり、ヨーロッパとの回答が無かったことは注目される。つまり、アジア太平洋地域のVCはアジア太平洋地域内に留まっており、同地域が掲げる、“グローバル”と言う言葉は、そのままアジア太平洋地域外への海外投資戦略を意味するものではないことがわかる。
また、海外投資への関心が高いアジア太平洋地域におけるVCの回答結果を見ると、現在海外投資を行っているアジア太平洋地域の投資家の34%は、自己資金の「5%未満」を海外投資へ充てており、続いて、同投資家の15%が、海外投資における自己資金の割合を「6〜10%」とし、また、「11〜15%」とした投資家は6%未満となった。興味深いのは、海外投資における自己資金の割合が「26〜50%」となると、再び投資家の割合は15%まで増加している。この数値は、ヨーロッパの2倍(7%)、米国の3倍(4%)の結果となっており、アジア太平洋地域は、他地域に比べ資金面で海外投資の割合が高いことが分かる(図3参照)。
アジア太平洋地域での海外投資戦略
アジア太平洋地域の海外投資戦略は、「海外に拠点のあるVC等との戦略的提携」(55%)、「投資先企業に海外進出を要求する」(53%)、次いで、「現地で有力なVCと共同で投資する」(47%)、「国外のオペレーションに特化した自国の企業に投資する」(45%)であった。これは、VCが海外投資を管理、指導するためには投資先企業と近い距離にいることが必要であることを示している。このように回答したVCは、現地で自分達のやり方をうまく実現するためには、地元の文化への理解や、その国における固有の存在であることの強みが重要であることを理解しているのである。
現地化の重要性は、「ターゲット国に精通したスタッフを新たに雇う」(32%)、「海外に事務所を新たに開く」(24%)、「海外に拠点を置くファームを買収する」(24%)と、軒並み高い結果になった。海外のポートフォリオ企業の本部を自分たちの近くに移転させたり、パートナー企業を海外へ移転させるとの回答はほとんど無かった。
今後の計画としては、「海外に拠点のあるVC等との戦略的提携の発展」(30%)、「現地で有力なVCと共同で投資する」(18%)、「ターゲット国に精通したスタッフを新たに雇う」(18%)、「国外のオペレーションに特化した自国の企業に投資する」(13%)で、他の9%は、「ファンドマネージャーの海外出張を増やす」、または、「海外に事務所を新たに開く」との回答となった。
今回の調査結果を、過年度と対比させると、「投資先国へのファンドマネージャーの海外出張を増やす」という項目の低下が目立っており、これは、ベンチャー企業が、成功のためには文化的差異に気を配り、現地での十分な存在感を持つことが必要だという戦略を導入していることの表れだといえる。
アジア太平洋地域における海外投資の阻害要因の低下
過年度との比較では、インドと中国においては海外からの投資活動の阻害要因について、ほとんど全ての項目で低下した。この傾向は、投資家がこれらの国での経験を積むにつれて、その国での投資環境に順応してきたことへの表れのように考えられる。しかし、知的財産の保護に関しては、特に中国において懸念され続けている。例えば、全世界の回答の59%は、中国を、「知的財産に関する法律が新たなリスクを生み出している国」と指摘している。この割合の内訳は、アメリカが60%、アメリカ以外の地域が57%であり、昨年の回答結果(アメリカ37%、アメリカ以外の地域49%)と比較すると、共に著しい上昇となった。
また、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどの他のアジア太平洋地域の国々においては、海外からの投資の際の障害として、「見返りが期待できる投資案件の不足」が多く挙げられている。アメリカの投資家の回答によると、海外からの投資の際の障害としてこうした投資案件の不足が占める割合は、日本では15%、韓国においては14%、オーストラリアとニュージーランドで13%、そして他のアジア太平洋地域の国々では15%との結果なった。これらの数字は、知的財産法を例外として、全体的な懸念材料は低下してきており、アジア太平洋地域における海外投資の懸念の度合いも全体的に低いことを示している。
「Global trends in venture capital 2007 survey」の英語版(本編)は、下記リンク先よりダウンロードすることが出来ます。
http://www.deloitte.com/dtt/article/0,1002,sid%253D1012%2526cid%253D181342,00.html
Deloitte(デロイト)とは、スイスの法令に基づく連合組織体であるデロイト トウシュ トーマツ、そのメンバーファームおよびその関係会社を指します。デロイト トウシュ トーマツは、卓越したプロフェッショナルサービスとアドバイスを提供する世界各国のメンバーファームおよびその関係会社による組織体で、140カ国以上で遂行されているグローバルな戦略を通じ、クライアントサービスに注力しています。世界中で約150,000人の優れた「知的資本」といえる人材により、Deloitteは4つの専門分野(監査・税務・コンサルティング・ファイナンシャル アドバイザリーサービス)で、世界の大企業の8割以上、全国規模の大企業、公的機関、地域顧客およびグローバルな成長企業にサービスを提供しています。サービスは連合組織体としてのデロイト トウシュ トーマツそのものによって提供されるものではなく、また、規制上あるいはその他の理由によって、一部のメンバーファームおよびその関係会社は、上記の4つの分野のサービスを全て提供していない場合があります。
デロイト トウシュ トーマツ(スイスの法令に基づく連合組織体)と、そのメンバーファームおよびその関係会社は互いの作為または不作為について責任を負いません。このように、連合組織体であるデロイト トウシュ トーマツは、「デロイト」「デロイト&トウシュ」「デロイト トウシュ トーマツ」あるいはその他の関連名称のもとで業務を行なう相互に独立した別々の法的存在である各メンバーファームおよびその関係会社によって構成されています。
TMTグループについて
デロイト トウシュ トーマツ(DTT)のTMTグループは急成長するテクノロジー企業を顕彰する「テクノロジーFast50」と「テクノロジーFast500」プログラムを運営しています。TMTグループは世界中のテクノロジー、メディア、テレコミュニケーション分野の企業にサービスしてきた経験豊かなスタッフで構成されています。私たちの顧客はソフトウェア、半導体、ケーブル、メディア、出版、コミュニケーション・プロバイダー、ネットワーキング、ワイヤレス、コンピュータとその周辺機器、それらの関連事業にわたっています。
TMTスペシャリストは、ビジネスが成長して行く各段階でこれらの企業が直面する課題を理解し、成功に向けて支援することをその責務と考えています。デロイト トウシュ トーマツはテクノロジー、メディア、テレコミニケーション企業の各顧客に、戦略面、金融面、実務面の支援を提供するリーダーです。
※下記は、2007年12月のデロイト トウシュ トーマツによる
“2007 Global Venture Capital Survey”のアジア太平洋地域(APAC)に関する
調査結果を一部抜粋、翻訳したものです。
2007年12月 − デロイト トウシュ トーマツ(本部:ニューヨーク)のTMT(Technology,Media,Telecommunication)グループは、2007年のグローバル ベンチャーキャピタル 調査レポート“2007 Global Venture Capital Survey”*を発表した。本レポートは、ベンチャーキャピタル(VC)の今後5年間の地域別・産業別の海外投資傾向を調査したもので、2007年時点でのVCによる海外投資は、「拡大傾向にあるが、成長の速度は遅く、慎重な姿勢を見せている」との結果となった。
また、海外投資における実態比較を、アジア太平洋地域、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域、北南米地域で行い、VCの海外投資への関心の高さと実際の計画との差が、地域間にあることを明らかにしている。
*グローバル ベンチャーキャピタル 調査レポート について
・調査実施時期:2007年4月 (2005年に始まり今回で3回目)
・対象会社数:528社 〔北南米地域281社、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域174社、アジア太平洋地域73社(うち日本法人は20社)〕
・対象会社規模:資産1億ドル未満から10億ドル以上の様々なタイプのVCを対象
主要な項目は以下の通りである。
アジア太平洋地域は海外投資に関心はあるものの、近隣諸国への投資に留まる
アジア太平洋地域のVCは、他地域と比較して対外投資への展開に大きな関心を示す結果となった。2007年度海外投資案件数を見ると、自社案件のうち、「1〜2案件」が国際投資であると回答しているのが48%と最も多く、次いで、「3〜5案件」が23%であり、「16案件以上」と回答しているものは19%となっている(図1参照)。
また、アジア太平洋地域における、VCの海外投資先としての注目地域は中国で、37%が、「今後投資を拡大させる対象とする」と回答している。中国政府は経済成長を促進させるためにVCの投資を支援しており、VCに対するより健全な規制環境に加えて、自国と外国との間で人民元建てのVCを奨励している。
中国に続く投資先としては、27%が、「シンガポールなど他のアジア諸国に関心を持つ」と回答した(図2参照)。
また、投資先としてアメリカに対する関心が低くなり、ヨーロッパとの回答が無かったことは注目される。つまり、アジア太平洋地域のVCはアジア太平洋地域内に留まっており、同地域が掲げる、“グローバル”と言う言葉は、そのままアジア太平洋地域外への海外投資戦略を意味するものではないことがわかる。
また、海外投資への関心が高いアジア太平洋地域におけるVCの回答結果を見ると、現在海外投資を行っているアジア太平洋地域の投資家の34%は、自己資金の「5%未満」を海外投資へ充てており、続いて、同投資家の15%が、海外投資における自己資金の割合を「6〜10%」とし、また、「11〜15%」とした投資家は6%未満となった。興味深いのは、海外投資における自己資金の割合が「26〜50%」となると、再び投資家の割合は15%まで増加している。この数値は、ヨーロッパの2倍(7%)、米国の3倍(4%)の結果となっており、アジア太平洋地域は、他地域に比べ資金面で海外投資の割合が高いことが分かる(図3参照)。
アジア太平洋地域での海外投資戦略
アジア太平洋地域の海外投資戦略は、「海外に拠点のあるVC等との戦略的提携」(55%)、「投資先企業に海外進出を要求する」(53%)、次いで、「現地で有力なVCと共同で投資する」(47%)、「国外のオペレーションに特化した自国の企業に投資する」(45%)であった。これは、VCが海外投資を管理、指導するためには投資先企業と近い距離にいることが必要であることを示している。このように回答したVCは、現地で自分達のやり方をうまく実現するためには、地元の文化への理解や、その国における固有の存在であることの強みが重要であることを理解しているのである。
現地化の重要性は、「ターゲット国に精通したスタッフを新たに雇う」(32%)、「海外に事務所を新たに開く」(24%)、「海外に拠点を置くファームを買収する」(24%)と、軒並み高い結果になった。海外のポートフォリオ企業の本部を自分たちの近くに移転させたり、パートナー企業を海外へ移転させるとの回答はほとんど無かった。
今後の計画としては、「海外に拠点のあるVC等との戦略的提携の発展」(30%)、「現地で有力なVCと共同で投資する」(18%)、「ターゲット国に精通したスタッフを新たに雇う」(18%)、「国外のオペレーションに特化した自国の企業に投資する」(13%)で、他の9%は、「ファンドマネージャーの海外出張を増やす」、または、「海外に事務所を新たに開く」との回答となった。
今回の調査結果を、過年度と対比させると、「投資先国へのファンドマネージャーの海外出張を増やす」という項目の低下が目立っており、これは、ベンチャー企業が、成功のためには文化的差異に気を配り、現地での十分な存在感を持つことが必要だという戦略を導入していることの表れだといえる。
アジア太平洋地域における海外投資の阻害要因の低下
過年度との比較では、インドと中国においては海外からの投資活動の阻害要因について、ほとんど全ての項目で低下した。この傾向は、投資家がこれらの国での経験を積むにつれて、その国での投資環境に順応してきたことへの表れのように考えられる。しかし、知的財産の保護に関しては、特に中国において懸念され続けている。例えば、全世界の回答の59%は、中国を、「知的財産に関する法律が新たなリスクを生み出している国」と指摘している。この割合の内訳は、アメリカが60%、アメリカ以外の地域が57%であり、昨年の回答結果(アメリカ37%、アメリカ以外の地域49%)と比較すると、共に著しい上昇となった。
また、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどの他のアジア太平洋地域の国々においては、海外からの投資の際の障害として、「見返りが期待できる投資案件の不足」が多く挙げられている。アメリカの投資家の回答によると、海外からの投資の際の障害としてこうした投資案件の不足が占める割合は、日本では15%、韓国においては14%、オーストラリアとニュージーランドで13%、そして他のアジア太平洋地域の国々では15%との結果なった。これらの数字は、知的財産法を例外として、全体的な懸念材料は低下してきており、アジア太平洋地域における海外投資の懸念の度合いも全体的に低いことを示している。
「Global trends in venture capital 2007 survey」の英語版(本編)は、下記リンク先よりダウンロードすることが出来ます。
http://www.deloitte.com/dtt/article/0,1002,sid%253D1012%2526cid%253D181342,00.html
Deloitte(デロイト)とは、スイスの法令に基づく連合組織体であるデロイト トウシュ トーマツ、そのメンバーファームおよびその関係会社を指します。デロイト トウシュ トーマツは、卓越したプロフェッショナルサービスとアドバイスを提供する世界各国のメンバーファームおよびその関係会社による組織体で、140カ国以上で遂行されているグローバルな戦略を通じ、クライアントサービスに注力しています。世界中で約150,000人の優れた「知的資本」といえる人材により、Deloitteは4つの専門分野(監査・税務・コンサルティング・ファイナンシャル アドバイザリーサービス)で、世界の大企業の8割以上、全国規模の大企業、公的機関、地域顧客およびグローバルな成長企業にサービスを提供しています。サービスは連合組織体としてのデロイト トウシュ トーマツそのものによって提供されるものではなく、また、規制上あるいはその他の理由によって、一部のメンバーファームおよびその関係会社は、上記の4つの分野のサービスを全て提供していない場合があります。
デロイト トウシュ トーマツ(スイスの法令に基づく連合組織体)と、そのメンバーファームおよびその関係会社は互いの作為または不作為について責任を負いません。このように、連合組織体であるデロイト トウシュ トーマツは、「デロイト」「デロイト&トウシュ」「デロイト トウシュ トーマツ」あるいはその他の関連名称のもとで業務を行なう相互に独立した別々の法的存在である各メンバーファームおよびその関係会社によって構成されています。
TMTグループについて
デロイト トウシュ トーマツ(DTT)のTMTグループは急成長するテクノロジー企業を顕彰する「テクノロジーFast50」と「テクノロジーFast500」プログラムを運営しています。TMTグループは世界中のテクノロジー、メディア、テレコミュニケーション分野の企業にサービスしてきた経験豊かなスタッフで構成されています。私たちの顧客はソフトウェア、半導体、ケーブル、メディア、出版、コミュニケーション・プロバイダー、ネットワーキング、ワイヤレス、コンピュータとその周辺機器、それらの関連事業にわたっています。
TMTスペシャリストは、ビジネスが成長して行く各段階でこれらの企業が直面する課題を理解し、成功に向けて支援することをその責務と考えています。デロイト トウシュ トーマツはテクノロジー、メディア、テレコミニケーション企業の各顧客に、戦略面、金融面、実務面の支援を提供するリーダーです。